期待のルーキーを加え、新体制を発足させたワセダ。関東女子リーグ戦(関東リーグ)7連覇が懸かっている覇者は、並々ではない闘志を抱き初戦に臨んだ。対戦相手は強豪・筑波大。開始早々、FW陣のスピードに翻弄(ほんろう)され、先制を許してしまう厳しい展開に。しかし、徐々に流れを引き寄せるとMF正野可菜子(社4=兵庫・日ノ本学園)がシュートを決めて同点に追い付く。その勢いのままMF山本摩也副将(スポ4=世田谷スフィーダ)が逆転劇を演出。後半もゴールへの積極的な姿勢を見せ、追加点とはならなかったものの2-1で開幕戦を制し、幸先の良いスタートを切った。
『日本一』に向けた戦いが始まった
「足が止まっていた」(正野)。今季初めての公式戦。初出場である1年生を始めとして、選手たちの動きは重い。うまくリズムをつくれないワセダとは対照的に、立ち上がりから積極的なプレーで攻めてくる筑波大。24分、小さなミスからボールを奪われ相手のカウンターを許すと、GK河邉花観(スポ4=宮城・常盤木学園)との一対一に持ち込まれ失点。重くのしかかるビハインドがチームに影を落とすかと思われた。しかし、「あまり焦りはありませんでした」(山本)と出鼻を挫かれても冷静さを失わない。時間が経つにつれ、試合のペースをつかみ始めたワセダ。右サイドの連携で相手陣への攻め上がりを見せる。迎えた27分、DF大島瑞稀(社4=宮城・常盤木学園)が放ったシュートのこぼれ球に反応した正野がすかさず右足を一閃(いっせん)。ボールはネットを揺らし、同点に。続く34分には、正野からの絶妙なパスを受けた山本が値千金のゴール。得点を機に勢いに乗った早大は、2-1とリードして前半を終えた。
正野(左)のアシストで山本が逆転劇を演出
後半も前半同様、縦に横に揺さぶり攻撃的なサッカーを展開する。スーパールーキーFW河野朱里(スポ1=静岡・藤枝順心)やチームの要である高木ひかり(スポ4=静岡・常葉学園橘)らが幾度となくゴールに迫るも、決めきることができない。停滞した状況を打破することができずに迎えた試合終了間際、筑波大から猛攻を受ける。パワープレイで制圧しに掛かる相手を必死で押し返す苦しい時間が続く。PAに侵入され、肝を冷やす場面もあったが、何とか持ちこたえたワセダ。2-1と開幕戦を勝利で飾った。
好調なスタートを切るも、「守備面に問題がある」(山本)「後半はちょっとペースが落ちてしまった」(MF松川智主将、スポ4=大阪桐蔭)と初戦を振り返る選手たち。次節に迎える関東学園大との試合に向け、まだまだ改善の余地はありそうだ。とはいえ、一年生を多く組み込んだことしのチームには大きな期待が懸かる。掲げる目標は相も変わらず『日本一』。歓喜の瞬間を求めて――。「女王奪還」に向けたエンジイレブンの戦いが、いま、幕を開けた。
(記事 佐藤諒、写真 近藤廉一郎、松本理沙)
スターティングメンバー
関東女子リーグ戦第1節 | ||||
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早大 | 2 | 2-1 0-0 |
1 | 筑波大 |
【得点者】(早)27正野、33山本 (筑)14横山 |
早大メンバー | ||||
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ポジション | 背番号 | 名前 | 学部学年 | 前所属 |
GK | 1 | 河邉花観 | スポ4 | 宮城・常盤木学園 |
DF | 4 | 大島瑞稀 | 社4 | 宮城・常盤木学園 |
DF | 34 | 三浦紗津紀 | スポ1 | 浦和レッズレディースユース |
DF | →73分 | 堀口佳織 | スポ4 | 千葉・幕張総合 |
DF | 3 | 奥川千沙 | スポ2 | 静岡・藤枝順心 |
DF | 24 | 渡部那月 | 社1 | 兵庫・日ノ本学園 |
MF | 7 | 高木ひかり | スポ4 | 静岡・常葉学園橘 |
MF | ◎6 | 松川智 | スポ4 | 大阪桐蔭 |
MF | 10 | 正野可菜子 | 社4 | 兵庫・日ノ本学園 |
