兵藤早稲田開幕2連勝! 苦しみながらも勝ち点3を手にする

ア式蹴球男子
関東大学サッカーリーグ戦 2部 第2節
早大 0-0
2-0
作新学院大
【得点】
(早大)82’安斎 颯馬、90+3’平野 右京
(作新学院大)なし

  前節、立大との今季開幕戦に勝利した早大。兵藤慎剛監督(平20スポ卒=長崎・国見)のリーグ戦初陣ともなった試合で、見事白星スタートを飾った。そんな開幕戦から1週間が空いて今節は、作新学院大と対戦。早大としては開幕スタートダッシュを切るためにも、勝利が求められる一戦となった。前節の勢いをそのまま持続したい早大であったが、序盤から作新学院大のブロックの固さに手を焼く。チャンスらしいチャンスをつくれずに前半を終えた。しかし、後半になると徐々にギアが上がり出す。兵藤監督の指示もあり、攻撃が活性化。交代カードを切りながら、相手ゴールへと迫り続ける。それでも、なかなかゴールネットを揺らせない中、迎えた82分。MF安斎颯馬(社3=青森山田)が自ら得たPKを決め、先制に成功する。追加タイムには、途中出場のMF平野右京(人4=兵庫・滝川)が追加点を決め、そのまま試合終了。2-0で勝利し、開幕2連勝となった。

 

2戦連発となった安斎

 立ち上がり5分にMF東廉(スポ3=清水エスパルスユース)が放ったミドルシュートが相手GKに防がれると、その後は相手の固いブロックの前にシュートシーンをつくらせてもらえない早大。ボールを持つ時間は増えるが、「ボールを回す時にただ回すだけになってしまい、アクションが起きないのでチームに推進力が生まれなかった」(兵藤監督)と、停滞感が漂ったまま前半を終えた。

 

関東大学リーグ初先発となった増田

 それでもハーフタイムの「圧倒的に裏へのアクションが少なかったので、裏や前、ゴールに近いところを狙うように」という兵藤監督の指示のもと、後半は攻勢を強める早大。50分に、右サイドのDF森璃太(スポ4=川崎フロンターレU18)からのクロスを、安斎がペナルティエリア内で受けると、反転して相手DFをかわしシュート。しかしこれは相手GKの好セーブに遭う。55分には、MF山市秀翔(スポ2=神奈川・桐光学園)、64分にはDF石川真丸(スポ3=名古屋グランパスU18)がそれぞれシュートを放つが、これは枠の外へ。続く69分にはMF福井寿俊(文構4=東京・国学院久我山)が味方とのワンツーで一気にペナルティエリア内に侵入し、そのままゴールを狙うがこれも枠を外してしまう。78分には、森のクロスに再び安斎がヘディングで合わせるも、これは惜しくもポストに嫌われ得点とはならず。決定機をつくりながら、ゴールだけが奪えない苦しい展開となる中、迎えた82分、ついに均衡が破れる。右サイドでボールを受けた安斎が仕掛けると、相手のファールを誘いPKを獲得。このPKを安斎が自ら決め、待望の先制点が生まれる。さらにアディショナルタイムには、相手のDFラインの背後でボールを受けたFW奥田陽琉(スポ4=柏レイソルU18)が中へ折り返すと、ここに走りこんでいたのは途中出場の平野。GKと1対1となる中、「決められると思って、気合いで押し込んだ」と試合を決める追加点を奪った。試合はそのまま終了。早大が2-0で勝利し、苦しみながらも勝ち点3を手にした。

 

GKと1対1だったが、冷静にゴールに流し込んだ平野

 前半は全くといっていいほど、自分たちのサッカーを展開できなかった早大。「思ったよりも相手の守備が固く、自分たちも止まって受け、相手の守備にハマってしまった」(安斎)と良さを出させてもらえなかった。それでも後半は兵藤監督の指示や、ピッチ上でのアクションが増えたこともあり、終始相手陣内へ押し込めるようになる。結果として2ゴールを奪うことができ、勝ち点3を持って帰ることができた。「悪い試合でも勝てるようになるのが強いチーム」と兵藤監督。「難しい試合の中でも、勝ち切って連勝できたことはチームにとってプラスなこと」と安斎。共に1部から降格してきた順大や駒大が取りこぼす試合もある中、内容はともあれ開幕2連勝できたことは非常に大きいと言えるだろう。この先も早大相手に割り切って、ゴール前を固めてくるチームも増えてくることが予想される。今節以上に攻めあぐねる試合も、きっとどこかで出てくるはずだ。それでも、1部昇格に向けて足踏みをしている暇はない。「どんなに良くなくても絶対に勝って強い早稲田を取り戻す」と平野。平野を含め多くのメンバーが口にする「強い早稲田」を体現するためにも、今節のようにしっかりと「勝ち切る」ことが、これからも要求されてくる。 

