PK戦を完封締め!不屈の精神を見せつけ逆転勝利

ア式蹴球女子

 皇后杯全日本女子選手権(皇后杯)、初戦(◯1-0)の激闘を突破したワセダ。雨の中迎えた第2戦は兵庫県をホームとするASハリマビリオンとの対戦。前半は思うようにチャンスを生かすことができない。続く後半は序盤に2失点を喫してしまうも、意地の2得点を挙げ延長戦へ持ち越す。その後決着がつかず迎えたPK戦では、守護神・GK山田紅葉(スポ3=東京・十文字)が相手キックを完封。長丁場の試合を見事に制し、3回戦へと駒を進めた。

 悪天候によりピッチコンディションが恵まれない中開始した試合は、硬さのある立ち上がりとなった。チャンスをつくるべく幾度と前線にボールを放り込むも、パスの合わせがうまくいかずなかなかシュートまで持ち込めない。一方の相手からは大きな脅威を受けることなく、スコアレスドローで後半へ折り返した。

 後半開始、沈黙を先に破ったのはASハリマアルビオンであった。中盤で攻防を繰り広げる中、ワセダのDFの隙を見てスルーパスを通すと、フリーの選手から一撃を放たれる。さらに追い討ちをかけるように53分、山田紅の意表を突いたループシュートを豪快に決められる。一気に暗雲が立ち込める展開となった。しかし、「早い時間に2点入れられたので、まだ行けるなと思った」(MF松川智主将、スポ4=大阪桐蔭)と、ここから怒涛の巻き返しを起こす。75分に相手のクリアボールを拾ったMF山本摩也副将(スポ4=スフィーダ世田谷)が左足を振り切りゴール。続く82分にはDF大島瑞稀(社4=宮城・常盤木学園)のアシストを得たFW河野朱里(スポ1=静岡・藤枝順心)がすかさずシュート。気付くと試合は2-2と振り出しに戻すことに成功、延長戦へと突入した。

山本の得点から勢いに乗ったワセダ

 「あとは出し切るだけ」(山田紅)と臨んだ延長戦。互いに高い集中力を見せ、試合は拮抗(きっこう)する。時折、ゴール前まで迫られる場面を迎えるも大島を中心とした最終ラインの体の張ったプレーでピンチをしのいだ。両者譲らず、勝敗の行方はPK戦へと託されることに。先攻ASハリマアルビオンの第1巡目は、動きを読んだ山田紅のスーパーセーブにより優位の展開を迎える。一方のワセダは山本を筆頭に相手GKのカベを打ち破り、相手との差を広げる。そして第3巡目。山田紅が守り切り、キッカーMF安部由希子(スポ1=宮城・聖和学園)が大きくネットを揺らした瞬間、ワセダの勝利が確定した。

PK戦で完封勝利し駆け寄る選手たち

 試合終了後、山田紅の元へ駆け寄り喜びを全面にあらわした選手たち。今季のチームの強みである『粘り強さ』がまたしても実を結ぶ結果となった。次節対戦相手に迎えるは、なでしこ1部リーグに属する日テレ・ベレーザ。格上であることは言うまでもない。しかし、頂点を目指すワセダイレブンにとって次節はまだ夢の途中。日本一をつかむべく、飽くなき挑戦は始まったばかりだ。

(記事 中澤奈々、写真 渡部歩美)

スターティングメンバー

結果
皇后杯全日本女子選手権2回戦
早大 0-0
2-2
(PK3-0)
ASハリマアルビオン
【得点者】(早)75山本、82河野(A)47佐藤、53布志木
早大メンバー
ポジション 背番号 名前 学部学年 前所属
GK 16 山田紅葉 スポ3 東京・十文字
DF 大島瑞稀 社4 宮城・常盤木学園
DF 松原有沙 スポ2 大阪・大商学園
DF 14 菅原靖巴 スポ2 浦和レッズレディースユース
DF 24 渡部那月 社1 兵庫・日ノ本学園
MF 高木ひかり スポ4 静岡・常葉学園橘
MF 6◎ 松川智 スポ4 大阪桐蔭
MF 10 正野可菜子 社4 兵庫・日ノ本学園
MF →56分 山本摩也 スポ4 スフィーダ世田谷
MF 15 中村みづき スポ2 浦和レッズレディース
MF 30 熊谷汐華 スポ1 東京・十文字
MF →61分 柳澤紗希 スポ1 浦和レッズレディースユース
FW 31 河野朱里 スポ1 静岡・藤枝順心
MF →延長前 安部由希子 スポ1 宮城・聖和学園
◎はゲームキャプテン
監督は福島廣樹(昭45教卒)
コメント

