内容では相手を上回るも ゴール前での精度を欠き今季初黒星を喫する

ア式蹴球男子
関東大学サッカーリーグ戦 2部 第4節
早大 0-0
0-2
山梨学院大
【得点】
(早大)なし
(山梨学院大)48’栃尾 瞭太 90+1’井谷 洸一郎

 関東大学サッカーリーグの開幕からここまで2勝1分と負けなしできているア式蹴球部(ア式)。引き分けに終わった前節、連勝こそ止まってしまったが、特に攻撃面において春先から積み上げてきたことの成果が見られ始めた。前節から2週間が空いて今節は山梨学院大と対戦。ア式としては、開幕から無敗の勢いを維持し、上位争いをリードするべく白星が欲しい一戦であった。試合の序盤こそ相手のプレスを前になかなかボールを運べないア式であったが、徐々に自陣でのビルドアップからチャンスをつくり出す。それでも、先制点を奪えない中、後半開始早々に一瞬の隙を突かれ失点。その後は交代カードを切り、フォーメーションを変えながら1点を追いかける。しかし、最後のところの精度を欠きゴールネットを揺らすまでには至らない。そんな中、アディショナルタイムにカウンターから痛恨の失点を喫し万事休す。0-2で敗れ、今シーズン初黒星となった。

 

今季ここまで全試合出場のDF石川真丸(スポ3=名古屋グランパスU18)。内側のポジションを取り、ビルドアップに関わるなど存在感を示した

 序盤は相手の強度の高いプレスもあり、落ち着いてボールを回せないア式。それでも、15分を過ぎた辺りから徐々にテンポ良くパスがつながるようになると、18分、MF安斎颯馬(社3=青森山田)のスルーパスに抜け出したDF森璃太(スポ4=川崎フロンターレU18)がグラウンダーでクロス。これにMF山市秀翔(スポ2=神奈川・桐光学園)が飛び込み、こぼれ球にMF東廉(スポ3=清水エスパルスユース)が反応するが、いずれも相手GKの好セーブに遭う。直後の19分にも森のクロスに再び山市が合わせるが、これも防がれる。41分には安斎が東とのワンツーでペナルティエリア内に侵入しクロスを送るが、これは味方に合わず。徐々に攻撃のかたちをつくりながらも決め切れずに前半を終えた。

 

今節も攻撃の核となった安斎

 迎えた後半、先制点を奪うべく攻勢を強めたいア式であったが、先にネットを揺らしたのは相手だった。48分、森が競り合いで倒されるが審判のジャッジはノーファウル。その流れからゴール前までボールを運ばれると、相手が放ったシュートがコースが変わりそのままネットに突き刺さる。後半立ち上がり早々の手痛い失点となった。ビハインドとなったア式は59分、パスワークで相手ディフェンスを崩し、最後はエリア内左からMF本保奏希(スポ2=JFAアカデミー福島U18)がシュート。しかし、これは惜しくも枠の外に外れた。ア式は70分、MF小倉陽太(スポ4=横浜FCユース)を投入しフォーメーションを3バックに変更。ゴール前にさらに人数をかけられるようにする。74分には、コーナーキックのこぼれ球を拾ったMF植村洋斗(スポ4 =神奈川・日大藤沢)が強烈なシュートを放つが、これは相手GKが好セーブ。続く76分には、右サイドの裏に抜け出した途中出場のDF佐々木奈琉(社2=新潟・帝京長岡)がゴール前に速いクロスを送るが、味方に合う直前で相手GKに触れられる。直後のコーナーキックには小倉が合わせるが、これはGK正面。その後もFW奥田陽琉(スポ4=柏レイソルU18)やMF松尾倫太郎(人2=千葉・八千代)といった攻撃のカードを切り、1点を追いかける。そんな中、迎えたアディショナルタイム。前がかりになったところを突かれ、自陣の右サイドを突破されると、最後はゴール前でフリーで合わされ試合を決定づけられる2点目を奪われる。そのまま試合は終了。0-2で敗れ、今シーズン初黒星を喫した。

 

