2日、日本クラブユース選手権の決勝が行われ、FC東京U18を破ったガンバ大阪ユースが2007年以来の優勝を飾った。そこで今回は、ガンバ大阪ユースの優勝記念特別企画として、ア式蹴球部でガンバ大阪ユースOBの二人、MF伊勢航(社3=ガンバ大阪ユース)とFW鈴木大翔(スポ1=ガンバ大阪ユース)に対談をしていただいた。実際に現地にも観戦に行っていたというお二人に、ガンバ大阪ユースの優勝についてや、自身のガンバ大阪ユース時代について、また「ガンバ大阪」というクラブについての思いなどを伺った。
※この取材は8月4日に行われたものです。
一つ下の後輩とか去年まで一緒にやっていた選手が優勝したのは本当にうれしかった(鈴木)
ガンバ大阪ユース時代のユニフォームを着る伊勢(左)と鈴木
――ガンバ大阪ユースの優勝を知って率直な感想をお願いします
伊勢 率直に「おめでとう」と思います。ずっと全国で勝てていなかったので、そこは素直にOBとしてうれしいなという気持ちでした。
鈴木 「おめでとう」だと思います。去年いろいろあった中、今年優勝できて、一つ下の後輩とか去年まで一緒にやっていた選手が優勝したのは本当にうれしかったです。
――お二人とも現地で観戦されましたか
伊勢 準決勝は見に行きました。決勝はYouTubeで見ていたのですが、現地に行けば良かったなと思いました。
鈴木 僕は準決勝と決勝の両方行きました。
――一緒に見に行ったのですか
伊勢 いや、大翔は…。
鈴木 ユース時代の同期と行きました。
伊勢 自分も(ユース時代の)同期を誘ったのですが断られて…。一人で端っこで見てました(笑)。
――実際に見て今のガンバ大阪ユースはどのように映りましたか
伊勢 基本的にずっとガンバが大事にしている「止めて蹴る」、パスサッカーというのは変わっていないなと思いましたし、技術で相手を圧倒するサッカーをしているなと思いました。
鈴木 めっちゃうまいなと思いました(笑)。結構、今年は小さい選手が多いんですけど、体格差がある中でも、技術とかではがして、そういう部分は誰が見ても分かるところなので、めっちゃうまいなと思いました。
――鈴木選手は決勝を現地で見られていたと思います。スコア的にもすごい展開でしたが、見ていてどう感じましたか
鈴木 もう鳥肌がやばかったです(笑)。雰囲気とかもすごくて、1-2になった後、終盤に同点に追いついたんですけど、その得点がめちゃくちゃうまくて、ゴール裏とバックスタンドにいる人みんなが立っていて、そのくらいすごかったです。
――伊勢選手は配信で見られていましたがいかがでしたか
伊勢 食堂でご飯を食べながら見ていて、一人で変な声出してました(笑)。
一同 (笑)
伊勢 周りの人がちょっと引いてたくらいで(笑)。部屋でパソコンつけて見てた時は、同部屋の駒沢直哉(スポ3=ツエーゲン金沢U18)も一緒に見ていて、2人で盛り上がっていました。
――知っている選手はいましたか
伊勢 自分が高校の時に、ガンバの寮は中学生から入れるので、その時にいた子が出てました。なので、知り合いは2、3人くらいという感じですけど、ちょこちょこユースは見ていたので、自分が一方的に知っている選手がいました。
――鈴木選手は一個下に当たる代が出場していたと思いますが
鈴木 みんなめちゃくちゃ頑張ってましたね(笑)。結構仲が良いので、メッセージとかでも「頑張れ」とか言ってやり取りしていたので、本当に良かったです。
――実際に現地に行ってお話された方とかいましたか
伊勢 自分はサポーターの方とは話しましたし、強化部長の松波さん(松波正信氏、現ガンバ大阪アカデミーダイレクター)。後、湘南ベルマーレの監督の山口智さんは、自分がU23にいた時にお世話になったので、智さんとも会うことができたので、お二方と喋りました。
――山口さんがいらしていたのですか
伊勢 息子がガンバにいるんだよね?
