試合終了間際に中村の一撃、意地で引き分けを掴み取る

ア式蹴球女子

 強い日差しと風の吹く中行われた関東女子リーグ戦(関東リーグ)第6節。ワセダは敵地・フクダ電子フィールドでジェフ市原・千葉レディースU-18(ジェフ)と対戦した。スコアレスドローにより、開幕からの連勝を4で止めてしまった前節、日テレ・メニーナ戦からの再起を誓って臨むも、思うように試合運びができないワセダ。前半開始早々、セットプレーからの先制を許してしまい、窮地に立たされる。後半になり、徐々にペースをつかんでも尚、ゴールを決めきれない。このまま黒星で終わってしまうのかと思われた試合終了間際、MF中村みづき副将(スポ4=浦和レッズレディース)がCKから直接ゴールをもぎとり、なんとか同点に追いついた。

 前節の引き分けにより勝ち点差が詰まり、首位を守りぬくためには負けられないワセダは、攻撃に重きを置く新しいフォーメーションで試合に臨むが、前半から苦況に立たされる。球際への詰めが速いジェフの守備に悩まされ、思うように攻めることができない。加えて、風下に自陣を構え、得意とする長いパスからの攻撃を展開できないワセダは自分たちのペースを作れず足掻く(あがく)。そんな中、試合を先に試合を動かしたのはジェフだった。前半10分、敵にCKをヘッドで合わせられ、痛恨の先制点を許したア式蹴球部女子(ア女)。「悪い流れが続いてしまった」とMF松原有沙主将(スポ4=大阪・大商学園)が振り返るように、その後も相手のペースから抜け出せない。それでも点差を詰めようと、MF熊谷汐華(スポ3=東京・十文字)を起点とし、左サイドから果敢に攻め込むワセダ。しかしシュートまで持ち込むことができない。一進一退の攻防が続く中、両チームとも決定的なシーンを決めきることができないまま、ワセダの1点ビハインドで前半を折り返すことになった。

安定感抜群の守備でチームを支えるDF奥川千沙副将(スポ4=静岡・藤枝順心)

 打って変わって後半はワセダのペース。「前半よりは目指していたかたちに近くなった」と中村が語るように、徐々に自分たちのサッカーを取り戻すエンジイレブン。裏のスペースをうまく使い、パスをつなぐサッカーで相手陣をおびやかす。後半11分、熊谷汐が敵陣の中央をドリブルで駆け抜け、PE近くのゴール正面でFKを獲得。これを松原が直接狙うが、ボールは惜しくもポストに阻まれる。その後も熊谷汐、FW河野朱里(スポ3=静岡・藤枝順心)、中村らを中心に両サイド、そして中央から敵陣を崩そうと試みるも、肝心のゴールを奪えない。今季初の黒星に終わってしまうのかに思われた後半44分、中村がCKから直接ゴールを狙う。ボールは美しい弧を描き、ゴールへと吸い込まれた。終盤、ギリギリで1点を返したワセダ。意地で引き分けに持ち込んだ。

チームを救う同点弾を決めた中村副将

 ここ2試合で、敵陣に攻め込むも最終形態である得点まで結びつけられないという課題が浮き彫りになったア女。河野が語るように、新しいフォーメーションの「イメージの共有」が次節の勝利へのカギとなるだろう。前期最終節となる次節。勝利して前期を首位で折り返したいところだ。

(記事 梶井夏葉、写真 篠原希沙)

スターティングメンバー

関東女子リーグ戦 第6節
早大 0-1
1-0
ジェフ市原・千葉レディースU-18
【早大 得点者】90 中村
早大メンバー
ポジション 背番号 名前 学部学年 前所属
GK 木付優衣 スポ3 ジェフユナイテッド市原・千葉レディース
DF 15 中田有紀 スポ2 兵庫・日ノ本学園
DF 三浦紗津紀 スポ3 浦和レッズレディースユース
DF 奥川千沙 スポ4 静岡・藤枝順心
DF 渡部那月 社3 兵庫・日ノ本学園
MF ◎5 松原有紗 スポ4 大阪・大商学園
MF 柳澤 紗希 スポ3 浦和レッズレディースユース
MF →65分 中井仁美 スポ4 兵庫・日ノ本学園
MF 平國瑞希 スポ4 宮城・常盤木学園
MF →63分 松本茉奈加 スポ1 東京・十文字
MF 10 中村みづき スポ4 浦和レッズレディース
MF 11 熊谷汐華 スポ3 東京・十文字
MF →69分 大井美波 社3 大阪・大商学園
FW 河野朱里 スポ3 静岡・藤枝順心
◎はゲームキャプテン
監督:福島廣樹(昭45教卒=東京・独協)
コメント

