全日本大学選手権直前特集 第4回 植村洋斗×中谷颯辰(12/8)

ア式蹴球男子

  高い攻撃力が売りのMF植村洋斗(スポ2=神奈川・日大藤沢)と、最終ラインからの組み立てに定評のあるDF中谷颯辰(基理2=静岡学園)。植村は世代別代表候補への選出経験を持ち、中谷は高校年代において日本一を知る男だ。ピッチ外でも親交の深い2人に、今季の自身の振り返りから、インカレに向けての意気込みを語っていただいた。

※この取材は12月3日に行われたものです。

「初日からやっていけるかなという不安が大きかった」(中谷)

リーグ戦デビューとなった前期駒大戦での中谷

――まずはお互いの他己紹介をお願いします

中谷 プレーは万能です。入ってきた時の印象は、テクニックがあってうまいキャラでした。徐々に守備もできるようになって、今はチームがどんなサッカースタイルでも使いやすい選手だなと思います。ボールも取れるし、つなげるし。今チームが守備主体でやっている中でもキーマンだなと思います。性格は、クールぶってるだけで結構かまちょなんで、かわいいです(笑)。

植村 ポジションはセンターバックで、今年から関東リーグ(関東大学リーグ戦)に出るようになって、だんだんと守備も今年はすごく良くなってきた印象です。最近は試合に出れなかったりしてますけど、今年1年ですごく成長しているなと。元々足元がある選手なので、ビルドアップとかすごくうまくて安心感もありますし、守備の局面でやっていけばもっといい選手になっていくと思います。性格は関西人なので、面白いと言っておきます(笑)。寮も一緒にいることが多いので、仲良くやっています。

――「仲がいい選手は?」というアンケートでもお互いの名前を書かれていましたね

中谷 ちょっと迷ったんですが(笑)。

――いつから仲が良いのですか

中谷 今年から寮に移って来たので、より一緒にいる時間が長くなったかなと思います。

――お互いのプレー面の魅力は

中谷 テクニックがしっかりある中で、守備もできてラストパスも出せるし、相手のことを考えたパスとか、相手の前プレスのところを一つはがす起点になれる選手だと思います。最近は前でプレーしてないので、インカレはもっとゴールに絡んでいってほしいです。

植村 颯辰は、やっぱり一番の魅力は足元かなと思います。センターバックでボールを操れる、相手を一枚はがせる選手が少ないので、とても貴重ですね。守備でも試合に出ていく中でどんどん強くなっているので、これからすごい選手になると思います。

――早大に入った理由は

中谷 自分はサッカーよりは学力を考えていました。高校2年の文理選択の時に、理系の指定校の枠に(早大が)あるのが分かっていたので、理系で上位が取れれば早稲田に行けるし、スポーツ推薦にも切り替えられるし、とりあえず理系に行って早大の指定校を目指しながらサッカーをやっていこうと思っていました。結果的に指定校が取れるとなって、ア式に入るかはその後決めました。自分はプロを目指さなかったらサッカーをやらないつもりだったので、高校の時にはもうプロは無理かなと思ったんですが、高校最後にいいところまで行って、そこで早稲田も決まったので、ア式に入ろうかなと思いました。

植村 自分は最初高卒でプロを目指していて、プロの練習参加もしていたんですがなかなか決まらなくて。スポーツ推薦で声をかけてもらって練習に参加する中で、プロが無理かなと思っていた時にちょうど声がかかったので、ここでやろうかなと思いました。

――ア式に対しての最初の印象は

中谷 自分が今までゆるいというか、ピッチ内外で自由にやらせてもらっていたチームが多かったので、練習初日からやっていけるかなという不安が大きかったです。入部制度があるんですが、練習生の期間にもこのままじゃ入部できないとは去年の4年生からも言われました。今は慣れてきましたけど、最初は無理かなと思っていました。

植村 自分も結構サッカーばかりやってきたので、ここに来た時はサッカー外のルールも多くて、1年生なので仕事もいろいろあって、サッカーというよりはそっちで苦労しました。サッカーもレベルが高くて、最初はここでやっていけるのかなと感じていました。

――ア式に入って、環境の大きな変化はありましたか

植村 自分は慣れるのに時間がかかるので、新しい環境が苦手で、人と接する部分も大変でしたし、シンプルに仕事も高校と全然違ったので、全体的にきつかったですね。

中谷 細かい仕事とか、個人の責任の重さに初めは苦労しました。自分も練習生時代は結構ミスしてしまった部分もあって、慣れていなかったのもあって、ダメな人間だったと思います。そこはア式に来てよかった部分でもあるし、難しかった部分でもあります。

