2度のリードも勝ち切れず まさかのインカレ初戦敗退に涙

ア式蹴球男子
第70回全日本大学選手権 2回戦
早大 1-0
0-1
延長前半0-0
延長後半1-1
PK3-4
びわこ成蹊スポーツ大
【得点】
(早大)14’田部井悠、109’倉持快
(びわこ成蹊スポーツ大)55’工藤真人、118’大嶋佑

 関東大学リーグ最終節の法大戦(〇1―0)で劇的な勝利を収め、インカレ(全日本大学選手権)出場権を獲得した早大。チーム一丸となってつかみ取ったインカレの初戦で、びわこ成蹊スポーツ大と対戦した。序盤から積極的な攻撃を見せた早大は13分MF田部井悠副将(スポ4=群馬・前橋育英)のゴールで先制。しかしその後は相手にボールを握られる時間が続く。後半に入ると開始早々、相手に同点ゴールを献上してしまう。以後は互いに決定機を作ることができず、同点のまま90分を終え勝負は延長戦へ。なかなか相手ゴールに迫れないなか、早大は延長後半4分MF倉持快(人4=神奈川・桐光学園)の値千金のゴールで勝ち越すことに成功。このまま逃げ切りたい早大であったが、終盤に再び追いつかれ、勝負はPK戦に突入する。迎えたPK戦、互いに一人ずつが失敗するなか、早大の5人目のキッカーMF西堂久俊(スポ3=千葉・市船橋)が放ったボールは無情にも枠の上へ。相手の5人目が確実に沈め、試合終了。無念の敗戦となり、早大は初戦でインカレの舞台から去ることになった。

 

肩を落とすヒル

 怪我人が多く、「正直満身創痍なところはありました」と外池大亮監督(平9社卒=東京・早実)。メンバーを多く入れ替えて臨む一戦となった。立ち上がりに主導権を握ったのは早大であった。サイド攻撃を中心に、敵陣奥深くまで入り込み得点の機会をうかがう。5分には両サイドを揺さぶると、左サイドからMF水野雄太(スポ3=熊本・大津)が仕掛ける。相手DFに止められるが、中央にこぼれたボールをMF山下雄大(スポ3=柏レイソルU18)がつないで最後は田部井がシュートを放つ。これは惜しくもゴールポストに阻まれ、こぼれたボールに再び水野が反応するが枠の外へ。続く6分には左サイドでボールを受けた水野が中央に切り込みシュートを放つも、惜しくも枠を外れる。攻撃の手を緩めない早大は13分、再び左サイドでボールを受けた水野が相手DFをかわしてからシュート、これは相手GKに阻まれるがこぼれ球を田部井が詰め、先制点を奪う。この勢いのまま一気に追加点を奪いたい早大。しかし得点後はなかなか決定機を作ることができない。徐々に相手に押し込まれる時間が増えたが、GKヒル袈依廉(スポ1=鹿児島城西)の好守もあり、1点リードを保ったまま前半を折り返す。

ゴールを奪った田部井を祝福する選手たち

 後半に入り、主導権を奪い返したい早大。しかし、依然として相手のペースで試合は進む。すると55分右サイドから相手が放ったシュートを、一度はブロックするもこぼれ球を押し込まれ、同点に追いつかれる。再びのリードを狙い、早大はMF倉持快(人4=神奈川・桐光学園)、MF丹羽匠(スポ3=ガンバ大阪ユース)、西堂を投入する。さらにはMF田中雄大主将(スポ4=神奈川・桐光学園)をトップ下から左サイドに変更するなど、前線のメンバーを入れ替えながら勝ち越しを目指す。75分には田中、79分には丹羽が立て続けにシュートを放つも、相手ゴールネットを揺らすには至らない。終盤になるにつれて再び相手に押し込まれる苦しい展開が続くが、DF西田翔央(商3=東福岡)やMF小倉陽太(スポ2=横浜FCユース)の両センターバックを中心に集中した守りを見せ、勝ち越し点は許さない。互いに追加点を奪うことができず、1-1のまま90分が終了し、勝負は延長戦へ。

右サイドを切り裂く水野

 延長前半に入り、何としても先に追加点が欲しい早大であったが、なかなかゴールを脅かすことはできない。逆に相手には再三決定機を作られるも、ヒルの立て続けの好セーブがチームを救う。早大は延長後半の開始と同時にFW駒沢直哉(スポ1=ツエーゲン金沢U18)を投入。最後の交代枠を使い追加点を奪いにいく。そして迎えた延長後半4分、早大が待望の追加点をあげる。右サイドから西堂がボールを供給すると、ニアサイドで駒沢がつぶれたことでペナルティエリア中央にボールがこぼれ、倉持が豪快に右足を振り抜く。これが相手ゴールに突きささり、値千金の勝ち越し弾が生まれる。「本当に『入ってくれ』と思いながら打ったら、結果的にゴールに入ってくれたので。よかった」と倉持。途中交代で入った3人が絡んだ見事な得点であった。このまま逃げ切りたい早大であったが、延長後半13分、左サイドからのクロスを中で合わせられると、一度クロスバーに跳ね返ったボールを押し込まれてしまい、再度同点に。残り時間2分での痛恨の失点となってしまった。このまま120分でも決着がつかず、勝負の行方はPK戦で決められることとなった。

