兵藤早稲田、日本一への戦い開幕。3ー0の快勝発進

ア式蹴球男子
第47回総理大臣杯全日本大学トーナメント 1回戦
早大 1-0
2-0
立命大
【得点】
(早大)23,56’植村洋斗、72’本保奏希
(立命大)なし

 6、7月のアミノバイタルカップにて関東3位という好成績を収め、4大会ぶり21回目の総理大臣杯全日本大学サッカートーナメント(総理大臣杯)の出場を決めたア式蹴球部(ア式)。1回戦の相手は6大会ぶり9回目の出場、過去には総理大臣杯にて優勝経験もある関西地区第3代表立命大となった。前半の立ち上がりから鋭い攻撃を見せたア式は、23分にMF植村洋斗副将(スポ4=神奈川・日大藤沢)の見事なミドルシュートで先制し、リードで前半を折り返す。後半開始早々にPKを獲得し追加点を奪うと、相手選手の退場によって数的有利に立ったア式は途中出場のMF本保奏希(スポ2=JFAアカデミー福島U18)が3点目を決める。試合はそのまま終了。全国大会の初戦を3ー0の快勝で終えた。

 

先制点となるシュートを放つ植村

 前半の立ち上がりからチャンスを多くつくったのはア式だった。6分、DF森璃太(スポ4=川崎フロンターレU18)のコーナーキックにMF小松寛太(教4=東京・早実)が頭で合わせたが惜しくもシュートは横に外れてしまう。続く12分には後ろ向きでボールを受けたFW奥田陽琉(スポ4=柏レイソルU18)が反転して強烈なシュートを放つもキーパー正面に。一方、守備ではピンチになりそうな局面でMF伊勢航(社3=ガンバ大阪ユース)が立て続けに好守を見せる。試合が動いたのは23分、MF山市秀翔(スポ2=神奈川・桐光学園)が中央でボールを受けるとドリブルで相手選手をかわしてフリーになっていた植村にパス。「ボールを受けて前を向いた時にシュートのイメージがあった」(植村)と、その言葉通りペナルティーエリアの外でボールを受けた植村は素早く反転すると迷いなくシュートを選択。右足から放たれたボールはゴール左上に突き刺さりア式は先制に成功する。その後は立命大に攻め込まれたものの、体を張った守備で前半を1点リードで終えた。

 

喜びを分かち合う部員たち

 後半の立ち上がりも立命大にいくつかチャンスが訪れたが、ア式ディフェンス陣の集中した守りで凌ぐ。すると54分DF平松柚佑主将(社4=山梨学院)がハーフウェーライン付近から縦に鋭いパスを入れると、DF石川真丸(スポ3=名古屋グランパスU18)が相手左サイドバックの裏をとってボールを受ける。「自分でゴールに行こう」(石川)と意気込んだ石川に対して相手選手はたまらず後ろから手が出てしまった。ペナルティーエリア内で石川は倒されてア式はPKを獲得する。さらにこのプレーで相手選手は決定的な得点機会を阻止したと判定され、レッドカードをもらい退場になった。このPKを植村がゴール左下に沈めて追加点を奪う。数的優位に立ったア式は試合を決定づけるための3点目を目指し、さらに攻勢を強める。68分には途中出場DF藤本隼斗(スポ4=柏レイソルU18)の左サイドからのクロスに同じく途中出場のFW駒沢直哉(スポ3=ツエーゲン金沢U18)が頭で合わせるも、ボールは惜しくも枠を捉えることができず。迎えた72分、中盤でボールを持った植村が右サイドで待つ山市に展開。山市はボールをツータッチで前線に送るとそこにいたのは本保。「絶対に出してくれると思って動き出した」と語る途中出場の本保は、後ろから来たボールをワンタッチで右足を振り切ると、ニア上を撃ち抜く見事なゴールでア式は3点目を奪い試合を決定づけた。その後もゴールに迫るが追加点を奪うことはできず、試合はそのまま3ー0で終了した。

 

PKを獲得する石川

 全国大会初戦という難しい試合。少し硬くなるところも見られたがそれでも幸先良く先制点を取り、数的優位を生かしながら追加点を奪い、さらには無失点での勝利。もちろん課題もあるが好発進だ。選手同士で声を出さずともイメージが共有できている攻撃、今日のような守備の強度は全国の舞台でも十分脅威になるだろう。2回戦の相手は関学大、今年春に行われた兵藤早稲田の初陣、早関定期戦にて敗れた相手だ。「早関戦でやられているのをやり返さなきゃいけない」と兵藤慎剛監督(平20スポ卒=長崎・国見)。関西トップクラスの強豪に対して、ここまでの半年間で積み上げてきたものがどう発揮されるか、積極的なチャレンジを続けて目の前の相手に勝ち続けてほしい。今季の目標である日本一に向けて、ア式の夏が始まった。

(記事 和田昇也 写真 髙田凜太郎、安岡隼人)

 

