3年ぶりに全日本大学女子選手権(インカレ)準々決勝へと足を踏み入れたワセダ。ベスト4を懸け、姫路獨協大と対戦した。開始早々から試合の主導権を握ると、立て続けにゴールへ迫る。すると31分、MF山本摩也副将(スポ4=スフィーダ世田谷)がサイドを用いたプレーで先制点獲得。一度は同点に追い付かれるが、試合終盤のセットプレーの好機を生かしMF高木ひかり(スポ4=静岡・常葉学園橘)のヘディングで再び差を付ける。激しい攻防戦を制したワセダは、年明けに行なわれる準決勝へとステージを進めた。
連戦となる3回戦ではあったが、疲労を感じさせないリズミカルな展開を繰り広げる。6分には左サイドを駆け上がった山本がファーストシュート。バーに直撃し、得点とはならなかったもののワセダの強い勢いを感じさせる。時折、相手のドリブルから自陣を脅かされ、手に汗を握る展開となるが、DF松原有沙(スポ2=大阪・大商学園)のロングキックなど、心強い守備でゴールを割らせない。試合も中盤に差し掛かり、ますますシュートへの意欲を強めるワセダ。MF中村みづき(スポ2=浦和レッズレディース)、FW河野朱里(スポ1=静岡・藤枝順心)ら前線の選手がスピーディなパスでPA内を奮迅する。そして迎えた31分、中村の右クロスを受けた河野のショートパスから山本が豪快な一蹴。「得点を狙っていた」(山本副将)と思い通りのプレーを決め、渾身のガッツポーズを見せる。続く36分にはフリーの状態で高木がゴールまで運ぶも追加点とはならず。その後もペースを乱すことなく、ハーフタイムを迎えた。
狙い通り得点を決めた山本副将
折り返した後半、早々に相手の反撃を食らう。ポストに跳ね返り、間一髪を逃れたものの一切の油断を許せない状況となる。「ディフェンスとボランチが間延びしてしまった」(DF渡部那月、社1=兵庫・日ノ本学園)とまたも由々しき流れに。自陣のゴール前での混戦が続く中、53分悪夢が訪れる。相手のスピードあるカウンターから悔しい失点。ゲームは再びスタート地点へ。しかし、「粘り強さ」を武器にする今季のワセダが黙っているはずはなかった。途中投入されたMF熊谷汐華(スポ1=東京・十文字)の左サイドの突破力で、幾度となくカウンターを仕掛け相手陣を踏みにじる。その流れにあやかって中村、MF正野可菜子(社4=兵庫・日ノ本学園)がシュートへの意識をむき出すものの、追加点までが遠い。決めきれないワセダに食い下がる相手に一対一の猛攻を仕掛けられ、最後まで行方の分からない勝負。しかし勝利の女神はこちらへ微笑んだ。終盤にかけCKのチャンスを立て続けに量産すると、キッカーMF松川智主将(スポ4=大阪桐蔭)の球を受けた高木が見事なヘディング。チームプレーで相手を封じ込めたワセダが準決勝進出を決めた。
終了間際に決勝点を挙げた高木
「まずは東京に帰れることを一番に報告したい」(松川主将)と数多くの選手が、東伏見に残るメンバーへの思いを口にした。残る2戦は味の素フィールド西が丘で行なわれ、チーム総勢で戦える絶好の舞台だ。これまで熱戦を繰り広げてきたワセダではあるが、ここからがインカレ本番といっても過言ではない。準決勝の相手であり、昨年度王者である日体大を前に、さらに追い込みをかけていきたい。
(記事 渡部歩美、写真 松本理沙)
スターティングメンバー
結果
第24回全日本大学女子選手権準々決勝 | ||||
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早大 | 2 | 1-0 1-1 |
1 | 姫路獨協大 |
【得点者】(早)31山本、89高木(姫)53多田 |
早大メンバー | ||||
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ポジション | 背番号 | 名前 | 学部学年 | 前所属 |
GK | 1 | 河邊花観 | スポ4 | 宮城・常盤木学園 |
DF | 4 | 大島瑞稀 | 社4 | 宮城・常盤木学園 |
DF | 5 | 松原有沙 | スポ2 | 大阪・大商学園 |
DF | 34 | 三浦紗津紀 | スポ1 | 浦和レッズレディースユース |
DF | 24 | 渡部那月 | 社1 | 兵庫・日ノ本学園 |
MF | 6◎ | 松川智 | スポ4 | 大阪桐蔭 |
DF | 7 | 高木ひかり | スポ4 | 静岡・常葉学園橘 |
