終了間際の失点で勝ち点3を逃す 自動昇格の可能性は消滅

ア式蹴球男子
関東大学サッカーリーグ戦 2部 第20節
早大 1-0
1-2
関東学院大
【得点】
(早大)25’小松寛太 73’石川真丸
(関東学院大) 47’オウンゴール 90+2’橋本丈

試合後倒れ込む選手たち。昇格に向け勝ち点3が必要となった試合で痛恨のドローゲームとなった

  前節、日体大との一戦を引き分けで終えたア式蹴球部(ア式)。そんなア式は今節、自動昇格圏に位置する関東学院大と対戦した。今シーズンのホーム最終戦となったこの試合、大勢の観客に見守られる中、先に主導権を握ったのはア式だった。立ち上がりからボールを保持することに成功したア式は、前半25分に相手ディフェンスラインの裏へ抜け出したMF小松寛太(教4=東京・早実)が先制点を挙げ、前半を1―0で折り返す。しかし、後半開始直後の47分、相手のクロスがDF神橋良汰(スポ3=川崎フロンターレU18)に当たり、ディフレクションしたボールはゴールに吸い込まれオウンゴール。それでもア式は、徐々にペースを取り戻し、73分にDF石川真丸(スポ3=名古屋グランパスU18)が追加点を挙げ、再び勝ち越す。しかし、このまま試合終了かと思われたアディショナルタイムに直接フリーキックを決められ、痛恨の同点弾を許すことに。昇格に向けて勝たなければならない試合で貴重な勝ち点2を落とす結果となった。

 

ドリブルをする小松。相手GKの位置を冷静に見た見事なループシュートを決めた

  前半は、試合開始直後に自陣のビルドアップのミスから相手に決定機をつくらせるが、以降はア式ペースで試合が進む。2分には、DF森璃太(スポ4=川崎フロンターレU18)のクロスにFW駒沢直哉(スポ3=ツエーゲン金沢U18)が頭で合わせるも、シュートは惜しくも枠外へ。続く8分には、コーナーキックの流れからMF山市秀翔(スポ2=神奈川・桐光学園)が右サイドを突破し、シュートを放つも相手キーパーがセーブ。さらに、そのこぼれ球に反応したMF植村洋斗副将(スポ4=神奈川・日大藤沢)のシュートは相手DFの体を張ったブロックに遭う。序盤から立て続けに相手ゴールへと迫るア式だったが、11分にアクシデントが発生。相手選手と味方選手の両方と同時に交錯した森が頭を打ち、プレー続行が不可能に。急遽石川がピッチに投入されることになった。攻撃の要である森を失うことになったア式だったが、石川がスムーズに試合に入ったこともあり、継続してボールを支配する。すると迎えた25分、待望の先制点が生まれる。ピッチ中央でボールを受けたMF伊勢航(社3=ガンバ大阪ユース)が相手DFラインの裏へ飛び出した小松へパス。「冷静にキーパーの位置見て決められた」(小松)という言葉通り小松は相手キーパーの頭上を抜くループシュートを選択。綺麗な弧を描いたシュートがネットを揺らし、ア式が先制に成功する。その後関東学院大がボールを保持する時間が続くが、決定的なチャンスを与えることなく前半を終えた。

 

