【連載】『反撃のキックオフ』 第7回 小野田莉子主将×三田一紗代副将

ア式蹴球女子

 連載のラストを飾るのはチームを率いる主将と副将。DF小野田莉子主将(スポ4=宮城・常盤木学園)は誰よりも熱く鼓舞し、どんな時も強く前を向き続ける。新たな顔ぶれが多いDF陣を束ねるだけでなく、その左足から幾度となく好機を演出してきた。チームを最後列から支えるのはGK三田一紗代副将(社4=京都精華女子)。長いリーチと抜群の安定感で早大ゴールマウスを守り続けた。「動」と「静」、まさに対照的な二人がチームがことしのワセダをつくってきた。悲願の全日本大学選手権(インカレ)優勝に向け、カギを握るのはこの二本柱だ。

※この取材は12月28日に行われたものです。

「そしていまがある」(小野田)

小野田

――今季の振り返りからお伺いしていきます。新チームはどのような雰囲気で始まりましたか

小野田 3-5-2も初めてやるということで、まず関東女子リーグ戦(関東リーグ)が開幕するまでは自分たちのサッカーがどこまで通用するのかなということで不安な部分もありました。探りながらだったんですけど、そういう中でチームをつくってきたという感じです。

三田 きょねんの4年生が試合にたくさん出ていたということもあって、チームとしてもがらりと変わったんですけど、不安もあり楽しみもありというのは自分の中にはありました。

――1年生が定着したDFラインは特に新しい顔ぶれが多かったと思いますが

小野田 1年生の選手がレギュラーにも入ってくれて、特にきょねんはDFに4年生が多かったですし、また1からつくっていくっていう感じでしたね。

三田 不安は別になかったですけど、1年生が頑張ってくれてチームをつくっていくということで探り探りやらないとなというのは感じていました。

――主将、副将というのはどのような経緯で決まりましたか

小野田主将どうする?ってなった時に私がやろうかなって話して、でもそこですんなり決まるわけにはいかないので、一人一人誰を推薦するのかと推薦理由を挙げていって、という感じでした。結構大変だったよね(笑)。大変っていうか、何か重い雰囲気の中で、みたいな。ね、主将の後に副将も同じような感じで。

三田 自分はきょねん副将をやらせていただいていたので、その流れで自分もチームを引っ張っていかなきゃいけないなって思っていたので、自分も立候補でやりたいって伝えました。

――お二人はそれぞれどのような主将像、副将像を描いていましたか

小野田 目指している人みたいなのはなかったんですけど、ア女ってみんな自発的にできる子たちが集まっていると思うので、そんなに自分が何かするっていうのはないと思うんですけど、やっぱり気持ちとかそういう面で誰よりも一生懸命取り組もうと思ったし、プレーでも引っ張っていきたいと思いました。あとは、声を出せるタイプだと思ってたから、試合の中でも気持ちの面から引っ張っていきたいなって思っていました。

三田 莉子(小野田選手)みたいにそんなに声を出して引っ張るタイプではなかったので、プレーで一つ一つ大切にしていくという部分をすごく強く思っていて、きょねんからGKの1番上ということもありましたし止められる部分はしっかり止めていこうかなというのは思っていました。

――先ほどDFの面で探り探りというお話もありましたが、関東リーグは4連勝で幕を開けました。チームとして良いスタートが切れたのではないでしょうか

小野田 とりあえず春先から取り組んできたことがかたちになったというか、通用するってことは分かったのでそういう部分では自信になったんですけど、それと同時に失点も多くてDFラインとしては結構苦しかったというか、勝てはしましたけどDFとして悔しい試合は結構ありました。

三田 一緒な感じですけど、開幕してから4連勝できたっていうのはシーズン始まる前にTRMも結構多くてチームで合わせる部分があって、それも大きかったのかなと思います。

