チームを救った下級生のゴール、見事初戦突破!

ア式蹴球女子

 いよいよ始まった関東女子選手権兼皇后杯関東予選。今大会はトーナメント制のため、負ければそこで終わりだ。重要な初戦の相手は関東大学女子サッカーリーグ2部に所属する山梨学院大。立ち上がりからボールを支配し続けるア女。しかしなかなか自分たちのリズムに乗ることができない。前半16分にMF中村みづき副将(スポ4=浦和レッズレディース)のゴールで先制するも、追加点を奪うことなく前半を折り返すと、後半開始早々に同点に追い付かれてしまう。49分にはMF村上真帆(スポ1=東京・十文字)のゴールで再びリードを奪ったが、またもや失点しPK戦に突入かに思われた。しかしここでFW山田仁衣奈(スポ2=大阪・大商学園)が決勝ゴール。意地で勝利をもぎ取った。

 立ち上がりからボールを支配し、相手陣内を攻め立てるア女。4分、DF中田有紀(スポ2=兵庫・日ノ本学園)のセンタリングが流れたこぼれ球を拾ったMF松原有沙主将(スポ4=大阪・大商学園)がMF平國瑞希(スポ4=宮城・常盤木学園)へパスし、ミドルシュートを放ったがこれは枠を外れた。12分にはCKを獲得したが、キッカー・中村のボールは惜しくもポストを直撃。しかし、この直後にスコアが動いた。16分、再び巡ってきたCKのチャンスで中村が直接沈めて先制に成功。このまま波に乗っていきたいところだった。ところが、「点を取った後もなかなかリズムに乗ることができなかった」(中村)。その後も流れの中での決定機は少なく、追加点が遠いア女。23分、平國がサイドから切り込んでいき、クロスにFW河野朱里(スポ3=静岡・藤枝順心)が頭で合わせるもGKに阻まれた。34分にも大きなサイドチェンジからなんとかゴール前に持ち込もうとするがシュートで終わることはできず。守備面においては攻め込まれた時間帯でも集中し無失点に抑えたが、結局1点のリードのまま試合を折り返した。

再びチームにリードをもたらした村上

 後半はまさかの幕開けとなった。開始早々左サイドの空いた裏のスペースにうまくボールを落とされ、これを冷静に又吉果奈(4年)に流し込まれて失点。試合は振り出しに戻った。突破口を見出したいア女はここで村上を投入。するとその10分後だった。中村からのパスを受けたMF大井美波(社3=大阪・大商学園)が絶妙なセンタリングを供給。それに頭で合わせた村上のシュートはポストに当たりながらも見事ゴール。絶好調のルーキーがここでも勝負強さを見せつけた。再びリードを奪ったア女はさらに畳み掛けるように攻撃を展開。中村の相手の股を抜く技ありのパスから中田が抜け出すなどのいいかたちの崩しも増えてきた。しかし34分、相手にCKを与えてしまったア女。このボールをニアに走り込んだ安東麻耶(3年)に決められ、土壇場で追い付かれてしまった。80分で決着がつかなかった場合は即時PK戦となるこの試合。このまま終わってしまうかに思えた終了間際だった。CKのチャンスで、交代して入っていた山田が持ち前のフィジカルで空中戦に競り勝ち、ネットを揺らした。チームを救う値千金の決勝ゴールの誕生に喜びを爆発させる選手たち。ア女の笑顔がピッチに弾けた。

ア女での久しぶりの公式戦出場となった試合で決勝弾を決めた山田仁

 「勝つ意欲や気持ちが大事。きょうの試合も最後まで諦めなかったからこそ点を取り返せた」(中村)。何度追い付かれても下を向かずにゴールを追い続けた選手たち。それがこの勝利につながったことは間違いない。そして村上と山田仁という下級生がチームを救うゴールをあげたということ。これには層の厚みを増すチームにおいての競争激化の一端が垣間見えた。DFラインと中盤バランスやカウンターへの対応力、セカンドボールへの意識などきょうの試合でも多くの課題が見つかったことは事実だ。しかし、試合ごとにア女は確実に進化を遂げている。次戦も土曜日と、修正に与えられた時間はわずかだが「少しでも改善しながら、せっかく強い相手に挑めるチャンスなので、多くのチャレンジをして、チームが強くなっていけたらいい」(DF奥川千沙副将、スポ4=静岡・藤枝順心)。負けられない戦いが続く中、ア女はどこまで成長していくことができるのか。優勝への道のりはまだ始まったばかりだ。

(記事 篠原希沙、写真 栗村智弘・守屋郁宏)