シュートを放つ安斎。今節も右サイドで攻撃の起点となった

 理想的なかたちで終えた前半とは一転、後半は、開始直後から相手がア式サイドで攻撃を展開する。47分に右サイドからゴール前へグラウンダーの早いクロスが送られると、このクロスがDF神橋良汰(スポ3=川崎フロンターレU18)の足に当たり、ディフレクション。コースが変わったボールは自陣ゴールへと転がり、オウンゴールで同点に追い付かれる。出鼻をくじかれたア式だったが、動揺することなく徐々に自分たちのボール保持する時間を増やしていく。その後65分に投入されたMF平野右京(人4=兵庫・滝川)が果敢にミドルシュートを放ち、FW鈴木大翔(スポ1=ガンバ大阪ユース)が敵陣でボールキープをするなど選手交代きっかけにチャンスの糸口を探るも、あと一歩が届かない展開が続く。71分には右サイドでボールを受け、ペナルティエリア内へ侵入したMF安斎颯馬(社3=青森山田)が相手DFに後ろから倒されるもこれはノーファウルの判定。そんな中、迎えた73分、左サイドを駆け上がった石川がペナルティエリア手前にいた山市へパス。ボールを受けた山市はペナルティエリア内へクロスを送ると、右サイドからペナルティエリア中央へ飛び込んできた平野がダイビングヘッドで合わせる。このシュートは相手キーパーの好セーブに遭うも、ゴール前に詰めていた石川がこぼれ球にすかさず反応し、ボールをゴールへと押し込んだ。森のアクシデントによるスクランブル出場だったが、終始好パフォーマンスを見せていた石川が勝ち越しゴールを決める。その後は、両チーム共に決定機をつくることなく、試合はアディショナルタイムへ突入。すると90+2分にペナルティエリア手前からフリーキックを直接決められ、まさかの失点。残されたわずかの時間で勝ち越しゴールとなる3点目を奪えず、試合はそのまま終了。最後の最後に勝ち星を逃すことになった。

 

石川のゴール後に喜びを分かち合う部員たち

 「今シーズンの課題が出てしまい引き分けに終わった」(植村)と言うように後半開始直後の失点、試合終了間際での失点と今年の勝ちきれないア式の弱さを象徴する試合結果となった。得点を奪った後の停滞や勝負どころでの失点は、シーズンを通して抱えてきた課題であっただけに悔やまれる。こうした細部を突き詰めない限りは、昇格には辿り着くことができないだろう。引き分けという結果により、自動昇格の可能性は消滅し、これからは1部参入プレーオフを目指すことになる。シーズンも残すところあと2試合と時間は限られているが、勝負強いア式を取り戻すためにも再度チームの課題に向き合い、全力で臨んでほしい。

(記事 荒川聡吾 写真 髙田凜太郎、永田怜)

 

早大メンバー
ポジション 背番号 名前 学部学年 前所属
GK ヒル 袈依廉 スポ3 鹿児島城西
DF 安斎 颯馬 社3 青森山田
DF 中谷 颯辰 基理4 静岡学園
DF 27 神橋 良汰 スポ3 川崎フロンターレU18
DF 森  璃太 スポ4 川崎フロンターレU18
→15分 石川 真丸 スポ3 名古屋グランパスU18
→88分 平松 柚佑 社4 山梨学院
MF 24 伊勢 航 社3 ガンバ大阪ユース
MF 10 ◎植村 洋斗 スポ4 神奈川・日大藤沢
MF 14 山市 秀翔 スポ2 神奈川・桐光学園
→90+3分 20 森山 絢太 スポ2 兵庫・三田学園
MF 15 東  廉 スポ3 清水エスパルスユース
→65分 22 平野 右京 人4 兵庫・滝川
MF 11 小松 寛太 教4 東京・早実
FW 18 駒沢 直哉 スポ3 ツエーゲン金沢U18
→65分 26 鈴木 大翔 スポ1 ガンバ大阪ユース
◎=キャプテン
監督:兵藤慎剛(平20スポ卒=長崎・国見)

関東大学サッカーリーグ戦2部 順位表
順位 大学名 勝点 試合数 得点 失点 得失差
駒大 43 20 13 44 22 22
関東学院大 39 20 12 52 27 25
山梨学院大 35 20 10 38 22 16
立正大 32 20 32 23
日体大 32 20 32 29
早大 31 20 42 26 16
立大 29 20 23 27 -4
産業能率大 28 20 10 34 34
順大 27 20 30 33 -3
10 青学大 21 20 26 36 -10
11 作新学院大 14 20 14 17 49 -32
12 亜大 20 16 10 52 -42
第20節終了時点
関東大学サッカーリーグ2部 昇格争いの行方
  チーム 勝点 得失差 第19節(10/29) 第20節(11/5) 第21節(11/12) 最終節(11/18)
1 駒大 43 +22

VS作新学院大

(◯4-0)

VS山梨学院大

(◯3-1)

