終了間際にまさかの失点 主導権握るも痛恨のドローゲームに

ア式蹴球男子
関東大学サッカーリーグ戦 2部 第12節
早大 0-0
1-1
山梨学院大
【得点】
(早大)46’山市 秀翔
(山梨学院大)90+5’吉長 由翔

  前節リーグ戦4試合ぶりの勝利を手にしたア式蹴球部(ア式)。後期の初戦となる今節は、山梨学院大との対戦となった。今シーズン3度目の対戦。アミノバイタルカップでは逆転勝利を収めたが、リーグ戦前期の戦いでは0-2と敗れ、今シーズン唯一の完封負けを喫している相手だ。試合は序盤から早大がボールを握る展開となり、MF植村洋斗副将(スポ4=神奈川・日大藤沢)やMF伊勢航(社3=ガンバ大阪ユース)らを起点に何度か決定機を迎えるが、なかなか得点を奪うことができない。それでも、0-0のまま迎えた後半、キックオフ直後にMF山市秀翔(スポ2=神奈川・桐光学園)がネットを揺らし先制に成功。その後の相手の攻撃に対しては体を張った守備を見せゴールを許さない。しかし、このまま1-0で試合終了かと思われた90+5分、ラストプレーでまさかの同点ゴールを許し1-1に。後期の初戦は非常に悔しく、そして手痛い引き分けとなってしまった。

 

後半戦初戦はまさかの引き分け。「この一瞬でこの悔しいで終わらせたくない」(兵藤慎剛監督、平20スポ卒=長崎・国見)とここからのさらなる成長が求められる

 この試合、前半から主導権を握ったのは早大だった。7分、DF神橋良汰(スポ3=川崎フロンターレU18)の鮮やかなロングパスを受けた右サイドのDF藤本隼斗(スポ4=柏レイソルU18)がクロス。一度は相手ディフェンダーに阻まれるが、これを拾った植村が藤本とのパス交換から深い位置へ入り込み、ゴール前へグランダーのボールを供給。このボールに飛び込んだFW駒沢直哉(スポ3=ツエーゲン金沢U18)には惜しくも合わなかったが、立ち上がりから好機をつくり試合の流れをつかむ。22分、センターサークル付近でボールを受けた植村から伊勢、そして左サイドのDF森璃太(スポ4=川崎フロンターレU18)、MF本保奏希(スポ2=JFAアカデミー福島)とつなぎクロス。このボールを駒沢が落とし、最後はMF成定真生也(スポ3=神奈川・日大藤沢)がシュートを放つがここはキーパーに阻まれる。さらに29分には、伊勢の完璧なクロスに、ファーサイドでフリーになった山市が頭で合わせるがシュートは枠の上へ。ビッグチャンスを決め切れなかった早大。0-0で前半を終える。

 

今季初先発の藤本。昨年までとは逆の右サイドバックでの先発出場となった

 迎えた後半、開始早々貴重な先制点を奪ったのは山市だった。46分、右サイド中央寄りの広いスペースでボールを受け前進すると、エリア内で斜めに走り込んだ駒沢に預ける。そのボールを駒沢がヒールで落とすと、これに走りながら右足で合わせネットを揺らした。山市はこれでリーグ戦2試合連続のゴール。その後は相手に攻め込まれる時間帯もあったが、DF平松柚佑主将(社4=山梨学院)、DF神橋良汰(スポ3=川崎フロンターレU18)を中心に体を張った守備を見せゴールを許さない。また、攻撃ではMF平野右京(人4=兵庫・滝川)、FW鈴木大翔(スポ1=ガンバ大阪ユース)ら交代選手を使いながら追加点を狙う。78分、山市のスルーパスを受けた鈴木がエリア内で難しい角度からシュートを放つがこれはキーパーの正面。81分には、高い位置でボールを奪った平野がエリア付近で倒されフリーキックを獲得。キッカー伊勢の左足から放たれたボールは相手に当たり、わずかにゴール左へ逸れた。再三相手ゴールに迫りながらも追加点を挙げることができなかった早大。このまま1ー0で試合終了かと思われた90+5分、悲劇が起こった。相手のロングスローから最後はエリア内で強烈なシュートを放たれまさかの失点。これがラストプレーとなり、1ー1で痛恨の引き分けとなってしまった。

 

