宿敵に無念の完封負け、優勝決められず

ア式蹴球女子

 関東大学女子リーグ戦(関カレ)は最終節を迎えた。皇后杯で強豪INAC神戸レオネッサからPK戦の末、勝利をつかみ取ったア式蹴球部女子(ア女)は中2日という厳しい日程で4位日体大と対戦。序盤から攻撃的なサッカーを展開するが、得点を奪えない。すると徐々に相手にペースを握られ、前がかりになっていた一瞬の隙を突かれ右サイドから攻め込まれる。そしてMF松原有沙主将(スポ4=大阪・大商学園)のクリアミスから先制点を献上。反撃したいところであったが、日体大の堅い守備に苦しみ無得点に終わった。これにより自力で優勝を決めることはできず、19日の日体大と武蔵ヶ丘短大の結果を待つこととなった。

 ア女は皇后杯の勢いそのままに、前半開始早々から相手陣地にボールを運び好機をうかがう。5分にCKのこぼれ球をDF渡部那月(社3=兵庫・日ノ本学園)が拾い、アーリークロスを供給。これにMF大井美波(社3=大阪・大商学園)が頭で合わせるも、シュートは惜しくもクロスバーを直撃する。その直後に再びCKを得ると、こぼれ球にFW河野朱里(スポ3=静岡・藤枝順心)が詰めるが、ゴール右に外れた。2つの絶好機を生かすことができなかったア女は、その後ミスが目立ち何度もピンチを招くもGK木付優衣(スポ3=ジェフユナイテッド市原・千葉レディース)が好セーブを見せた。守備に追われていたア女は29分、MF安部由希子(スポ3=宮城・聖和学園)のロングフィードから右サイドでパスをつなぎ、最後は河野が内に切り込むも相手にブロックされる。すると相手に空いた右サイドのスペースを狙われ、カウンター攻撃を受けるとクロスボールはゴール前の松原のもとへ。誰もがピンチを脱したと思いきや、ここでまさかのクリアミス。「自分がしっかりやれば防げた」と松原。相手に冷静に流し込まれ先制を許してしまった。その後も日体大のしつこく裏を狙う攻撃に苦しめられリズムを失ったア女。リードされたまま前半を終えた。

きょうも最終ラインで奮闘した三浦

 後半はMF中井仁美(スポ4=兵庫・日ノ本学園)、MF熊谷汐華(スポ3=東京・十文字)を投入し流れを変えようと試みる。51分にその熊谷汐が中村のロブパスに反応しゴールを狙うも惜しくもブロックされた。なかなか同点に追いつけない展開が続いたが、ア女に最大の好機がやってくる。67分にDF三浦紗津紀(スポ3=浦和レッズレディースユース)が競り勝ち、中村が河野へラストパスを送る。河野はうまく抜け出したが、「後ろの相手が気になってしまった。」と自分の間合いに持ち込むことができず。エースの左足から放たれたシュートは相手GKにセーブされてしまった。さらにその直後には熊谷汐からのパスを受けたMF平國瑞希(スポ4=宮城・常盤木学園)が右足を振りぬくも、ゴール左に。終了間際には中村、DF奥川千沙副将(スポ4=静岡・藤枝順心)が共にロングシュートを狙ったが、ボールはむなしく枠外へと外れた。まさかの無得点で試合を終えたア女。昨年同様、優勝が懸かった日体大との大一番で勝利を逃し、イレブンは肩を落とした。

この敗戦を無駄にしてはならない

 中2日という厳しい日程の影響からか、前後半通じて出足が一歩遅く、普段よりも攻守の切り替えがうまくいかなかったことが敗因となってしまった今節。「疲労は言い訳でしかない。(苦しい時に)アイデアを一つ出してつなぐ場面が少なかった。アイデアを豊富に持たないと今後は通用しない。まだまだと実感した」(中村)、「INACに勝って多少のおごりがあった」(河野)と選手たちは悔しさをにじませた。しかし「しっかり気持ちを切り替えたい」とア女は19日の皇后杯に闘志を燃やす。きょうの敗戦は自分たちのサッカーをもう一度見つめなおすいい機会になったはずだ。コンディションをしっかり整え、『エンジの真価』を見せつけてほしい。

(記事 永池隼人、写真 守屋郁宏)