VS立大 VS産業能率大
2 関東学院大 39 +25

VS立正大

(◯3-2)

VS早大

(△2-2)

VS産業能率大 VS山梨学院大
~~1部自動昇格圏~~
3 山梨学院大 35 +16

VS青学大

(△0-0)

VS駒大

(●1-3)

VS順大 VS関東学院大
~~1部参入PO出場圏~~
4 立正大 32 +9

VS関東学院大

(●2-3)

VS日体大

(●0-2)

VS青学大 VS亜大
5 日体大 32 +3

VS早大

(△2-2)

VS立正大

(◯2-0)

VS作新学院大 VS立大
6 早大 31 +16

VS日体大

(△2-2)

VS関東学院大

(△2-2)

VS亜大 VS順大
青字は直接対決
コメント

兵藤慎剛監督(平20スポ卒=長崎・国見)※一部囲み取材より抜粋

――今の率直な感想を教えてください

 ほぼほぼ(昇格の)可能性がついえたという中で、後期負けなしでいくという想定通りには来ていますけど、やはり勝てる試合を引き分けにしてしまう。山学戦もそうですし、今回の関東学院も、この競ったゲームの中での終わらせ方、時間の使い方、入りの悪さを含めまだまだぬるさが取り切れなかったと思います。学生たちは一生懸命やっているので、そういうところでもう1個感度を上げさせるためのアプローチを僕らがトレーニングから落とし込めれば、最後の失点も防げたと思います。そこのところの感度をどうやって上げていくかだったり、試合の終わらせ方を含めこの経験をどう生かしていくかが大事です。この絶望的な状況で何ができるのかというところが、最後、人としての強さとして試されると思うので、残り2試合、(部員の)代表としてピッチに立つ人たちには誇りを持ってプレーしてもらいたいですし、これが今年積み上げたものだというのを最後に試合でしっかり見せて、このチームでできる最高の2試合にしたいなと思います。

――今節を含め勝ち切れない試合というのはシーズンを通しての課題だと思います。やはりそこに対しては監督からのアプローチ的なものを含め、まだまだやれたことがあったなと思いますか

 トレーニングの短い時間という中でも、ウォーミングアップのところでもう一段階集中させる。あくまでウォーミングアップのウォーミングアップみたいなかたちでの緩さが(試合に)つながってきてるのかもしれないですし、ゲームコントロールのところもまだまだ甘いなというところでは、やはり1-0の状態だったり、2-1の状態で最後どうやって終わらせるのかというところだと思います。早稲田として今年3点取るチームを目指すというところでは、もう1点差してゲームを終わらせるというやり方が取り組んできていることなので、その1点を誰がどこで取るんだというところを突き詰めていくしかないのかなと思います。失点が防げないのだったら、今年は得点にこだわっているので、そのどちらかで結果を出すしかないという振り切り方になっています。そこで、あの時間に失点してしまうし、時間の使い方が良くないというところはチームとしても反省しながら、3点目を目指せないところにもっとアプローチしていかないといけないなと思います。失点に目がいきがちですけど、今年やっていることは何かと言ったら、攻撃的に行くという部分です。でしたら3点目を取れなかった要因をもっと探らないといけないですし、それだけのチャンスはあったと思うので、そこにもう1回こだわっていくしかないのかなと思います。

――3点目、4点目を取れなかったというところでは、そこに対して結果を出してくれると期待していた選手はいましたか

 そうですね。やはり2列目、3列目ぐらいから(選手が)出ていくと、相手のハイラインは簡単に突破できるよねというところだったので、裏に出すボールの精度だったり、抜け出すタイミングのところ。相手がハイラインなので、いつものタイミングで出るとオフサイドを取られるというところで、出す人は同じテンポで出して受ける人がワンテンポ遅らせたり、一つ横の動きを入れることでラインを直線的な動きじゃなくするというところでもっと解決できたと思います。攻撃のクオリティがあるのは当然分かっている中で、この2失点を今度はどう1失点にしていくかという作業が大事ですし、得点もこの2得点じゃなくて、3、4点取れるためにというところで前線の選手全員だったり、試合に出ている選手がどう崩すのかというイメージの共有のところがまだまだだと思います。今、相手がこういうやり方をしてきているから、これが一番いいというところをもう少し全員で感じたり、 ユニットで崩せるシーンもたくさんあったと思うので、そういうところをよりトレーニングから強調してやりたいなと思います。