――夏には関東大学女子リーグ戦(関カレ)が始まりました。開幕戦(○3-2国士舘大)は混戦となりましたが、お二人ともピッチ外で見られていていかがでしたか

小野田 開幕4,5日前にケガしちゃって自分でもびっくりしてたんですけど(笑)、それに関してはチームに申し訳ないって思ってました。結構私たちってそういうプレッシャーが懸かった試合の中で体が硬くなってしまうことがあって、その開幕戦も典型的な例かなと思います。けど、ああやって最後勝ち切れたというのは力の差だと思うので、最終的には良かったと思いますけど、もっと強くならなきゃいけないなというのは開幕戦を通じて思いました。

三田 自分もあんまり調子が良くなくて外されてたというのがあって、4年目にして開幕戦に出られないというのはすごく悔しかったですし、見ててもひやひやする部分が多かったというか不安は大きかったですけど、チームが一つになった結果がああやって危ない中でも勝ち切れて良かったのかなと思います。

――その後お二人ともスタメンに復帰し、チームとしても順調に勝ち星を重ねていきました

小野田 いままでやってきたことをそのままやろうというのがあって、でもさっきも言ったように失点は多いという。

三田 怒られたよね。

小野田 DFとしては結構傷つきました。攻めてる中でカウンターを受けてしまって数的不利な状況での失点であったり、あとはハイボールの処理のミスで失点したりしました。あとはDF陣だけの問題じゃなくて、チーム全体的な守備意識という問題が合って、みんな点決めたいという気持ちが強くてちょっと守備に対する意識が薄かったのかなというのはありました。

――その中で皇后杯関東予選がありました。本選での優勝を目指していた中で、予選での2回戦敗退というのは悔しい結果になってしまったと思いますがいかがでしょうか

小野田 本当に皇后杯に懸ける思いは強くて、私自身大学に入った時に「皇后杯で結果を出したい」という気持ちがすごく強くて、でも1~3年生ではいつも3回戦で負けてしまってことしこそという気持ちがあったので、予選で開けてしまったというのは本当に不甲斐ないと思いました。試合内容としてもトーナメントという焦りもありましたし、自分たちのサッカーをかたちにできないまま飲まれてしまったのかなというところが大きくて、内容としても結果としてもすごく悔しかったです。

三田 莉子の言っていることが全てだと思うんですけど、自分としても2,3年生と皇后杯に出してもらって、その試合がなくなってしまう、なでしこリーグのチームと戦う機会がなくなってしまうというのがやっぱり寂しいというか、学生のうちにできる最後のことだったと思うので、その機会を自分たちの手で自ら無くしてしまったというのが、後輩たちにも申し訳ないですし自分としてもすごく悔しい大会になったと思います。

――「すぐには切り替えられなかった」という声が多くあった中で、主将・副将としてどのようにチームを立ちなおしていきましたか

小野田 その当時は本当に切り替えられなくって、一人でいると本当に落ち込んでしまったので、いさ(三田選手)にLINEして「ちょっと本当に無理だわ」って言ってご飯に行きました。玲奈(DF堀川、スポ4=ジュブリーレ鹿児島)も誘って主将・副将・主務みたいな感じで試合を振り返ったりこれからもっとどうしていこうっていうのは話しました。

三田 自分もその試合負けたすぐっていうのは実感があまりなくて、日が経つことにすごく悔しい思いが出てきて、さっき言ったみたいにご飯行ったこととかがあって切り替えられてチームとして1からつくっていかないとなっていうのはすごく感じました。やっぱり4年生としてもその大会はすごく大事でしたけど、そこからどうチームをつくっていくのかというのがすごく大事だなって思いました。

――その後関カレが再開しました。悔しさを晴らした監督学園大戦(○6-0)や、宿敵・日体大に0-1で惜敗という試合がありましたが

小野田 4バックになって、関東学園大戦はうまくいきましたけど、日体大戦は本当に自分たちが取り組み始めたばっかりでDFとしては結構悩みながらの部分がありました。ラインコントロールも意識しながらの中で危ないシーンをつくってしまったりもしたので。そういう意味で、あの試合(日体大戦)の負けというのは本当に悔しいですね。そのとき(3バックから)変えていなければとも思うし、もっと早く(4バックに)取り組んでいたらとも思いますし、まあどっちもなんですけど。けど、あの負けがあったからこそ、いま取り組んでいるサッカーのかたちがあるっていうのもあると思うので、次やったら勝ちます!(笑)