MF松川智主将(スポ4=大阪桐蔭)

――長時間にわたる激闘を制した今のお気持ちをお願いします

東伏見グラウンドに残っているチームメイトの思いと共に、全員で戦えた試合だったので素直にうれしいです。

――松川選手自身、久しぶりの公式戦となりましたがコンディションは

離脱してしまう期間がありましたが、その分試合勘というのは練習の中でも取り戻せたのかなというのはありました。トーナメント式の大会なので、勝つしかないという試合で、もう走り回るということを頭に置いて、攻撃にも絡んでいこうという話をしました。

――完全アウェーの中で、試合の組み立て方はどのように考えていましたか

なでしこ2部リーグの相手でしたが、そこまで怖がらず、自分たちのサッカーをしようということを試合前から話していました。その中で、後半にかけて自分たちのサッカーを出すことができたのかなと思います。

――後半、立て続けに失点を喫し、苦しい試合展開となりましたね

早い時間に2点入れられたので、まだ自分たちのペースに持って行くことができました。まだ行けるな、というのはありましたし、追い付いたというところでホッとしてそこから1点が遠くなってしまったので、最後の粘りという点で貪欲に行かなくてはならないというところは課題かなと思います。

――追い付いてからは勝つ自信や勢いが増しましたね

後半、結構相手も間延びしてきて中盤が空くシーンが多かったので、自分や高木(MF高木ひかり、スポ4=静岡・常葉学園橘)らが間を使ったプレーができてサイドに大きく展開できました。2点目とかもそうなんですけど、サイドから入ったボールをちょんと触るだけだったので、理想のゴールだったのかなと思います。

――延長戦は雨の中となりましたが

自分も足をつってしまったのですが、相手も疲れている状態で走り負けないということを意識してやりました。

――次戦は目標としていた日テレ・ベレーザとの試合となりますが意気込みをお願いします

日テレ・ベレーザは、なでしこ1部の中でもことしは1位の強豪です。おととし戦った時は惨敗だったので、粘り強く、勝ちにこだわっていきたいと思います。

――東伏見にいるチームメイトにお言葉をお願いします

みんながいるおかげで、こうやってメンバーが来られていますし、みんなの力で勝ったと思うのでいい報告ができてよかったです。こういった試合展開を、みんなも心配していたと思いますが、全員で勝てたのでみんなに感謝してます。

MF山本摩也副将(スポ4=スフィーダ世田谷)

――完全アウェーの中で、やりづらさはありましたか

相手の応援団とかいましたけど、そんなにアウェー感はなかったので何も思いませんでした。

――試合の組み立て方はどのように考えていましたか

前半外から見ていて、案外相手がつないでくるプレーでスカウティングとは異なっていることをしているなという印象を受けました。そういった中でピッチも滑りましたし、組み立ての部分でミスが多かったのですが、チャンスをつくれたことも多かったので前半見ていた感想としては点を取れれば乗れるなと思いました。

――後半立て続けに失点した中で、どのような意識をしてプレーに臨みましたか

失点シーンをどちらも見れていなくて(笑)。自分が出たら点を取って逆転しようと思っていましたし、ピッチ内でも焦りはありましたが負けるとは思いませんでした。

――1点目の得点シーンを振り返っていかがですか

その前までシュートチャンスがあった中で消極的なプレーになってしまったので、ボールが来た瞬間に振り切るということしか考えてなくて。振り切ったらうまいこと当たったのでよかったです。

――ワセダの粘り強さが光った試合となりましたね

今シーズン通して、GK含めたDF陣が粘り強く後ろで守ってくれて、それが前線の選手にもいい刺激というか守備意識の中で前線の選手も頑張るようになりました。全体的な粘り強さっていうのがついてきてると思います。まだまだ粘り強さの中でもやりきるプレーや、点を取りきるプレーや取らせないプレーっていうのをやっていく必要があると思うので、このままそこの部分を強みにしていきたいと思います。