MF | 10 | 正野可菜子 | 社4 | 兵庫・日ノ本学園 |
DF | →73分 | 堀口佳織 | スポ4 | 千葉・幕張総合 |
MF | 15 | 中村みづき | スポ2 | 浦和レッズレディース |
MF | 8 | 山本摩也 | スポ4 | スフィーダ世田谷 |
MF | →60分 | 熊谷汐華 | スポ1 | 東京・十文字 |
FW | 31 | 河野朱里 | スポ1 | 静岡・藤枝順心 |
◎はゲームキャプテン 監督は福島廣樹(昭45教卒) |
コメント
MF松川智主将(スポ4=大阪桐蔭)
――準決勝進出おめでとうございます。東京に戻れることになりましたね
うれしいの一言ですね。
――前半からワセダペースではあったと思いますが、手ごたえはいかがでしたか
前半は結構優勢にボールを回して、少ないタッチ数でサイドを使えました。摩也(MF山本副将、スポ4=スフィーダ世田谷)が先制点を決めてくれて良かったです。でも、後半の入りは自分たちのペースに持っていくことができなくて、ちょっと辛かった時もありましたが最後の最後に勝ち越せて良かったです。
――連戦となりましたが、コンディションはどのように整えましたか
連戦が続くことは分かっていたので、一人一人やっていこうというのと、トレーナーさんも帯同してくれているのでそういった面では体のケアもできていたのかなと思います。
――後半に入って、相手の攻撃からピンチもありましたが、中盤としての意識というのは
ディフェンスとの距離感が広がってしまって、セカンドボールを拾われるシーンが増えてしまいました。ディフェンスとボランチ間で、はっきりとしたプレーをしようということを話しましたし、押し上げたときにもフォワードに続いてボランチから押し上げることを意識しました。
――ワイドなボール回しによって中盤が有効に使えていましたね
中盤では、相手のディフェンスが来ていてもそこまで強く来なかったので、自分たちは前を向いてしっかりプレーすることができました。横のパスを有効に使えたのかなというのは感じました。
――試合終盤にかけてCKが立て続けにありましたが、そのへんの意識とは
最後の最後で3度目4度目の正直と思いながら中に入ってくれる選手を信じて、GKを中に放り込もうって蹴りました。
――準決勝進出となりましたが、東伏見に残っているメンバーへのお言葉をお願いします
とりあえず東京に帰れることを一番に報告したくて、東京に帰ってから1、2週間あるので全員で準備して、準決勝、決勝に挑みたいです。またみんなで頑張っていきたいと思います。
――最後に、準決勝に向けての意気込みをお願いします
相手は日体大で、昨年の優勝チームであり関東大学女子リーグ戦(関カレ)でも当たっているチームです。味の素フィールド西が丘ではどちらもホームになってしまうのですが、しっかり自分たちのプレーを出したいです。日体大は全く侮れないチームです。きょうは決めきれないシーンも多かったので、自分たちも決めるところは決めていくように改善したいです。この後も一戦ずつ試合を進めていきたいです。
MF山本摩也副将(スポ4=スフィーダ世田谷)
――準決勝進出おめでとうございます
本当にうれしいです。
――最初からワセダペースの中で、山本選手の得点からさらに勢い付いたと思いますが
昨日はあまり出てないですし、きょう出てた中で自分の力を出そうと思いました。早々にシュートを打ったのもあったのですが、自分の中で得点を狙っていたので、入って良かったです。
――ガッツポーズも決まっていましたね
あれは、調子乗っちゃいました(笑)。
――対戦してみてわかった姫路獨協大の特徴とは
事前に見ていたり、両サイドの選手が速いとかある程度の特徴をつかんでいました。おととし対戦した相手だったので、なんとなく想像はついていました。それよりも自分たちの入りや、前半も全体的に良かったのでうまくはまったのかなと思いました。
――ワセダがペースを握っていた中で、カウンターへの対処というのは
前半はそこまでかたちをつくられることはなかったのですが、後半に入ってからは結構危ないシーンも増えてしまいました。コーチたちからも、失点するとしたら自分たちのミスだということを言われていたし、ワセダって結構あっさり点を取られることが多いという現状があります。きょうの失点シーンを振り返ってみても、あの失点はいらなかったし、ふとした瞬間に点を取られてしまうのがことしのチームだと思います。準決勝までは2週間くらいあるので、そういうところはもう一度向き合ってやっていかなくてはいけないなと思います。