鈴木 はい。
伊勢 だから見に来ていたのだと思います。
――鈴木選手はいかがでしたか
鈴木 自分は松波さんと、トップのスカウトの青木さん(青木良太氏)、後はサポーターの方と、決勝の後にスタッフや選手と話しました。
――最初には「おめでとう」という言葉がありましたが、自分たちの時にはなしえなかった高校年代での優勝という部分に悔しさはありましたか
伊勢 自分は代がかぶっていないので、代がかぶっていたら悔しさがあったのかもしれないですけど、悔しさとかは本当になく、ガンバのために勝ってくれてありがとうという感じでした。
鈴木 おめでとうという気持ちもありましたけど、やっぱり自分たちの代で優勝できなかったのは悔しかったなと思いました。
――刺激を受けた部分はありましたか
伊勢 刺激はめちゃくちゃ受けました。
鈴木 FWの子が結構得点を取っていて、得点ランキングは2位だったのですが、うまかったので学ぶ部分もありました。
今の自分があるのは森下さんのおかげ(伊勢)
第11節産業能率大戦で得点を決めた伊勢(左)と伊勢に駆け寄る鈴木
――ここからはお二人のユース時代についてのお話を伺います。伊勢選手が高校3年生の時、鈴木選手が高校1年生というかたちでしたが、印象はありましたか
伊勢 大翔が中3の時に全国優勝をしていて、その代が強い中でも、特に2トップが2人とも代表のコンビだったので、すごいやつが来るみたいな(笑)。
鈴木 (笑)
伊勢 そんな感じだったんですけど、実際自分が高3はJ3に行っていて、そんなに一緒にプレーする機会がなかったので、ちゃんとプレーを一緒にしているなというのは今年が初めてですね。
鈴木 僕はU23の試合を見ていたので、すごい選手だなとずっと思っていました。
――前、鈴木選手に伺ったこともありますが、早稲田大学に進学することが決まった時点で連絡を取ったという感じでしたか
鈴木 そうです。結構いろいろ聞かせてもらいました。
伊勢 関西の大学と早稲田で迷っていたので、絶対早稲田来た方が良いよというのは言いました。
――早稲田を推した理由は何かありましたか
伊勢 自分的に関西にいるより関東にいる方が成長できるかなと思っていて、ユースから関東に出てくる人も少ないので、そこは背中を押してあげたいなと思って、めちゃくちゃ押しました(笑)。
――かなり押されましたか
鈴木 だいぶ押されました(笑)。
――お二人にとってのユース時代の一番の思い出は
伊勢 サッカーしかしてないですね。全寮制の中で結構寮が厳しくて、門限は9時、10時で、携帯没収とかもあって、本当にサッカーしかしていないというイメージですね。
鈴木 僕もサッカーしかしていないという印象ですね。去年プレミアリーグから降格してしまって、思い出ではないですけど、それがすごく心残りです。
――ユースの選手は学校との両立はどのようなかたちになるのですか
伊勢 通信制の高校と提携していて、基本的に平日は二部練なので、その合間に2時間だけ学校に行く感じで。勉強とかもあまりしないので、両立というレベルではないです。練習場が寮から自転車で3分とかなので、練習終わったら寮に帰ってご飯食べて。学校が自転車で3、40分くらいとちょっと遠いので。それで2時間くらいいて帰ってきて、その後練習みたいな感じでした。
――ガンバ大阪ユースではどのような練習をするのですか
伊勢 大翔の方が覚えていると思うので、大翔に任せます。
鈴木 火、水は朝走って、午後にきつい練習をやって、木、金はゲームとかをやってという感じです。
――ガンバ大阪ユースの練習は厳しめでしたか
鈴木 だいぶ激しかったと思います。
伊勢 みんながうまくて、必然的に競争があるので、そこで激しくなるという感じでした。
――伊勢選手はU23のチームに帯同されていることも多かったと思いますが、U23の時は基本的にはU23の練習という感じでしたか
伊勢 完全にU23の方の練習でやっていて。U23の練習がない時はユースで練習するという感じです。そこで少し気を緩めれるはずだったんですけど、U23の監督がユースの練習も見に来ていて、全然手が抜けなかったです(笑)。むしろ圧をかけられている感じでした。
――ユース時代一緒にやっていて印象的だった選手はいましたか
伊勢 同期の唐山翔自(ガンバ大阪)ですかね。飛び級でプロに上がって、同じ同期として「すげえな」という思いと、やっぱり悔しかったので、印象に残っていますし、今はプロではあまり活躍できているわけではないですけど、そこでくすぶりながらも頑張っている姿に刺激をもらっています。
鈴木 僕は特にいないですけど、ユースからプロにはいかなかったですけど、拓殖大学に行った吉原優輝という選手が攻撃がめちゃくちゃうまくて、こっちに来ても全然やれるレベルなので、こんな選手がいたんだなと(笑)。こっちに来て思いました。やっぱりパス受けやすかったなと思います(笑)。
