チャンスをつくるもあと一点が遠く 首位立正大との敵地での大一番はドローゲームに終わる

ア式蹴球男子
関東大学サッカーリーグ戦 2部 第15節
早大 0-1
1-0
立正大
【得点】
(早大)77’中谷 颯辰
(立正大)6’青野 翔太

  夏の総理大臣杯全日本大学トーナメントを経て1カ月ぶりのリーグ戦となったア式蹴球部(ア式)。再開初戦の相手は試合前、関東2部首位の立正大。試合はまたも課題の立ち上がりで失点すると、前半はア式攻撃陣がゴールを脅かすことができず、終始立正大ペースのまま0-1で折り返す。後半は一転して兵藤慎剛監督(平20スポ卒=長崎・国見)も「この内容なら負けない」と語るほどア式ペースに。立て続けにゴールに迫ると、77分セットプレーからDF中谷颯辰(基理4=静岡学園)のゴールで同点に追い付く。勝ち点3を取りに行かなければならないア式は、さらに攻勢を強めたもののフィニッシュの精度を欠き、ゴールを奪うことはできず1-1の引き分けで試合を終えた。

 

中谷の得点後に喜ぶ部員たち

 前半は立ち上がりから立正大ペースで進む。4分には前回の対戦でも崩された左サイドで裏を取られてクロスを上げられるが、なんとかシュートをブロック。しかし6分、相手のスローインからボレーシュートを決められて、またしても立ち上がりで失点をしてしまう。その後すぐに同点に追い付きたいア式は徐々にボールを保持し始めるがなかなかチャンスをつくることができず。10分にはDF森璃太(スポ4=川崎フロンターレU18)、32分にはMF小倉陽太(スポ4=横浜FCユース)がシュートを放つもゴールには結び付かなかった。守備陣は押し込まれるシーンが続くもGKヒル袈依廉(スポ3=鹿児島城西)の好セーブなどもあり、なんとかピンチを防ぎ前半を0ー1で終える。

 

戦況をみつめるDF増田健昇(スポ2=横浜FCユース)。久しぶりのリーグ戦出場で硬さもあったというが、冷静なプレーを見せた

 同点、さらには逆転を目指すア式は後半、立ち上がりからいきなりチャンスをつくる。48分、途中出場DF安斎颯馬(社3=青森山田)のクロスにFW鈴木大翔(スポ1=ガンバ大阪ユース)が頭で合わせるがこれはキーパー正面に。続くプレーではキーパーからのビルドアップに対して高い位置からプレッシャーをかけると、MF植村洋斗副将(スポ4=神奈川・日大藤沢)が相手ディフェンスからボールを奪う。そのまま切り返してシュートを放ったが惜しくも相手キーパーの好セーブに阻まれてしまった。それでもチャンスはまだ続く。56分、安斎のクロスが相手選手に当たりコースが変わると、それをうまく収めたMF小松寛太(教4=東京・早実)がシュートを放つも、これは相手ディフェンスにブロックされてしまう。会場は雨脚が強まり難しいコンディションになる中、お互いにチャンスをつくりながらも決定的なシーンは訪れないまま時間が進んでいく。試合が動いたのは77分、左サイドでフリーキックを獲得するとキッカーは森。すると森のゴールに向かっていくボールに反応した中谷が、うまくヘディングで合わせるとボールはゴール左に吸い込まれていき、ここでついに同点に追い付いた。勝ち点3を獲得するために果敢に攻めるア式は80分に途中出場のMF福井寿俊(文構4=東京・国学院久我山)、81分に同じく途中出場のFW駒沢直哉(スポ3=ツエーゲン金沢U18)がそれぞれ決定機を迎えるも枠を捉えることができず。試合はこのままタイムアップを迎えた。守備陣が随所で好守を魅せて後半は危険なシーンはほとんどなかったものの、あと一点が遠く敵地での大一番は1ー1の引き分けに終わった。

 