MF松原有沙主将(スポ4=大阪・大商学園)

――率直な感想をお願いします

高校生相手に引き分けという結果になってしまって。勝ちにいっていたんですけど、早い時間に失点してしまったのと、前半は風下で自分たちのサッカーが思ったようにできなくて。チャンスはあったんですけど、決め切れなかったですし、悪い流れが続いてしまったかなと思います。でも後半になったら切り替えて、中盤も少し流動的にできるようになりましたし、攻めることができる機会が増えたというか。でもシュートの本数は多くはないですし、もっと一人一人がシュートへの意識だったり、ゴールを決める気持ちを持たないと勝てないなと思いました。

――相手がクラブチームならではの難しさはありますか

クラブチームは下積みと言いますか、たぶん一緒にやっている時間が長いと思うので、その分連携面だとかで自分たちを上回ってるなと感じました。でも、だからと言って負けていい訳ではないですし、自分たちに引き分けた原因はあると思います。

――前節、課題にあげていた『チームの連携』に関して前後半でうまく修正できていたように思えますが

そうですね。前半、守備の面では出させたいところを出せなかったり、攻撃も一人一人の距離が遠くて、あまり関われなかったりという感じだったので。ハーフタイムに話し合って、もっと自由に抜けたり、入れ替わったりしていいんじゃないかとなって、後半の攻撃はうまくいった部分もあるかなと思います。ただ、攻撃に力を入れすぎてカウンターを受けたり、危ない場面があったので、守備の連携に関してはもっと深めていかないといけないなと思います。

――ジェフ市原・千葉レディースU-18(ジェフ)の印象は

一人一人ががんばるというか、スカウティングして中盤の子ががんばるとか、ビデオを見てわかってはいたんですけど。実際に試合をしてみて、球際に寄せてくるのがすごく速いなと感じました。

――かなりマークが厳しくきていたように感じましたが

そうですね。中盤はそれでごたついてしまいました。でも後半は前を向いてボールを持てたり、うまくはがすことができたのは良かったかなと思います。

――松原選手ご自身のプレーについてはいかがですか

前半は後ろで組み立てて展開というのを意識していたんですけど、後半は点を取らないとという焦りもあってかなり前にいました。きょうもシュートチャンスがありながら、決め切れなかったので、決定力を上げていかないとだなと思いました。あとはもっと前を向けたり、展開を速くできた部分もあったと思うので、そういったところを高めていきたいです。

MF中村みづき副将(スポ4=浦和レッズレディース)

――2試合連続の引き分けとなりました。きょうの試合の結果を振り返っていかがですか

勝たなければいけない試合だったのに、引き分けてしまったので、非常に良くなかったと思います。

――前節のメニーナ戦の引き分けからきょうの試合までどのように臨まれましたか

今回は攻撃に厚みを持たせるフォーメーションをとって臨んだんですけど、それが機能せずににこうなってしまったと思います。

――前節も今節もクラブチームの下部組織との対戦という形でしたが、きょうの対戦相手、ジェフの印象としてはいかがでしたか

すごい球際でがんばるチームで、足元のうまい子とかもいて、足元と裏の使い分けをしっかりできるチームだと思います。

――前半ワセダとしてはペースをつかめず苦しみました。振り返ってみていかがですか

パスミスが多くて攻撃のリズムがつかめずに、すべてのパスが足元になってしまっていて、裏への抜け出しがなくなってしまっていました。ピッチを大きく使う攻撃ができていなくて、そういう中でジェフに押し込まれて、結果としてセットプレーで入れられてしまったので、セットプレーを与えないようなプレーを心がけるっていうのと、攻撃に厚みを持たせるってことをしているので、それをもっと体現していければなと思います。