スターティングメンバー

関東女子選手権 2回戦
早大 1-0
2-2
山梨学院大
【早大 得点者】16中村/65村上/77分山田仁
早大メンバー
ポジション 背番号 名前 学部学年 前所属
GK 木付優衣 スポ3 ジェフユナイテッド市原・千葉レディース
DF 15 中田有紀 スポ2 兵庫・日ノ本学園
DF 三浦紗津紀 スポ3 浦和レッズレディースユース
DF 奥川千沙 スポ4 静岡・藤枝順心
DF 渡部那月 社3 兵庫・日ノ本学園
MF ◎5 松原有紗 スポ4 大阪・大商学園
MF 33 田中 実夏 スポ2 セレッソ大阪堺レディース
MF →56分 村上真帆 スポ1 東京・十文字
MF 平國瑞希 スポ4 宮城・常盤木学園
MF 10 中村みづき スポ4 浦和レッズレディース
MF →80分 安倍由希子 スポ3 宮城・聖和学園
MF 17 大井美波 社3 大阪・大商学園
FW 河野朱里 スポ3 静岡・藤枝順心
FW →71分 山田仁衣奈 スポ2 大阪・大商学園
◎はゲームキャプテン
監督:福島廣樹(昭45教卒=東京・独協)
コメント

MF松原有沙主将(スポ4=大阪・大商学園)

――結果について

試合の内容的に2失点ということで、改善しなくてはいけない点がたくさんあって、そこは全員でもっと意識を高めて、共通理解を深めていかないといけないなと思いました。

――前半と後半をそれぞれ振り返って

前半は自分たちが回すことが多い中で、相手は引いてきていて、足元のボールやサイドを狙われて、奪われ方が悪かったのでカウンターでやられてしまったりという感じでした。でもDFはしっかりと集中できていて無失点で終えられたのは良かったと思います。そのあとなかみ(MF中村みづき副将、スポ4=浦和レッズレディース)が点を決めてくれましたし。ただ1ー0だったのでまだ気持ちに余裕はなかったです。そんな中後半の早い時間に失点してしまったんですけど、焦ることなく自分たちのサッカーをし続けようということでやっていました。点を取られたり取ったりという感じで気持ち的にも厳しい戦いでしたが、自分たちのプレーをしたら勝てると信じていました。最後交代したメンバーが点を取ってくれて本当に良かったです。ディフェンスの部分でもっと球際とかセカンドとかを拾えたらもっと自分たちのペースでできたかなとは思うんですけど。でもそういう部分をもっとこだわってやっていきたいです。

――後半は開始早々に決められてしまいましたね

点を決められたとは言ってもまだ時間もあったので焦ることなくやっていこうとははなしていました。

――きょうはセットプレーからの得点が目立ちました

セットプレーで点が取れるというのはいいことだと思います。今後ももっとセットプレーでも点を取っていきたいですし、そのためにはサイドの仕掛けとかももっと必要だと思います。これからもセットプレーというチャンスをしっかりものにしたいと思います。

――下級生が得点をあげたことについて

本当に流れを変えてくれるプレーをしてくれて。誰が出てもチーム力が変わらないチームを作っていきたいと思うので、きょう決めてくれたことは良かったと思います。逆にいつも出ているメンバーも負けないようにがんばらなくてはいけないですし、もっと点に絡まないといけないなと思います。

――相手の印象は

足元とかインターセプトを狙ってるなというのは感じていて。かと言って裏に楽に出させてもらえるわけでもなく、しっかりとした守備をしているなという印象でした。攻撃に関しても切り替えが早くて、2枚目3枚目の関わりがあって、自分たちはそういう関わりが遅かったので、そこはマネしていきたいなと思います。

――当たったことのない相手との戦いはやはり難しいでしょうか

いつもやっているチームだと体でわかっているんですけど、新しくやる相手だとスピードとかビデオでしか見れないですし、難しさはありますね。かつトーナメントという負けたら終わりという状況なので。

――次戦への意気込みをお願いします

自分たちが目指していることの1つにこの大会の優勝というものがあるので、きょうたくさん出た反省点を今週しっかり改善して、チーム全員で勝てるように頑張っていきたいと思います。

MF中村みづき副将(スポ4=浦和レッズレディース)

――なんとか初戦をものにしました。振り返っていかがですか

最初は大きくプレーしようということを意識していたのですが、なかなかリズムに乗ることができなくて、点を取れた後もそれが続いてしまって。失点もしてしまって、もっと早い段階でリズムをつくれれば良かったと思います。失点が前の試合(東京国際大戦:●0-1)でやられたのと同じようなかたちだったので、今後もっと強い相手と戦っていく中で、ああいうかたちでの失点を減らさないといけないと強く感じました。

――ラインを高く保っている分、ああいった失点は一番気をつけているパターンだと思います

そうですね。セカンドボールが拾えなくなって、相手に中盤で前向きで持たれたときに、ディフェンスは位置を高く取っているので、背後のリスクは必ずあると思います。もっと中盤でボールを拾えないといけないし、もっとチーム全体がコンパクトにならないといけないと思います。

