【連載】『蹴大成』【女子部・第1回】正野可菜子×川原奈央

ア式蹴球女子

悲願の大学日本一奪還を目指すア式蹴球部女子。第1回の対談は、共に高校女子サッカー名門の兵庫・日ノ本学園出身である正野可菜子(スポ2)と川原奈央(スポ1)だ。下級生ながらスタメン争いでしのぎを削り、全日本大学女子選手権(インカレ)での活躍も期待される二人。高校時代を共に過ごした先輩後輩は、再びワセダで日本一を目指す――。今回はワセダを選んだ理由やインカレに向けての意気込みなどお話を聞いた。

※この取材は12月14日に行われたものです。

ベレーザ戦でみえた課題

正野

――今季ここまでを振り返ってみて

正野 チームとしては関東大学女子リーグ戦(関カレ)で優勝だったり、関東女子リーグ(関東リーグ)優勝だったりいろんな大会で優勝できたことは良かったんですけど、個としては納得いかないというかチームの何か役に立てたかというと、攻撃面などの部分では欠けていたというか、そういう印象です。

川原 大学だけのリーグ戦や試合は全勝できましたが、皇后杯で日テレ・ベレーザ(ベレーザ)と試合をして、強い相手と試合をしたときに全く何もできなかったのでチームとしてもあまり納得はしていないし、個としては得点することができなくて、あまりチームの役に立ってなかったと思います。

――川原選手は1年生ながら多くの試合に出場されていましたが、プレッシャーなどはありましたか

川原 シュートするときでも絶対決めないといけないというプレッシャーがあるので外してしまいます(苦笑)。

――先輩方からのプレッシャーでしょうか

正野 皇后杯で最初外したときは、切り替えていこうっていう感じだったんですけど、どんどん外して自分で追い込んで行ってなんかもう掛ける言葉もなかったです(笑)自分が悪いで、あれは(笑)。

川原 めっちゃシュート外しまくったんで、反省してインカレにつなげて行きたいと思います。

――今季印象に残っている試合は

正野 自分は日体大戦(●0―1)ですね。皇后杯の関東予選で負けたっていうのも大きいし、内容も印象的だったので。

川原 良かった試合は皇后杯予選の浦和レッズレディースユース戦(○3―0)で、チームが良い雰囲気で試合に臨めて結果も残せたことです。

――日体大に対する特別な思いは

正野 皇后杯予選でやったときは向こうの方か気持ち的にも強かったですし、ア女の弱みやどう攻めたら良いかなどを分かっていました。

――皇后杯でベレーザと実際に対戦してみていかがでしたか

川原 めちゃくちゃ強かったです。全ての面で上でした。最初ベンチで試合を見ていたんですけど、見ていてやっぱりいままでにしたことのないチームでした。内容的にもベレーザはしっかりボールをつなげてゴールまで行くんですけど、ワセダは強い相手に蹴って走るしかできなかったのでとても良い経験になりました。

――防戦一方でなかなかチャンスがつくれない中で、正野選手の突破も見られました

正野 自分のスタイル的に縦に勝負するスタイルではないんですけど、ベレーザとやったときは何もさせてもらえなくていつものプレーも簡単にとられてしまって。そういう面に関しては本当に何もできなかったのでやっぱり力不足だと感じています。

川原

――ベレーザ戦や日体大戦を通して見えたチームの課題は

川原 守備と攻撃の両方の面からですが、まだまだ強い相手とやるには運動量などもチームとして弱いと思いましたし、攻撃ではアイデアが全然なくて一人一人考えてることが共通理解できていないのでシュートまでいかないなと思いました。

正野 奈央も言っていたんですけど、攻撃面でのアイデアですね。ベレーザとやったときは本当にどこから攻められるか分からないというのがあって怖さがあったんですけど、ワセダの攻撃だと単調というか。ある程度かたちが決まっているのでパターンが少ないというのもありますし、個の打開力といったような攻撃での崩しの面でまだまだ足りないと思います。