(記事 髙田凜太郎 写真 栗田優大、渡辺詩乃)

 

★Column/コラム    勝利の影の立役者

中盤でボールを持つ伊勢

 停滞感のあった前半と打って変わり、攻撃が活性化された後半。その一役を担ったのが、後半開始から投入されたMF伊勢航(社3=ガンバ大阪ユース)だ。前半、「テンポが遅く、うまくいってないな」と感じた伊勢は、「つなぐ部分やパスの部分で局面を変えられる」という自分の強みを後半のピッチで発揮した。加えて、状況によっては、伊勢のところで効果的なタメもつくられた。その結果、前半以上にパスのテンポも上がり、ハーフコートゲームともいえる試合展開となった後半。2ゴールに直接的に関わったわけではないが、伊勢のプレーはチームの勝利につながったと言えるだろう。昨年までも、パスのところやタメなど中盤で効果的なプレーが見られた伊勢。それに加え、「山市(秀翔、スポ2=桐光学園)とかは球際の部分で違いを見せているので、負けないように自分も日々意識して、そこを出せたのが良かった」とこの試合では球際の強度の高さも発揮した。早大の中盤には、Jクラブに内定しているMF小倉陽太(スポ4=横浜FCユース)やMF植村洋斗(スポ4=神奈川・日大藤沢)など、実力のある選手が多くいる。そんな中、この試合で一つアピールをすることができた伊勢。中盤のポジション争いが激化していくことに対しても、「もっと意識を1段階2段階上げていきたい」と意気込む。この試合で見せたプレーを続けていき、今後も早大の中盤で存在感を示すことができるか。これからの伊勢の活躍にも期待したい。

 

早大スターティングイレブン

 

早大メンバー
ポジション 背番号 名前 学部学年 前所属
GK ヒル 袈依廉 スポ3 鹿児島城西
DF 森 璃太 スポ4 川崎フロンターレU18
DF 25 増田 健昇 スポ2 横浜FCユース
DF ◎平松 柚佑 社4 山梨学院
DF 石川 真丸 スポ3 名古屋グランパスU18
MF 福井 寿俊 文構4 東京・国学院久我山
MF 14 山市 秀翔 スポ2 神奈川・桐光学園
→83分 20 森山 絢太 スポ2 兵庫・三田学園
MF 安斎 颯馬 社3 青森山田
MF 15 東 廉 スポ3 清水エスパルスユース
→HT 24 伊勢 航 社3 ガンバ大阪ユース
MF 19 松尾 倫太郎 人2 千葉・八千代
→69分 22 平野 右京 人4 兵庫・滝川
FW 奥田 陽琉 スポ4 柏レイソルU18
◎=キャプテン
監督:兵藤慎剛(平20スポ卒=長崎・国見)
関東大学サッカーリーグ戦2部 順位表
順位 大学名 勝点 試合数 得点 失点 得失差
早大
日体大
青山学院大
立正大
駒大
順大
立大 ‐1
産能大 -1
亜細亜大 -3
10 山梨学院大 −3
11 関東学院大 −3
12 作新学院大 −6
第1節終了時点
コメント

兵藤慎剛監督(平20スポ卒=長崎・国見)

――難しい試合となりましたが、率直に試合を振り返っての感想をお願いします

 納得いかないです。けど、悪い試合でも勝てるようになるのが強いチームだと思うので、そういった部分では後半45分に関しては、自分たちがやろうという気持ちがすごく表現できたと思います。ただいつも言うように、90分通してやらないと、今は勝てるかもしれないけど1部や日本一を意識するという部分では、これではダメだよねというところがあります。

――前半はなかなかうまくいいかない展開となりましたが、ピッチサイドからどのように試合を見られていましたか

 開幕戦の開始15分が良くなかったので、そこのところを意識させすぎて、逆に硬くさせてしまったなと思います。ボールを回す時にただ回すだけになってしまい、アクションが起きないのでチームに推進力が生まれないことが起きて、チーム内のエネルギーが停滞してしまいました。なので、後半から人を替えたりしながらアクションを起こしていこうというところで、そこをしっかり表現してくれました。そのため、相手のベクトルも自分たち(自陣)のゴール方向に向かう矢印になりました、そこの部分はアクションを起こして相手の矢印を変え続ける必要があると思いますし、ボールを持つことがサッカーの競技ではないので、いかに相手に脅威になったり、相手が嫌がることをできるか追求していかないといけないと思います。