――得点は全てセットプレーからでした。流れのある攻めからは、なかなか決定機を生み出せなかった印象です

自分自身も、この試合での点の取り方っていうのが、やっている中であまりイメージできなくて、どうやったら点が入るのかを模索しながらやってしまって。サイドをうまく使いたかったんですけど、そこでもあまりスピードを出せずに、いいかたちでクロスを上げることができませんでした。自分たちのやりたいサッカーをやるということも大事ですけど、相手がこういうふうにやってきてるからこうしよう、というのを試合中にチームとして決めれるようにならないと、今後難しくなるのかなと思います。

――試合に入る前はどういったイメージを持っていましたか

自分が最近低い位置を取ってしまっていたので、きょうは高い位置を取って、裏へもガンガン抜けていこうというのは、意識していました。ただ、シャドウが二人とも裏へ抜けてしまって、朱里(FW河野、スポ3=静岡・藤枝順心)のサポートがいなくなってしまったり、一つのことをやろうとすると、他のことが全然できなくなってしまうというのもあって。裏へ抜け出すこと自体も、試合を通して回数としてはあまり出せなかったですし、やろうとしてたことはあったけど、試合でうまくやれなかったというのはあると思います。

――次の試合までにどういった点を修正していきたいですか

まずはやっぱり、勝つ意欲や気持ちが大事で、きょうの試合も最後まで諦めなかったからこそ点を取り返せたと思いますし、そういうきょうの最後くらいの気持ちを、次の試合では最初から明確に持ってプレーできれば勝てると思うので、そこをチーム全員でやっていきたいと思います。

DF奥川千沙副将(スポ4=静岡・藤枝順心)

――普段対戦しないチームとの対戦でした。チームとして対策などはあったんですか

チームとしてはとりあえず自分たちのサッカーをしっかりやろうという感じで、(自分は直近の)2試合いなかったんですけど、うまくいかなかった面も多くて、改善点とかも多かったので、そこをどれだけ改善して臨めるかというところで、しっかり話し合って入れたと思います。

――実際に試合をして、相手の印象はいかがでしたか

戦術的に裏を狙ってきていたりとか、足元がうまい選手も何人かいて、そういう注意選手とかをカバーしながら守備をしなければいけなかったんですけど、DFラインと中盤のバランスであったり、一発でカウンターにいかれてしまったりだとか、そういう場面が多くて、前回の改善点は直せたかもしれないですけど、また新たな改善点を見つけられたので、今回山梨学院と(試合を)できてよかったのかなと思います。

――その危険な選手というのは試合の中でつかんだのですか

そうですね。もともと知っていた選手もいたんですけど、新たに発見した選手とかをもう少し隣同士や前後で共有して対戦できたらよかったのかなと思います。

――2度追いつかれてしまいました

流れが悪いなと感じ取れている中で、前でプレーするだとか、簡単なプレーをするということができていなかったです。しようと思ってもできないと意味ないので、実際そういうときに点を取られないために、逆に点を取るためにどうしたらいいのかというのは、チームとして話し合いたいです。

――最終ラインと中盤の距離感に課題があるとのことですが、きょうもロングボールを蹴るようなシーンが増えてしまったように感じました

中盤とディフェンスラインでコミュニケーションがなくて、近すぎたり遠すぎたりというのがここ最近起きていたので、そこはコミュニケーションでカバーしたりだとか、たぶん個々でみんなわかっているとは思うんですけど、それを改善できるようにしなきゃいけないと思います。その中で、セカンドボールっていう点で、自分たちが弾いても中盤が拾ってくれないとキツいので、球際の強さとかを強調しながら言いたいです。

――奥川選手もセットプレーでは攻撃参加されていましたが、きょうはコーナーキックから3得点を挙げました

ヘディングが強い選手とかもいるので、そこは狙ったとおり取れてよかったんですけど、コーナーキックからカウンターとかも受けていたので、得点源でもあるんですけど、リスクを持ってディフェンスラインから上がっているので、そういうところもケアしながらコーナーキックは臨まないといけないなと思います。

――新しい課題が出たとのことですけど、満足できていないのはどういう部分ですか

中盤との距離感もそうですけど、カウンターに対処する力、1対2になっても1対3になっても対応できるような判断力を一人一人が持たないと、強い相手には勝っていけないと思うので、そういう面で個々で強くなっていくということと、セカンドボールが全く拾えていないなというのは感じていて、ファーストは競れているんですけど、セカンドボール取られてそのまま攻撃につながれるというパターンは多かったので、セカンドボールを中盤に意識させることをしっかりしなきゃいけないなと思います。

――次の試合に向けて

また次までの間も短いですが、今回何がいけなかったのかというのを、しっかり話し合って、少しでも改善しながら、せっかく強い相手に挑めるチャンスなので、多くのチャレンジをして、チームが強くなっていけたらいいなと思います。