――後半、山本選手が抜けてからは危ないシーンが増えましたが、そういう状況に際してはどのような改善方法が挙げられますか
交代選手とか、個々の強みが違う中で、誰が入っても選手を生かせるようなサッカーを全体がするべきだと思います。全体が、同じサッカーをやり続けるよりかはアクセントを付ける必要があるかと。全員が同じサッカーをやる傾向にあるので、自分や汐華(MF熊谷、スポ1=東京・十文字)は縦に強いので、そういうのも頭に入れながらやっていかなくては対策を取られた時に何もできなくなってしまいます。それは攻守ともに言えることなので、2週間の中でもう一度確認すべきポイントなのかなと思います。
――東京で待ってるメンバーにはどのような声をかけたいですか
今年から、メンバー外は来ないという方針になって、メンバー外も思うことはあると思います。その中で、メンバーはもちろんのこと、それ以外のメンバーが練習外などで声かけてくれます。悔しい思いがある中で、チームを応援したり、次のメンバーに入る、という意気込みを持ってると思うので、誰が出てもいいようにしっかり準備してほしいなと思います。
――2週間後に控える準決勝に向けての意気込みをお願いします
今大会は、先を見据えすぎず、目の前の試合に気持ちを入れていこうと話しています。次の相手は日体大なのですが、関カレの時はベストメンバーではなかったと舐められた部分もあったので準決勝でたたきたいという思いが強いです。そのためには残りの期間でどれだけプレーの準備や、心の準備ができるか、だと思うので自分的にもチーム的にもしっかり上げていきたいです。
MF高木ひかり(スポ4=静岡・常葉学園橘)
――勝利したいまのお気持ちはいかがですか
気持ち良く年を越せるというのと東伏見に残っている選手もすごく応援してくれていたので、その人たちに良い報告ができてうれしい気持ちでいっぱいです。
――きのうに引き続き試合となりましたがコンディションはいかがでしたか
きのうの試合が終わったあとから次の試合っていうのを意識してみんなケアとか自分たちで痛いところなどほぐしてきょうに向けて良い準備ができていたなと思います。
――前半はワセダペースでしたが
きのうの試合は前半で点を取ったのですが、後半ですごく流れが悪くなってしまって追いつかれるという試合だったので、きょうはできるだけ前半で点を取りたいという気持ちがありました。前のめりに行こうという感じでやっていたのでそれがうまく出せたかなとは思います。ですが、1点しか取れなかったというのが課題ではあります。チャンスが多かったのでその中で決め切ることができたら良かったかなと思います。
――チャンスが多かったという点で、高木選手は前半にゴール前で1対1からシュートを打つという惜しい場面がありましたが、その瞬間はどのようなイメージでシュートを打ったのですか
結構フリーで抜け出せたと思ったので、良いところにボールを置いてからシュートを打とうと思っていたら相手のセンターバックの人に触られてしまいました。もう少し最初のファーストタッチで良いところに置いてシュートまで持っていければ良かったかなと思います。
――外してしまってとても悔しそうでしたが
これを外したらまた流れが悪くなるというか、キツイ場面になったときにあそこで決めてれば良かったなというように思うと思うので、そういうところで決めきれない悔しさが出てしまいました。
――後半は良いリズムで試合に入れたと思うのですが、きのうと同様にまた失点をしてしまいした
相手にやられるとしたら一発だけだとハーフタイムにも言っていたのですが、それを普通にやられてしまっているというのが悪いところだと思います。攻撃に関わっている分、全員が守備に対する意識をもう少し持っていければああいうのはなかったのかなと思います。
――失点後はセットプレーなどで多くのチャンスをつくっていましたが、決めきれない場面が多かったですね
焦っていたというのもありますし、必ずシュートを打つというのを決めていて、シュートを打つのですが、コースに飛んでいなかったりしておおざっぱなプレーが多かったかなと思います。流れがきているところで点を取らなければいけないというのは分かっていましたし、みんな思っていたことなのでその中で最後に取れたのは良かったかなと思います。
