昇格争いのライバル・日体大との一戦は互いに勝ち点1の痛み分け 残り3試合で2位との勝ち点差は8と自動昇格は絶望的に

ア式蹴球男子
関東大学サッカーリーグ戦 2部 第19節
早大 1-2
1-0
日体大
【得点】
(早大)19’駒沢直哉 72’鈴木大翔
(日体大)35’工藤駿 45+1’松原海斗

 10月も終わりに差し掛かり、リーグ戦も佳境を迎えている。前節、青学大に4-0と快勝し順位を5位に上げた早大。試合前の時点で自動昇格圏と勝ち点6差、1部参入プレーオフ出場圏と勝ち点5差と残り4試合で4連勝が求められる中、今節は昇格を争う日体大との一戦に臨んだ。試合は立ち上がりから早大がボールを保持する時間が続く。すると19分にコーナーキックからFW駒沢直哉(スポ3=ツエーゲン金沢U18)が決め、先制に成功する。その後は一進一退の攻防が続くが、35分に左サイドを崩され失点。さらにアディショナルタイムにも左サイドからコントロールショットを決められ、前半だけで逆転を許してしまう。それでも後半に入り再び流れを取り戻した早大は、途中出場のMF平野右京(人4=兵庫・滝川)を中心に左サイドからチャンスをつくる。そして迎えた72分、左サイドの森の絶妙なクロスにFW鈴木大翔(スポ1=ガンバ大阪ユース)が飛び込み同点に追い付く。その後も波状攻撃を仕掛ける早大。ピッチを広く使い両サイドから果敢に相手ゴールへと迫るが、相手GKの好守もあり追加点は奪えず。試合はそのまま終了。2-2の痛み分けに終わり、昇格に向け手痛い一戦となった。

 

試合後の選手たち

 立ち上がりから試合の主導権を握ったのは早大。自陣でのビルドアップで相手のプレスをいなし、徐々に相手ゴールへと迫る。そして19分、コーナーキックを獲得すると森のボールに合わせたのは駒沢。タイミングの良いヘディングシュートは、ゴール前で相手DFに当たってコースが変わりゴールネットへと吸い込まれた。先制に成功した早大だったが、その後は相手DFに対応され決定機をつくるまでには至らない。特にチームのストロングポイントでもある左サイドの森の突破が封じられ、流れは徐々に日体大へ移る。すると35分、左サイドの折り返しに合わされ同点に追い付かれてしまう。さらに前半アディショナルタイムにも左サイドから中へのカットインを許すと、弧を描く見事なシュートを決められ逆転される。立て続けの失点で一気にビハインドとなり前半を終えた。

 

先制点を挙げた駒沢。これで今シーズン11得点となった

 昇格に向け勝ち点3獲得が至上命題の中、苦境に立たされた早大は後半開始から怒涛の攻撃を見せる。まずは48分に森のフリーキックからDF安斎颯馬(社3=青森山田)がバイシクル気味に合わせるも、これは枠外へ。52分には前線でボールを収めた駒沢の柔らかいパスを受けたMF植村洋斗副将(スポ4=神奈川・日大藤沢)が、ワントラップから右足を振り抜くがGKの正面をつく。さらに55分、植村がディフェンスラインの裏にボールを供給すると、これに駒沢が反応。一気に背後へ抜け出しGKと1対1の場面をつくるが、シュートは惜しくもゴール前で相手DFにクリアされ、同点弾とはならない。それでも攻撃に拍車をかけるべく早大は60分に平野を投入。するとその後は、左サイドを起点にピッチを広く使い得点の機会を伺う。しかし62分のMF山市秀翔(スポ2=神奈川・桐光学園)のミドルシュート、70分の森のクロスからの駒沢のヘディングは、いずれも相手GKに防がれてしまう。そんな中、迎えた72分、最終ラインからDF神橋良汰(スポ3=川崎フロンターレU18)が縦パスを入れ、これを受けた山市が左サイドの森に展開。森はタイミングを見計らいグラウンダーで丁寧なクロスを上げると、ファーサイドにいた鈴木が飛び込み同点に追い付く。このゴールで勢いに乗った早大はさらに攻勢を強める。直後の73分、自陣から植村が一気にボールを運び平野へとスルーパス。平野は飛び出してきた相手GKより先にボールに触り折り返すが、これは味方には合わず。79分には、コーナーキックのこぼれから植村、山市、安斎とボールをつなぐ。安斎は右サイドからクロスを上げると中で待っていた駒沢がドンピシャのヘディングを放つが、相手GKのファインセーブに阻まれこれもゴールネットを揺らすことができない。さらに86分、ペナルティエリア手前で植村からのダイレクトのパスを受けた山市が中に折り返すと、ここに入り込んできた安斎がワンタッチでシュート。しかしこれも枠の左に外れてしまう。その後も果敢に攻め続けた早大。6分と長いアディショナルタイムの中でも再三チャンスをつくるが決め切ることができず。後半だけでシュート13本を放つ猛攻を見せるが、試合は2-2のまま終了。上位陣との勝ち点差を詰められず、痛恨のドローゲームに終わった。