ドリブルをする小松。後半開始からの出場で試合の流れを変えた一人となった

 「圧倒的に攻撃する」。(兵藤監督)今年のア式が目指すサッカーを後半は存分に見ることができただけに、勝ち点3を奪うことができなかったのが悔しい試合となった。総理大臣杯以来の久しぶりの公式戦ということもあり序盤から緊張からか少し硬さも見られた。その中で、課題である立ち上がりから再び失点をしてしまったのは昇格に向けて向き合わなければならない大きな課題の一つだろう。それでも今日の後半のようなサッカーをチーム全員が自信を持って立ち上がりから発揮できれば、簡単に勝ち点を落とすことはないはずだ。「周りから見てる人からも早稲田が強いなってわかるくらいのサッカーをつくり上げて昇格まで」と中谷。チーム全員が強い心を持って、自分たちの積み上げてきたサッカーを信じて、残り7試合で勝ち点21をつかんでほしい。そして最後に笑えるように、ア式の1部昇格への戦いはいよいよ終盤戦へ突入していく。

(記事 和田昇也 写真 板東萌、三浦佑亮)

 

 

早大メンバー
ポジション 背番号 名前 学部学年 前所属
GK ヒル 袈依廉 スポ3 鹿児島城西
DF 30 藤本 隼斗 スポ4 柏レイソルU18
→HT 安斎 颯馬 社3 青森山田
DF 25 増田 健昇 スポ2 横浜FCユース
DF 中谷 颯辰 基理4 静岡学園
DF 森  璃太 スポ4 川崎フロンターレU18
MF 24 伊勢  航 社3 ガンバ大阪ユース
MF 小倉 陽太 スポ4 横浜FCユース
→71分 福井 寿俊 文構4 東京・国学院久我山
MF 10 ◎植村 洋斗 スポ4 神奈川・日大藤沢
MF 14 山市 秀翔 スポ2 神奈川・桐光学園
→90+1分 29 佐々木 奈琉 社2 新潟・帝京長岡
MF 17 本保 奏希 スポ2 JFAアカデミー福島
→HT 11 小松 寛太 教4 東京・早実
FW 26 鈴木 大翔 スポ1 ガンバ大阪ユース
→54分 18 駒沢 直哉 スポ3 ツエーゲン金沢U18
◎=キャプテン
監督:兵藤慎剛(平20スポ卒=長崎・国見)

関東大学サッカーリーグ戦2部 順位表
順位 大学名 勝点 試合数 得点 失点 得失差
駒大 32 15 10 31 19 12
立正大 31 15 27 12 15
関東学院大 26 15 34 23 11
山梨学院大 25 15 21 14
日体大 25 15 22 20
早大 22 15 30 21
産業能率大 22 15 24 24 -1
順大 21 15 24 24
立大 20 15 18 21 -3
10 青学大 14 15 21 26 -5
11 作新学院大 15 11 11 37 -26
12 亜大 15 11 28 -22
第15節終了時点
コメント

兵藤慎剛監督(平20スポ卒=長崎・国見)

――試合全体を振り返っての感想をお願いします

前半は0点の試合をしてしまいました。(失点が)1点だけで済んで良かったなというぐらいの内容でしたが、具体的な修正点でそもそものメンタルというところを伝えて、後半だけ実践できるということは、そもそも(前半から)できると思います。(リーグ戦が)再開したので、緊張感とかが悪い方に引っ張られたのかなというところではありますが、そういうことも言ってられるような現状ではないので、最低でも後半の出来を次はスタートからできるようにやっていきたいです。後は最後の決め切るところだったり、後半に関してはほぼほぼやられるシーンもないみたいな感じでした。あのぐらいのゲーム展開にしていかないといけないですけど、結局、誰が最後決めるのというところや、前進する意欲が前半は全くなかったので、そういう部分では何のためにサッカーしてるの、というところをもう1回トレーニングから追求していきたいと思います。

――総理大臣杯が終わって1カ月が経ちましたが、この期間で取り組んできたことはどのようなことですか

個人のベースや体力だったり、守備や攻撃のクオリティを上げるところ。後は今年は圧倒的に攻撃するというところで、また3点取れるようなチームをというところのクオリティも追求したのですが、今日も1点しか取れなかったです。ただ、崩しのかたちなどは、ある程度できましたし、クロスからの最後のところは個の力になってしまうので、そこは個に向き合ってもらい、チームとしてはこの倍ぐらいチャンスをつくれるようにもう1回仕上げていくしかないかなと思います。