MF | 8 | 山本摩也 | スポ4 | 世田谷スフィーダ |
FW | 11 | 川原奈央 | スポ3 | 兵庫・日ノ本学園 |
FW | →71分 | 平國瑞希 | スポ2 | 宮城・常盤木学園 |
FW | 32 | 山田彩未 | スポ1 | ジェフ千葉レディースユース |
FW | →45分 | 河野朱里 | スポ1 | 静岡・藤枝順心 |
◎はゲームキャプテン 監督は福島廣樹(昭45教卒) |
コメント
MF松川智主将(スポ4=大阪桐蔭)
――開幕戦勝利おめでとうございます。試合を振り返って
ありがとうございます。前半の前半に関しては、なかなか自分たちのペースをつくれず15分20分相手のペースになってしまって、そのまま先制されてしまったのでそこは課題かなと思って。逆に前半の後半からは自分たちの攻撃で流れをつくれたのでその点については良かったと思います。後半は、ちょっとペースが落ちてしまってなかなか自分たちの攻撃ができなかったので課題かなと思います。
――オフシーズンではどのような練習を行ってきましたか
全員一からということでフラット状態にして練習に取り組んできました。
――きょうの相手は昨シーズンの結果からも負けたくない筑波大でしたが印象は
やはり筑波大は前線に速い選手がいたり、全員で守備に入る部分ではとても強かったりするのでそこを打開できなかったというのがあります。
――先ほどにもありましたが開始早々、なかなかパスがつながりませんでしたが
やっぱり前半の後半は自分たちのペースでできたので、試合開始からそのようにプレーすることは可能だと思います。一人一人が自信を持って試合に入ることができればよかったのかな、と思います。一つ一つのトラップやパスの精度を上げて行かなくてはならないと思いました。
――後半最後まで積極的にシュートを打つシーンが見られました
0-0という気持ちで後半迎えよう、という話をしたので、やはりそういった気持ちの面で表れてきたのかなというのはあります。
――一方で最後まで危ないシーンも見受けられました。チームの課題としては
そうですね、やはり崩れたときに全体まで崩れてしまうというのが課題と思っていて。筑波大も勢いで結構最後の方来たので、自分たちは耐えてゴールに行く姿勢をもっと見せなくては、と思いました。
――開幕戦から1年生が多く出場していますが
そうですね。下の学年もプレーに長けている子がたくさんいるので、もっとチーム全体で上を目指して行かないといけないなと思います。
――ことしのチームとしての目標は
『日本一』です。
――主将としての目標や意気込みは
やはり試合に関しても、オフに関してももっと自分で声を出してチームを引っ張っていくというのを率先していきたいと思います。
――最後に、次節関東学園大への意気込みをお願いします
きょうの試合の課題を克服して、また1週間準備をして全員で勝ち進んでいきたいと思います。
MF山本摩也副将(スポ4=スフィーダ世田谷)
――今季のチームとしての目標は
大きく掲げているのは日本一ということです。自分が入部してから取ってないし少なからず責任は感じています。やはり強いワセダをもう一回復活させるために、ことしをその初めの年にしたいと思いますし、自分が最終学年として最高のかたちで終わりたいなというのが最大の目標です。
――リーグ戦開幕の相手は筑波大でしたが、どのようなことを意識して挑みましたか
シーズン前に1回対戦していて、少なくともチームの形や特徴は分かっていました。あらかじめスカウティングをしていたので、注意すべきプレーなどはありましたが、考えすぎずに自分たちのやりたいことをやれば勝てるなと思いました。
――前半の滑り出しは相手のリズムでしたが
スカウティングしていたのですが、何人かメンバーが変わっていましたし、筑波大も初戦ということで勢いもありました。食ってやろうという気持ちが感じられて、それに飲まれたというか、プレー面で押し込まれた部分があったので、そこは大きな課題かなと感じています。
――早い時間に失点もしてしまいました
