ことしもこの季節がやってきた。皇后杯全日本女子選手権(皇后杯)本戦出場のための2枚の切符を懸けて争う関東予選。その大事な初戦の相手は、優勝候補筆頭の横浜FCシーガルズ。公式戦での対戦経験のない相手であったが、序盤から積極的に攻撃を仕掛け前半のうちに2点を奪い折り返す。後半、一瞬の隙を突かれ失点するものの、直後にFW川原奈央(スポ2=兵庫・日ノ本学園)のゴールで3-1とし、試合を決める。見事初戦突破を果たした。
少ないチャンスを決め切り先制点を挙げて喜ぶ正野
朝早くの試合ということもあり、コンディション面で不安要素を抱えたワセダ。「強い気持ちをもって戦った」(DF小野田莉子主将、スポ4=宮城・常盤木学園)という言葉の通り、序盤から積極的に攻撃を仕掛ける。課題として挙がっていた立ち上がりを克服し、15分に先制点を決める。ゴール前の混戦からMF正野可菜子(社3=兵庫・日ノ本学園)が難しいボールを押し込んだ。その後も攻撃の手を緩めないワセダは立て続けにゴールを狙いにいく。迎えた34分、DF奥川千沙(スポ1=静岡・藤枝順心)のFKを、MF高木ひかり(スポ3=静岡・常葉学園橘)が頭で合わせゴール。前半を通して相手にシュートを打たせることの無いまま、前半を2-0で折り返す。
後半立ち上がりは、前半で見られた勢いがなかなか見られない。ボールロストの回数が増えると中盤での激しい攻防に勝てず、相手にボールを回される時間が続く。劣勢を強いられていたワセダであったが、安定した守備でゴールを死守。徐々に試合の主導権を取り戻し、相手陣内に攻め込み始める。しかしその直後、79分に相手にカウンター攻撃を許し失点。2-1という危険なスコアの状況下、ピッチ上にも不穏な空気が漂う。その空気を一蹴したのが、川原であった。MF山本摩也(スポ3=スフィーダ世田谷)が放ったシュートを相手GKが弾いたところに、素早く反応した川原の強烈なボレー。「失点直後だったので、絶対に決めてやろうと思った」(川原)と語るエースの右足が、チームに勢いを取り戻した。その後は集中力を取り戻した守備陣が相手に自由にプレーをさせず、まだまだ物足りないと言わんばかりに相手陣地に攻めこむ。決して守りに入ることなく、最後まで攻撃の意識を絶やさなかったイレブン。皇后杯の本選出場に向けて、大事な初戦をものにした。
劣勢を断ち切るダメ押し点を決めた川原
「1試合も気を緩められない試合が続く」(小野田主将)という言葉に表れるのは、負けられないというプレッシャーの中でも、強い気持ちを持って戦おうという固い決意が見られたこの試合。連戦という日程的にも厳しい状況ではあるが、見据えるのは関東予選優勝のその先、『皇后杯優勝』という野望を実現することだ。
(記事 橘高安津子、写真 芦川葉子)
スターティングメンバ―
皇后杯関東予選1回戦 | ||||
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早大 | 3 | 2-0 1-1 |
1 | 横浜FCシーガールズ |
【得点者】(早)15正野、34高木、80川原 |
早大メンバー | ||||
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ポジション | 背番号 | 名前 | 前所属 | 学部学年 |
GK | 1 | 三田一紗代 | 京都精華女子 | 社4 |
DF | 3 | 大島茉莉花 | 鹿児島・神村学園 | スポ4 |
FW | →78分 | 一原梓 | 宮城・常盤木学園 | スポ4 |
DF | ◎4 | 小野田莉子 | 宮城・常盤木学園 | スポ4 |
DF | 17 | 堀川玲奈 | ジュブリーレ鹿児島 | スポ4 |
DF | 12 | 大島瑞稀 | 宮城・常盤木学園 | 社3 |
MF | →75分 | 山本摩也 | スフィーダ世田谷 | スポ3 |
DF | 23 | 奥川千沙 | 静岡・藤枝順心 | スポ1 |
MF | 6 | 松川智 | 大阪桐蔭 | スポ3 |
