【連載】早慶クラシコ特集 第11回 鈴木俊也副将

ア式蹴球男子

 昨年は10年ぶりに敗戦し、リベンジに燃える早大を率いるのは鈴木副将(商4=東京・早実)。全ての仲間の思いを背負って戦う早慶クラシコに向ける思いを語っていただいた。

※この取材は8月18日に行われたものです。

「埋めきれなかったというのが一番結果につながらなかったところかな」

関東リーグ法大戦で指示を出す鈴木

ーー前期の試合を振り返って、チームとしてうまくいかなかった原因はどこにあると考えていますか

まずはシンプルにチームとしての完成度が低かったというか、どうやって相手を倒して勝ち点を積み重ねていくかというところに前期戦っていく中で少し迷いだったりブレだったり、そういったところが見られてしまいました。そこは前期戦う以前の準備の問題で、少し問題というかもう少し詰められるものがあったのかなとは思います。戦っていく中で最初前期(ケガで)出れなくて、復帰してから守備の改善だったりとか、守備に関しては失点を減らしたりとかそういったところはできたんですけど逆に点が取れなくなったりとか。課題が多い中で一つ一つその課題を埋めていく作業というには取り組んでいたんですけど、埋めきれなかったというのが一番結果につながらなかったところかなと思います。

ーー逆にチームとしてうまくいっていたと感じるところは

鈴木 うまくいってたところ・・・なんだろうな・・・。正直あんまりないですかね。前期に関しては。

ーー個人のプレーについては今シーズンここまでは振り返っていかがですか

鈴木 年始に手術をしてからリハビリが始まって、5月の明大戦で復帰はしたんですけど、正直かなり不安定な状態というかコンディション的にも整っている状態とは言い切れませんでした。復帰して数試合は自分でもパフォーマンスに納得がいってない部分が多い中で、チームに最大限自分の力を発揮しなきゃいけないところの葛藤はすごくありましたし、そこを満足に表現できないもどかしさみたいなものを感じる時期はありました。ただ、やっていく中でほんとにいろいろなみんなのサポートを受けて徐々にコンディションが戻ってきて、結果にはつながってないですけど、チームのためにできることは少しずつですけど貢献はできたかなと思います。

ーー復帰の時期については当初よりも少し押し気味になったのですか

 もちろんドクターからの許可を得てからの復帰にはなりましたけど、少し早いという見方もできるし、ただ競技するうえでは問題ないっていうジャッジにはなったので、そこまでめちゃくちゃ押したってわけではないです。

ーーチームとしてフォーメーションを3バックに変えた経緯は

 もともと一つのフォーメーションでサッカーを展開していく中で、ただサッカーっていうのは調子も変わるし相手によって戦い方も変わってくるので、オプションの一つとして一つかたちは持っていた方がいいというのはありました。それが3バックなのか違うかたちなのかっていうのは決まってなかったんですけど、監督とスタッフの方から提案があって(3バックに)取り組んだという感じですね。

ーー今も4バックに取り組んではいるのですか

4バックに関しては前期ずっとやっていたのでそれなりに共通理解もありますし、いつシフトしてもいいような状態にはなっているので今は3バックメインでやって、その中で4バックでも対応できるかなと思っています。

ーー3バックに対する手応えは

 良い面悪い面両方あるというか、もちろんメリットもたくさんあって、ボール握るところだったりとか中盤の人数が多い分そこで相手を上回ってゲームを支配するとか、そういうところに関してはすごくいいと思います。ただ、今まで4枚でやってきた分多少慣れというか共通認識みたいなところはズレがあるのでそこはもっとやっていかなきゃなと思います。

フォーメーションによってポジションが変わることへの難しはは感じますか

 いや、そこまで僕のタスクは変わらないです。もちろんポジションによって配置は変わりますけど、あんまりやることは変わらないので、そこまで迷ったりはないです。

「みんなのために勝ちたい」

関東リーグ明大戦で明大選手を起こす鈴木

ーーまたチーム状況のお話を聞きたいのですが、シーズン序盤の柴田主将の離脱は大きかったですか

 そうですね、僕も復帰間近でしたけど、全然合流できてない状態で。そんな中でチームをまとめて精神的にも支柱になっていた彼がケガしてしまったというのは、すごくチームにとってどちらの面でも影響を与えたというか、ほんと彼の分までやらなきゃいけないという思いも芽生えましたし、その反面動揺というか、チームにとって不安もありました。

ーー主将離脱後に自身の中で何か変化はありましたか

 徹は主将で僕は副将という立場にありますけど、チーム立ち上げの準備段階から2人で引っ張っていくという話はしていたので、特に意識したことはないというか、自分の与えられたタスクをこなすということに対してより強い思いでっていうのはありましたけど特に大きな変化はなかったです。