筑波大は縦に速くて、ああいったかたちをつくられるのが怖いと分かっていました。それを分かっていた中で失点してしまったということは、DFだけのせいではないですし、チーム全体として失点については改善しなければいけないなと思います。
――その後、1点を返してからはリズムが良くなったと感じましたが、何か変化はありましたか
少し早い時間に点を取られたというのもあって、そんなに焦りはありませんでした。自分たちのかたちがうまくつくれない時間が長かったので、そこで可菜子(MF正野可菜子、社4=兵庫・日ノ本学園)が点を取ってくれて助かったし、あれでもう一度落ち着けたというか、あの1点は大きかったと思います。
――ご自身のシュートで2点目が生まれましたが振り返って
きょうは右サイドの可菜子とかとよく目が合ったし、良いかたちで抜け出せて、自分の思い通りのシュートが打てました。今季自分も得点を狙っているのでその中でも最低でも1点取れたのは良かったなと思います。
――山本選手は積極的に攻撃にも参加していましたが、意識していたことはありますか
自分が高い位置にいてボールを収めたり抜け出したりというのは求められているプレーだと分かっているので。攻撃だけではないですし、守備もしっかり入ることで後ろも助かるし、個人というよりはチームのために思いっきりプレーしようかなと思ってやっていました。
――きょう試合をしてみて新チームの完成度はいかがでしたか
先ほども言ったのですが、入りが悪いというのもあったし、エンジンかかるまでに時間がかかったというのがあります。また、初戦で失点してしまったということで守備面でも問題があるので、まだまだ完成度は低いと思います。その中でもことしの強みが出た場面があったので、それを継続してあとは課題をどう詰めていくかだと思います。
――ことしのチームの強みとは具体的にはどのような部分ですか
守備にも良い選手はいますが、ことしは攻撃で良い選手がすごくいます。攻撃のときに良いかたちでつなげてシュートに持ち込む場面が多いので。まずは守備からですが、そういった攻撃でアクセントをつけていくのが強みかなと個人的に思います。
――次節の関東学園大戦への意気込みは
どのチームもそうですが、ワセダを食ってやろうという気合がすごく高いと思うので、自分たちはそれを気にせずに、もう大学日本一のチームでもないし、チャレンジャーとして一戦一戦戦って勝ちたいと思います。
MF正野可菜子(社4=兵庫・日ノ本学園)
――開幕戦に向けて準備してきたこと
3月とかは走り込んできていたので、そこはしっかり他のチームに負けないということ。あとはまだチームが完成していないというところはありますが、個々の基礎といったところから準備はしてきました。
――初戦を終え、新チームの手応えはいかがでしたか
去年の課題でもあった入りに関しては、まだこれから戦っていく上で調整して行ったら良いのかなと思います。あとはチームメイトの動き方というのを、一人一人がもっと理解していってあげるべきかな、と感じました。
――1年生が多く出場されていましたが、下級生とのコミュニケーションに関しては
1年生には思い切りやって欲しいと思っているので、そういうところを声掛けしていけたら良いなと思います。
――オフシーズンの成果はどんなところに表れていましたか
自分たちのオフの期間でも一人一人が走り込んでいた人が多かったので、そこは出せていると思います。
――今季のチームの目標
全ての大会で優勝をするということは第一で、勝利の上に内容も伴えるチームを作り上げたいと思います。
――立ち上がりの課題はきょうの試合にも出ていましたが
1年生は公式戦が初というところもあり、緊張していたと思います。その中で動き出しであったり気持ちを出すことであったりができていない面があったと思います。ミスを恐れずしっかりやっていければ、勝てるのかなと思います。
――前半の失点シーンを振り返って
失点を取られる前でのミスであったり、失点以外でも自分たちのミスからカウンター気味に攻撃をされたりすることが多かったです。基本的に自分たちのミスをしっかりなくすということは、これからの勝利につながると思います。
