全日本大学女子選手権を通算で3度制し、今季は関東大学リーグ4連覇するなど、強豪として確かな地位を築いてきた。大学女子サッカー界にその名をとどろかせてきた早大だが、『皇后杯全日本女子選手権(皇后杯)ベスト8』はいまだたどり着いたことのない未開の地だ。ベスト8を懸けて戦う相手は、日テレ・ベレーザ。なでしこリーグ屈指の名門に食らいつき、金星を挙げることができるか――。
下剋上を狙う早大
1981年から活動を開始し、獲得した栄冠は実に30個。リーグ最多回数のタイトルを誇る日本女子サッカー界の『盟主』には、個性溢れる強烈な選手が揃う。DF岩清水梓はその筆頭であろう。日本女子代表(なでしこジャパン)で不動のレギュラーとして活躍する日テレ・ベレーザの主将であり、国内最高のセンターバックという呼び声も高い選手だ。中盤ではMF阪口夢穂がチームの屋台骨を支える。岩清水と同様なでしこジャパンの常連であり、ボランチのポジションで抜群の存在感を放っている。得点源の2トップにも注目をしたい。FW木龍七瀬は爆発的なスピードを、FW田中美南は切れ味鋭いドリブルを武器に、共にゴールを量産。特に後者は19歳という若さで公式戦のチームトップスコアラーに君臨しており、最も勢いのある選手であろう。「ベレーザは若い選手が多くて個人技なども日本一あるチーム」(MF高木ひかり、スポ2=静岡・常葉学園橘)。今季のなでしこリーグでは優勝こそならなかったものの、第16節で首位のINAC神戸レオネッサを下しているなど、その強さに偽りはない。
千葉梢主将中心に守り切れるか
日本中を驚嘆させる大番狂わせは、早大守備陣の奮闘なくしてありえない。DF千葉梢恵主将(スポ4=宮城・常磐木学園)を中心とした最終ラインの粘り強い対応は必須であり、GK三田一紗代(スポ3=京都精華)のセービングに頼らざるを得ないシーンも出てくるだろう。格上の相手ということで守勢に回る時間は多くなるだろうが、そこで早い時間帯に失点を許さなければ接戦に持ち込める可能性は高い。問題は接戦をいかに勝ちに変えられるかという点にある。2トップの一角を担うMF福沢真菜美(スポ4=北海道・大谷室蘭)は「怖がらないで最後まで自分たちのサッカーを貫き通したい」と語っており、早大が持ち味とするパスワークで相手を切り崩す算段だ。ボールを奪ってから、いかにフィニッシュまで持ち込む回数を増やせるか。カウンターを狙う際でも、ただ前線に蹴り出すだけでは厳しいだろう。だからこそ、MF正野可菜子(スポ2=兵庫・日ノ本学園)やMF大宮玲央奈(スポ4=浦和レッズレディースユース)といった中盤の選手がダイレクトパスを織り交ぜていくことで相手を翻弄し、チャンスを演出していきたい。長岡義一監督(昭43商卒=京都・山城)のベンチワークも含め、一人一人の力を結集できればゴールへの道筋は生まれるはずだ。
今季ここまでで最大の大一番。「チャレンジャーとしてしっかり全力で挑んでいきたい」(千葉梢)と選手たちのモチベーションもすこぶる高い。ここ2大会はベスト16で涙をのんできた。悲痛の歴史を塗り替えるための一戦が、火蓋を切って落とされる。
(記事 松坂和之進 写真 石原瑞季)