スターティングメンバー

関東大学女子リーグ戦 第9節
早大 0-1
0-0
日体大
【早大 得点者】なし
早大メンバー
ポジション 背番号 名前 学部学年 前所属
GK 木付優衣 スポ3 ジェフユナイテッド市原・千葉レディース
DF 三浦紗津紀 スポ3 浦和レッズレディースユース
DF ◎5 松原有紗 スポ4 大阪・大商学園
DF 奥川千沙 スポ4 静岡・藤枝順心
DF 渡部那月 社3 兵庫・日ノ本学園
MF 18 安部由希子 スポ3 宮城・常盤木学園
MF →46分 中井仁美 スポ4 兵庫・日ノ本学園
MF 27 村上真帆 スポ1 東京・十文字
DF →63分 冨田 実侑 スポ1 岡山・作陽
MF 平國瑞希 スポ4 宮城・常盤木学園
MF →72分 松本茉奈加 スポ1 東京・十文字
MF 10 中村みづき スポ4 浦和レッズレディース
MF 17 大井美波 社3 大阪・大商学園
MF →46分 熊谷汐華 スポ3 東京・十文字
FW 河野朱里 スポ3 静岡・藤枝順心
◎はゲームキャプテン
監督:福島廣樹(昭45教卒=東京・独協)
コメント

MF松原有沙主将(スポ4=大阪・大商学園)

――いまのお気持ちは

引き分け以上で優勝が確定するという中で、日曜日の勢いのまま勝ち切りたかったんですけど、自分のミスで失点してしまって。そのあと点を取り返す力もなく負けてしまって、とても悔しいです。

――試合全体を振り返って

立ち上がりはCKも取れて、シュートチャンスも結構あったんですけどそのリズムにずっと乗ることができなくて。だんだん相手のペースになってきていて、自分たちの攻撃は蹴るしかなくて、相手はしっかり後ろから作って狙いを持って蹴ってきているなというのを感じていました。それでサイドからのクロスから失点してしまって、あれは自分がしっかりクリアをしていれば防げたものだったのできちんとしなくてはいけなかったなと思います。後半は点をどうしてもとらないといけない場面だったんですけど、相手のディフェンスも堅くて点が取れず。ただ自分たちがやろうとしていたことは前半よりは見えたのかなとは思います。でもそれを結果につなげないと意味がないので、もっとそこの精度を上げていかないといけないなと思います。

――どのような対策をしていたのでしょうか

スカウティングをして、2日間でプレーを合わせてという感じでした。日体大の攻撃の型は決まっていたんですが、それに自分たちは対応し切れていなくて。もっとスカウティングで得たことの共通理解を深めていかないといけなかったかなと思います。

――かなり体力的にも厳しいと思いますが

それを理由にはできないと思ってます。日体大も同じく日曜日に試合をしていましたし。自分たちが負けたというこの結果をしっかりと受け止めてやっていかないといけないと思います。

――日体大はしつこく裏を狙ってきていたように思います

前半はフリーでかなり蹴らせてしまっていたので、そうさせないために後半はもっと前からプレスをかけていこうと言っていました。やはり裏返されてしまうとディフェンスラインも厳しいですし、また後ろから組み立てていかなくてはいけないので。もっと前からはめていけるように後ろから指示していかなくてはいけなかったかなと思います。

――日曜日には皇后杯は控えています

きょう負けてしまったのをしっかりと受け止めて、気持ちを切り替えて勝ち切れるようにがんばります。

DF奥川千沙副将(スポ4=静岡・藤枝順心)

――率直な感想をお願いします

残念です。疲れてたとはいえ、点も取れずゴールも守れずといった感じで。たくさん課題が残った試合だったと思います。

――課題というのは

守備の面では切り替えの遅さからしっかりと守備が形成できていないという点です。本来ならできていたことがきょうはなぜできなかったのかというのを詰めていかなくてはいけないなと思います。攻撃面では大きくいうと点が取れなかったということで。攻め方というか、個々を生かしたプレーがもっとできればよかったかなと思います。

――日体大に対しての対策について

人数が多くて、どの選手が出てもしっかり守るし、足が速かったり、足元がうまい選手もたくさんいるので、そういった選手にいかにプレーをさせないかということについて話し合っていました。

――相手は裏への抜け出しをかなり狙っていたように思います

ディフェンスラインとしては裏へいかせないというのが1番なんですけど、たとえいかせてしまったとしてもしっかり守るために球際の強さとかをもっと出せたら良かったなと思います。

――優勝がかかっているということで、チーム内の雰囲気などは

やっぱり疲れていたかなとは思います。いつも通りに見えて、緩い部分とかがあったからこういうことになっていると思うので、今更ですけどしっかり切り替えていかないといけないと思います。いろんな大会が立て続けにあったので、頭の切り替えとか体のリフレッシュが個々で不足していた部分があったのかなって感じます。