――攻撃に関してはベンチから「広く」という声が多く聞こえましたが
攻撃でも得点を取ることなど、いくつか良い攻撃はできていたと思います。入りとかになると足が止まっていたり、受け手のサポートが少なかったりしていたのでそこは課題ですね。ボールの動かし方がゆっくりすぎたというのもあると思います。
――27分キーパーが弾いたボールを自身で決められていましたが、振り返って
あれは、ラッキーですね(笑)
――34分にはアシストをして得点につながりました、そのときについて
あれは狙い通りで、摩也さん(MF山本摩也副将、スポ4=世田谷スフィーダ)と目が合ったのですごく嬉しかったです。気持ちよくゴールへのパスができました。
――ディフェンスについて、足の速い選手が多く抜かれてしまう場面もありましたが
足の速い選手への対処として、カバーなどでしっかりつぶすという意味で体を当てることに関してワセダでそういうプレーをする選手が少ないというのもあります。これから上に上がって行くと足の速い選手は増えると思うので、しっかり対応出来たらなと思います。
――次節、関東学園大に向けて
試合に出るならばしっかりやらなければいけないし、今回の課題を考え直して次節に挑みたいと思います。
DF渡部那月(社1=兵庫・日ノ本学園)
――開幕戦勝利おめでとうございます。試合を振り返っていかがですか
前半は先制されたので苦しい時間帯が続いたのですが、前半のうちに点を取り返すことができて良かったと思います。
――デビュー戦でいきなりのスタメンでしたが
初めてで少し緊張したのですが周りの先輩が声を掛けてくれたので思い切りできました。
――自身の強みの部分はどういったところですか
サイドバックですけど、しっかりスピードを持ってオーバーラップをし、守備もしっかり戻ってするところだと思います。
――目標とする選手は
日本代表の内田篤人選手です。
――後半のプレーに関しては
後半は前半よりも上がる機会が多かったのでシュートまで持っていけたのは良かったのですが、しっかりそこを決め切れるように頑張りたいと思います。
――最後に次節に向けて抱負を
次もしっかり全員で勝利を目指してチーム一丸となって頑張りたいと思います。
FW河野朱里(スポ1=静岡・藤枝順心)
――本日がデビュー戦となりましたが
まだ自分のプレーが出し切れていないのですが、試合に出られてうれしかったです。
――前半はベンチでしたが、そこから見て先制されたときどのように思ったのでしょうか
先制されたのですが、時間もあったし自分的にはまだ逆転できるなと思っていました。
――スコアの変動が激しかった前半とは打って変わって後半は停滞した印象を受けました
後半になるにつれて体力が持たなくなって、集中力が切れてしまったので、もう少しゴールへの執着心を持って臨めばよかったと思います。
――積極的にボールに絡んでいたように思えましたがやはり意識してのことなのでしょうか
そうですね。自分は1年生でまだこれからなので、自分のプレーを出すためにもボールをもらわないといけないので、まずはボールを受けることから考えていました。
――緊張しましたか
いや、緊張より楽しみの方が大きかったですね(笑)
――高校との違いというのは感じましたか
高校よりスピードが速くて、タッチ数も少なくて判断を早くしないとボールを失うのでもっとボールを受ける前に周りを見ないといけないなと思います。
――デビュー戦を勝利で飾りました
うれしかったです(笑)
――攻撃の起点となった選手はどなただと思いますか
山本さん(MF山本摩也副将、スポ4=世田谷スフィーダ)と高木さん(MF高木ひかり、スポ4=静岡・常葉学園橘)だと思います。この2人がボールを持ったときは裏に行くって決めていました。
――今季はどのようなシーズンにしたいですか
まず、このチームに求められるようなプレイヤーになることと、もっと点をたくさん取ってチームを勝たせる選手になりたいです。
――最後に次の試合への意気込みを教えてください
次の試合は絶対に点を取りたいと思います。