――指導者で印象的だった方はいらっしゃいましたか
伊勢 自分はやっぱり森下さん(森下仁志氏)です。あの人がいなければ今の自分はいないと思っているくらいしごかれました。練習がめちゃくちゃきつかったのですが、その分サッカー選手として成長できましたし、人としての部分もめちゃくちゃ言われたので、今の自分があるのは森下さんのおかげかなと思います。
――具体的な言葉や指導で印象的だったものはありましたか
伊勢 ずっと口酸っぱく自分に対してではないですけど、みんなに…。何だっけ(笑)。
鈴木 素直に謙虚にひたむきに。
伊勢 そうやった、ナイス(笑)。「素直に謙虚にひたむきに」 ということは口酸っぱく言われていて、ユース年代の人は結果出したりするとすぐ調子乗っちゃったりとかするんですけど、そこでおごらずにちゃんと地に足付けて頑張れよとメッセージだったなと。今思うとすごかったです。
――鈴木選手はいかがでしたか
鈴木 僕は森下さんと大黒さん(大黒将志氏、現ガンバ大阪アカデミーストライカーコーチ)です。森下さんには日頃からいろいろ言われていたのですが、「1日のトータルで自分を勝ち越せ」という言葉が印象的でした。大黒さんは「どんなゴールでも1点は1点だから、常にどんなボールでもゴールを取れ」と言われていて、そこは常に意識してやっています。
――FWとしては大黒さんみたいなJリーグでも実績のある選手が身近にいた環境というのは大きかったですか
鈴木 シュート練習とかも一緒にやっていて、大黒さんが一番うまくて(笑)。見て学ぶことも多かったですし、大黒さんのゴール集とかも一緒に見たりして、めちゃくちゃうまかったです。
――そういったプロで経験豊富な方がコーチとしている環境というのはユースならではの部分でもあると思いますが、そこはご自身にとっても大きかったなと思いますか
伊勢 そうですね。やっぱり大学に来てそれはより一層感じています。大学は自主性とかが重んじられるのですが、ユースの時は技術面とか毎プレー毎プレー言われていたりして、それはプロの選手の経験があるから言っていただけることだと思うので、そこはすごく感謝しています。
鈴木 プロの世界の厳しさというのは、ユースにいる時から監督から言われたりしてすごく感じていたので、そこはやっぱり大きいのかなと思います。後は航君も言っていたのですが、一本一本にこだわりを持ってというのは特に言われて、そういったことはこっちではないので、こっちに来てからより感じます。
――他にユースにいたからこそ今生きているなと感じることは何かありましたか
伊勢 自分がパッと思いついたのは規則正しい生活です。さっきもちらっと言ったのですが、10時過ぎには携帯没収されて、11時には完全消灯みたいな、朝も6時半くらいにみんなで起きてご飯食べて掃除してという生活だったので、高校3年間で規則正しい生活が送れたので、今はそれが体に染みついて規則正しい生活が今も送れていると思います。
鈴木 最後の一本までこだわるというところが身についたと本当に感じています。こっちにきてそこまで厳しく一本一本言われることはないのですが、その一本が勝負を分けるというのはJリーグを見ていてもそうですし、こっちに来ても感じることなので、そういう細かいところをサボらずやるというのは身に染みてます。
――先ほどからお話に挙がっていますが、寮では携帯没収などという厳しい規則は今でもあるのですか
鈴木 僕の時もありました。ただ、今は変わったらしくて、オフの日とかは携帯回収ないらしいです。
伊勢 あー…。ちょっと気に食わないですね。
一同 (笑)
――今年からということですか
鈴木 そうです。寮を管理する人が変わって、(規則も)変わったらしいです。
――そういう生活は正直いかがでしたか
伊勢 最初は嫌でしたけど、慣れというか。自分は携帯を回収する役割だったので、みんなに「はよ、出せ」という感じで。
鈴木 自分はコロナもあってお風呂の時間が決まってたりしたのが嫌でしたね。筋トレとか自主練とかしたくても、お風呂の時間が決まっているから早く帰らないけないみたいな。それはちょっと嫌でした。
やっぱりJリーグでプレーするならガンバが良い(伊勢)
アミノバイタルカップ3位決定戦でプレーする伊勢
――早稲田に来てからさまざまなクラブのユースや高校から来ている人に出会ったと思いますが、改めてガンバ大阪ユースの他とは違う魅力って何だと思いますか
伊勢 技術がしっかりしているなと感じでいます。それは自分自身が早稲田に身を置いて、自分がガンバで培った技術力というのは武器だなと感じますし、それは2個上の匠君(丹羽匠、令5スポ卒=現AC長野パルセイロ)であったり大翔を見てもそれは感じるので、技術面っていうのは他のJユースだったり、高体連より優れているなと大学に来て感じます。