2試合連続ゴールを決めた山市

 「試合の内容で言うと圧倒的に勝ち試合」と、今季初先発となった藤本。2点3点取れる、いや取るべき試合内容であったことは選手たちの共通認識としてもあるだろう。また、シーズンを通して課題となっている立ち上がりの改善や、徹底した球際の集中力、強度の高さなど良い要素が随所で見られただけに、試合終了間際の失点は悔やまれる。「決めるべき時に決めないとこういうことがあるよというのはサッカーの怖いところで、みんなそこは理解できていると思います」と兵藤監督。前節のように内容が悪い中で勝つこともあれば、今節のように一瞬の隙を突かれ勝利を逃すこともある。それがサッカーだ。ただ、一部昇格に向け追い込まれつつある今、勝つ確率を上げていかなければならないことは事実。悲劇的とも言える幕切れとなった今節だが、指揮官は既に次を見据えていた。「(今は)めちゃくちゃ悔しいですけど、終わってしまったこと言ってもしょうがないので、もう前を向いて、また来週の頭からしっかりやっていきます」。過去の結果を変えることはできない以上、この試合が持つ意味は、これから先の一戦一戦が示してくれることになるだろう。

(記事 安岡隼人 写真 板東萌、田中瑠花)

 

 

早大メンバー
ポジション 背番号 名前 学部学年 前所属
GK 21 山田 怜於 社4 神奈川・鎌倉
DF 30 藤本 隼斗  スポ4 柏レイソルU18
→85分 石川 真丸 スポ3 名古屋グランパスU18
DF ◎平松 柚佑  社4 山梨学院
DF 神橋 良汰 スポ3 川崎フロンターレU18
DF 森  璃太 スポ4 川崎フロンターレU18
MF 24 伊勢  航 社3 ガンバ大阪ユース
→89分  福井 寿俊 文構4 東京・国学院久我山
MF 10 植村 洋斗 スポ4 神奈川・日大藤沢
MF 14 山市 秀翔 スポ2 神奈川・桐光学園
MF 23 成定 真生也 スポ3 神奈川・日大藤沢
→62分 22 平野 右京 人4 兵庫・滝川
MF 17 本保 奏希 スポ2 JFAアカデミー福島
→74分 11 小松 寛太 教4 東京・早実
FW 18 駒沢 直哉  スポ3 ツエーゲン金沢U18
→62分 26 鈴木 大翔 スポ1 ガンバ大阪ユース
◎=キャプテン
監督:兵藤慎剛(平20スポ卒=長崎・国見)

関東大学サッカーリーグ戦2部 順位表
順位 大学名 勝点 試合数 得点 失点 得失差
立正大 26 12 22 10 12
関東学院大 25 12 28 13 15
駒大 25 12 24 16
山梨学院大 23 12 20 11
日体大 20 12 19 18
早大 17 11 19 16
産業能率大 16 12 19 21 -2
立大 15 12 15 19 -4
順大 13 12 15 19 -4
10 青学大 11 12 13 18 -5
11 作新学院大 12 24 -15
12 亜細亜大 12 23 -18
第12節終了時点
コメント

兵藤慎剛監督(平20スポ卒=長崎・国見)※一部囲み取材より抜粋

――やはり悔しいですか

悔しいですね。やっぱり最後のところでクリアした瞬間に、ふって切れてるなというところがありました。僕ももう一声かけれたかなというところだったり、交代のタイミングをもう少し遅らせて、最後の最後に1枚時間を使うカードにしても良かったのかなとも思いました。時間の使い方含め、いい勉強をさせてもらったなというふうに捉えて、後期は無敗でいくつもりなので、そういう部分ではこれが高い授業料にならないように、前を向いてやりたいなと思います。

――立ち上がりからかなり強度が高く入ったように見受けられましたが、意識されていたことでしたか

そうですね。ベースが前期である程度出来上がったので、ここからもう1個上の段階に行くためにというところでは、 少しずつ強度も出せるようになってきたり、自分たちが元からやりたかったハイプレスも少しずつ取り組めていて、そのかたちは出てきたかなというところはあります。ただ、やっぱり90分通してというところでは、まだまだ足りないなと。今日も後半、もっともっと圧倒できればなというところだったのですが、60分ぐらいからふわっとなってしまった部分がありました。その辺りは、やりながらやれる時間を5分でも10分でも伸ばしていくっていうところだったり、交代のタイミングでもう1回パワーを出すとか、そういうところにこだわっていければいいのかなと思います。