早大スターティングイレブン

早大メンバー
ポジション 背番号 名前 学部学年 前所属
GK 16 山田 怜於 社4 神奈川・鎌倉
DF 石川 真丸 スポ3 名古屋グランパスU18
DF ◎平松 柚佑 社4 山梨学院
DF 小倉 陽太 スポ4 横浜FCユース
DF 森  璃太 スポ4 川崎フロンターレU18
→66分 12 藤本 隼斗 スポ4 柏レイソルU18
MF 10 植村 洋斗 スポ4 神奈川・日大藤沢
MF 24 伊勢  航 社3 ガンバ大阪ユース
→74分 福井 寿俊 文構4 東京・国学院久我山
MF 14 山市 秀翔 スポ2 神奈川・桐光学園
MF 26 成定 真生也 スポ3 神奈川・日大藤沢
→56分 17 本保 奏希 スポ2 JFAアカデミー福島
MF 11 小松 寛太 教4 東京・早実
→78分 27 光田 脩人 スポ3 名古屋グランパスU18
FW 奥田 陽琉 スポ4 柏レイソルU18
→66分 18 駒沢 直哉 スポ3 ツエーゲン金沢U18
◎=キャプテン
監督:兵藤慎剛(平20スポ卒=長崎・国見)

コメント

兵藤慎剛監督(平20スポ卒=長崎・国見)

――試合を振り返っての率直な感想をお願いします

 トーナメントの初戦なので硬くなることは想定内でしたし、その中で給水タイム前に植村(洋斗、スポ4=神奈川・日大藤沢)のミドルシュートで先制できたことは、これまで意識させたことなどが少しかたちになって出たところとして良かったです。けど、まだまだ紙一重だったとは思います。相手が退場してちょっと余裕が出たというところはありながらも、まだまだだというところをチーム全体としてもう1回認識しながら、次がさらに大事になってくるので、また気を引き締めてコンディションを戻してやりたいなと思います。

――今まだまだだというお話しがありましたが、具体的にどのような点で物足りなさを感じられましたか

 ボール奪った後の判断というところで、(大きく)蹴る練習はしていないのにただ蹴るだけになってしまう時間帯が結構ありました。もっと余裕があるのにというところで、自分たちがやってきたことをやり続けないといけないのに、きついとかやばいという感覚があったからか、パスをつながない、自分たちがやってることをやらなかった時間帯があったので、そこに関しては自分たちがしてきたことにチャレンジすることが大事ですし、別にサッカーはミスのスポーツだと思っているので、それをどう成功に自分たちでしていくかというところだったり、チャレンジしない限り成長はないと思っています。ボールをどのタイミングでつなぐとか、そういう判断のところをもう一段階上げていければなと思います。

――逆にこの試合で体現できたところはどこですか

 守備です。攻撃のトレーニングを基本的半年間積み上げてきている中で、アミノの時や今回の総理大臣杯の直前週間くらいは守備に特化してトレーニングしてきました。やはりそこがしっかりとかたちになっているというところではありますし、その中で攻撃のかたちというのも失わないようにしています。元々染みつかせてきてた部分はありつつも、その守備の強度だったりバランスの取り方というところが、良くなったのかなというふうには思います。

――無失点で終われたところには手応えを感じているということですね

 そうですね。失点が0というところに手応えがありながらも、前提として(守備陣形を)コンパクトにする意識だとかラインコントロールというところが、細かくできるようになりましたし、相手にボールを持たれた時の全員の準備というところが、重心のかけ方とかを含め少し感度が上がったのかなと思います。

――中1日で関学大戦です。春の早関定期戦では敗れた相手ではありますが、どのように次の試合に臨みたいですか

 今言われた通り早関戦でやられているのをやり返さなきゃいけないというのは一番にあります。ただ、関西で1、2番に強いチームなので、そこに対してどれだけ自分たちがチャレンジできるのか。関東2部でも別に倒せるというところをしっかり証明したいですし、噛み合わせ的には正直悪くないような相手だと思うので、そこに対して自分たちがこれまで半年で積み上げたものをしっかりぶつけて、やり切るというところだけにフォーカスしたいなと思います。

MF植村洋斗副将(スポ4=神奈川・日大藤沢)

――試合を振り返っての感想をお願いします

 初戦だったので、まずは結果というところで、立ち上がり相手にちょっと押される時間帯が続きましたけど、前半1点取れて折り返してそこから自分たちのペースで持っていけたので、いい初戦の勝ち方だったかなと思います。

――全体のゲームプランはどのようなものでしたか

 初戦だったのでいつも通り立ち上がり15分はプレッシャーをかけようというところで入りました。けど、やはり暑さだったりで、なかなかうまくいかなかったりしましたけど、相手に1人退場が出たので、そこからうまくゲームの終わりまで、ゲームをつくれたかなと思います。

――1点目は素晴らしいミドルシュートでしたが、あのゴールを振り返ってください

 ボール受けて前を向いた時にシュートというイメージがあったので、それがうまく当たってくれて、ゴールまでいったので良かったです。シュート練習というのは今年取り組んでいる部分であるので、それが一つ結果となってうれしいです。