――追加点は高木選手のヘッドでのゴールでしたが、あの場面はどのようなイメージでシュートしましたか
自分の中で決められるという感覚がありました。いつも場所を決めて入るのですが、それでもきょうは自分で行きたい場所を主張してそこで待っていたらちゃんとボールが来たので、松川選手(MF松川智主将、スポ4=大阪桐蔭)にも感謝ですし、他の選手にもありがたい気持ちがあります。自分だけの得点ではなくて、周りの選手のおかげかなと思います。
――決めた瞬間のお気持ちはいかがでしたか
うれしさしかなかったです。何も考えられなかったです。
――試合終了の笛が鳴ったときのお気持ちは
安心しました。また、最近東京に戻れていなかったので、次はみんなで戦えるので本当に良かったと思います。
――東京に戻ってからの意気込みをお願いします
やっと戦いたい相手と試合ができますし、日体大もベストメンバーで来てくれると思います。そういう相手に勝ってこそ強さを見せつけられると思うのでしっかりと準備してみんなで気持ちをつくって挑んでいきたいなと思います。
DF渡部那月(社1=兵庫・日ノ本学園)
――いまのお気持ちをお願いします
とりあえず東京に勝って帰れて良かったなとほっとしています。
――きょうはどのような意気込みで試合に挑んだのですか
初戦も勝っていたのでこの勢いのままにみんなで勝とうと思っていました。負けるイメージはなくて、勝つイメージしかなかったので勝てて良かったです。
――チームの雰囲気はいかがでしたか
ずっと東伏見にいる人たちのために戦おうと言っていて、東伏見の人たちも段幕に応援メッセージを書いてくれたので、その人たちのことを考えてプレーしていました。
――前半は無失点で終えることができましたが、振り返っていかがでしたか
前半も攻められることはあまりなくて自分たちがずっと攻めて主導権を握っていたのであまり危ない場面もなかったですし、自分たちのチャンスも多くてワセダのペースでずっといけたので先制点も取れたのかなと思います。
――先制点を取ってくれたときどのようなお気持ちでしたか
もう、さすがという感じでした(笑)。
――後半はきのうに引き続き失点をしてしまいましたが、どのような点が失点の原因だったのですか
前半はセカンドボールなど全て拾えていたのですが後半になってルーズボールとかを拾えなくなって相手にペースを握られてしまいました。カウンターも多かったので攻守の切り替えをもっと最後まで続けられたら良かったなと思います。
――きのうの試合でも後半の初めはセカンドボールを拾われる場面が多かったですが
反省としてそういうことが挙げられていたので意識はしていたのですが、やっぱり中盤とディフェンスの間が間のびしていてそこを拾われたら結構ピンチなので、そこはディフェンスと中盤で声を掛けて拾えるようにしていけたら良いなと思います。
――後半中盤で1ー1というきのうと全く同じ展開となりましたが、失点したあとの時間はどのような思いでプレーをしていましたか
みんな全然下を向いていなくてまだ行けるぞという感じでした。最後らへんはずっとCKが続いていたので早く点が入らないかなと思っていたらひかりさん(DF高木ひかり、スポ4=静岡・常葉学園橘)が決めてくれたので良かったです。
――後半の終盤には渡部選手が、ゴール前に抜け出してシュートを打とうとする相手を封じ込める場面もありましたが
あそこは本当に危ないと思ったので、絶対に打たせたくないと思っていました。
――そのプレーにベンチの選手からもナイスという声が飛んでいましたが
絶対にやらせたくないと思っていたので良かったです。ディフェンスラインも最後まで声を掛けてプレーしていました。試合前に全体のミーティングがあって、そのときにディフェンスはずっと声を掛け合おうと意識を共有していたんです。必ずしようと言っていたのでディフェンスもずっと声を掛けていました。
――追加点を取って2-1で勝利しましたが、終了直後のお気持ちはいかがでしたか
ひかりさんが点を決めてくれて、あとは守り切るだけだったのでとりあえずほっとしています。
――これで東京に戻れますね
次はチーム全員いるので、さらに上を目指して、日体大は人数が多いのですが負けないくらい頑張りたいと思います。