MF | 7 | 高木ひかり | 静岡・常葉学園橘 | スポ3 |
MF | 10 | 正野可菜子 | 兵庫・日ノ本学園 | 社3 |
MF | 8 | 権野貴子 | 宮城・常盤木学園 | スポ4 |
FW | →38分 | 平國瑞希 | 宮城・常盤木学園 | スポ1 |
FW | 11 | 川原奈央 | 兵庫・日ノ本学園 | スポ2 |
◎はゲームキャプテン 監督は福島廣樹(昭45教卒) |
コメント
DF小野田莉子主将(スポ4=宮城・常盤木学園)
——皇后杯関東予選初戦突破となりました
相手が力を持っているチームだということは試合前から分かっていたので、強い気持ちを持って戦った結果勝つことができて本当に良かったと思います。
——気持ちの強さというのは立ち上がりから出していけたのでしょうか
もともと立ち上がりというのが反省点にあっていつも通り気を付けて入ったというのもそうですし、気持ちや運動量の面で上回ることができたから前半は主導権を握れたんじゃないかなと思います。
——MF正野可菜子選手(社3=兵庫・日ノ本学園)が押し込み、MF高木ひかり(スポ3=静岡・常葉学園橘)が追加点を挙げ2-0で前半を折り返しました
いつもと違ってつなぐようなサッカーはできなかったんですけど、相手の背後が狙えるなというのはみんな試合中に感じていたと思うので、シンプルな展開からチャンスをつくれていたと思います。
——後半始めは相手に攻め込まれる時間もありました
相手にファーストやセカンドボールを奪われ、なかなか自分たちがボールを持てずに守備に回る時間というのが多くなってしまったかなと思います。
——その流れから失点を喫してしまいましたが振り返って
千沙(DF奥川、スポ1=静岡・藤枝順心)が対応していたんですが、それに対して両SBのわたしと玲奈(DF堀川、スポ4=ジュブリーレ鹿児島)がもっと絞ってカバーに入っていたら防げた失点だったと思います。3枚だからDF同士の距離はあると思うんですけどもっと守備の意識を持って、3枚でもしっかり守っていきたいです。
——相手に持たれる時間が長く、これまでとは全く異なる試合展開だったかと思います
確かにポゼッションサッカーというのが自分たちのスタイルなんですけど相手によって対応していきたいと思いますし、相手に持たれた中でもしっかりと最後の部分は崩されないというのをDFとしてはやっていきたいと思っています。特に決まったサッカーというものはないので、グラウンド状況や相手に対応してやっていければいいかなと思います。
——トーナメントであったり朝早くからの試合ということで、いつもと違った緊張感があったのではないでしょうか
緊張しました、本当に!初戦からいきなり強い相手だったのでなかなかハードなトーナメントに入ったと思うし、これからも1試合も気が緩められないかなと思います。
——初戦からいきなり強豪の横浜FCシーガルズとの対戦でしたが相手の印象は
なでしこJAPANで経験している選手がいたりなでしこリーグ出身者がすごく多いのて、大学生とは違って大人なサッカーをしてくるかなという印象を受けました。
——今大会で最も意識しているチームは
特に意識しているチームはありませんが、これからは関東リーグで戦ったチームが増えてくるのかなと思っています。トーナメントなので一戦一戦本当に大事にしていきたいと思います。
——連戦となりますが、あすの2回戦に向けて
いままで走り込みをしてきてフィジカル面やメンタル面というのはチーム全体で高めてきた部分だと思うので、連戦ではありますがそういう戦う姿勢という部分で相手に勝っていきたいと思っています。
MF高木ひかり(スポ3=静岡・常葉学園橘)
――きょうの試合を振り返って
皇后杯関東予選の初戦ということで、結構緊張していた部分もありますし、相手にはなでしこ経験者とかもいて強いというのは聞いていたので気を引き締めて、試合の入り方からいけたと思います。
――相手の印象は
個々の技術が優れていて、連動して崩してくる部分が多いなという印象も受けましたし、守備においてもいろんな人が声をかけていて素晴らしいチームだと思いました。