ーー逆に監物さんや平瀬さんがケガから復帰して、そこからチームも安定してきたように思えます。4年生の存在というのはやはり大きいですか

 そうですね。自分たちが作り上げたチームなのでより一層責任を持ってやっていますし、ディフェンスラインというのはそういうところが求められるポジションだと思うので、そこは責任感を持ってできました。あとは、同期というのもあってプレー中に細かくコミュニケーションが取れていたのでそこは良かったかなと思います。

ーー4年生の方が過ごしてきた時間が長い分連携も取りやすいのですか

 お互い遠慮することもないですし、ほんとに思ったことを素直に言い合って、時に本気でぶつかることもありました。それでもどうやって失点を減らすかとか、チームが勝つためにっていうのはみんな常に考えていたのでそこが良かったのかなと思います。

ーー長くケガで苦しんでいた同期に対する思いは

 特に大に関しては1年の頃から誰よりもリハビリ頑張ってるのを見てましたし、それは学年全員が分かっていたことなので彼の復帰に関してはほんとにうれしかったです。彼は公式戦は出てなかったですけど練習試合で復帰した時にポテンシャルや能力はすぐにみんなに示してくれていたので、期待と楽しみがすごく大きかったです。

ーー試合後のインタビューでは外池監督の4年生に対する思いがシーズンを通して感じられましたが、選手としては感じることはありますか

 どうなんだろ(笑)。期待されてるかっていうのは分かんないですけど、僕らが背負わなきゃいけない責任とかここだけは押さえなきゃいけないっていう役割みたいなところはかなり重いものであるっていうのは自覚しています。それを外池さんが僕たちに任せてくれてるっていうのは理解して、プレーしています。

ーー監督のためにという思いもあるのですか

 チームのために、監督、スタッフ、Bチームのメンバーとか、ほんとにみんなのために勝ちたいなとは常に思ってます。

ーー今シーズン成長を感じた選手はいらっしゃいますか

 成長したな・・・。フジ(藤本隼斗、スポ3=柏レイソルU18)かな? フジかもしれないです。選手としての凄みが増したかなと思います。一選手として強くなったなというのは、特にポジションも近いですし試合中もよくコミュニケーションを取っているので、すごく頼りになる選手に成長したなというのは感じてます。

ーーそういった姿を見て刺激を受けたりはしますか

 フジの1対1の対応とか素晴らしいものがあると思うし、お互い近いポジション同士補い合いながら支え合いながら、すごく良い関係かなと思ってます。

「僕が向こうに参加した時にそう言った熱量にさらにプラスして、僕も加わって力になれるように」

森璃太(スポ3=川崎川崎フロンターレU18)とボールセットする鈴木

ーー所属クラブについても伺っていきたいと思います。大宮アルディージャは今シーズンかなり苦しんでいますが、やはり結果は気になりますか

 はい、もちろん。来年に向けて順位っていうのは残留なのか降格なのか気になるっていうのはもちろんありますけど、僕は特別指定選手なので今シーズン試合に出られますし、今のチーム状況を把握していつ呼ばれてもいいようにというのは心がけています。

ーー今シーズンの大宮アルディージャに対する印象は

 今年監督が変わって、早稲田のOBの相馬さんになって。今までの大宮のサッカーのスタイルからガラッと変わって、新たなアルディージャを相馬さんがつくりあげている中で、サッカーが変わった分少し戦術的に浸透するのに時間がかかったと思いますけど、ここ数試合見ていても非常に良いサッカーができていると思います。残留に向けて後がない状況なので、その必死さというか熱量みたいなところは画面越しに伝わってきていますし、仮に僕が向こうに参加した時にそう言った熱量にさらにプラスして、僕も加わって力になれるようにっていうのをすごく考えています。

ーー練習参加などの予定は

 今はコロナの関係で関東リーグが延期になったりとかスケジュールが変更になってバタバタしてますけど、向こうの強化部ともこまめに連絡を取って練習参加の要請とかも出ているという状況です。

ーーコロナの話もありましたが、スケジュール変更というのはチームにどのような影響がありましたか

鈴木 やってみないと分からないですけど少なからず延期した期間も非常に良いトレーニングができました。延期しようがしまいが自分たちができる準備はしっかりしてきたつもりなので、あとは結果次第ですね。

ーー最近のマイブームは

 最近マイブーム・・・ワンピース! 

