DF平瀬大 大ケガ乗り越えプロの世界へ

ア式蹴球男子

 大学入学後、幾度もケガに苦しめられた男がプロ内定を決めた。高い身体能力と鋭い読みを武器に早大の最終ラインに立ちはだかる平瀬大(スポ4=サガン鳥栖U18)。大学での4年間で積み重ねた努力が実り、「憧れ」と語るサガン鳥栖でプロキャリアをスタートさせる。

前線へとロングフィードを送る平瀬

 中学1年時にサガン鳥栖ユースに合格。周囲とのレベルの違いに驚くも、必死の練習で高校1年時から徐々にチャンスをつかみ始めると、高校3年時には高校サッカーの国際大会であるサニックス杯のベストイレブンに入るほどまでに成長した。着実にプロへの階段を登っていたが、高校3年の7月、悲劇が起こる。クリア後の着地で前十字靭帯と半月板を痛め、下された診断は全治10ヵ月。高卒でのプロへの道は閉ざされた。

 プロになるための次なる舞台に平瀬は早大を選択した。当初は5月に合流予定であったが、大幅に復帰が遅れ、トレーニングマッチに出場するまでに1年4ヵ月を要してしまう。ようやく平瀬の大学サッカーが開幕したのもつかの間、再び悲劇が起こる。2020年7月、自粛期間中に参加していた古巣・サガン鳥栖ユースでの練習中に足を痛め、下された診断は前十字靭帯断裂。全治は8ヵ月と言われた。懸命のリハビリを経て、21年後期の関東大学リーグ戦(関東リーグ)の登録メンバーに名を連ねた平瀬であったが、関東リーグに出場することはなかった。再び、半月板を痛めたのだ。それでも平瀬は決して下を向くことはなかった。

相手FWと競り合う平瀬

 そして2022年4月16日、ついに平瀬は関東リーグデビューを果たすこととなる。復帰後は安定したプレーを続け、前期終了後の練習参加を経てサガン鳥栖への入団をつかみ取った。

 大学入学後のほとんどの時間をリハビリに費やし、苦しんできた平瀬。しかし、全てがマイナスなわけではなかった。「継続してできる力もついたし、本気で夢を目指すスイッチが入ったのではないかと思う。」とケガの期間を振り返る。そして、ケガの間に平瀬を支えていた「プロになる」という明確な目標。この根底には家族の存在がある。なぜプロになりたいのか。この問いに対し、「家族のためというのは変わらないですね。自分のために尽くしてきてくれた。こうやって私立の大学にも通わせてもらって、本当に感謝しかないので、家族のために今まで頑張ってきました」と答えた平瀬。これまで支え続けてきてくれた家族に対し、プロ内定という最高のかたちで応えて見せたが、「ここで終わりじゃない。」と、慢心はない。

復帰後、平瀬は早大DF陣に欠かせない存在となっている

 12日、サガン鳥栖への来季加入内定が発表された。平瀬の見据えるプロでの目標は「鳥栖サポーターへの応援を背にプレーし、鳥栖に恩返しできる選手になること」。鳥栖にとって悲願となる初タイトル獲得のため、平瀬は熱く闘い続ける。

(記事 栗田優大 写真 前田篤宏、宮島真白、水島梨花)

プロへの思いを色紙に示した平瀬

◆平瀬大(ひらせ・だい)

2001年(平13)3月28日生まれ。180センチ、75キロ。佐賀・龍谷高出身。前所属・サガン鳥栖U18。スポーツ科学部4年。関東大学リーグで、1部通算9試合出場(8月15日現在)。