――日体大とはこれからインカレなどの重要な場面でも対戦する可能性があります

メンタル面をしっかり作って臨まないといけないですし、ア女のサッカーをやり切れば勝てると思ってやっていくというあたりですね。

――また中3日で皇后杯があります

ここまできたら大学女子サッカーを広めるためにも、大学女子サッカーの先頭を走っていくためにも勝たなければいけないと思うので、ア女らしいサッカーができなくとも、底力を見せつけられたらいいなと思います。

MF中村みづき副将(スポ4=浦和レッズレディース)

――広島から移動して中2日という厳しい条件での試合でしたが、結果が求められる試合でもあったと思います。感想を聞かせてください

皇后杯終わってから時間がないというのはみんなわかっていたことですし、今後もタイトなスケジュールの中で勝っていかないといけないという中で、きょうの試合というのは、内容と結果のどちらも非常に良くないものでした。

――この2日間は対策というよりもリカバリーが主になったんでしょうか

そうですね。新しいことというよりは調整というかたちで取り組んでいました。対策としては一応きのう短い時間でやったんですけど、前からの守備というところで、確認程度はできました。

――試合を振り返っていかがでしょうか

全体的にこっちの出足が一歩遅くて、立ち上がりこそは良かったんですけど、試合を通じてアグレッシブに動ける時間はなかなか少なかったです。ボールを取ったとしてもそこから大きく蹴るので精一杯だったり、そこから何かアイデアを一つ出してつなぐという場面がなかなか見られなかったと思います。それはたぶん11人全員がそうだったと思うんですけど、ボールを持った時のアイデアをもっと豊富に持っていないと、今後通用しないかなと思いました。

――やはり体が思うように動かないような部分もあったんでしょうか

他の人がどう思っているかわからないんですけど、きょうの試合を第三者から見たとしたらすごく重いゲームだったとは思うので…。それは影響してしまっているのかなとは思うんですけど、それは言い訳でしかないと思うので。

――無得点に終わってしまいましたが、攻撃の部分についてはいかがでしたか

守備がうまくいっていなかったわけではないんですけど、守備から攻撃の切り替えのところが遅くて、人数をかけられなかったと思いますし、人数をかけられたとしても単調な攻撃で相手に読まれていたりして…。まだまだだなというのを実感しました。全部良くなかったと思います。

――日曜日にまた強い相手との試合が待っています

疲労がどうとか言っている場合じゃないし、試合は待ってくれないので、そういう中で結果を出さなければいけないので、きょう負けてしまったというのは本当に残念なんですけど、そこはしっかり切り替えて、次のノジマ戦で勝てるように中3日で整えていきたいと思います。

FW河野朱里(スポ3=静岡・藤枝順心)

――きょうの試合を振り返ってください

勝てない試合じゃなかったですけど、自分たちのコンディショニングと気持ちの問題で今回の結果になったのかなと思います。

――コンディションの話が出ましたがINAC戦から中2日という厳しい日程でした疲労はやはり残っていましたか

残っている選手もいたと思いますけど、相手にも同じ状況の選手がいましたし、それは言い訳にならないので個人の問題かなと思います。

――試合までの2日間はどのような練習をしましたか

1日目は試合に出た選手はリカバリーで軽くジョグをしましたが、2日目は普通に練習しました

――普段当たらない日体大との対戦でしたがどのような作戦で試合に挑みましたか

相手のやってくることはわかっていたんですけど、落としてくる相手に対して行くということをわかっていない選手がいたりうまく連携ができませんでした。

――前半の立ち上がりは積極的な攻撃が見られましたが意識していましたか

最初の15分は前からプレスをかけて自分たちのペースにするために簡単に裏に出すという共通理解はありました。

――後半の決定機を決めることができなかった原因は何だと思いますか

あれは自分の技術の問題だったと思います。後ろから来ている相手が気になって視野が狭くなってしまいました。もっと相手の前に立って相手GKと1対1の状況を作りたかったです。

――日曜日には皇后杯が控えています意気込みをお願いします

やっぱりINAC戦に勝って多少のおごりがあったと思いますけど今回の敗戦でそれはなくなったと思います。一人ひとりが考えてやらないとどんな相手にも勝てないですし、自分たちは日体大に負けるような弱いチームなので、しっかりとチャレンジャーとしてやりたいです。