2年ぶりの出場となった皇后杯全日本女子選手権(皇后杯)の初戦は、なでしこ2部リーグに所属する福岡J・アンクラス。時折攻め込まれることもあったものの、大きな危機を迎えることなくワセダのリズムで試合を運ぶ。前半のアディショナルタイムにこぼれ球を押し込んだDF松原有沙(スポ2=大阪・大商学園)が先制ゴールを獲得。後半も攻撃の手を緩めることなく粘り強く戦い抜き、プロチーム相手に見事な完封勝利を収めた。
ワセダは立ち上がり、FW河野朱里(スポ1=静岡・藤枝順心)、MF熊谷汐華(スポ1=東京・十文字)、DF渡部那月(社1=兵庫・日ノ本学園)の1年生トリオが左サイドから効果的な攻撃を繰り返し続け、試合を支配する。なかなかチャンスをゴールに結びつけられないが、優位なスタートとなった。その後ゲームも中盤に差し掛かり、リズムをつかみ始めた相手との激しい攻防戦が繰り広げられる。苦しい時間が続いたが、松原のロングパスからDF大島瑞稀(社4=宮城・常盤木学園)が右サイドを仕掛けるなど、ワイドなボール回しで大きな決定機を与えない。徐々にペースを取り戻したワセダは、前線からの攻撃で相手を翻弄(ほんろう)。双方無得点のまま終えるかと思われた前半終了間際、CKのこぼれ球を松原が押し込みネットを突き刺す。試合の決勝点ともなった今季初ゴールについて松原は「チームに貢献できてよかった」と振り返った。
前半終了間際、松原の今季初得点でゲームが動いた
1点リードで迎えた後半、引き続きサイドをうまく活用した展開を繰り広げる。流れるようなパスワークからチャンスをつくり続け、54分にはMF正野可菜子(社4=兵庫・日ノ本学園)のロングパスから河野がシュートを放つなど決定機をつかみ、果敢にゴールに迫る。その後、相手もチャンスをつくり始め、74分にはCKからピンチを迎えるがGK山田紅葉(スポ3=東京・十文字)が素晴らしいセーブでチームを救出。試合終盤にはここまでボールをはね返し続けたDF三浦紗津紀(スポ1=浦和レッズレディースユース)らDF陣が負傷に見舞われるアクシデントに見舞われたが、「チームでカバーして耐えることができた」(熊谷汐)というように一丸となって相手の攻撃を阻み続け、虎の子の1点を守り抜き激闘を制した。
公式戦デビューを飾ったMF柳澤紗希(スポ1=浦和レッズレディースユース)
「勝ち切るという総合力が出た一戦だった」(MF山本摩也副将、スポ4=スフィーダ世田谷)。試合終盤にかけ、負傷するプレイヤーが続出するなど厳しい戦いを強いられたが、持ち前の選手層の厚さで、見事2回戦にコマを進めたワセダ。チームの強みを武器に、次に控えるASハリマアルビオンとの一戦も突破したいところだ。
(記事 米澤英輝、写真 桝田大暉)
スターティングメンバー
結果
皇后杯全日本女子選手権1回戦 | ||||
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早大 | 1 | 1-0 0-0 |
0 | 福岡J・アンクラス |
【得点者】(早)45+1松原 |
早大メンバー | ||||
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ポジション | 背番号 | 名前 | 学部学年 | 前所属 |
GK | 16 | 山田紅葉 | スポ3 | 東京・十文字 |
DF | 4 | 大島瑞稀 | 社4 | 宮城・常盤木学園 |
DF | 5 | 松原有沙 | スポ2 | 大阪・大商学園 |
DF | 34 | 三浦紗津紀 | スポ1 | 浦和レッズレディースユース |
DF | →81分 | 菅原靖巴 | スポ2 | 浦和レッズレディースユース |
DF | 24 | 渡部那月 | 社1 | 兵庫・日ノ本学園 |
MF | 7 | 高木ひかり | スポ4 | 静岡・常葉学園橘 |
MF | 8◎ | 山本摩也 | スポ4 | スフィーダ世田谷 |
MF | 10 | 正野可菜子 | 社4 | 兵庫・日ノ本学園 |
MF | 15 | 中村みづき | スポ2 | 浦和レッズレディース |
MF | →69分 | 柳澤紗希 | スポ1 | 浦和レッズレディースユース |
MF | 30 | 熊谷汐華 | スポ1 | 東京・十文字 |
FW | 31 | 河野朱里 | スポ1 | 静岡・藤枝順心 |
◎はゲームキャプテン 監督は福島廣樹(昭45教卒) |
コメント
MF山本摩也副将(スポ4=スフィーダ世田谷)
――1回戦突破おめでとうございます。この試合に臨む上でどのような意気込みをお持ちでしたか
