無敗で首位をひた走っている関東女子リーグ戦も一旦小休止し、中断期間へ。オフシーズンも強化に余念のない早大は、浦和レッズレディースとのトレーニングマッチを迎えた。プレナスなでしこリーグ(なでしこリーグ)を主戦場とする文字通りの『プロ集団』と、45分×2本、30分×1本と計3本にわたっての戦い。トータルスコア3―4で敗戦を喫したものの、一定の収穫が得られた意義のある練習試合となった。
CKを直接決めた渡井
1・2本目は共に主力を揃えた。早大は直近のリーグ戦(浦和レッズレディースユース戦)の先発11人をそのままスタートで起用。一方、浦和レッズレディースも「来週のなでしこリーグカップに向けての調整試合ということで負けられない」(DF高畑志帆、平24教卒=現浦和レッズレディース)という言葉のごとく、公式戦を想定したメンバーをピッチに送り込んだ。試合は早大が前線からのハイプレスで浦和レッズレディースのパスワークを寸断することに成功。2本目にCKから直接ゴールを決めてみせたMF渡井汐莉(スポ4=鹿児島・鳳凰)が「2、3列目からの飛び出しの部分ではうまく外して抜けることができた」と語るように、チーム全体がアグレッシブな姿勢を見せて相手を撹乱した。特にMF正野可菜子(社2=兵庫・日ノ本学園)を筆頭に、2本目から投入された選手たちがフレッシュな動きでチャンスを演出。フィニッシュの精度という点では改善の余地こそあるものの、ポジティブに捉えられるプレーも数多く見られる試合となった。
その一方で、守備では「個」の力を痛感したに違いない。22分に、最初のチャンスでMF安田有希に豪快な一発を食らったのは痛手となった。27分にもシンプルなロングボールをFW後藤三知にペナルティエリア内でしっかり収められ、ファウルで止めるしかなかった。PKを決められて2―0で終えた1本目は、浦和レッズレディースの攻撃陣の決定力を見せつけられた形となった。2本目では1点を返し詰め寄ったものの、79分にショートカウンターから再び後藤に得点を許す。早大らしくペースを握った時間もあっただけに、1・2本目合計で1―3と敗戦を喫したことは悔やまれる。「もっとリスクマネージメントをすれば防げる失点」(渡井)であることをチーム全体で認識し、ディフェンスの厳しさを求めていってほしいところだ。
レッズレディースで活躍する高畑
3本目はサブメンバーが意地を見せた。先制点を許したものの、19分に右サイドハーフに入ったMF杉森愛希(スポ1=東京・十文字)がスライディングシュートでネットを揺らし、同点に追い付く。続く21分にもFW一原梓(スポ3=宮城・常磐木学園)のポストプレーから抜け出したMF内山穂南(スポ1=東京・十文字)が冷静に流し込み、あっという間に逆転。そのまま3本目は2―1で勝利を手にし、早大の層の厚さを実感する30分となった。
高校生や大学生、社会人相手とは一味も二味も違うゲームになっただろう。プロチームとの戦いで各々が何を感じ、この先にどう繋げていくか。汗がしたたる酷暑の中で、選手たちは厳しさを持ってトレーニングを続けていく。
(記事 松坂和之進 写真 石原瑞季)
★早大のOGも浦和レッズレディースで奮闘中!