――試合後のミーティングで伝えたことも踏まえて、残りの2試合どう戦っていきたいですか

 ここで諦めるたり終わらせることは簡単ですけど、この残りの2試合、このチームで何ができるのか、何を残せるのかというところが、歴史を紡いできてくれたOBたちへの感謝の気持ちを表すところでもありますし、次の100年につなげるというところの99年目の責任だと思うので、そこをどうつないでいくかというところにフォーカスして、残り2試合。全員で前を向けるようにやっていきたいなと思います。

MF植村洋斗副将(スポ4=神奈川・日大藤沢)

――今の心境を教えてください

 勝たなければいけない試合の中で、チームとして苦しい時間もありましたが、試合を通して自分たちらしく戦えたと思う一方、最後の(試合を)締める部分で失点するという今シーズンの課題が出てしまい、引き分けに終わったと思います。

――相手が2位の関東学院大でしたが、どのような準備をして試合に臨んでいましたか

 相手がビルドアップしてくるということとスピードがあるということは分かっていたので、プレッシャーをかけることを意識しながら、自分たちのサッカーを崩さずにプレーするということを心掛けていました。内容としては苦しい時間もありましたが、自分たちの時間もあったので、悪い試合内容ではなかったと思います。

――先ほど苦しい時間があったとおっしゃられていましたが、先制点を挙げてから相手にボール保持される時間が何度かありましたが、どのような要因があったと考えますか

 苦しい時間帯から自分たちの時間帯をつくるというパワーが足りなかったというのは一つですけど、相手が外でボールを回している分には自分たちは問題ないという認識があったので、自分たちにとって嫌な回され方をされたのではなく、ボールを持たせていたとポジティブに捉えています。ただ後半立ち上がりの失点は、自分たちにとって悪い流れで失点するという課題が出た場面だと思います。

――落としてはいけない試合で勝てないというところで、今年の早稲田の弱さを象徴する試合になったと思いますが、いかがですか

 本当にその通りで、今年の自分たちの課題である隙の部分を突かれての引き分けなので、自分たちの普段からの意識が足りなかったと思います。こういうところを突き詰めていかない限りは1部昇格や優勝には届かないと思いますが、残り2試合あるので切り替えてチームとして意識高くやっていきたいと思います。

――これからの試合に向けた意気込みをお願いします

 他力ではありますが(昇格の)可能性はあるので、その可能性を信じてチームの課題に向き合いながら、2試合勝つことでチームとして良いかたちで終われるように練習から意識高くやっていきたいと思います。

MF小松寛太(教4=東京・早実)

――今の心境をお聞かせください

 終盤にああいったかたちで追い付かれてしまって、情けないという気持ちでいっぱいです。

――相手が2位の関東学院でしたが、どのような準備をして試合に臨んでいましたか

 相手の順位関係なしに、自分たちは残り3戦を全勝して昇格に向けて向かうということを掲げていたので、相手は2位ですごくいいチームでしたけど、そこはリスペクトしながらもしっかり勝つという気持ちでやっていました。

――得点シーン振り返っていかがでしたか

 伊勢(航、社3=ガンバ大阪ユース)の顔が上がったタイミングでうまく動き出して、裏に抜けた後、冷静にキーパーの位置を見て決めれたなという感じです。

――落としてはいけない試合を勝ち切れなかったところで、今年の早大の弱いところが出てしまったように感じるのですが、いかがですか

 本当にその通りで、こういう試合を勝ち切れないといけないですし、それはここ1年を通してまだまだ解決しきれてない部分だと思います。それでもまだ2試合あってチャンスはあると思うので、しっかり切り替えて準備をしていきたいです。

――ここからの試合に向けて意気込みをお願いします

より難しくなりましたけど、可能性がある以上、全力で全員でチーム一丸となって頑張っていきたいなと思います。