――後半は一転押し込む時間が続きましたが、ハーフタイムで具体的にどのような指示をしましたか

圧倒的に裏へのアクションが少なかったので、良いかたちでボールを持てているのだったら、「どこを狙うの?裏でしょ、前でしょ」とゴールに近いところを狙うようにアクションを起こしたり、山市(山市秀翔、スポ2=神奈川・桐光学園)も発信してくれて、推進力をもたらしてくれました。そうすることで相手にギャップが生まれてくるので、そのギャップを安斎(安斎颯馬、社3=青森山田)などが使ってくれて、それこそ璃太(森璃太、スポ4=川崎フロンターレU18)や後半の始めから入った右京(平野右京、人4=兵庫・滝川)のところで、サイドのスペースをうまく使えたかなと思います。これを45分しかできないというのが今の現状なので、90分間しっかりとできるように、シーズンを通してクオリティを上げられればなと思います。

――今もお話にあった平野選手を含め、今日は伊勢航選手(社3=ガンバ大阪ユース)など途中交代の選手が躍動している印象もありましたが、監督としてはどう見受けられましたか

トレーニング中から取り組んでくれる姿勢や、チームに与えてくれるものはすごく表現できているので、自信を持って誰を使っても常に良い状況をつくれたらと思っています。この2人に関してはすごく活気をもたらしてくれたかなと思います。こういった競争がないとチームは強くならないので、開幕で使った11人が、シーズン終わった頃に5、6人は変わっている位にはやりたいと思っています。そのために常にチーム内で競争を生み出しつつ、勝って反省できるようにやっていきたいと思います。

――開幕2連勝となりました。この勢いをどのように持続させていきたいですか

昨年から勝ち慣れていないというところで、連勝も久しぶりだと思います。そういった部分ではこのポジティブなエネルギーは来週に引き継ぎながらも、勝ったからトレーニングが緩くなってしまう傾向が今週あったので、そういった緩みをつくらずに、自分たちが何に向けてやっているんだというところを常に意識しながら、また1週間やっていきたいと思います。

平野右京(人4=兵庫・滝川)

――0ー0のタイミングで投入されましたが、どのようなことを考えていましたか

 0ー0で得点が欲しい中で、自分がチームの攻撃の推進力や勢いになればいいかなと思って入りました。

――左サイドでの起用となりましたが、右サイドとの違いで意識していたことは

 右サイドの時はカットインやシュートとか、森(璃太、スポ4=川崎フロンターレU18)との関わりだったのですが、左サイドでは縦とか自分のスピードを生かせるので、中に陽琉(奥田陽琉、スポ4=柏レイソルU18)がいたのもあったので縦に行ってクロスでしっかり終わるというのは意識してました。

――得点シーンを振り返ってください

 陽琉が前向きに持っていたので、信じて前に走って気持ちで最後押し込んだという感じです。特に意識したということではなく、信じて走ったらゴールが生まれたという感じです。

――1対1でしたが、冷静に決めましたね

 そうですね、外す予感は全然しなかったです。決められると思って、気合いで押し込んだというかたちです。

――前節はスタメンの中、今回はベンチスタートでしたが、気にする部分などはありましたか

 スタメン落ちというのはありますが、しっかり自分が入った時に何ができるか、もう一回結果で示してスタメンに返り咲くことを意識して今回ベンチから取り組みました。

――初ゴールですか

 リーグ戦は初ゴールですね。

――ここが一つ契機になると思いますが、ご自身としてもきっかけになりそうですか

 去年のシーズンの最後ぐらいから、ずっと点を積み重ねて今に至っているので、これをシーズン通して続けるようには取り組んできていました。

――改めて今シーズンどのようなシーズンにしていきたいですか

 どんなに調子が悪くても、どんなに良くなくても絶対に勝って強い早稲田を取り戻すことを掲げている中で、うまい早稲田ではなくて強い早稲田をずっと意識して今シーズンしっかりと戦って、昇格、1部に返り咲くことを意識してやっていきたいです。

MF安斎颯馬(社3=青森山田)

――難しい試合となった中で見事勝ち切ることができましたが、試合を振り返ってみていかがでしたか

結構難しい展開が多くて、正直、このままでは1部に上がれないと思っています。夏のアミノバイタルカップでは1部と対戦する機会があると思いますし、僕らは2部で圧倒して1部の相手に勝つということを掲げています。正直、このままでは勝てないと思うので、もっともっと日頃の練習から積み上げを行っていく必要があるなと思っています