先月レッズレディースに加入した大滝
浦和レッズレディースには早大出身の選手が在籍している。昨季なでしこリーグで新人賞を獲得し、今季もセンターバックの座を確保するDF高畑志帆。そして、今シーズン途中の6月27日にフランスのリヨンから移籍した、FW大滝麻未(平23スポ卒=現浦和レッズレディース)の二選手だ。高畑は1・2本目でフル出場を果たし最終ラインを統率。大滝は3本目に登場して持ち前のポストプレーで前線の起点となるなど、両者共にピッチで元気な姿を披露した。同学年であるお互いのことについて、高畑が「もう一度一緒に(大滝と)プレーしたいと思っていたので、本当に来てくれてうれしい」と答えれば、大滝も移籍の決め手に「志帆がいるのが大きかった」と存在の大きさを語った。高畑を中心とする守備陣がしっかりと完封し、エースの大滝が豪快にゴールネットを揺らす。そんな大学時代に見られた当たり前の光景が、今後なでしこリーグの舞台できっと見られるはずだ。
◆結果
1本目:0―2【得点者】
2本目:1―1【得点者】(早)渡井
3本目:2―1【得点者】(早)杉森、内山
コメント
MF渡井汐莉副将(スポ4=鹿児島・鳳凰)
――レッズレディースとの練習試合を振り返っていかがですか
やっぱりなでしこリーグでやっている選手たちなので、自分自身は良いところは真似て学んでいくことを、チームとしては勝ちにこだわることを意識して臨みました。結果2―0だったんですけど、自分たちが積極的にやっていくことで課題も見えましたし、次の関カレ開幕戦や早関戦に向けて、うまく改善していけたらと思います。
――きょうの結果はどう捉えていますか
失点に関しては自分たちのミスからだったのが大きいと思うので、ミスをしないことは厳しいかもしれないですが、まわりがもっとリスクマネージメントとかして防げた失点だったなと感じています。まだまだ足りないなと思っています。攻撃面に関しては、攻めれていたので、以前からのことですが最後の精度を高めていかなければと思いました。
――渡井選手のCKが直接ゴールとなりましたが
あれはたまたまです(笑)。たまたまなんですけど、福沢(MF福沢真菜美、スポ4=北海道・室蘭大谷)とかゴール前で競るプレーがうまいので、そこを狙っていたというのはあります。
――なでしこリーグの相手に通用したと感じた部分と通用しなかったという部分はありますか
通用しなかったのは、やっぱり判断の部分です。向こうはプレスも速かったし、もっと判断良くしてボールを動かせないといけないなと思います。良かった部分は、言うならば、動き出しの部分で、2、3列目からの飛び出しの部分ではうまく外して抜けることができたと思います。
――レッズレディースの印象は
なでしこリーグのチームなので一人一人の技術が高くて、寄せも速くて、さすがだなと思いました。
――相手には高畑選手もいらっしゃいましたがどうでしたか
相変わらずの声とコーチングは本当にすごいなと思いましたし、自分はポジション違いますけど、そういうところは見習ってやっていかないといけないなと改めて思いました。
――最後に今後に向けて一言お願いします
きょうの課題は改善しなければもっと良いサッカーにはならないので、普段の練習でもっときょう感じたレベルをずっと続けていけるように頑張って、早関戦や開幕戦に絶対勝ちにこだわっていきたいと思います。
DF高畑志帆(平24教卒=現浦和レッズレディース)
――きょうは古巣との一戦でした。どのような心境で臨まれましたか
私たちは来週のなでしこリーグカップに向けての調整試合ということで負けられないことはもちろんですけど、自分たちのサッカーをするという強い気持ちも持って、試合に臨みました。
――1本目と2本目に出場されましたが、試合を振りかえっていかがでしたか
狙っていたことができた反面、悪い部分が目立ってしまったかなというのが正直な印象です。ワセダが前線からハイプレスをかけてきたときに、自分たちの意図した形でボールを動かすことができなくなったり、焦ってミスをしてしまった場面が出てしまいました。そういったところが、チームの課題だと思います。
――新人賞を獲得した昨季を経て、今季は2年目のシーズンを迎えています。昨年を経て、ご自身のプレーはどのように変わってきていますか