パスを出す神橋

 今シーズン初黒星。さらに今季初の無得点に終わった今節。相手ゴールへと迫る場面は多くつくったが、「(チャレンジしたことでの)失敗すらも数が少なかった」と兵藤慎剛監督(平20スポ卒=長崎・国見)。「最後のゴール前の迫力のところで、ミスを恐れて後ろという選択が多かった」と佐々木。ゴールに向かうまでの一連の流れで、消極的になってしまうシーンも何度か見られた。昨シーズンからの課題である得点力の部分、兵藤監督が今季は「1試合に3点を取れるチーム」ということを掲げている中、現実はまだまだ遠い。2部という中、ア式相手に堅いブロックを敷いてくるチームもあり、そう簡単にはゴールを奪わせてはくれないはずだ。それでも、その壁を乗り越えて勝ち切れるチームでなければ、目標である昇格、2部優勝には到底届かない。毎試合3点とはいかなくても、試合を決める1点、相手よりいかにして多く点を取ることができるかが今後重要になってくる。次は2週間後の亜細亜大との一戦。今節突き付けられたいかにしてゴールを奪うのかという課題に向き合い、次節こそ確実に白星を手にしたい。

(記事 髙田凜太郎 写真 池上楓佳、近藤翔太)

 

★Column/コラム   アプローチの仕方

今季から指揮を執る兵藤監督(写真は早関定期戦の時のもの)

 外池体制から兵藤体制となり、心機一転今シーズンに臨んでいるア式。開幕戦、第2節と連勝スタートを切ったが、前節は青山学院大に引き分けると、今節とうとう初黒星を喫した。兵藤監督自身も監督キャリアをスタートさせた年である今季。最初に着手しているのは攻撃の部分だ。「今年に入ってから本当に攻撃しか取り組んでいない」と口にするほど力を入れている。その成果もあってか、今季は毎試合シュート数で相手を上回り、試合内容としても相手陣内へと押し込める時間が多い。前節や今節のように最後決め切るといったところで課題を残すが、昨季と比べるとより攻撃的なサッカーを繰り広げていることは見て分かる。一方で、「決めてあげる方が良いのかなと思う部分や、主体的にやらせる部分があった方が良いのかなというバランスがまだ取れていない」と兵藤監督。チームづくりを行っていく上で、約束事を決めることはとても重要で、しっかりとした型はつくらなければならない。それでも、監督自身が口を出し過ぎてしまうことで、大学サッカーの良さ、ア式の良さでもある「学生の主体性」が損なわれてしまう。そこの絶妙な塩梅がとても難しいのだ。この先シーズンはまだまだ続いていくが、就任1年目だからこそ、間違いなく苦しむ時期は何度も訪れる。今一つ壁にぶつかったア式をより強いチームにしていくため、兵藤監督がどういったアプローチをしていくのか、それがどう今後の戦いに反映されるのか、また一つ注目していきたい要素だ。 

 

早大スターティングイレブン

 

早大メンバー
ポジション 背番号 名前 学部学年 前所属
GK ヒル 袈依廉 スポ3 鹿児島城西
DF 森 璃太 スポ4 川崎フロンターレU18
→83分 19 松尾 倫太郎 人2 千葉・八千代
DF ◎平松 柚佑  社4 山梨学院
DF 27 神橋 良汰 スポ3 川崎フロンターレU18
DF 石川 真丸 スポ3 名古屋グランパスU18
→70分 小倉 陽太 スポ4 横浜FCユース
MF 福井 寿俊 文構4 東京・国学院久我山
MF 10 植村 洋斗 スポ4 神奈川・日大藤沢
MF 安斎 颯馬 社3 青森山田
MF 14 山市 秀翔 スポ2 神奈川・桐光学園
→56分 29 佐々木 奈琉 社2 新潟・帝京長岡
MF 17 本保 奏希 スポ2  JFAアカデミー福島U18
→75分 20 森山 絢太 スポ2 兵庫・三田学園
FW 15 東 廉 スポ3 清水エスパルスユース
→83分 奥田 陽琉 スポ4 柏レイソルU18
◎=キャプテン
監督:兵藤慎剛(平20スポ卒=長崎・国見)
関東大学サッカーリーグ戦2部 順位表
順位 大学名 勝点 試合数 得点 失点 得失差
日体大 10
青山学院大
立正大
駒大
早大
順大
山梨学院大
産能大 -2
立大 -4
10 関東学院大 −2
11 作新学院大 −6
12 亜細亜大 −5
第1節終了時点
コメント