――積み上げてきたことや取り組んできたことはそれなりに出たという印象でしたか

後半だけですね。けど、試合は90分通してなので。前半のところが0だったら、やっぱり全然で、テストの点数だったら50点だと思います。そう考えると、やっぱりこちらの練習に対する促し方というのも、ウォーミングアップのところから隙なく試合を始めるというところで、ピリッとした雰囲気をどうやってつくり出していくかというのは来週に向けての課題だと思います。

――後半内容を改善することのできた要因はどういったところでしたか

自分たちでメンタルに火を点けれたというか、今回の場合はこっち側から火を点けたことが多かったと思いますが、やはりボールをただ奪われないことだけに固執したりしてしまって、自分たちはボールを失っても前進してゴールを奪うアクションを常に起こせていなかったです。ボールを受けたくないみたいな雰囲気を出して、それだったらもう違うサッカーをすればいいとなってしまいます。メンバー交代とその意図をしっかり汲み取ってくれて、学生がしっかり動いてくれたというところはポジティブかなと思いながらも、まだまだ人に言われないとできないというところでは、感度を含め成長しないといけないなとは思います。

――シーズン通して立ち上がりのところの課題はありますが、どう修正していきたいですか

シンプルにミスしたくない、ボールを受けたくないというところが多かったですし、チャレンジしない、ボールをつけないからチームの動きも出てこなかったです。アバウトでも前進するという意思があればチームに前向きなエネルギーがつくはずなのに、誰もそれをつけれないというのがこのチームの弱さなのかなと思います。それを監督、コーチからつけられているようじゃ、やらされているサッカーになると思うので、外池大亮さん(平9社卒)の体制でも積み上げてきた主体性に対しての自分たちの感度がまだまだ足りないです。サッカーはそもそも自分たちで判断しないといけないスポーツなので、トレーニングではしっかり積み上げたものを試合に向けてやっていくし、試合になった時にはそうじゃない判断もあると思うので、それを自分たちでどれだけ自信持って遂行できるか。メンタルの自信だったり、ミスに対しての臆病さおいうのは、もっともっとこっちからも取っていかないといけないです。ミスを過剰に恐れすぎないというところですかね。

――昇格に向けては残りの試合で勝ち点40位まで積み上げる必要があると思いますが

そうですね。(今節の前の時点で)マックスで取れて24でした。これで22しか取れない。最高でいけて43だと思う5で、そこを目指すというところは全然ぶれないですし、後半ぐらいの内容でやれば負けないと思っているので。そこのところは負けないチームから、今度は絶対に勝てるチームというのをまた目指していきたいなと思います。

DF中谷颯辰(基理4=静岡学園)

――試合全体を振り返っての率直な感想をお願いします

シンプルに勝てた試合だったと思います。前半の立ち上がりの部分、スローインでプレーがちょっと切れたところでのコンビネーションだったり距離がちょっと離れてしまったというところで隙を見せて、その一発をやられてしまったという印象です。その中で前半は最後の10分くらいまではほとんどいいシーンがなくて、何とか0-1で折り返せたという感じです。 悪い中でも0-1で折り返せたというのは、前期では連続2失点とかがあった中で、かろうじて前半の良かった部分だったと思います。後半はみんなが思っていたと思うのですがもっと点を取れましたし、本当に勝てるような内容でしたし、あれを前半からできていればもっと圧倒できたなという試合だったかなと思います。

――ケガからの復帰戦になったと思うのですが、コンディションの方はいかがでしたか

全国大会に向けて調整してた部分はあったのですが、やっぱりまだ痛みがあったりコンディションが上がらない力が入りにくい部分があった中で、全国大会は終わってしまいましたけど、そこからもう1回モチベーションをつくり直して、リーグ戦に向かって上げることができたので、ある程度コンディションはしっかりつくって今日の試合に臨めたかなと思っています。