――得点した後の戦い方については、まだまだ改善の余地があるなという印象でしたか

今日の相手の状態やこっちの状態含めると、もっと圧倒しないといけないですし、(点を取って)ふって落ち着くというよりも、もう2点、3点取って当たり前というチームを目指してるので、そういった部分では、(点を)取った後にちょっとエネルギーダウンしちゃった部分もあったので、そこはこっちとしての反省だと思います。今年、点が取れなかった試合が、唯一、0-2で負けた(前期の山梨学院大との)試合だけだったので、気持ちが入っている部分もありましたし、やっぱり決めるべき時に決めないとこういうことがあるよというのはサッカーの怖いところで、みんなそこは理解できていると思います。そういう部分で、2-0にできなかったっていうところだったり、1-0で勝ち切れない、1-0で最後締めれない、自分たちのもろさを再認識して、また次の試合に進んでいかないといけないと思います。全国大会では質が高い相手と絶対戦うことがあるので、 もっと隙のないチームにアップグレードしていくしかないのかなと思います。(今は)めちゃくちゃ悔しいですけど、終わってしまったこと言ってもしょうがないので、もう前を向いて、また来週の頭からしっかりやっていきます。

――こういった試合展開を今の内から経験できたというのは、チームとしてまた成長の糧になるところだと思いますが

そうですね。サッカーの怖さをまたしっかりと再確認させられたというところだったり、 そこまで持ってかないためのゲームプランだったり、それを遂行するための体力だったりというところも、やっぱりもう一段階上げないといけない。この一瞬でこの悔しいで終わらせたくない。やっぱりシーズン終わった時にこれが良かったと思えるためには、今後決めるべきところで決めて、もう一瞬も隙をつくらないというぐらいにしていくしかないので、難しいのは分かっていますけど、それにチャレンジしていくのがア式だと思っているので、そこはもう下を向いている暇はないです。

DF藤本隼斗(スポ4=柏レイソルU18)

――今シーズン初先発となりましたが、どのような気持ちで試合に入りましたか

 去年は試合に出れていたんですけど、今シーズンはあんまり出れてなくて、初めての先発っていうところで気合も入ってましたし、最近コンディションも上がってきたっていう感覚はあったので、絶対勝ちっていうのを最優先にプレーしようと思って入りました。

――個人としての手応えはいかがですか

 自分としては守備で強度を出したり、攻撃のポジショニングってところで相手を混乱させたりっていうのを長所としてやっているので、そこは試合中出せたのかなと思います。

――攻撃において中でボールを受けるというところはやはり意識していますか

 そうですね。自分が中に入ったり、サイドハーフの山市や本保を中に入れて、サイドで数的有利をつくるっていうのは意識してやっています。

――前半ボールを保持する中で得点を奪うことができませんでした。どんなことを考えてプレーしていましたか

 自分はサイドでAゾーンを取るってところで、相手のタッチライン付近までボールを運んでクロスを上げたいなってところからポジション取りをしていて。深くまで入ってからクロスを上げるっていうのを意識してやっていました。

――スタートは昨年までとは違い右サイドでの起用でしたが

 自分は元々左でやらせてもらってたんですけど、ビルドアップやクロスを上げるというところで、右利きなので右の方がクロスを上げやすかったり、あとは高い位置をとった時にそのままスピードを持って上がれるというところも含めて、最近は右の方がやりやすいなっていう感覚が自分の中でもあって。そこは森選手ともコミュニケーションを取りながら、左右どっちもやれるようにしています。

――前半途中で森選手と左右入れ替わりましたが、その意図は

 監督の指示で、相手のサイドハーフで結構特徴的な選手がいたので、その相手のサイドハーフに合わせて自分たちが変わったという感じです。

――山梨学院大が相手ということで、チームとして何か意識していたことはありますか

 前期の山学戦は0ー2で負けてるっていうところで、しっかりとこれまで積み上げてきたことを出すっていうのはチーム全体で意識していましたし、入りを大事にする、強くいくところをみんなが意識した結果、後半の入りで点を取れたっていうのは一つ出せたところかなと思います。

――前半の入りも良かった印象がありましたが

 そうですね。みんな前にプレーしようっていう意識がありましたし、ポジション取りも早かったので、前半の最初は圧倒できたかなっていうのはあります。

――結果としては非常に悔しい引き分けになってしまったと思います。この試合をどのように捉えていきたいですか

 試合の内容で言うと圧倒的に勝ち試合で、自分たちがボールを持っている時間っていうのは長かったですし、決めなきゃいけないチャンスも間違いなくこっちの方が多かったので、そこは練習の中で落とし込んでいくべきところだと思います。最後の失点なんかは詰めの甘さって言ってしまえば一言で終わっちゃいますけど、他にもみんながもっとやれることがあったのかなと。局所的な要因っていうよりも、全体的に俯瞰して見て改善していければいいかなと思います。

――最後に今後の意気込みをお願いします

 後期の初戦でやっとスタメンで出れたっていうところはあるので、そこは自分としてはスタメンをキープしつつ勝利に貢献できればなっていうところと、チームとしてはまだ中位にいるので、今季の目標である1部昇格っていうのを果たせるように、こっから全勝ぐらいの気持ちで行きたいなと思います。