兵藤慎剛監督(平20スポ卒=長崎・国見) ※一部囲み取材より抜粋

――本日の失点シーンは崩されたわけではない中での失点となりましたが

 そうですね。これがサッカーなのかなと。ボールを持っていても焦れて失点してしまったり、それを覆すだけのチームとしての力がなかったです。最後は点を取りに行っての失点というところで、前に重心をかけている分というのはありながらも、リスク管理だったり守ることはできます。そういったところを踏まえ、まだまだこちらの力不足で落とし込みができていなかったのかなと思うので、またここからしっかり落とし込んで、勝てるべくして勝つチームだったり、したたかさだったりを自分たちで身につけていくしかないというところです。

――得点力不足は去年からの課題としてありますが

 そうですね。今年に入ってから本当に攻撃しか取り組んでいなくて、そういう部分では流れの中から点が取れていないという中で、もっと決まりを決めてやらせる方が良いのかなという部分はあります。それでも、それしかできないプレイヤーを育てるつもりは僕はないので、チームとして崩し方を共有しながらも、その中からアイデアだったり、個の色を大事にしていきたいなと思います。ただやっぱりチームとしてやるべきことをこの試合で本当に表現しようとしたのか。表現することは正直とても難しいことだとは思うのですが、それを取り組む、こういうことをやってきたんだというのを踏まえ、やっぱりチャレンジしない限り成長はないと思います。そのチャレンジの失敗は良いという中、やったことをやらずに負ける戦い方になってしまったのかなと思います。そこに対するミスには僕は何も言わずに「ナイスチャレンジ」と声を掛けます。ただその失敗すらも数が少なかったというのは、落とし込み方がある意味チームとしてこうやりますという型にはめてあげた方が良いのかなという部分もありますし、こっちが反省しなければならないのかなと思います。

――本日はスタメンに奥田陽琉選手(スポ4=柏レイソルU18)ではなく、東廉選手(スポ3=清水エスパルスユース)を起用しましたが、その意図は

 先週から、調子が東の方が良かったです。相手の守り方を含め、アイデアのある東の方が崩せるかたちが多くなるんじゃないかなというところでした。クロスをあげるにしても相手は180センチオーバーのセンターバックだったので、前節と比べ、東の方が面白いのかなとイメージしていました。前半、そういった部分でノッキングが多かったりとか、どうやって崩したらよいのかなとか手探りな状況でボールを持っていたので、自分たちからアクションを起こしていくというところをもっと徹底しないといけないです。しかし、決めてあげる方が良いのかなと思う部分だったり、主体的にやらせる部分があった方が良いのかなというバランスがまだ取れていないのかなというところです。まだ決め切れていないところと、個人に任せるところの割合を考えていきたいなと思います。

――途中から3バックにされましたが、オプションとして持ち合わせていましたか

 ぶっつけ本番でした。3バックはもともと試したかったオプションではあったのですが、それができる時間がなかったというところで、こういった公式戦の場でやらざるおえなかったのは、マネジメントのミスかなと思います。ただ、僕はフォーメーションは最初の立ち位置だけだと思っています。相手の動き方次第で流動的にやるというのが、本来のサッカーだと思います。そういった意味ではうまくいっている時間帯は3バックでやっているようなものだったので、4バックにするより3バックにした方が、前に厚みをつくるところだったり、押し込む時間が長かったため、こちらとしてはやっていることは変えていないけどそういう伝え方になりました。けど、混乱させてしまったことも事実だったので、そういったところではやってきたことを貫くという方が良かったのかなと思いながらも、けどフォーメーションをいじっただけでやることを変えたつもりはなかった、そういったところの意図が伝わっていなかったのは残念だなと思います。けど、選手はすごく前向きに戦ってくれたと思いますし、これをこじ開けられなかったのはこちら側の落とし込みのクオリティだと思うので、しっかりと真摯(しんし)に受け止めて、また来週からどういうふうにトレーニングを構築していくかというところをやっていきたいと思います。

DF神橋良汰(スポ3=川崎フロンターレU18)

――今シーズン初先発となりましたが、どのようなことを考えて試合に臨みましたか

 シーズン初めは勝ってはいましたが、前節が引き分けということで、やっぱり勝てなかったという悔しさはありました。前節から2週間空いたということで、自分もけがが治ってからだいぶコンディションも上がってきたので、自分がチームに必要であるということをプレーで表現できたらと思って、強い気持ちを持って(試合に)入りました。

――全体的に相手はロングボールが多い中で、はじき返すシーンなどがありました。ご自身が武器にされているヘディングが活きたのかなと思うのですが振り返っていかがですか

 分析的にも相手は(ロングボールを)蹴ってくるというのはわかっていたので、自分もそれを準備していました。この2週間くらいはずっとその対策していて、自分の武器を含めてヘディング練習を多く取り組んでいたので、その成果は多少は出たのかなと思います。ですが、後半であったり集中力が切れ始めたりした時からチームとして勢いがなくなってきたので、そこは今後の課題かなと思います。