――立ち上がりのところでやられてしまったのがシーズン通しての課題であった中で、今日もやられてしまったと思いますが、どこが及ばなかった部分だと思いますか

後半はゴールキックのところからハメに行こうとしていましたが、そういうのを前半からやろうと話していた中で、それをチームとしてどのタイミングでハイプレスに移行するかとかどこまで行かれたら1回引いていいのかというところを発揮できていなかったです。その分、選手間の距離が開いたり、スローインの中でちょっとコミュニケーションが取れてなかったりとかが、前半の失点だったり全体的な悪さにつながったなと思います。

――途中雨が降ってピッチコンディションも悪かったと思います。その中で後ろからのビルドアップは徹底していましたが、意識されていましたか

シーズンを通して(ビルドアップは)やろうと話をしています。グラウンドが正直いいとは言えない状況でしたけど、めげずにやったので何回かいいシーンもありましたし、後半の勢いにつながってきたのかなと思います。

――増田健昇選手(スポ2=横浜FCユース)とセンターバックのコンビを組むのはリーグ戦では初めてでしたが、コミュニケーションの取り方やコンビネーションのところはいかがでしたか

増田もトップでの公式戦経験が少ない中で、自分がリーダーシップを取って先導していくということを意識してやれましたし、彼もすごく積極的に声を出せる選手なので、そこは僕も信頼して2人で守ることができ、良かったなと思います。

――勝ちたかった中、敵地で首位相手に勝ち点1を得る結果となりました。ここからの試合にどのようにつなげていきたいですか

 負けないことは優勝争いに残るために一番大切だと思うので、どんな難しい試合でも今日の後半みたいに前から自分たちのサッカーをして、自分たちのペースで1試合勝ち切るところをより練習から突き詰めていきたいと思いますし、周りから見てる人からも早稲田が強いなって分かるくらいのサッカーをつくり上げて優勝・昇格までやっていきたいなと思います。

DF増田健昇(スポ2=横浜FCユース)

――試合全体振り返っての感想をお願いします

 前半の立ち上がりで失点して、監督も言っていましたが前半は保守的なプレーが多くて自分たちのいいプレーを出せていなかったです。後半はどんどんチャレンジしていく姿勢を見せて、最後の方はずっと自分たちが相手のコートに押し込んでできたので良かったと思います。その分、今日はしっかり勝ち切りたかったです。

――立ち上がりすぐにやられてしまってその後も立正大に押し込まれる展開が続きましたが、チームの課題である立ち上がり含め、前半はどのように捉えてますか

 うまくいかない時間帯は多く続きましたけど、自分たちがやること変えずに耐える時間を耐えることがしっかり統一できていたので、みんな焦らずいけたから、ああいう押し込また状況でも抑えることができたのだと思います。

――立正大のFWの選手が飛び出してくるシーンが多かったと思いますが、何か立正大のフォワード対策で取り組んだことはありますか

 立正大のFWは速くて強いというイメージがありました。それに怖がって引いちゃうと、どんどんその選手に預けられてしまうので、自分たちはハイラインを意識してずっと試合をやった中、そのハイラインで怖がらずに相手を止めるってなっていました。

――後半は高い位置で跳ね返して、ア式の時間が続きましたがご自身で何か前半と後半で変わったと思う部分はありますか

 守備のハイプレスでボランチがあまり出ていないところが多かったので、そこを自分がもう少し押し出して生かしたりすることで、自分たちのラインを上げることができました。

――ビルドアップの部分で後ろからつなぐシーンも多くありましたが、何かご自身で狙いはありますか

 今年はボールを自分たちで大事にして、相手のコートに侵入していくというのを続けてきた中で、蹴ってしまうのは楽かもしれないですけど、早稲田のサッカーを体現するという意味でも、自分の長所を出す意味でも、しっかりつないでやっていくことで、確実に相手のゴールへ迫れたのかなと思います。

――個人としても久しぶりのリーグ戦出場になりましたがコンディション等はいかがでしたか

 そうですね。もう半年間、悔しい時間が続いて。やるせない期間とかもありましたが、しっかりやることを変えずにやってきて、今日も緊張気味なところがあった中、しっかりリフレッシュしながらできたのがいい入りにつながったのかなと思います。

――もう昇格に向けて落とせない試合が続きますが今後に向けての意気込みをお願いします

おっしゃる通りで、負けられない試合が続くと思うので、チームで良い方向に持っていけるように練習からやっていきたいと思います。