三田 関東学園大との試合は勝つしかなかったっていうか、リベンジとして絶対にやられちゃいけないなというのは感じていたので、前線の選手がすごく頑張ってくれました。

小野田 あの試合はDFとしてそんなにやることなかった気がする。

三田 そんなに攻められずという試合だった気がする。日体大戦は個人的には絶対に負けたくなかったですし、点を入れられたのは悔しかったですけど、莉子も言っていたようにそこからチームのやりたいサッカーというのが確立できて負けがあったからこそという部分もあると思います。もちろん質は高めていかなければいけないですけど、その負けを機にチームができているのかなと思います。

守備での貢献に加え、左足からは攻撃につながる正確なクロスも供給する小野田

――関カレのタイトルは逃した中で、関東リーグは優勝しました。関東リーグ後期を振り返ってみていかがですか

小野田 残りの試合っていうと、メニーナ(日テレ・メニーナ)に後期も負けてしまって、1年間で2試合やるうち2回とも負けるのは本当に不甲斐ないなって思いました。1試合目も2試合目もなんですけど、崩されて失点してしまったというのもあるし、自分たちの力を出し切れたのかっていうとちょっとふわっとする部分はあると思うので、それは結構試合出ていない人にも「ちょっと気持ち入っていないように見えた」という風に言ってもらったので、また見つめ直すきっかけになりました。

三田 メニーナと戦うとすごくチームが崩れるというか、やりたいサッカーが崩れてきちゃうっていうのがありました。相手はすごく小さいですけどやってくるサッカーも相手の方が明確でしたし、そこで自分たちが崩れてしまうっていうのが弱さでした。同じ相手に公式戦で2試合とも負けてしまうっていうのは、コーチの人にも言われたんですけど、絶対にあり得ないことっていうかやってはいけないことだなっていうのはすごく強く感じました。

――ことしを振り返ってみた中で、一番印象に残っている試合はありますか

小野田 一番悔しかったのは皇后杯の関東予選(●0-2関東学園大)だけど、チームとしてターニングポイントになったのは日体大戦(関カレ第9節、●0-1)かなと思います。さっきもいさが言ったけど、いままでやりたいサッカーや監督・コーチの考えであったり選手間での意見も、気づかないうちに少しずつずれてた部分があって、けどそれが日体大と戦ったことで話し合う機会ができたし、もう一回自分たちのやることが明確になってそしていまがあと思っています。いまいいかたちでインカレに向けてできていると思うので、そういった意味では、負けてしまったけど変わる良いきっかけだったと思います。

三田 自分としてもちろん交互杯の関東学園大戦は悔しかったですけど、一番印象に残っているのはやっぱり日体大戦かなと思っていて、負けてしまって悔しかったですけど、やっていてすごく楽しかったなっていうのがあります。やりたいことを試合前にもハーフタイムにも話していてそれが試合中にできている部分もたくさんあって、でもできない部分もたくさんあってそれをどう改善していこう、どうやったらうまくいくんだろうっていうのをすごく感じられた試合だったので、一番印象に残っています。

――日体大というのは、きょねんの関カレ最終節では主力を温存してきた中でワセダが勝ち優勝を決めたという試合もありました

小野田 でもきょねんの皇后杯予選で戦った時も、お互いガチンコで戦って負けてるし、同じ0-1で。そういった面でも悔しかったですね。

チームメイトに「助けられている」(三田)

三田

――お互いの第一印象は覚えていますか

小野田 えー(笑)。

三田 莉子は、常盤木(学園のメンバー)でごん(MF権野貴子、スポ4=宮城・常盤木学園)とあず(FW一原梓、スポ4=宮城・常盤木学園)と3人でいて、その3人が自分的にはすごく怖くて。3人で固まっているし、『常盤木』っていうブランドネームがあって(笑)。しかも3人とも結構(背が)大きいので、そう思っていました。