――後半2失点してしまった中で、それほど崩されたわけではない中での2失点でしたが、原因は何だと思いますか

 前半と比べて、後半に声の量が減ってしまったというのは確実に感じていました。1失点してから、切り替えようという声はあったものの、やっぱりプレーとしては切り替えられていない部分がチーム全体に行き渡っていてしまったなと思います。もっと後ろから引き締めた声であったり、盛り上げる声であったり、もっと勢いあるプレーであったりを自分が出していかないと今後も厳しいのかなと思います。

――ピッチ内も緩んでしまったという感覚はありましたか

 前半は声が出ていたというか意識していた部分はありますけど、声が出ていた中で後半ちょっと落ちてしまったなというのは自分のプレーの中に感じるところはあります。

――得点にはつながらなかったものの、セットプレーは可能性のあるプレーがありましたが、手ごたえはいかがでしたか

 チームとしては準備していたので、点につなげられれば一番いいですけど、おっしゃった通り自分の可能性はありました。自分は点が取れるセンターバックを目指しているので、セットプレーから点を取ることを目指さなければいけないと思っているので、そこはもっと貪欲にいかないとなと思います。

――ぶっつけ本番で途中から3バックに変更になり、3バックと4バックどちらもとなりましたが、それぞれの手応えはいかがでしたか

 急に言われた中で対応できたかなというのはありますが、後ろを3人にして前を増やした分、前の動きが減ってしまってちょっと停滞してしまいました。相手は2点取っているということで、中を固めてくる状況の中で、ボールを持っていても持たされているような感じが自分たちでもありました。3バックにしてから失点してしまったというのは実際ありますし、後ろを守る選手として責任はあると思います。ただ、3バックにしてからチャンスというか、サイドで仕掛けられる選手が投入されてからはコーナーキックを取れるシーンであったり、後半最後チャンスがありましたが、(点が)取れなかったというのは課題かなと思います。

――今シーズン初黒星となってしまいました。ここから2週間、次戦まで空きますが、どのような準備をしていきたいですか

 自分は1失点目のところで対人の部分ではっきりできなかったところであったり、キーパーとの連携であったり、後半、基礎的な部分ではありますけど、体力であったりというのはチームとして停滞してしまいました。そういう基礎的な部分は戦術どうこうの前に戦う姿勢は持たなければいけないと思います。そういったところを2週間かけて、再来週にはけが人が戻ってきたりだとか、そういうせいには自分たちもしたくないですけど、そういうところもあるので自分たちも準備したいなと思います。

DF佐々木奈琉(社2=新潟・帝京長岡)

――途中からの出場となりましたが、投入される際はどのようなことを考えていましたか

 今までの練習試合で途中出場というのが多かった中で、なかなか自分として流れを変えることができなかったので、前への力強さや推進力というものをどうプレーで生み出すかということを考えて、プレーしました。

――リーグ戦初出場となった点については

 特に意識したことはなかったです。でも、関東リーグは去年から通じて初めてだったので、良いプレッシャーを感じながら、自分に何ができるかを考えてプレーしました。

――ポジション的には今日はどういった起用をされましたか

 右サイドバックで、途中から3バックだったので、ワイドのポジションをやりました。

――サイドでの攻撃参加も多く、森璃太(スポ4=川崎フロンターレU18)選手との関係性も意識されているように見受けられましたが

 両方広がって受けるタイプなので、お互いに長所を生かせるようポジションを取っていました。

――押し込んでいた中、決め切ることができず。何が足りなかったと感じましたか

 ボールを持っているのは自分たちですが、最後のゴール前の迫力のところで、ミスを恐れて後ろという選択が多かったので、ゴールに向かったプレーを出せるようにしていきたいと思います。

――自身の手応えとしてはいかがでしたか

 チームは負けてしまいましたけど、自分的には良い入りというのはできたのかなと思います。次またチャンスがもらえた時に、もっと自分で得点というのにつなげていけたらなと思います。

――今シーズン初黒星となりましたが、ここからのシーズンどのように戦っていきたいですか

 負けてしまいましたけど、言い方を選ばずに言うと22試合あるうちのまだ1敗なので、ここから全部勝てるようにチームとしても個人としても練習を積んでいけたらなと思います。