 

2試合連続ゴールを決めた鈴木

 何としても勝利が欲しい一戦ではあったが、ホーム・東伏見で痛恨のドローゲーム。今節も露呈してしまったのが、シーズン通しての課題の一つである「最後、誰が決め切るのか」といった部分だ。確かに駒沢、鈴木と2トップを任された二人は得点を挙げたが、スコア的には2失点も喫し2-2で終了。兵藤慎剛監督(平20スポ卒=長崎・国見)が掲げる毎試合3点以上取るという目標にも届かず、最後決め切るべきチャンスを決め切れなかったという印象が強い。後半戦に入り8戦負けなしで来ているが、その内5試合が引き分けに終わっている。相手より1点多く取る、その1点をどうしても取り切れないというのが今の早大の現状だろう。この試合を終えリーグ戦は残り3試合。首位・駒大、2位・関東学院大が共に勝利したため自動昇格圏の2位との勝ち点差は8に開き、自動昇格は絶望的な状況となってしまった。ただまだ昇格の可能性が消えたわけではない。1部参入プレーオフに出場できる3位との勝ち点差はまだ5と、射程圏内ではある。「諦めないことで何かを起こせるのはもう自分たち自身でしかない」と兵藤監督。「目の前に残された3試合を全て勝つことでしか自分たちは結果を変えることができない」と森。とにかく早大に求められることはここからの3連勝。まずは次節、ホーム・東伏見での今季ラストゲームで2位の関東学院大を撃破するしかない。1点に泣く試合が多い後半戦、もう一度自分たちの課題と向き合い、切れかかっている「昇格」という糸を手繰り寄せ、何としてでも1年での1部復帰を成し遂げてほしい。

(記事 髙田凜太郎 写真 板東萌、熊谷桃花)

 

早大メンバー
ポジション 背番号 名前 学部学年 前所属
GK ヒル 袈依廉 スポ3 鹿児島城西
DF 安斎 颯馬 社3 青森山田
DF 中谷 颯辰 基理4 静岡学園
DF 27 神橋 良汰 スポ3 川崎フロンターレU18
DF 森  璃太 スポ4 川崎フロンターレU18
MF 福井 寿俊 文構4 東京・国学院久我山
→81分 24 伊勢 航 社3 ガンバ大阪ユース
MF 10 ◎植村 洋斗 スポ4 神奈川・日大藤沢
MF 14 山市 秀翔 スポ2 神奈川・桐光学園
MF 15 東  廉 スポ3 清水エスパルスユース
→60分 22 平野 右京 人4 兵庫・滝川
FW 26 鈴木 大翔 スポ1 ガンバ大阪ユース
→79分 奥田 陽琉 スポ4 柏レイソルU18
FW 18 駒沢 直哉 スポ3 ツエーゲン金沢U18
◎=キャプテン
監督:兵藤慎剛(平20スポ卒=長崎・国見)

関東大学サッカーリーグ戦2部 順位表
順位 大学名 勝点 試合数 得点 失点 得失差
駒大 40 19 12 41 21 20
関東学院大 38 19 12 50 25 25
山梨学院大 35 19 10 37 19 18
立正大 32 19 32 21 11
早大 30 19 40 24 16
日体大 29 19 30 29
順大 27 19 30 32 -2
立大 26 19 22 27 ー5
産業能率大 25 19 10 30 34 -4
10 青学大 21 19 26 32 -6
11 作新学院大 11 19 14 16 49 -33
12 亜大 18 15 10 51 -41
第19節終了時点
関東大学サッカーリーグ2部 昇格争いの行方
  チーム 勝点 得失差 第19節(10/29) 第20節(11/5) 第21節(11/12) 最終節(11/18)
1 駒大 40 +20

VS作新学院大

(◯4-0)

VS山梨学院大 VS立大 VS産業能率大
2 関東学院大 38 +25

VS立正大

(◯3-2)

VS早大 VS産業能率大 VS山梨学院大
~~1部自動昇格圏~~
3 山梨学院大 35 +18

VS青学大

(△0-0)

VS駒大 VS順大 VS関東学院大
~~1部参入PO出場圏~~
4 立正大 32 +11

VS関東学院大

(●2-3)