――PKを含む2ゴール。今年は結果を残すと言ってきた中で、最近ではゴールやアシストに絡むことが多くなっていますが

 今シーズンは結果にこだわると言ってやっていてそれがかたちになっているので、 間違いなく自分の特徴にもなりつつありますし、本当に大事なところでもっともっと点を決められる選手になりたいなと思います。

――シーズン前からハイプレスを中心にやっていた中で、この試合は完全にはめるシーンこそ少なかったものの、随所に効果的なプレスが見られましたが手応えはいかがでしたか

 そうですね。ハイブレスというのはずっと掲げてきてはいます。でも、ハイプレスでうまくはまっているかと言ったら、まだまだはまってないかもしれないです。まず、かけるという意識と、その後の切り替えであったりとか、そういう意識は練習から強く言われてきている部分ではあるので、全体として強度も高くなってきましたし、本当にいい取り組みができているのかなと思います。

――中1日で関学大戦になりますが、どのように臨みたいですか

 本当に冷静になって、苦しい試合続きますけど自分たちのサッカーをやれば勝てると思いますし、次の相手も強いかもしれないですけど、まずは自分たちのサッカーをやるというところです。トーナメントなので、結果というところにこだわって、また点を取れればいいかなと思います。

DF石川真丸(スポ3=名古屋グランパスU18)

――試合を振り返っていかがですか

 全国初戦ということもあってみんな硬い入りにはなったと思いますが、植村(洋斗副将、スポ4=神奈川・日大藤沢)がいいかたちで点を取ってくれて、そこからは結構相手に攻め込まれるところもあった中で、ゴール前でみんな体を張って前半0で抑えられたというのは良かったなと思います。

――やはり入りの硬さがあったんですね

 想定通りではあったので、そこは改善していかなければいけないですけど、それでも無失点で終われたのは良かったかなと思います。

――立命大に対する特別な対策はありましたか

 特にはないですけど、セットプレーのところは大事にしていたのでそこはもうちょっと取りたかったなっていうのはあります。あとは自分たちのサッカーをやるだけだとみんな思っていたので、3点取れたというのは良かったです。

――前線からのプレスが相手のミスを誘っている印象がありましたが

 立命館が結構前からのプレスで前半に失点しているという分析があって、監督からも最初前から行って点を取ろうという話があったのでそこはうまく行ったところかなと思います。

――前半相手が積極的に裏のスペースを狙ってきていましたが

 僕のサイドの背後を取りにきていて、そこは山市(秀翔、スポ2=神奈川・桐光学園)と松君(平松柚佑主将、社4=山梨学院)と連携して、一個引いて背後を取らせないというところは意識していました。

――PKを獲得したシーンを振り返っていただけますか

 松君から僕への背後っていうのは試合中にも結構あって、松君がフリーで(ボールを)持っていたので、ここは思い切って走って相手の裏を取ろうと思っていました。いいボールが来たので、あとは自分でゴールに行こうと思って運びました。

――相手が10人になってからも積極的な仕掛けを見せていました

 2点、3点自分たちはもっと取れると思いますし、そこで引かないっていうところで自分たちの攻撃的なサッカーを体現できたらなと思っていました。

――最後に次戦に向けての意気込みをお願いします

 関西学院大学は早関戦でも負けた相手なので、かなり強い相手ですし、粘り強く戦ってくると思いますけど、今の自分たちなら必ず勝てると思うので、みんなを信じてチーム一丸となって絶対勝ちたいと思います。

MF本保奏希(スポ2=JFAアカデミー福島U18)

――試合を振り返っていかがですか

 前半から出ていた人たちが本当に頑張って戦ってくれましたし、全員でつかみ取った勝利だなと思います。

――後半途中からの出場になりましたが、どういった気持ちで試合に入りましたか

 自分が出た時は既に2-0で勢いを持っていた状況で、そこを落ち着かせるっていうところと、その中で3点目、4点目を取りに行くところも判断をして思い切ってやってこいと(監督から)言われていたので、そこで自分が入って3点目を決めて試合を決定づけられたのは良かったかなと思います。

――得点シーンを振り返っていただけますか

 山市(秀翔(スポ2=神奈川・桐光学園)がボールを持った時に絶対に出してくれると思って動き出しました。ボールを受けた時に山市から振れっていう声が聞こえたので思い切って振った結果ゴールにつながって良かったなと思います

――トップ下での起用でしたが

 自分は今までだったら左サイドをやっていたんですが、左サイドだけでなくてトップ下だったりいろんなポジションをできるっていうところも自分の良さだと思っていて、監督に求められていることを今日はできたので良かったです。

――最近ケガがあったんでしょうか

 はい、足首のケガがあって、なかなかコンディションも上がって来なくて、自分の中で結構難しい状況でした。その中でも今日こうやって使ってもらって得点という結果を残すことができたそこは良かったかなと思います。

――今日は球際の部分などで特に気持ちが入っているように見えましたが

 そうですね。仲間が活躍している姿を見ている時間があって、本当に自分もチームに何か貢献したいという気持ちがあったので、気合は入っていました。

――最後に次戦への意気込みをお願いします

 またチーム一丸となって、全員で勝利をつかみ取りたいなと思います。