――その後の練習で変化はありましたか

川原 チームとしてこうやろうというのはあんまりないですけど、やっぱりベレーザ戦が終わって一人一人考えていることはあって、それが練習に出ていると思います。

――ベレーザ戦の後、長岡監督はチームにどんな言葉を掛けていましたか

正野 簡単に言うと受け身にはなりすぎていると言っていたよね?あとはボールを持っても逃げてしまうというか。

川原 もっとチャレンジャー的な姿勢を見せてほしかったという感じでした。

――ポジション争いについて、1年間を通して前線のポジション争いが厳しかったと思います。振り返ってみていかがでしたか

正野 去年もそうだったんですけど中盤でのポジション争いがすごくて、人数が多いっていうのもあってその試合に出れたとしても次の試合に出れるっていう保証はなくて、実際ことしも奈央とだったり、摩也さん(MF山本、スポ2=スフィーダ世田谷)とだったり、ごんさん(MF権野貴子、スポ3=宮城・常磐木学園)とかぶー(MF高木ひかり、スポ2=静岡・常葉学園橘)とか、いろんな人と取り合いになったりして出れない試合とかもありました。出れないとやっぱり悔しくて、だからといって出れることがすごくうれしいとかではなくて、出れることが逆にプレッシャーというかやらなあかんなっていうのはすごく感じます。

――川原選手は

川原 自分的にはFWがしたくて入って、たまに出れなかったりサイドハーフで出たりするんですけど、FWはやっぱり結果を残す選手が最終的にはチームからも信頼されるし、試合にも出れるようになると思います。私は今季、全然得点できてないので出れなかった試合も納得いきました。ごんさんとまにょさん(FW福沢真菜美、スポ4=北海道・室蘭大谷)がFWのスタメンで出ていますが、その二人は得点能力もあるし、私は1年生っていうのもあって気持ちの面でもまだまだで。その二人は守備の面からも運動量が豊富で…私はまだまだだと痛感しました。

――上級生ともスタメン争いをする中で、自分が戦っていきたい自分の強み、これなら負けないというのはありますか

川原 わたしは関東リーグとかすごく消極的になっていて、自分のプレーを出せずに終わったりする試合も何回もありました。最近は慣れてきたっていうのもあってか少しずつ出せるようになってきているので、もっと自分の最高のパフォーマンスを試合に出したいと思っています。

正野 私はサイドなんですけど、一人で突破するタイプではないので、後ろのみなみさん(DF石田、スポ4=静岡・常葉学園橘)だったり、中の人を使ったりして自分が生きることだったり、相手を生かすようなプレーをもっともっとできていったらいいのかなと思います。

高校時代からの先輩後輩

サイド攻撃を担った正野

――お二人は同じ高校出身ということですが、上下関係などはいかがですか

川原 上下関係あります。

正野 嘘つけ!(笑)

――大学に入って何か変わられましたか

正野 自分的に、いままでよりしゃべるようにはなったかなと思います。

川原 しゃべってたやん!

――高校生のときはそんなに話さなかったですか

正野 そんな記憶はないです(笑)

川原 いやいや、自分はあるんですけど(笑)でも大学になってめっちゃしゃべるようになりましたね。

――やりとりから仲の良さが伝わってきます

川原 ありがとうございます(笑)

正野 何がやねん!

――学年の雰囲気はいかがですか

川原 あまり厳しい上下関係もないので仲は良いですね。

――高校の時よりお互いに印象が変わった点はありますか

川原 可菜子さんは高校ではキャプテンだったのですごい上の存在でした。

正野 上の存在とか絶対思ってないやろ(笑)

川原 思ってました(笑)

――正野選手から見ていかがですか

正野 奈央のことは小学校くらいのときから知ってたんですけど、そのときはめっちゃかわいくて、かわいいなあって感じだったんですけど、高校が一緒になって練習のときに会えるわと思って楽しみにしてたら、めっちゃでかくなっててごつくなっててかわいさがなくなっていて(笑)。あまり性格も高校のときからずっとこんな感じなので印象は変わらないですね。

――下級生から見た3、4年生の印象は

川原 サッカーの面ではやっぱり練習のときでも声を掛けるのは3、4年生が多くて、4年生は特にチームを引っ張って行ってくれる存在です。1年生からしたら4年生が引っ張ってくれたら頑張ろうという気持ちになります。

正野 ピッチ内だとすごく厳しい面とかあるんですけど、ピッチ外になると上下関係なくなるというのは変ですけど、すごく優しく接してくれたりチームを盛り上げてくれる人が多いので話しやすいです。

――正野選手から見て川原選手は

正野 ほんまに技術はありますね。佐々木さん(佐々木則夫日本女子代表監督)が川原のことを「あいつは女子のジダンバージョン」って言ってて、それくらい技術があるしスピードがあるっていうのがすごくうらやましいです。