昨季は先輩方についていくのに必死で、毎試合自分のコンディションを整えることに精一杯でチームのことを把握できていなかった部分が大きかったと思います。今季は先輩方が移籍や引退をされて、自分がやらないといけない使命感のようなものを強く感じるようになりました。チームに対する視野をもっと広げていかないと、という思いがありますね。
――チームはリーグ戦9試合を終えて1勝2分6敗で8位と大変厳しい戦いが続いています。チームの現状の雰囲気はどういったものなのでしょうか
結果が出ていないということに関して少しネガティブになっていた部分はありました。でもそれを払拭するためにも声を掛け合ったり、練習から盛り上げてやっていくことを意識して中断期間調整を続けてきました。その効果もあってか、ネガティブな空気というものは徐々に取り払われていると思います。
――チームの雰囲気を変えるという点では、大学の同期であるFW大滝麻未選手の加入も大きかったと思います
もう一度一緒にプレーしたいと思っていた選手なので、本当に来てくれてうれしいです。彼女のプレーが勝利に導いてくれると思います。
――これからの意気込み、そして後輩たちに向けてのメッセージをお願いします
今シーズン試合に出続けるという所は個人的にこだわってやっていきたいですし、チームがなかなか結果を出せない中で、それでも応援してくださるサポーターやクラブの方たちがいらっしゃいます。その方たちにもレッズレディースが少しでも変わっていく様を見れられるように、結果にこだわってプレーしていきたいと思います。ア女に関してはこれから関カレも始まって、インカレに関わる試合も多くなると思います。やっぱりア女は日本一にならないといけないチームだと思うので、大学の中ではずば抜けたチームになっていけるように、全員で一つの目標に向かって頑張ってほしいと思っています!
FW大滝麻未(平24スポ卒=現・浦和レッズレディース)
――きょうの試合を戦って、ワセダの印象というのはいかがでしたか
上手かったと思います。ボールも全然回せていたし。あとは攻めてた時間帯に点だけ入れられればとは思いました。
――ご自身としては3本目に出られましたが、振り返って
ダメですね。負けたっていうのがまずあり得ないです。
――コンディションというのはいかがですか
これからって感じですかね!
――リヨンで1年強やられたわけですが、その経験というのはどういったものでしたか
口じゃ言えないかな。ピッチで学ぶこととかも多かったけど、それ以上にチャンピオンズリーグとかを肌で感じられたというのが大きかったと思うし、そういうのを伝えられたら良いんですけど、まだ徐々にって感じですね。
――自分が一番成長したと思う部分はなんでしょうか
フランス語かな(笑)。レッズではちょっとまだ生かせてないけど(笑)。
――ではプレー面ではいかがでしょうか
プレーね。あんまりないかな(笑)。精神的な面が大きいですね。
――レッズを選んだ理由とは
ずっと大学出る前からもし日本でやるならレッズでやりたいなと思っていて。練習試合とかもやってましたし、環境が良いとか色々あって。あと志帆(DF高畑、平24スポ卒=現・浦和レッズレディース)がいるのが大きかったですね。
――その高畑選手と再びプレーすることになりまきたが、いかがですか
1回だけしか一緒にやってないので、もうちょっと出来たらなと思うんですけど。それは私が頑張るしかないので。
――加入当初、チームに溶け込むという意味で高畑選手の存在というのは大きかったのでしょうか
そうですね。でも知ってる人が多かったので。
――今後はなでしこリーグはもちろん、日本代表というものも視野に入れてるとは思いますが、いかがですか
ちょっといま代表のことは到底考えられないというか、チームでも出れていない状況なので。とりあえずチームで出ることですね。
――どういったプレーをしていきたいなどありますか
やっぱり点に多く絡みたいと思うし、それが自分の持ち味だと思うので、そういうところにこだわってやっていきたいです。
――最後にワセダに向けて一言お願いします
練習にたまに顔を出すので、その時は優しくして下さい(笑)。あとインカレ(全日本大学選手権)とか大事な試合が増えてくるし、見てる限り一人一人ちゃんとやってると思うから大丈夫だと思いますけど、本当に後悔しないように頑張ってほしいです。