先週、関東大学女子リーグ戦(関カレ)に優勝して、また1つのタイトルを獲れたあとに、切り替えて皇后杯全日本女子選手権(皇后杯)に臨んだので、気持ちの面の切り替えと、チームとしてケガ人等いた中で、そういったことをあまり考えずに、やれることをしっかりやろうと思って試合に入りました。
――前半から相手陣に攻め上がるシーンが多く、細かくパスをつないでいましたが試合プランとしては
事前にスカウティングをしていて、相手がどういう風にサッカーをしてくるかを頭に入れている部分はあったし、相手のウイークポイントであったり、自分たちのストロングポイントをどう出すかっていう部分を、前に前に出積極的に行くことで試合の流れに乗れるので、気持ちもプレーも前に関わろうかなと思っていました。
――特に前半は、左サイドからの攻撃が多かったですが、中盤としてはボール配球の仕方はどのように考えていましたか
前半は、中盤として関われることが少なかったので反省点にしています。しおか(MF熊谷汐華、スポ1=東京・十文字)の縦への強みやポジションに入った選手の強みを生かすためには、中盤の自分や高木(MF高木ひかり、スポ4=静岡・常葉学園橘)、みづき(MF中村みづき、スポ2=浦和レッズレディース)だったりがバランスをとりながらやっていかなくてはなりません。入る人や、チームとしてもサイドを強みにしているのでそこを使おうかなと思っていました。
――前半終了間際にDF松原有沙選手(スポ2=大阪・大商学園)が先制してチームとしてはやりやすい流れとなったと思いますが、ハーフタイムではどのような話がありましたか
相手の勢いがあった段階で得点を取れたことがすごく大きくて、自分たちのセットプレーの強みもありましたし、ああやってあの時間に取れたことは気持ち的にもいい状態で後半に臨めたので、このまま打っていこうという話はありました。点が入れば波に乗れるチームなので、しっかりやっていこうと話しました。
――後半に入ってからはDF陣が続けて負傷するなどハプニングもありましたが、最後まで集中力を切らさないプレーとなりましたね
結構相手が荒くなり始めた部分もあって、DFラインが体を張って守ってくれた中で、ああいったハプニングは仕方がないことなのですが、そこの部分で代わりに入った選手が最後まで仕事を全うしてくれたし、そこは層の厚さだと評価できると思います。もっともっとやれるべきところや、弱い部分はあるにせよ、ハプニングに対してチーム全員で対応できて、勝ち切れる総合力が出た一戦だったと思います。
――2回戦目はASハリマアルビオンとの試合ですが、そちらに向けての意気込みをお願いします
きょうの相手と同じくなでしこ2部リーグの相手ですが、きょうよりも高いレベルのチームですし、力があるということは間違いないので、変わらず一生懸命準備することと、疲労が蓄積してきて体の故障が増えてくるだろうけど、どのチームも変わらないことなので、どのチームよりも良い準備をして試合に臨めるようにやっていけたらなと思います。
MF高木ひかり(スポ4=静岡・常葉学園橘)
――初戦突破おめでとうございます。2年ぶりの本戦出場となりましたが、いかがでしたか
皇后杯だからといってあまり気負ってプレーするわけではなく、自分たちがどれだけできるかという感じで臨んだので楽しめました。
――平常心で臨めたのですね
そうですね、はい。
――どのようなゲームプランニングを考えましたか
相手の19番が速く、そこにボンボン蹴るのはわかっていたので、ファーストディフェンスで縦を切って裏を取られないようにだとか、セカンドボールに対してチャレンジアンドカバーができるようにということを全体で心掛けました。
――ボールを保持できる時間が長かったですが、組み立てに関して試合中に意識したことはありますか
立ち上がりがあまりよくなくてボンボン蹴ってしまい、それをどうやって変えていくかということがあまりうまくできませんでした。試合開始から15分でどれだけしっかりボールを動かせるかを考えてやっていたのですがあまりできなかったので、次節戦う相手もうまい分そういうことを考えてやりたいなと思います。
――前半のうちにリードできたのはよかった点ではないでしょうか
そうですね。最近CKからあまり点が生まれていなく、絶対(点を)取ってこいと言っている中でやっと取れたのはよかったと思います。有沙(DF松原有沙、スポ2=大阪・大商学園)が復帰後初得点なのでそういうのもよかったですし、(時間帯も)前半の終わり際だったのでそれもよかったです。
――もう少し流れの中で点を取れればといった印象でしたが
いいかたちは何度かあったんですが、ゴールのどこに打ち込むかという点で正確性をあげていかないと苦しい展開にもなってしまうと思います。後半もゴール前でいい崩しが見れた分、そこで点を取ってくれる人が(チームから)出てくるといいなと思います。