――相手はワセダより身長の高い選手が多かったように思われましたが何か特別に意識したことはありましたか
セットプレーが得意だと思っていたのでそういうところをつぶしていこうと思ってプレーしました。
――普段の試合とは異なり、データの少ない対戦相手でしたが
冬に練習試合をさせていただいて、そこでチームプレーをしていてプレーの特徴はわかっていたので全体的にそういう感じのチームで崩してくる、ということをみんなで把握して臨みました。
――いつもよりボールを回された試合展開でしたが
回してくるっていうのはわかっていたので、守備をして点を入れさせないことを意識して1点に抑えられたのはよかったのですが、ミスからの失点だったので防げられたのかなと思います。
――得点シーンを振り返って
裏が空いていたというのもありますし、知沙(DF奥川知沙、スポ1=静岡・藤枝純心)がいいボールを出してくれたので合わせるだけでした。
――2日連続での試合となります。意気込みをお願いします。
疲れてるなかでの試合だと思うのでチーム一丸となって来てない選手のためにも頑張りたいと思います。
MF正野可菜子(社3=兵庫・日ノ本学園)
――きょうの試合を振り返って
結果的に勝てたことは良かったのですが、グラウンドの状況もあるのですが蹴るばっかりになってしまったので、そういった中でもア女のサッカーができたら良かったと思います。
――相手の印象は
あまりデータがなく挑んでみたのですが、つないでくるっていう話をよく聞いたので中盤である程度潰すことができたのですが、できなかった時間帯もあったのでそこは課題かなと思いました。
――普段の試合とは異なり、データの少ない対戦相手でしたが
つないでくるチームということで前線からのプレスでどんどん潰そうという意識で臨みました。
――得点シーンを振り返って
触っただけだったので、パスを出してくれた権さん(MF権野貴子、スポ4=宮城・常盤木学園)に感謝です(笑)。
――終了間際の失点シーンを振り返って
無失点で終えたら良かったのですが、そこの集中力であったり声掛けというのはまだまだかなと思います。次の試合に向けて、というよりあしたなのですが改善していきたいです。
――2日連続での試合となります。意気込みをお願いします
ピッチが悪いというのもあるのですが、その中で勝つことを目標に自分ができることをしていきたいです。
FW川原奈央(スポ2=兵庫・日ノ本学園)
——きょうは関東予選の初戦でしたが、どのような気持ちで臨みましたか
やはり負けたら終わりなので、絶対に点を決めるということを念頭に置いて、立ち上がりから集中してチーム一丸となって戦おうと思っていました。
——立ち上がりから攻めている印象でしたが、その点についてはいかがですか
攻めていたんですけど、前に蹴ってしまうというところがあってなかなか収まりきれなかったので、そこは次に向けて改善していかないといけないと思います。
——きょうは朝早い時間からの試合でしたが、なにかコンディション面に影響はありましたか
夏休みは昼からの練習や試合が多かったんですけど、しっかりと朝の試合に向けて準備できていたので良かったと思います。
——3点目のシーンを振り返っていかがですか
失点直後でしたし、2-1というスコアは何が起こるか分からないので、絶対に点を決めようと思ってました。
——相手にボールを持たれていた印象でしたが
相手の個人の技術とかが高くてボールを回されてたんですけど、あまり怖いプレーが無かったので、焦って飛び込まないようにして、しっかり対応していくということをハーフタイムにチーム内で話していました。
——きょう見つかった個人的な課題とチームとしての課題はありますか
個人の課題は、もっと積極的に攻撃を仕掛けてシュートを打つことで、チームとしては守備面でもっと厳しくプレスを掛けに行って相手に何もさせないようにすることが課題だと思います。
——最後に今後に向けての意気込みをお願いします
絶対に優勝して本戦に出場できるように、チーム一丸となって戦うように頑張ります。