小野田 (三田選手は)「喋んない人」っていう印象しかないです(笑)。(背が)大きいのに、すごい静かみたいな。大きいけど、(存在が)薄いみたいな(笑)。

――練習の場で初めてお会いになったのですか

小野田 はい。多分、結構仲良くなるまでに時間かかったんだよね。

三田 ね。

小野田 静かだから(笑)。喋んないから(笑)。

――そこから4年間一緒に過ごしてきて、三田選手から見て小野田選手はどんな方ですか

三田 サッカー面ではすごく頼りにしてますし、DFでも一番体を張って守ってくれるので。それは1年の時から感じていて、すごく頼りになると思ってました。主将としても、一人の人間としても、熱くて一緒に(サッカーを)やっていてすごく楽しいなと思います。オフ面では、ふざけてばかなことしかしないんですけど、チームを盛り上げてくれるという点では一番良い人だなと思います。

――逆に、小野田選手から見た三田選手はいかがですか

小野田 私は「勝ちたい!」と思うと、試合中でもそれしか見えなくなっちゃったり、かっとなっちゃったりもしちゃうんですけど、その時に後ろから(三田副将の)「落ち着け」っていう声が自分を抑えてくれるというか。結構良いバランスでやれてるなと思います。1年生の頃は、(三田副将が)当時の監督に「声出さな!」としか言われてなかったんですけど、今は自分から(声を)出すようになったしね。

三田 (笑)。

小野田 すごくチームを助けてくれてると思います。練習中とかもフィールドの雰囲気がたるんでいたらキーパーから喝が飛んできます。成長しましたね、三田さんは(笑)。

――他の4年生からも、三田副将が声を出すようになったという話がありました

一同 (笑)。

三田 絶対ちゃかしでしょ。

小野田 最初がマイナスすぎて声を出すようになったのがめっちゃ目立つ(笑)。

――1年間主将・副将としてチームをまとめていくなかで苦労されたことはありますか

小野田 これ、就活の面接でも聞かれたわ(笑)。でも、本当にないっていうか(笑)。結構能天気で過去は過去って考えちゃう人だからあんまり大変だって思ってないし、思ったとしても忘れちゃうかもしれない。みんな良い子だし(笑)。私は結構適当な人間なんですけど、4年生はまめな人も多いし陰で支えてくれる人がいっぱいいて、助けられてるなって思います。そのおかげで自由にやらせてもらってるというか、こんな感じでできてるなって。

三田 助かってるよね。

小野田 良いバランスだと思います。

三田 本当に他の人に助けられてるなと思います。自分も大変なことはあんまり感じてないです。

ワセダのゴールを守り続けてきた三田。苦しい時の声掛けにチームも勇気づけられた

――ピッチ外での部の雰囲気はいかがですか

小野田 本当にうるさい!特にこいつ(隣のMF山本摩也、スポ3=スフィーダ世田谷)が!

三田 (笑)。

小野田 いや、もう本当にうるさいです。練習とか試合が終わるといつもテンションが高くなっちゃって、行きの更衣室ではそんなにうるさくないんですけど、帰りは本当にうるさいです。あんまりみんなに言えるような会話じゃないですけど(笑)。

三田 本当うるさいよね(笑)。

――クリスマスパーティーもされたそうですね

小野田 おとといやりましたね。ケーキを自分たちで作って食べて、あとビンゴ大会して。各自500円でプレゼントを用意して、それが誰に当たるかなーって感じで。結構かわいいことやってるよね(笑)。