川原 いつも褒めてくれないのでうれしいです(笑)。

――逆に直してほしいところはありますか

正野 シュートを外すところですね(笑)あとはすごく頑張ってるのはわかるんですけど、すぐにばてちゃうので、ばててるわと思っていつも見ています。

――川原選手はいかがですか

川原 すぐ人を殴るところですね。

正野 奈央やからやで、愛情愛情。

川原 めっちゃ痛いです。プレーできひんくらい。

――川原選手がワセダに入った経緯を教えてください

川原 大学に絶対行くとは決めていて、高3の夏のインターハイで長岡義一監督(昭43商卒=京都・山城)が見に来ていて、私に声を掛けてくれました。その時にワセダに入らないかと言ってくれて、その時は勉強の方がしんどそうだと思ったのであまり考えていなかったです。でも、インターハイが終わってそろそろ決めようってなった時にいろいろ調べてワセダにスポーツ推薦で入れると知って、サッカーも強いし、勉強もワセダ入ったら少しは頭良くなるやろと思って決めました(笑)

正野 すごい甘い考えやな。

――実際に入って、勉強できるようになりましたか

川原 できるようになりました!

正野 嘘つけ!(笑)

川原 まだましにはなっています…。

正野 ほんまに?え、あれで?

川原 英語の方でも全然しゃべれなかったのがちょっとしゃべれるようになったし…。

――先輩方にも勉強を手伝ってもらったりしますか

川原 教えてもらうっていうのは無いですけど、フォローはしてもらっています。すごく心配されるんです(笑)

正野 そりゃ心配やわ!

――正野選手はいかがですか

正野 奈央と違って私は自己推薦で受けたんですけど、親の勧めっていうのがあったのと、七海さん(FW瀬口七海、スポ3=兵庫・日ノ本学園)がいたのも大きくて、だからですかね。

――川原選手は先輩の姿を見て決めたとかいう理由はありますか

川原 それもあります。先輩の可菜子さんと七海さんがおったから入りやすかったっていうのはあります。たぶん、日ノ本からワセダに誰も入ってなかったら私も入ってなかったと思います(笑)。

――納得のいかない試合後、気分が落ち込んだ時の気分転換にすることは

川原 わたしは良いのか悪いのか分からないですけど、忘れます!(笑)

正野 すごいなぁ(笑)

川原 思い出したり、ずっと悩んでいたら、もっと落ち込んでいくタイプなので無理やり忘れようとします(笑)。

正野 すごいわ、わたしは落ち込むと本当に落ち込んでいってしまうタイプで、結構一人でボール蹴ったり、そういうことをしているときの方が忘れられるかな。

川原 素晴らしい。

正野 と思います(笑)。

――チーム内で落ち込んでいる人がいた場合、みんなで励ましたりしますか

川原 気付かれたくないですよね?落ち込んでいるところを。

正野 あー、でも絶対気付くやん。

川原 はい(笑)

正野 同学年だったら声を掛けたりしますし、他学年でも心配だったら大丈夫かなって思いますね。

川原 落ち込んでいる子がいたら私は話しかけにいって、以前あった時は一緒の学年の子だったんですが、一緒にボール蹴ったり走りながら話し合ったりしました。

正野 素晴らしい(笑)。

川原 でも、他学年とはできないです!先輩にはできないです。

正野 それはいいんちゃう?先輩なんだから。

――オフの時はなにをなさいますか

川原 遊びほうけます。遊びに行きます。買い物したりとか気まぐれですね。

――正野選手は

正野 逆に家にいるタイプですね。

川原 引きこもりですか?(笑)

正野 引きこもりとはまた別や、ゆっくりしているだけ。

――インドア派ですね

正野 はい、家でゆっくりぐたーっと。

川原 そういうところ違いますよね!私と。

正野 うん、だから嫌やねん(笑)

―― 一緒に出掛けたりしないんですか

川原 私はしたいんですよ!

正野 思ってへんやん(笑)

川原 でも家におる方がいいのかなって思って。

正野 いや、誘われたことないもん。

川原 自分から誘いにくいじゃないですか。

正野 なんでよ、誘ってくれたら行くやん。

川原 ほんまですか?じゃあ誘いますね!

正野 いやや(笑)

「攻撃ではたくさん点を取れるように」

突破を仕掛ける川原

 

――では、インカレへ話を移したいと思います決勝で日体大に負けて逃した昨季から、意識の面やプレーの面で変化したことはありますか

正野 昨年負けてチーム皆すごく悔しくて。練習の取り組みとかも昨年とは少し変えて、グラウンドマネージャーの4年生とかが練習メニューを考えて変えてくれたり、分析だったりスカウティングだったり、チームとしてできることから先輩が変えてくれているというのはあります。

――正野選手は昨年のインカレを振り返っていかがですか

正野 特にこう変わったというのは自分としては感じないですけど、昨年チームとして良いかたちでもなく、内容の伴わない悔しい負け方をしてしまっていたので、自分が2年生にもなったっていうのもあって、ことしは絶対優勝するというのを昨年より強く感じています。

――組み合わせについてはどうお考えですか

川原 どうでしょう。日体大も吉備国際大も向こうですよね?