VS日体大 VS青学大 VS亜大
5 早大 30 +16

VS日体大

(△2-2)

VS関東学院大 VS亜大 VS順大
6 日体大 29 +1

VS早大

(△2-2)

VS立正大 VS作新学院大 VS立大
青字は直接対決
コメント

兵藤慎剛監督(平20スポ卒=長崎・国見)

――試合全体を振り返っての感想お願いします

 相手のウィークポイントをつくというところで、いつもと立ち位置を変えてスタートして、前半にしっかり点を取れたというのはチームの狙い通りだったところはあります。ただ2失点というところは、少し緩さが出たなと思います。

――駒沢直哉選手(スポ3=ツエーゲン金沢U18)と鈴木大翔選手(スポ1=ガンバ大阪ユース)を2トップ気味に並べたのは、日体大への対策でしたか

 イメージは変わらずに、しっかり出して受けて3人目が関わりながら連動しながらゴールへという超攻撃的なサッカーは継続しつつ、相手が3バックでの弱さがもろに見えてたので、よりシンプルにビルドアップというところも最悪抜け道がチームとしてあるところを提示しながら、前半は相手が体力ある分、マンツーマンでしっかりと(マークに)ついてきましたけど、剥がせたシーンもたくさんありました。後は最後のところのラストパスの質だったりというところで、もっと点は取れるシーンはつくれたのかなと思うので、攻撃に関してはそこをもう1回追求し直すところかなと思います。

――失点はどちらとも左サイドを崩されたかたちになってしまいましたが、そこはどう振り返りますか

 相手のストロングの18番が速いというのを、入りで璃太(森璃太、スポ4=川崎フロンターレU18)が1回止められたシーンで誰もが分かったと思うので、そこでどうやって相手を止めるのか。縦を止めて中にカットインされた時に、ボランチを含めた横のスライドが遅かったり、横に行かせたくないのだったら切り方を中からもっと伝えれば、縦に行かせてクロスボールが上がっても中で勝てる相手の選手はいないので、2、3通りは守り方はあるかなと思っていました。中にカットインさせてもいいという選択をしたのだったら、あのシュートコースは1人目か2人目でフィルターにしっかりならないといけないというところで、ただ人がいてなんとなく守れているという感覚がまだまだあったと思います。シュートは確かにいいシュートでしたけど、あそこからあんなシュートをあの角度に打たれるというのはコースを切れてないということなので、あの人数がいて決められるのだったら守備がいないのと一緒だということはハーフタイムにも伝えましたし、そこに対して後半はしっかりと何もさせなかったというのは良かったです。ただもったいない失点がこういった苦しい結果になったり、もう1、2点取れるチャンスを自分たちでつくっても取り切れないというのが年間を通しての課題なのかなというところではあるので、それが最後までできなかったというところで引き分けだったと思います。これで昇格に向けてかなり厳しくなったというのは、現実的な数字で見てもそうですけど、ただ可能性がある限りやるしかないと思っていますし、積み上げたものをしっかりできてきているとは思うので、あとはどう結果に反映させていくかというところです。諦めないことで何かを起こせるのはもう自分たち自身でしかないので、そこはもう昇格どうこうというよりは自分たちとしっかり向き合って、自分たちのプレーをしっかり残りの3試合やるだけかなと思います。

――前半は左サイドを封じられた中で、後半、平野右京選手(人4=兵庫・滝川)の投入から左サイドからの攻撃が増え、結果的に同点弾にもつながりました。そこは狙い通りでしたか

 関係性から崩すかスピードタイプを入れて崩すかというところで迷って、ただ、相手の疲弊の仕方だったり、スペースの開け方と相性がいいだろうというところで、右京を信頼して入れたというところではチャンスをつくってくれたなというシーンがありました。多分、右京自身も感じていると思いますが、もう1個何かできたかなというところがあるので、そこはやっぱり個人の課題としてもチームとしてももっとやれることがあったよねというのを両方見ながらやっていくしかないと思います。(平野を入れた)選択については全然後悔はないです。

――兵藤監督がシーズン中、ずっとおっしゃられている最後に誰が決めるのかというのがまたも出てしまった試合になったと思いますが、そこについてはいかがですか

 今日、FW2人がしっかり点を取ってくれたというのは素晴らしいことだなと思います。ただやっぱり、こういった拮抗(きっこう)した試合だったり、勝たないと次に進めないという試合ではそこで誰がヒーローになるじゃないですけど、強いチームにはやっぱりエースストライカーが絶対にいると思います。今のJリーグを見てもそうですけど、1位と2位のチーム(のエース)は得点王争いをしています。(早大では)確かに駒沢が今(得点ランキングの)上位にいてというところはありますけど、じゃあ、2人目、3人目が何点取ってるのというところでは、まだまだ4、5点ぐらいなので、2桁得点があと1人ぐらい出てこないといけないですし、それが出ないのだったら1人で突き抜けたりするようなやつがいるチームの方がやっぱり圧倒的に強いと思うので、そこはアプローチしていきながら、チームとして今日(チャンスが)5本で入らなかったら、10本のチャンスをつくれるようなチームづくりをしていくしかないと思うので、両方からアプローチしたいなと思います。