三田 かわいいよね、意外に(笑)。

――オフはチームメイトと過ごされることが多いんですか

小野田 多いですね。他の友達とも遊ぶけど、一番(遊ぶの)はやっぱりサッカー部の子ですね。みんなそうだよね、多分。ア女の子、友達少ないんで(笑)。

三田 ア女で固まっちゃうからね(笑)。

小野田 友達全然いないんですよ、みんな(笑)。だから、ア女で固まるしかないっていう(笑)。

――どんなことをして過ごされるんでしょうか

小野田 ブラブラしたり。きのうは神社に必勝祈願に行ってきました。

――どちらの神社に行かれたんですか

小野田 築土神社です。

三田 絶対分かんないでしょ(笑)。

小野田 九段下にある。

三田 そう、九段下にある。

小野田 絵馬も書いて。しかもこの時期だからもう全部(絵馬が)取られちゃってて、自分たちの絵馬が一個だけぽつーんって(笑)。

――4年生の仲はいかがですか

小野田 良いんじゃないですか(笑)。

三田 良いと思う。はい、バランスが良いと思います、すごく。

小野田 仲良いね。

――チームメイトの中で憧れていたり、尊敬している人はいますか

小野田 尊敬とか言うの嫌だな(笑)。いまは自分たちが一番上(の学年)だから尊敬とかちょっとあれですけど、1年生の頃だったらその当時の4年生のキャプテンの志帆さん(高畑志帆、平24教卒=現浦和レッズダイヤモンズレディース)は同じDFとしてすごいなって思います。戦う姿勢もすごいし、技術も確かなものがあって。こういうDFになりたいなっていうのはあります。

三田 自分は尊敬っていうか、やっぱりGKの2人、山田(GK山田紅葉、スポ2=東京・十文字学園)と花観(GK河邉花観、スポ3=宮城・常盤木)には助けられてますし、支えられてるなっていうのはすごく感じてて。やっぱり的確なことをやってくれるのは、自分にはないことなので。感心してるというか、良い後輩に恵まれたなと思います。

――ア式とア女で4年生同士の飲み会をされたそうですが

小野田 今まで本当にそんなに仲良くなくて、やっと飲み会でもやろうってなって。けど、(飲み会で)やったここと言えばひたすら飲まされたくらいですね(笑)。あとは、勝手にア女が付けてる(ア式の選手の)あだ名のことを話しましたね(笑)

――ア式の対談でも、そのあだ名が話題になりました(笑)

小野田 だいたい摩也か智(MF松川智、スポ3=大阪桐蔭)が付けてるんですよね(笑)。

――お二人はそれぞれスポーツ科学部と社会科学部に所属されていますが、卒論のテーマは

小野田 『女子サッカー選手の中学進学時の競技離れについて』です。

三田 真面目やん(笑)。

小野田 はい、真面目な感じで(笑)。茉莉花(DF大島茉莉花、スポ4=鹿児島・神村学園)は、高校から大学(進学時の競技離れ)。私は小学校から中学(進学時の競技離れ)。しかも茉莉花は同じゼミで、(卒論テーマが)似ちゃったっていう(笑)。

三田 自分は社学なので、スポ科みたいにしっかりした卒論はないんですけど。ゼミ内提出みたいな、ゼミだけの卒論みたいなのがあって、一応年内に提出してくださいみたいな感じです。テーマは、異文化コミュニケーションゼミなので、スポーツにおけるセクシュアルマイノリティーについて書きました。

――それをサッカーに生かしたりということは

三田 ちょっと難しいかな~(笑)。

一同 (笑)。

小野田 スポーツ科学部のトレーナーコースとかだったら色々(サッカーに生かせることが)あると思うんですけど、私もビジネスコースだからちょっと生かすのは難しいかなって感じですね(笑)。

「私たちが守ればいい」(小野田)

小野田主将の最終ラインからの鼓舞はチームを勢いづける

――インカレに向けてのいまのチームの雰囲気はいかがですか

小野田 いいと思います。4年生でも話していて、ミーティングも重ねていていまのチームの状況はどうだろうねとなった時に、結構いい感じできているなということはあります。あとはインカレとなると気持ちの部分ということがすごく大きいと思っていて、月に1回、選手だけでミーティングをしているのですが、だいたいサッカーの課題だったり、私生活の部分だったりいろいろと出すのですが、今回はどのグループも気持ち的な部分が多くて、サッカーに関しては質を高めていくしかないと思うので、あとは気持ちの面でどういった準備をしていくのか、そこが差をつけられる部分だと思うので、状況はいいとは思いますがもっと高めていける部分もあると思うので、頑張ります。