――前半は攻める時間も少なくもどかしい時間が続いていたと思うんですけど攻撃面でどのようなこと考えていましたか

相手が引いて守ってくるのは分かっていたので、その中で流動的に動きながらやるイメージはありました。思ったよりも相手の守備が固くて、自分たちも止まって受けるとか相手の守備にハマるようなかたちになってしまいました。早稲田相手に引いてくるチームは今後も多くなってくると思うので、今日のプレーをしっかり振り返って、引いてきた相手には後半みたいなサッカーをして絶対勝てるように改善していきたいです。

――後半は改善できていたところがあると思いますが、ピッチ内でどのようなところが変わったなと感じましたか

 前半悪かった原因が、止まって背後のアクションやアクションにアクションを重ねることができなかったところです。なので、一人が背後の動きをとってその空いたスペースに動き出すとか、みんながアクションを起こすことによってスペースも生まれたし、そうすることによってボールも動いて、後半は相手の陣地でハーフコートゲームのようになりました。前半に比べてそういったアクションを出すことができたのがよくなったのではないかと思います。

――ご自身が得たPKを自ら蹴るかたちになりましたが、自ら蹴る気持ちでしたか

 元々PKキッカーは自分でした。でも、自分がとったので自分しか考えてなかったです。

――ギリギリだったと思うんですけど緊張しましたか

 緊張はしてないです。蹴る方向は決めていたので強く蹴ることが重要かなと思っていました。強くければ読まれても決まるコースで、結果的にポストあったちゃったんですけどゴールはゴールなので、あとは気持ちが押し込んでくれたかなと思います

――これで開幕2連勝ということで今シーズン1部昇格のためには常に勝ちを目指していく戦いが続いていくと思うのですが、ここからどのようにこの勢いを持続させていきたいですか

去年1回も連勝してないので、難しい試合の中でも最後勝ち切って連勝できたことはチームにとってプラスなことだと思います。ただ、今日の試合も含め、満足している選手は一人もいないと思います。大事なのは日頃の練習の積み重ねで、今週はあまりよくなかったので練習からもっとやっていく必要があると思っています。来週の火曜からしっかりチームを見直して次の青学との試合にしっかり備えていきたいと思います。

MF伊勢航(社3=ガンバ大阪ユース)

――途中からの出場となりましたが、どのようなことを考えてピッチに入りましたか

 前半、ベンチから見ていて、テンポが遅かったり、うまくいってないなと思いました。自分はそのつなげる部分であったりパスの部分で局面を変えられると思っているのでそこで違いを見せて、チームを勝たせられるようにというのを意識しました。

――入る時、監督からの指示はありましたか

 いや、いつも通りやれという感じでした。練習中にいろいろなことを言われているのでそれを意識してやりました。

――前半はバタついている時間が多かった中で、後半は伊勢選手のところでタメとかをつくれていたのかなと思うのですが、手応えはありましたか

 1部昇格とか日本一を掲げている中であったら、圧倒的な違いをつくらないといけないと思っているので、ここが基準かな、スタンダードかなと思います。

――ご自身の得意とされているテンポのつくる部分とかタメの部分以外にも、球際の強度や中盤のボールかり取るシーンとかもあったのかなと思ったのですが、そこについてはいかがですか

 そうですね。今シーズン最初にケガをしていて、全然サッカーができていない中でリハビリを頑張って、走り込みをしてたり、山市(秀翔、スポ2=桐光学園)とかは球際の部分で違いを見せているので、そこに負けないように自分も日々意識して、そこを出せたのが良かったかなと思います。

――早稲田の中盤は選手層が厚くて、ポジション争いが厳しくなると思います。今日の試合でアピールはできたのかなと思うのですが、競争に向けてはどうですか

 来週あたりにケガ人が帰ってくるので、より熾烈(しれつ)になると思いますけど、今日のパフォーマンスを続けていくことでレギュラーを奪えると思います。そういうことを続けることでチームを勝たせられると思うで、そこもっと意識を1段階2段階上げていきたいと思います。

――これ勝って開幕2連勝となりましたが、ご自身にとってもチームにとってもどのようなシーズンにしていきたいか教えてください

 まず、最低限の目標は1部昇格と強い早稲田を取り戻すということをチームとして掲げていく中で、自分は3年生として上級生を担う立場になるので、ピッチ内外で圧倒的に引っ張っていく存在、チームを勝たせられる存在になっていくためにもっと日々やっていきたいなと思います。