DF森璃太(スポ4=川崎フロンターレU18)

――試合を振り返っての感想をお願いします

 前半の入り方を良くしようという中で、立ち上がりはプレッシャーをかけて先制点を取れたことは良かったのですが、そこで少し気が緩んで2点取られて、前半ビハインドで折り返してしまったというのは課題だと思います。

――先制点を挙げた後、相手がボール保持する時間が続き、森選手の守る左サイドから2点奪われたが、どのようなミスマッチや要素が失点につながりましたか

 全体的に後ろに重くなりすぎて、ボールに対しアプローチやプレッシャーがかかりきらない中、エリア外からフリーでシュートを打たれてしまいました。2点共、同じようなかたちで失点したので、そうした場面での修正力が足りていないと感じます。

――前半とは一転、後半は森選手を中心に左サイドから攻撃を展開する場面が増えたが、チームとしてどのような変化を意識したのですか

 前半は自分がかなり低い位置でボールを受ける回数が多かったので、後半は自分が高い位置を取ってボランチを一枚落とすようにした結果、高い位置でボールを受ける回数が増えアシストにつながりました。

――チームの2点目となった鈴木選手(鈴木大翔、スポ1=ガンバ大阪ユース)のゴールへのアシストを振り返ってください

 自分がボールを受けた瞬間に相手のキーパーとディフェンスラインの間が空いていたので、大翔に合わせるというより、その間に誰か入ってくれという思いで速いボールを出した結果、大翔が決めてくれました。

――リーグ戦も残すところ3節となりましたが、これからに向けた意気込みをお願いします

 今節引き分けたことでかなり(昇格の)状況は厳しくなりましたが、目の前に残された3試合を全て勝つことでしか自分たちは結果を変えることができないので、次の関東学院との試合に向けてチーム全員で取り組んでいきたいと思います。

MF福井寿俊(文構4=東京・国学院久我山)

――試合を振り返っての感想をお願いします

 前半で狙い通り先制点を取ることができたことは良かったのですが、その後2失点してしまったとことは非常に反省すべき点かなと思います。それでも後半、点を取ることができる自信は僕たちにはあったので、そこで切れずに攻撃し続けたことは良かったのですが、あと一歩足りなかったのかなという印象です。

――日体大は3バックを採用するチームでしたが、どのような戦い方を想定していましたか

 相手が3バックということもあって、こちらが前に特徴のある選手を出せば、食いついてくれて、割と2枚に収まるのではないかなといったイメージはありました。つなぎながらも難しそうだったら、駒沢(直哉、スポ3=ツエーゲン金沢U18)と鈴木(大翔、スポ1=ガンバ大阪ユース)が特徴のある選手なので、そこで一度収めてから一回押し込むというのが一つの戦い方としてあったかなと思います。

――先制した中で、前半で逆転される苦しい展開でしたが、ハーフタイムではどのような声掛けや指示がありましたか

 失点自体は特に崩されたということはなかったのですが、もう少しボールに寄せることを行っていこうと話していました。攻撃の部分に関しては、焦れずにやっていれば絶対に点は取れるとみんなで話し合ってはいたので、点が入らなくても焦れずにやり続けることは意識していました。

――10月に入ってからスタメンが増えてきていますが、その要因は何だと考えていますか

 (調子に)波がある選手ではないので、自分の特徴であるリズムをつくるであったり、テンポをつくることなどの攻撃やゲームを作る部分は評価されているのかなと思っています。

――セカンドボールの回収やパスを散らすところで存在感を発揮されているように見受けられましたがどのようなことを意識していましたか

 (早大は)両サイドバックに特徴がある選手が多くて、どんどん前に行ってくれるのでそこが強みでもあると思うのですが、その分カウンターにおいては、両サイドバックが上がった分のカバーは後ろのセンターバック含め自分もやらないといけないです。今日の試合において比較的取れていたことは良かったのかなと思います。

――残りの試合の意気込みをお願いします

 残り3試合しかなくて、全部勝たないと昇格はもちろんないですし、若干他力の部分もあるかもしれないですが、最後まで自分たちを信じて、自分たちのサッカーをして3勝して終わりたいなと思っています。