三田 練習試合でも結構いい結果を残していて、そういった面でもチームの雰囲気はいいのかなとはすごく感じています。莉子も言っていたように、まだまだ高められる部分や、合わせないといけない部分はまだまだたくさんあるので、あと2週間切ったくらいですが、もっともっと質を高めてインカレに向けて頑張りたいなとは思います。

――トレーニングマッチの中で見えてきた具体的な成果や自信のついた部分、また課題などは見つかりましたか

小野田 私自身DFなのでDFの話になってしまいますが、4バックになってラインコントロールに取り組んできた中で、やっと揃ってきたなという感じはあります。いままでは変に上げて、裏を取られてしまう失点というかたちがあったのですが、そういう無理なプレーもなくなって安定したラインをつくれてきたと思っています。結果として無失点の試合が最近すごく多くて、そこは自信になっています。

三田 前線の選手はうまい選手が多いので、細かく前でつないでゴールまでいけるという部分は増えましたし、サイドの速い展開からの得点もあり、バリエーションじゃないですが、前線の選手が上手くつないでということは増えてきて、そこは絶対に通じる部分だなとはすごく確信しています。でも、やっぱりまだシュートは足りないかなとはGKから見ていてすごく思います。

――昨年1戦目での敗戦となりましたが、いまあの試合を振り返ってみていかがですか

小野田 多分自分たちの中のどこかで変な自信があって勝てると思ってしまったし、開始5分で点を決められたということもあって、そういったところの中での気の緩みというのが結果につながったのかなと思います。特にきょねんは試合に負けることもあまりなくインカレに入ったので、自信を履き違えたというかそういった部分はあったのかなとは思います。

三田 実際に出ていて、いまでも福島監督(福島廣樹監督、昭45教卒)にあの試合はどうだったと言われて、心が痛いほどあの試合は自分はやってはいけないミスもしましたし、絶対に負けてはいけない試合でそういった試合をしてしまったということがすごくあります。あの試合があったからこそいま自分がどう頑張っていくかとか、チームとしてやっていかなければいけないことが明確となっていて、自分の中でも頑張る糧ではないですけど、頑張らないといけないという思いにつながっている感じはします。

――今インカレでのワセダの注目選手はいますか

小野田 ぶー(MF高木ひかり、スポ3=静岡・常葉学園橘)です。本当にうまいと思うし、ぶーが攻撃のリズムをつくっていくというかチームを動かしていくポジションでもあるし。うまいのに緊張しちゃうかわいい子なので、自分に自信を持ってやってくれたら結果は残ると思うので、期待しています。本当にうまいから。

三田 私はゴン(MF権野貴子、スポ4=宮城・常盤木学園)です。苦しい時に点を決めてくれるし、泥臭く最後までゴールを狙ってくれるので、後ろから見ていてもゴンはやってくれると思っていますし、そういった期待を込めてゴンです。

小野田 ゴンが決めればいいんだよね。

三田 そう。

小野田 私たちが守ればいいからね。

昨年に続き副将を務めた三田。ラストイヤーに頂点を極める

――組み合わせが発表されましたが、感想はいかがですか

小野田 どこがいいとかじゃないですけど、いいことはいいですよね(笑)。

――2回戦では九州共立大か国士舘大のどちらかとの対戦となりますが、国士舘大に苦戦したこともあると思いますが何か意識することはありますか

三田 国士舘大は勢いがあるので、その勢いに乗らせないということが第一ですし、ぎりぎりの試合をしてしまった開幕戦のようになるのではなくて、余裕を持って勝てるようにはしないといけないなとは感じています。

小野田 そうですね。しかもあの試合に私たち2人は出ていないので、しっかりと出てチームの勝利に貢献するというか、見ていて思っていたこととかを表現できたらなとは思います。