――相手に大きなチャンスを許す場面がありませんでした
相手の単調な攻撃に対して人数を掛けて守備をすることができたのはよかったですが、相手の強みであるセットプレーをさせないとかそういう流れをつくらせないということもできたらよかったなと思います。
――試合を通して1点を守り切れた要因は
最後まで集中力が切れなかったということと、勝ちたい気持ちが出たからかなと思います。
――次戦に向けて修正する一番のポイントはなんでしょうか
やっぱり点を取るということですかね。関カレでは大量得点で勝つことがほとんどなく、ボールを保持してシュートを撃つわりには点が取れないチームと思われてしまうので、ワセダペースで試合を運べるようにしたいです。
MF正野可菜子(社4=兵庫・日ノ本学園)
――皇后杯の初戦となりましたがどのような意気込みで挑みましたか
絶対に勝たなければいけない試合ということで、相手はなでしこリーグ2部で自分たちより経験があるような強いチームと戦っていたのでどういった試合になるか分からなかったのですが、智(MF松川智主将、スポ4=大阪桐蔭)が来れていないし、東伏見に残っている人の分までみんなで頑張ろうという思いで挑みました。
――実際に福岡J・アンクラスと戦ってみて印象はいかがでしたか
相手の怖い部分は19番の選手の足の速さとプレーかなと試合の前から話し合っていたので、そこさえしっかり対応できれば良いかなと試合の中でも思いました。
――正野選手は前半から多くのシュートチャンスに絡んでいましたが、その点はいかがですか自分自身もう少しシュートの意識を持たないといけないかなと思います。打てるところでしっかりと打たないと点にもならないですし、チームの流れというのも良くならないと思うので、そこはしっかりと自分の課題として意識していきたいと思います。
――惜しい場面も何度かありましたが
そうですね、まだまだしっかりと踏ん張り切れないところがあったのでそこは改善していきたいと思います。
――1ー0で前半を終えましたがハーフタイムにはチームでどのようなお話をしましたか
シュートを打っていこうということを話しました。やっぱり、ゴール前に行っても打ち切れずに終わってしまっていたので、それが最終的にピンチにはならなかったから良かったのですが、打ち切らずに逆に攻め込まれるというのが一番嫌なパターンなのでもっと打っていこうということは話し合いました。
――後半は右サイドからの攻撃も増えたように感じましたが
右サイドもたくさん使ってくれたのですが、自分にボールが入ったあとに自分がボールを失うことが多かったので、そこはつなげてくれた分を次につなげられるようにしたいです。
――スペースに出されたパスに正野選手が走っていくという場面も何度かありましたね
そうですね。走るのでばててしまったので、しっかりつなげられるように頑張りたいと思います。
――積極的にプレッシャーもかけていたように感じましたが
相手がボールを蹴りこんでくるということは分かっていたのでそこさえ抑えれば怖いことはないなと思っていました。なのでプレスをかけていたのですが、まだまだ足りないところがあるのでもっと頑張ります。
――後半の最後は負傷者も出て万全の状態でプレーできなかったと思いますが、その中で無失点に抑えたことに関してはいかがですか
交代してしまった選手の分を、交代して入った選手もしっかり頑張ってくれたし、そこは選手層の厚さを生かすことができたのではないかなと思います。
――試合後はテレビ電話をしていましたが
智と佳織(DF堀口佳織、スポ4=千葉・幕張総合)とうっちー(MF内山穂南、スポ3=東京・十文字)が、電話をつないでくれました。
――どのようなことを話されたのですか
「勝ったよ〜」という報告ぐらいですね(笑)。
――次の2回戦への意気込みをお願いします
アルビオン(ASハリマアルビオン)は友達も多いので自分自身負けたくない気持ちが強い相手です。なので絶対に勝ってベレーザ(日テレ・ベレーザ)戦へつなげたいです
DF松原有沙(スポ2=大阪・大商学園)
――試合お疲れ様でした。今季初得点となりましたが、ゴールシーンを振り返っていかがですか
やっぱりセットプレーというのはチャンスで、自分はこぼれ球の位置にいるのですが、浮かせないようにということだけを考えて押し込みました。チームに貢献できてよかったです。
――あの時間帯での得点により、チームがさらに勢いがついたのではないかと思いますが、試合をしていていかがでしたか