ーー映画見ましたか

 見ました。

ーーどうでしたか

 映画・・・うーん、まあまあ(笑)。ヒサ(西堂久俊、スポ4=千葉・市立船橋)とハジメ(島崎元、スポ4=川崎フロンターレU18)と見に行ったんですけど、みんななんかまあまあだったな(笑)って感じでした。

ーー前回の対談ではBLACKPINKにハマっているとのことでしたがそのブームは終わりましたか

  いやいや、全然終わってないですよ。

ーー移動中のバスも聞きますか

 そうですね。でも最近は移動バスがないから・・・(笑)。たぶん後期開幕したら同じように見ると思いますよ。

ーー移動中の選手たちの様子ってどんな感じなのですか

 バスは全然喋んないですね、みんな。特に行きとかはみんな集中しちゃってというか、リラックスしてる人もいますけどイヤホンとかヘッドホンしてそれぞれの時間を過ごしてますね。帰りとかはかなりみんな疲れちゃってるので寝る選手とかもいるしあんまり会話はないかなと思います。

「あのピッチは思い出すだけで鳥肌が立つし、そういう舞台なので憧れ」

関東リーグ駒大戦でドリブルする鈴木

ーーそれでは現在のチームの雰囲気についてはいかがですか

 いろんな不安とか危機感はありますけど極力それは4年の中だけというか自分たちの中だけに抑えて、チームとしては常に前向きに試合に向かっていけるようにというのは考えてますね。

ーーシーズン中の勝てていない時期などはチームの雰囲気も落ち込んでいましたか

 試合内容が良くても勝ち切れないゲームが続いた時はかなり暗い感じにもなりましたけど、自分たちには失うものがないというか、みんな次の試合に向けて前向いてやってくしかないっていう感じだったのでそこは割り切れて、みんな吹っ切れてたかなと思います。

ーーそうした中で何か自身の中で意識したことはありましたか

 自分たちが楽な方に、楽しいというよりは楽な方に流れてしまう空気が漂う時期があったので、そこは僕だけじゃないですけど4年の幹部中心にしっかりとコントロールして、いい方に転がっていくような意識はしてました。

ーーそれでは早慶戦についても伺っていきたいと思います。早慶戦とはどんな舞台ですか

 早慶戦はやっぱり「憧れ」っていうのがしっくりくるかなと思います。高校1年の頃から見てたので、いつかあの舞台に立ちたいなとは漠然と考えていました。今でもあのピッチは思い出すだけで鳥肌が立つし、そういう舞台なので憧れですかね。

ーー高校生の頃から現地で見ていたのですか

 早実全員行かなきゃいけないんですよ、サッカー部は(笑)。

ーー現地で見ていた分そういった思いも強くなったと

 そうですね。

ーーコロナの影響もあってスタジアムや収容人数なども変わりましたが、見ていた頃と実際にピッチに立った時と変化はありましたか

 いや、やっぱり早慶戦は早慶戦だなというか、もちろん観客の人数とか規模とかそういったものはありますけど、結局僕たちは裏側も見ているというか準備段階も見ているので、そこに対する思いが当日の雰囲気だけじゃなくてそこの裏側への思いも強かったので、そこは特に大きな変化はなかったです。

ーー昨年は10年ぶりの敗北となった分、今年にかける思いというのもより一層強まったのかなと感じていますがそこについては

 昨年の敗北についてはかなり責任は感じました。去年負けた時から来年は何がなんでも絶対勝つと自分の中で決めていたことなので今年にかける思いはかなり強いです。

ーー早慶戦の注目選手は

 FW陣かな。誰が出るか分からないですけど、早慶戦でやっぱりFWが点取ってほしいですね。FWが点取るって特別なことだし彼らが仕事をすれば必ず勢いに乗ると思うので、僕は期待してます。

ーーFW陣に期待とのことですが、今シーズンの攻撃を後ろから見ていて思うことはありましたか

 前期はとにかくシュートチャンスが少なかったっていうところがかなり印象的だったなって思います。前の選手がシュートを打ってないとかそういうことじゃなくて、チームとしてそのかたちまで持っていけなかったなっていうのが非常に大きかったなと思います。

ーーFWからDFに転向したのですか

 FWではないんですけど、もともと中盤とかサイドハーフとか、高校の時は少しトップ下のあたりもやっていたので攻撃の方が好きです(笑)。

ーーDFになったきっかけや経緯は

 きっかけは高校時代の監督の采配なんですけど、ただ自分が起点となってみたいなところでは最初やった時からやりがいみたいなものを感じていたので、すんなり受け入れましたね。

ーー最初言われた時は驚きもありましたか

 なんとなくプレーの特徴というか長所的にも左利きでそれなりサイズもあってキックが特徴っていうのもあって、後ろの選手かな(笑)っていうか、後ろでやった方が重宝されるかなって思っていたので、そんな感じです。

ーー前のポジションを経験したからこそ今に生きてることはありますか

 受け手のことを少し考えられるというか、このタイミングでとかこういうボールでみたいなところは自分が少し受け手に回ったこともあったので、そういうポジションをやっていたので少しは理解できてあげられるかなと思ってます。