正野 吉備国際大向こうじゃない?

川原 じゃあめっちゃいいですよね?

正野 正直良いと思います。めっちゃいいって言ったら変ですけど…(笑)

川原 逆側に日体大と吉備国際大がいて、その2チームが強いので同じ山にいないのは結構…良いと思います。

正野 そういうことです(笑)

――決勝で当たりたくないのはどちらでしょうか

川原 えーどっちなんだろう。でも当たりたくないのはどっちかと聞かれたら、吉備国際大です。

――それはスカウティングが十分できないなどの面でですか

川原 んー、難しい…

正野 それはあれかな。なでしこリーグにも入っているっていう恐さ?

川原 なでしこリーグにも入っているし、日体大とは全然違う戦いにはなりそう…吉備国際大はポゼッション?

正野 上手いね。

川原 上手いんです。でもそれ言ったら日体大が上手くないみたいになります?

正野 いや、それは違う!それは別やん(笑)

川原 なんて言ったらいいかな…。日体大より個の能力が高くて、チームとしてどういうサッカーするのかが決まってる?なんていったらいいんやろ(笑)日体大は結構、、、うーん(正野選手を見て)助けて…(笑)

正野 何を言おうとしているのかがようわからへんもん。

川原 日体大と吉備国際大のサッカーは違うじゃないですか。

正野 はい。

川原 そのどこが違うのかみたいな。

正野 何が違うか?

川原 難しいですよね(笑)

正野 何言おうとした?

川原 吉備国際大はなでしこリーグの相手にも通用するサッカーをしていて、日体大はまだそこには至ってないと自分的には思っているので、吉備国際大の方が嫌です。

正野 長かったなー(笑)

――正野選手も吉備国際大の方が嫌ですか、それとも日体大にリベンジを果たしたいっていう思いがありますか

正野 それもありますし、吉備国際大とやるとしたら、やったことないっていうのとなでしこリーグですごくレベルアップしているんだろうなっていうのもあるので恐さがあります。

――皇后杯3回戦の後、吉備国際大と浦和レッズレディース(レッズ)の試合をご覧になっていましたがどうでしたか

川原 前半しか見ていないのですが、私たちが見ていた時はレッズの方が押していたんですけど、わたしたちはベレーザ相手に何もできなかったけど吉備国際大は競れる相手にもちょっとはボールも動かせていたのでやっぱり私たちより上かなと。

正野 結果的に見てレッズに勝ったじゃないですか、もしいま、ワセダがレッズ相手にやった時に勝てるのかということを考えると、まだまだ足りないと思うので、そこで勝てている吉備国際大はレベルが上がっているといえるのかなと思いました。

――最後にインカレに向けてチームの目標と個人の目標を教えてください

正野 インカレの目標は優勝ということなので、きのうも関カレ表彰式でこずさん(DF千葉梢恵主将、スポ4=宮城・常盤木学園)が「DFでは無失点優勝したい」と言っていたので、攻撃ではたくさん点を取れるように、チームで点を取れるようにしていきたいです。個人ではことし一年の振り返りとしてどれだけ自分がチームに貢献できるか、役に立てるかっていうのが分かる試合だと思うので、そういう試合で結果が残せるように、点に絡めるようにしていきたいと思います。

川原 チームとしては、どこが相手でも圧倒して優勝することで、個人としてはやっぱり、まずはスタメンで試合に出れるようにして結果を残せるようにしたいと思います。

――ありがとうございました!

正野ありがとうございました、すみません口下手で(笑)

川原なんでこの二人なんやろ・・・(笑)

(取材・編集 石原瑞季、森田夕貴、中澤奈々)

川原(左)と正野

 

◆正野可菜子(しょうの・かなこ)(※写真右)

1994年(平6)2月6日生まれ。157センチ。兵庫・日ノ本学園高出身。社会科学部2年。関西出身の正野選手、後輩である川原選手に鋭いツッコミをいれる場面が多数。後輩を可愛いがっている様子が伝わってきました。

◆川原奈央(かわはら・なお)(※写真左)

1994年(平6)12月16日生まれ。160センチ。兵庫・日ノ本学園高出身。スポーツ科学部1年。プレッシャーでシュートを外してしまうと嘆いていた川原選手。インカレの舞台ではプレッシャーに打ち勝って豪快なゴールが決まることを信じています!