追加点をあげた倉持

 迎えたPK戦、早大1人目のキッカーDF柴田徹(スポ3=湘南ベルマーレU18)が放ったボールは相手GKにコースを読まれ止められてしまう。しかし直後の相手のPKをヒルが防ぎ、振り出しに戻す。早大は2人目の丹羽、3人目の倉持、4人目の小倉が続けて成功するが、相手も同じく成功する。迎えた5人目、早大のキッカー西堂が放ったボールは無情にも枠の上へ。後がない早大であったが、相手の5人目のキッカーに決められ試合終了。まさかのインカレ初戦敗退となった。

PKを待ち受けるヒル

  立ち上がりはアグレッシブな攻撃を仕掛け続け先制点を奪うことができた。ところが先制点を奪ったことでかえって少し受け身になってしまった時間も増え、相手に押し込まれる展開になってしまった。その後課題であった後半の立ち上がりに失点を奪われてしまい、なかなか自分たちの流れをつくることができなかった。それでも粘り強いプレーを続けたことで徐々に攻撃回数を増やし、先に追加点を奪うことに成功した。しかし再び課題であった得点直後に失点をしてしまい勝ち切ることができなかった。「自分たちの脆さ、特に先制して追い付かれ延長後半に得点して、その状況を保てずに我慢しきれなかったところは自分たちの力の無さだったと言わざるを得ない」と外池監督。「チームとして振り返れば、やっぱり今年1年あった最後の甘さみたいなものが、大一番で出てしまった、全体としての隙みたいなものを象徴してしまった試合」と西堂が語るように、今季の課題が露呈した、悔しい結果となってしまった。

チームをけん引した田中

  この試合で今季のア式蹴球部としての活動を終え、4年生は引退を迎えることになる。結果、敗退となってしまった試合ではあったが、最後に4年生の田部井副将と倉持がゴールを決めた。「終わっちゃったなという。そこに尽きます。悔しいし、勝ちたかった」とFW杉田将宏(スポ4=名古屋グランパスU18)。1トップとして先発した杉田は、前線からの果敢なプレスでチームの士気をあげるプレーを見せていた。こういった4年生の気迫あふれるプレーは今後のア式蹴球部に必ず受け継がれていくだろう。

  そしてチームの中心を担っていた田中主将。「特にこの4年目は、苦しい時だったり、乗り越えていかなくてはいけない時期もありましたし、でも自分としては4年間を振り返ると、同期に成長させてもらいましたし、支えられてここまでやってこられたと思う」と語るようにア式蹴球部のキャプテンとしての重圧は並大抵のものではない。それでもチームを先頭に立ちけん引する姿は、後輩たちの目に焼きついているはずだ。

体を張ったプレーを見せた柴田

  一方で、「今日ここで味わった悔しい思いを、個人としては絶対に忘れてはいけない」と西堂。ピッチに立ったが勝利に貢献できなかった選手、そしてピッチに立つことができなかった選手。下級生陣は、この悔しさを胸に、来シーズンへと歩みはじめるだろう。外池監督は「この敗戦という結果から、彼らが次にどのような一歩を踏み出していくのかというところに対して、しっかり寄り添っていければ良いのかな」と語る。今日の無念、そして4年生が残してくれた魂を受け継ぎ、ピッチ上で体現できるのは彼らしかいない。「後輩たちには来年、より上を目指してやっていってほしいと思います」という田中主将の思いを乗せて、新たな船出へと向かうア式蹴球部。来季こそは、この舞台でより輝く姿を見せてほしい。

(記事 髙田凜太郎、写真 山崎航平、前田篤宏)

早大メンバー
ポジション 背番号 名前 学部学年 前所属
GK ヒル 袈依廉 スポ1 鹿児島城西
DF 西田 翔央 商3 東福岡
DF 柴田 徹 スポ3 湘南ベルマーレU18
DF 小倉 陽太 スポ2 横浜FCユース
DF 33 藤本 隼斗 スポ2 柏レイソルU18
→HT 12 森 璃太 スポ2 川崎フロンターレU18
MF 山下 雄大 スポ3 柏レイソルU18
→84分 11 西堂 久俊 スポ3 千葉・市立船橋
MF ◎10 田中 雄大 スポ4 神奈川・桐光学園
MF 14 田部井 悠 スポ4 群馬・前橋育英
→69分 12 倉持 快 人4 神奈川・桐光学園
MF 17 植村 洋斗 スポ2 神奈川・日大藤沢
MF 19 水野 雄太 スポ3 熊本・大津
→69分 丹羽 匠 スポ3 ガンバ大阪ユース
FW 30 杉田 将宏 スポ4 名古屋グランパスU18
→延後開始 20 駒沢 直哉 スポ1 ツエーゲン金沢U18
◎=キャプテン
監督:外池大亮(平9社卒=東京・早実)