――最後に、次戦は目標としていたベレーザ戦となりますが何か成し遂げたいことはありますか

おととし大差で負けてしまって結構完敗だったし、きょねんは皇后杯(皇后杯全日本女子選手権)自体に出られていなくて。やっとこういったチャンスが巡ってきたので、泥臭く粘り強くチームで戦うことしか考えてないし、良い試合をして、内容どうこうより結果だと思うので、勝てるように短い一週間の中でみんなで準備していきたいと思います。

GK山田紅葉(スポ3=東京・十文字)

――PK戦の末、勝利をつかみました。率直な感想は

本当に、ものすごくうれしいです。

――雨によるピッチコンディションの悪さからも硬さの出た試合でした

そうですね、裏に出したボールとかが延びてしまっていつも通りのプレーというのがやりにくい状態でした。後半は立て直して、失点してもめげずにみんなが頑張ってくれました。みんなで勝ち取った勝利でした。

――失点シーンを振り返って

1失点目は相手に抜け出されてしまって、自分と1対1の状態でした。疲れを理由にするのは良くないのですが、全体的に戻りが遅くなってしまって相手に優位な状態でアタッキングゾーンを仕掛けられてしまいました。2失点目は自分も予想していないロングシュートだったのですが、皇后杯全日本選手権くらいのレベルになるとあの距離でも自分が前に出ていると認識していて。その遠い距離からでも打てる技術あるということを今回の試合で学びました。次からはそういった裏のケアを自分の中で意識してプレーしていきたいと思います。

――なんとか延長戦に持ち込むことができました

あとは出し切るだけだと話していて、ここまで来たのだからあとは自分たちのサッカーをやって楽しもうと言いました。ひかりさん(MF高木ひかり、スポ4=静岡・常葉学園橘)や監督も同じようなことをおっしゃって、みんなの雰囲気も明るくなりました。チーム全体でポジティブな方向にメンタルを持って行けたのかなと思います。

――PK戦では全てを止めることに成功しました

足をつっている選手とかもいましたし、4年生が2点ももってくれたのでこれはつなぐしか行けないと思い臨んでいました。

――次節は日テレ・ベレーザ戦です。日本代表の選手も所属するチームということで意気込みをお願いします。

こういった場でしか戦えない相手だと思うので、会場を設置している人たちにも感謝をしながら楽しんで自分たちのサッカーをやっていきたいと思います。

FW河野朱里(スポ1=静岡・藤枝順心)

――激闘を制しました、振り返っていかがですか

諦めないで良かったなと思います。

――前半は、アウェーでかつピッチコンディションが整わない状況でかたさの見えた試合でした

ピッチの雰囲気がいつもと違い、相手も背が高かったりと自分たちがスカウティングした戦法でなかったりして想定外のことが多くありました。そのためもあって前半は落ち着いてプレーできませんでした。

――試合が動いたのは後半でした。振り返って

最初に点を決められたのは、オフサイドと思いDFラインが止まってしまったところで失点してしまいました。2失点目は自分とひかりさん(MF高木ひかり、スポ4=静岡・常葉学園橘)のマークのずれで生じた失点でした。そこは自分が付いてくなり、ひかりさんに任せるなり声掛けをしなければならないと思いました。

――前半から相手は意表の突く攻撃を何回かしていました。そのあたりの予測という面ではいかがでしたか

スカウティング通りではなかったという一言に尽きるのですが、そこでいかに自分たちが試合中に相手の攻撃に対応できるかがこれから大切になってくると思います。

――試合を通して河野選手からゴールへの意欲を感じました。82分の得点シーンを振り返っていかがですか

まず、ほっとしました(笑)。きょうはシュートを5本以上打つという目標でやっていたので、シュートへの意識が高まった点では良かったと思います。

――そのあと、自力の強さでなんとか延長戦に持ち込むことができました。そのときの気持ちは

自分は前半からシュートを外したり、パスミスが多かったのでそこで1点くらい決めなければとは思っていました。後半に1点決められたのは良かったのですが、まだ同点でしたしあまり嬉しがらずにもう1点を狙っていこうという気持ちでした。

――延長戦に持ち込む際にチームで話したこと

チーム全体を通して相手に負ける気がしないという雰囲気でした。相手より若さがあるのでそこで負けないように集中していこうという話でした。

――次節は目標としていた3回戦、日テレ・ベレーザ戦です。意気込みをお願いします。

相手は格上なので、自分たちはチャレンジャーというかたちを崩せるようにしたいです。これからも格上のチームと対戦することが増えると思うのですけど、その1戦目としてできることや自分たちがやってきたことを精いっぱいできるように頑張りたいです。