鈴木 航君とか、ものすごくうまくてめっちゃやりやすいんですけど。
伊勢 (照)
鈴木 やっぱりガンバならではのプレーというか、縦パスが来たり、こっちに来てもどこに行ってもガンバの選手はうまいので、それは僕もガンバユース出身の責任みたいなのも感じます。
――ガンバ大阪は最近トップチームの監督が変わることが多かったと思いますが、そのトップチームの監督交代はユースの方にどのくらい影響があるものですか
伊勢 U23の時は影響を結構感じていました。それでトップに引き抜かれる選手もいたので、U23の時は結構嫌だなと感じていたのですが、ユースはもう自分たちがどういうサッカーを志向するのか根付いているので、特に影響はなかったなという印象です。
鈴木 影響はなかったと思います。でも去年はユースからケガ人とコロナの感染者が多くて、たまにユースからトップチームに抜かれて練習に参加するのですが、そういう時は練習に波みたいなものがあって大変でした。強度とか違っちゃうので。
――伊勢選手が今おっしゃられていましたが、監督やトップチームの方針が変わっても、ユースのやるサッカーは変わらないなという感じでしたか
伊勢 そうですね。そこはもうある種の文化みたいな感じがあると思うので、それはどの指導者の方も志向しているサッカーは一緒なので変わらないですね。
――攻撃的にという感じですか
伊勢 うまく言語化はできないですけど、攻撃的にパスサッカーというイメージです。
――改めてガンバ大阪というクラブに対しては今どのような思いがありますか
伊勢 一度離れてみて、やっぱりガンバが好きだなと感じますし、毎試合DAZNで見ますし、ユースの試合結果やYouTubeのハイライトもチェックしますし、好きなんだなと思います。
鈴木 もう一緒で(笑)。こっちに来てガンバってかっこよかったなって思ったり、偉大さというのを改めて感じます。
――今後プロを目指す上で、ガンバ大阪でプレーしたいなという思いはありますか
伊勢 やっぱりJリーグでプレーするならガンバが良いと思いますし、それこそU23でガンバのサポーターに後押しされた部分もあるので、そこはもう一回ピッチ上で味わいたいなと強く思います。
鈴木 僕もガンバに帰りたくて。ガンバの応援はめちゃくちゃかっこいいので、その中でプレーしてみたいなと思います。
――ガンバ大阪ユースはクラブユース選手権で優勝しましたが、リーグ戦ではプレミアリーグ昇格に向けた戦いが続くと思います。そうした戦いに臨む後輩たちにメッセージをください
伊勢 プリンスに落としたのはこいつ(鈴木)のせいなので(笑)。だからそこは先輩のせいにして良いと思います。やっぱりクラ選(クラブユース選手権)で勝って、良い弾みがついてると思いますけど、自分たちも早稲田でカップ戦は勝ちあがったけど、リーグ戦は別の難しさがあるなと感じますし、そこはプリンスリーグでも同じだと思いますし、そこは慢心することなく一戦一戦、戦ってほしいなと思います。
鈴木 絶対にユースの選手の方がうまいと思うので、自分たちのサッカーを貫いて頑張ってプレミアに昇格してほしいと思います。
――最後にお二人はガンバ大阪ユースから早稲田大学という道を選ばれました。後輩たちに向けて進路選択において、何か伝えたいことはありますか
伊勢 自分は大学を選べるなら関西から飛び出て違う環境に身を置きたかったので早稲田を選んで、結果的に自分は満足していますし、多分関西の方が居心地は良いと思うのですが、そこを出てみないと分からないものもあると思いますし、違う環境に出てみることで成長できる部分もあると思うので、早稲田を視野に入れてほしいなと思います(笑)。日本一を獲ったので、進路選択の部分でも他の大学や早稲田に来やすくなったと思うので、これを読んでくれているユースの子にはぜひ早稲田に来てほしいなと思います。
鈴木 関東の方がレベルが高いと言われているので、その(レベルの)高い中でやりたいと思ったのが(自分が早稲田に来た理由の)一つです。でも自分が出れるチームに行くのも良いと思いますし、そこは自分の考え方で決めたら良いと思います。
――ありがとうございました!
(取材、編集 髙田凜太郎、永田怜)
◆伊勢航(いせ・こう)(※写真左)
2002(平14)年7月17日生まれ。172㌢66㌔。ガンバ大阪ユース出身。社会科学部3年。ガンバ大阪の入場の際に歌われる応援歌が好きという伊勢選手。いつ聞いても鳥肌が立つあの応援歌を、ガンバ大阪の選手としてまた聞きたいという思いが強いそうです!
◆鈴木大翔(すずき・ひろと)
2004(平16)年4月8日生まれ。174㌢、66㌔。ガンバ大阪ユース出身。応援歌では『俺たちが大阪さ』がかっこよくて好きだという鈴木選手。昨年、プレミアリーグでのセレッソ大阪とのダービーの際に聞いたのがとても印象的だったそうです!