自分たちが攻めている時間と、押し込まれる時間とあって、あの時間で1点決めることで気持ち的に楽になれたかなと思いますし、後半追加点を取れればよかったのですが取れなかったのは今後改善しなくてはならないことだと思います。その中でもしっかり勝ち切れたことはよかったです。
――前半から、ワセダが押し込んでいる印象でしたが、それは作戦通りといったところでしょうか
前半で試合を決めようという意気込みで入ったので、しっかり自分たちのプレーを貫き通すことができた部分があったのかなと思います。
――後半に入ってからDF陣がケガに見舞われるなどハプニングもありましたが、そういった面ではどういった意識で試合に入っていましたか
誰が試合に入っても、一番はプレーが変わらないことで、練習の中でもやってきていたことだったのでそこまで焦りはなかったですね。
――試合終了間際までボールへの執着心を強く感じましたが、そのへんの意識とは
運動量で勝たないと試合でも勝てないので、それは自分たちの中で意識していることであり、最後まで走り続けることが大事だと自分たちもわかっているので、勝ってよかったです、練習でもいつも走っているので、それが成果に出たのかなと思います。
――1回戦目となりましたが緊張しましたか
皇后杯や全国大会自体初めてなのですが、そんなに緊張はなかったです。いい感じで楽しめてよかったです。
――2回戦目もなでしこ2部リーグの相手となりますが意気込みをお願いします
次も格上の相手と試合になりますが、その中でもワセダらしいプレーをして、また次に進めたらいいと思います。
MF熊谷 汐華(スポ1=東京・十文字)
――見事な勝利、おめでとうございます。きょうの試合を振り返ってみてください
かなり厳しい試合となりましたが、勝つことができてとても嬉しいです。
――ワセダにとっては2年ぶり、ご自身にとっては初の皇后杯、どんな気持ちで試合に臨みましたか
チームとして、今日の試合に来れなかったメンバーの分まで頑張って戦おうという気持ちを持って、チーム一丸となって戦うことができたと思います。
――初戦からプロ相手となりましたが上手く試合を支配できていました
相手がプロであるということは意識せず、自分たちのサッカーをすることができた結果だと思います。
――前半、FW河野朱里選手(スポ1=静岡・藤枝順心)、DF渡部那月選手(社1=兵庫・日ノ本学園)と共に素晴らしい攻撃を仕掛けていました
特に意識していたわけではありませんでしたが、いつもこの3人で崩しているので、きょうは前半からどんどん崩せてもが良かったかなと思います。
――守備面では積極的なボール奪取が目立っていました
関カレ最終戦の日体大戦から、前線からの守備を特に意識していてそれが今日もできて上手くはまったので良かったと思います。
――試合終盤怪我でDFを失う厳しい展開になってしまいましたが見事守りきりました
結構ヤバかったですが、そこはチームでカバーするしかないので、なんとか耐えられて良かったです。
――最後に2回戦への意気込みをお願いします
次も絶対に負けられないので、1週間しっかり練習をして試合に臨みたいです。
MF柳澤 紗希(スポ1=浦和レッズレディースユース)
――1ー0での勝利ということでいまのお気持ちをお聞かせ下さい
自分は試合に連れてきてもらえたこと自体びっくりしていたので、とにかく今回はチームのために自分ができることをしようと思っていました。なので結果に関しては素直にうれしいです。
――今回ベンチで試合を見ている際、どのようなことを意識していましたか
相手は自分より体格の良い選手などが多いので、自分がもし試合に出たらどんなプレーができるのかをイメーしながら見ていました。
――具体的にはどのようなイメージをしていましたか
結構球際が強かったのでそこには絶対に負けないようにするとか、GKが前がかりだったのでシュートを遠目からでも打とうということを考えていました。
――実際に初めてピッチに立った感想はいかがでしたか
楽しかったです!
――試合終盤は攻め込まれるシーンも多かったですが
直接失点につながるか分からないですが前でのミスが命取りになったりするので、体を張って残りの20分は絶対に点を奪われないぞという気持ちでプレーをしていました。
――ロスタイムには初シュートとなるミドルシュートを打っていましたが
あまり相手がドリブルでも強く当たってこなくて、ゴールがちらっと見えたのでシュートを打ちました。
――2回戦へはどのよつな意気込みで挑まれますか
次はASハリマアルビオンなのですが、きょねん浦和レッズレディースユースのときにPK戦で負けてすごく悔しい思いをしたので、チームは違うのですが、その借りを返したいと思っています。なので、まず自分のできることをこの1週間で調整して絶対に勝ちたいと思います。