ーー早慶戦で見てほしい自分のプレーは

 まあやっぱり左足のキックですかねー。これをなくしたら、自分からこの武器がなくなったら何も残らないぐらいにこだわってやってきましたし、そこはこの先もこれで生きていくんだぐらいの気持ちではいます。

ーーリーグも変わってしまったので難しいかもしれませんが、今の慶大に対するイメージは何かありますか

 ゲームをほとんど見れてないですし具体的なところはまだスカウティングもできていないので分からないですけど、前期2部でそれなりに結果を出していて、チームとしても昇格に向けてかなり前向きな雰囲気ではあると思います。かなり勢いはあるかなと思っているのでそこをさらに上回るような勢いだったりとか受けに回らないっていうのがすごく大事だなと思うので、そういった慶応の前向きな姿勢、上行くんだっていう姿勢はすごく感じてます。

ーー早慶戦に対する意気込みをお願いします

 昨年ほんとに悔しい思いをした分、今年は必ずピッチ上で借りを返すっていうのは前提として、その上でほんとに見に来てくれた方とか一生懸命準備してくれた部員の仲間だったりとか一緒に戦ってくれたチームメイトだとか、早稲田に関わる全ての皆様に喜んでもらえるようなゲームができるよう精一杯頑張りたいなと思います。

ーー個人としての目標は

 ゴールでもアシストでも構わないので、数字、結果にこだわるっていうのは前期結果出していないのでそういった意味でもそこに対するこだわりは強く持ってやっていきたいなと思います。

「ひたすら上を見続けて目の前の一試合一試合を戦うしかない」

関東リーグ駒大戦で前線へパスを送る鈴木

ーー最後に後期リーグに向けてお話を聞いていきたいと思います。後期戦うに向けたチームの目標は

 もちろん目指しているところはより高いところですけど現実的に今の状況をしっかり捉えて、自分たちがまず目指すべきところっていうのはインカレ出場権かなって思ってます。

ーーそれはチームの共通認識としてというところですか

 そうですね。日本一っていう目標を掲げているので、それを達成するのにそこをつかむしかないかなと思います。

ーーやはり課題としては得点力というところになってくると思うのですが、改善するための具体的なイメージは何かありますか

 まずはほんとに一本のシュートだったりパスだったり、そういうところをこだわってみんな取り組んでくれていますし、フォーメーションの話もありましたけど、そういう戦術的なところもかなり改善を加えて、より相手に怖さを与えられるような展開になるように準備はしているので、そこは継続して取り組んでいきたいなと思ってます。

ーー後期の目標を達成するうえで鍵になる選手は

 僕はDFの選手なので自分含めて平瀬、監物、そういったJリーグも決まっている選手たちが失点さえしなければチームが負けることはないので、僕含めてですけどディフェンスラインの選手はやんなきゃいけないなと思います。

ーーディフェンスラインに4年生が揃っている分、自分たちがやらなきゃという思いですか

 能力だけじゃないというかなんでわざわざ4年を使っているのかっていうところも踏まえて、絶対に示さなきゃいけない部分があるのでそこはブラさずにやっていきたいなと思います。

ーー鈴木選手のポジションはどこがメインになりますか

鈴木 ウイングバックはないです、たぶん。(センターバックの)左か真ん中っていうのはいろいろ試しながらですけど。別に僕個人としてはどちらもやりづらさは感じていないので、ほんとにどこでもやれる準備はしてます。

ーーアミノバイタル杯ではウイングバックとして出場していましたが、それは攻撃的に行くためのオプションの一つだったということですか

 そうですね。

ーー個人としては後期リーグでも数字というところにはこだわっていきたいですか

 そういった分かりやすいところもそうですけど、こういう苦しい状況だからこそ副将として、4年として、チームが下を向きそうな時でもうまくコントロールしてっていうのは意識してやっていきたいなと思ってます。

ーー後期リーグへの意気込みをお願いします

 今の状況を考えると、ひたすら上を見続けて目の前の一試合一試合を戦うしかないと思っているので、先のことばっかり考えずに今ある目の前の試合を集中して必ず勝点3っていうのを全員で意識して日頃から良いトレーニングができたらなと思っています。

――ありがとうございました!

(取材・編集 栗田優大 写真 前田篤宏、水島梨花)

早慶クラシコに向けて意気込みを書いていただきました!

◆鈴木俊也(すずき・しゅんや)

2000(平12)年11月24日生まれ。178センチ。早稲田実業高出身。商学部4年。最近はワンピースにハマっているという鈴木選手。同期の選手と一緒に映画を見に行ったそうですが、感想はまさかの「まあまあ」。早慶戦では観客を沸かせるプレーに期待です!