――中村選手自身も厳しめにマークにつかれたりと動きにくかったのではないでしょうか

そうですね。なかなか自分がスペースを見つけることができずに、足元で止めるようなかたちになってしまってロスが大きかったので、味方が作ったスペースをもっとうまく使ったり、自分でもっとスペースを作って動き出していかなきゃ通用しないと思いました。

――後半は、裏を使ったプレーも出てきました。目指していたかたちはあのようなプレーですか

そうですね。後半もやりたいことができたかと言われたら、できてはないんですけど、前半よりは目指していたかたちに近くなったという感じで。今やっていることの何倍も質の高いことをやっていかなければいけないと思っているんですけど、やりたいこととしてはそれのもっと完成系という感じです。

――後半徐々にペースを取り戻したものの、シュートまで持ち込めないシーンも多かった印象ですが、それに関してはいかがですか

自分を含めてシュートで終わるっていう意識と、そのシュートを決めきるところをもっと練習で突き詰めてやっていかなければいけないと思いました。

――ご自身の同点弾を振り返っていかがですか

終わり間際のプレーだったので直接狙ったんですけど、自分が決めたいと思って打ったので、それが入って本当に良かったです。

――きょうの試合で見つかった課題は

守備の面で言うと、もうちょっと球際のところをいくとか。攻撃の面でしたら、ボールへの関わり方がまだまだ単調なので複数人がしっかり関わって、その中でプレーができたらいいなと思います。

――試合後、監督と河野選手と時間をとって話し合いをされてましたね

今回のフォーメーションが新規的なものだったので、それの動き方の確認とかをしていました。

――最後に、次節に向けて

ここ2戦引き分けになってしまっているので、次はしっかり勝ち点3を取れるように、集中して臨みたいと思います。

FW河野朱里(スポ3=静岡・藤枝順心)

――率直な感想をお願いします

新しいフォーメーションで、自分たちがそれに対応しきれなかった結果だと思いますし、あとは気持ちが足りなかったなと思います。

――フォーメーションを変えたのにはどのような意図が

攻撃に厚みを持たせるために、前に人数をかけるフォーメーションになっています。

――クラブチームはならではの難しさはありますか

クラブチームは足元があって、大学チームよりもドリブルしてくる子が多いっていう印象があります。そこに対してディフェンスが行き切れなくて、はめどころがわからないという場面が何回もあって。自分たちにはドリブルする人が少ないので、練習は難しいんですけど、試合ではつぶさないといけないので、しっかりやっていかないといけないなと思います。

――前半は相手のペースで試合が進んでいたように思います

まず失点してしまったということが第一だと思います。あとは風下だったので、いつも自分たちがやっている大きな展開ができなかったからだと思います。足元でつなげば良かったんですけど、そこでのミスが多かったという印象です。

――後半はうまく切り替えていましたね

具体的な解決策がハーフタイムに出てきた訳ではないんですけど、風上になったことで有沙さん(MF松原主将、スポ4=大阪・大商学園)から一本いいボールが出てきたり、裏への意識は増えていたかなと思います。だけど、やっぱりミスが多いし相手より全然スキルが下だったなと思います。

――ご自身のプレーについては

自分はもう全然だめで、前にボールが来なかったというのもあるんですけど、そこを引き出すのが自分のやることだと思います。あとオフサイドにも何回か引っかかってしまったのが流れを引き寄せられなかった原因かなと思います。

――いまのチームの課題は

課題は色々とあるんですけど、イメージの共有がフォーメーションが変わったことでしづらくて。このフォーメーションを始めたのがおとといとかで、言われたからにはやらないとだなと思います。きょうできなかったからといってすぐ戻すわけにはいかないので、来週に向けてこのフォーメーションのイメージの共有をしていかないといけないなと思います。

――次戦への意気込みをお願いします

クラブチーム相手に2分けしているので、圧倒的な力の差を見せつけないといけないと思います。年齢も違いますし、負けたり引き分けたりしてはだめなので。点差をつけて前期の最後、勝ち切りたいなと思います。