――インカレの中で特に意識するチームはありますか

小野田 ないです。ないというかどこも一緒かなという感じですね。

三田 一緒ですね。どのチームもインカレに懸ける思いは一緒というか、その試合に懸けてくるので、一戦一戦頑張りたいなとは思います。

――いまのチームの強みと弱みはありますか

 小野田 弱みという部分では、大事な試合で焦りが出てしまって、自分たちのやりたいサッカーができずにボールを蹴ってしまう部分だと思いますが、最近の練習試合を通して改善しつつあるといった感じです。サッカー面に関しては、一人一人確かな技術はあるということで、もちろん足元の技術がある選手も多いですし、一人一人に長所があってそのレベルが高いのがア女かなと思います。あとはサッカー外でも本当にいいチームだと思います。本当に楽しい。最近長くても18日までだと考えると、寂しいですね。

三田 弱みは莉子も言っていましたが、ここ一番という時に勝ち切れないというかやりたいことができないということと、シュートを打ち切れないとうことですかね、毎試合毎試合自分が思うことは。ゴールまでいけているのに、シュートを打ち切れないとかが多いので、前線の選手はいい選手が多いので本当に打ち切ってほしいです。強みは莉子とほぼ同じで、技術もありますし体力で走り負けないということが、ア女の良さかなと思っています。学年問わず仲が良いといったところもいいところかなと思います。

――ことしはトーナメントを経験した回数が少ないですが、トーナメント戦ということに関してはいかがですか

小野田 負けられないし、ことしだったらすぐPKになってしまうので、そういった部分ではプレッシャーもあるのですが、いかに自分たちを信じて耐えてやれるかだと思うので、そこらへんはもう確認してある部分なので、大丈夫かなと思います。

三田 自信を持ってやれば、絶対にできるチームだと思うので、そこはみんなを信じて戦うしかないかなとは思います。

――最後にインカレに懸ける意気込みをお願いします。

 本当にサッカー人生最後の大会で、これまでいろんな人に支えられて何年間もサッカーできたので、感謝していると口で言うのは簡単だと思いますが、本当に感謝しているなら自分はどう行動したという時にそれだけの努力はしたと思うし、もし優勝できなかったら何かが足りないということで、どこかの人よりも何かが劣っていたということだと思うんですよ。だから、そういった面でも誰にも負けたくないというか、感謝の気持ちを伝えるには優勝しないといけないと思うので、本当に恩返しの気持ちを持ってやっていきたいです。

三田 これまで悔しい思いしかしていないので、4年目でいい結果を残すことはもちろんですが、これまでやってきた中でいいところを見せられていないということもありますし、莉子も言っていたように支えてくれている人もたくさんいるので、その人に感謝を伝えるために優勝ということが一番あると思うので、このチームがすごく好きですし、離れるのがすごく寂しいですが、その離れないためにもというかどのチームよりも長くサッカーができるように、優勝して最後笑って終わりたいと思います。

――ありがとうございました!

(取材・編集 稲満美也、栗田麻里奈、芦川葉子)

最後のインカレに向け、意気込みを色紙に書いていただきました

◆小野田莉子(おのだ・りこ)(※写真右)

1992年(平4)7月28日生まれ。身長169センチ。宮城・常盤木学園出身。スポーツ科学部4年。弾けるような笑顔でチームの中心にいるのはこの人。プレー面においても、どんな劣勢に立たされようと自ら声を出し盛り上げる姿はまさに『闘将』。大学卒業後は一般就職をされるそう。サッカー人生最後となる大会を笑顔で締めくくるべく、必ずやチームを日本一に導く。

◆三田一紗代(みた・いさよ)(※写真左)

1993年(平5)3月16日生まれ。身長169センチ。京都精華女子高出身。社会科学部4年。昨年まではなかなか声を出せなかったという三田選手。最終学年となったことしは意識して声掛けをするようになったそう。普段は穏やかに笑っている印象が強い三田選手ですが、チームへの想いは人一倍。長年ワセダのGKを務めチームを最後列から見てきたからこそ、ことしのインカレに懸ける気持ちは誰よりも熱い。