――ア式で過ごした2年間を振り返っていかがですか

中谷 自分は9月くらいに入部して、昨季はずっとAにはいたんですが、去年の4年生のセンターバック陣がすごくて、試合にも出られないし、でもBの試合の公式戦も出ないしという難しい立ち位置でやっていました。でも自分は、自分にとっていい先輩だと思えたことがあまりなかったんですが、去年の4年生のディフェンス陣の人が、初めて尊敬できる先輩だと感じました。最後に#atarimaeni CUPで試合に出ることができて、工藤(泰平、令3スポ卒=神奈川・日大藤沢)くんと最後に試合に出られたことは大きかったなと思います。試合は負けてしまったんですが、最後の20分間に出て初めてア式の一員だなと感じて、来年4年生のためにいい報告できるように頑張ろうと思えたので、最後の試合は自分にとって大きかったです。今季は、ベンチに入ったり入らなかったりで満足はいっていなかったです。自分のパフォーマンスはある程度維持できていて、後期になってチャンスが回って来た中で、得点も多くなりましたけど明らかに失点が多くなってしまいました。ディフェンダーとしては満足いかないし、自分が直接的に何かしたわけではないのに、自分が出たら負けるんじゃないかとか、自分に原因があるんじゃないかといろいろ考えました。でも自分の特徴は、ビルドアップでも守備でも、初めて出た時よりやれるようになった感覚はあるので、もう一度インカレで出たいなという気持ちが強いです。

「自分の足りなかった部分にここに来て気づかされた」(植村)

早慶クラシコでPKを沈める植村

――植村選手は中谷選手についてどう感じていましたか

植村 1年目はあまり一緒にプレーしていなくて、(Aチームに)上がって器用にこなしているなとは思っていたんですが、そんなに存在感はなかったです。でも今シーズンは試合に出ているからかすごく声も出すようになったし、自分自身の課題を考えてプレーできているなと思って。うまくいかないことも多かったと思いますけど、しっかり立て直して自分に必要なことと向き合えているのかなと思います。

――植村選手自身についてはいかがですか

植村 自分は今シーズンですごく成長できたなと思っていて。1年目は多くの試合に関わらせてもらっていましたが、出ているだけで自分のプレーもなかなかできませんでした。でも今シーズンは、自分のやりたいプレーが試合で多く出せるようになってきました。前期は全然試合に出られなくて、どうして出られないか悩んだりもしましたが、そこも考えて、守備をすごく意識して、試合でも表れるようになってきたかなと。自分の足りなかった部分にここに来て気づかされて、プレーは今年1年間で大きく成長できたかなと思います。

中谷 1年の時も出ていましたが、途中から(出場)も多いし、1年だから遠慮しているんだろうなという部分も多かったです。たしかに1年の時から技術レベルは高かったですが、うまいなというだけの選手だったのが、今年は相手にとって嫌な選手になれているなと感じます。選抜や代表とかも入ってるし、ア式以外からの評価も高い所から見ると、使いやすい、魅力が分かりやすい選手になったのかなと思います。

――ポジションでいうと、ボランチでは同学年など競争が激しくなっていますが、ライバルの存在は

植村 今年は本当に中盤のレベルが高いなと思っていて。レベルが高いから今の自分があるなとも思っていて、これほどレベルが高くなかったら守備も良くなっていなかっただろうし、レベルの高い環境で、出たり出られなかったりを繰り返して、考えて行動できていたから今の自分があると思っています。できなかったらすぐに落とされるという危機感の中でやれているから、もっと上を目指さなきゃというモチベーションにもなっているので、やっていて楽しいです。

――中谷選手はセンターバック陣の現状についていかがですか

中谷 センターバックはスタイルが分かれるかなと思っていて。自分はがっつり守備というタイプではなくて、今求められているのはそういうスタイルかもしれないんですが、プロも想定した上で、今出ている選手の強度をもっと超えていかないとポジションが奪えないと思います。今出ている選手に負けているとは思わないですが、やっぱりセンターバックとして求められることの平均値をもっと上げていかないといけないとは思っています。自分のプレースタイルを変えよう、チームに合わせようとは思わなくて(自分のスタイルを)貫きたいですが、どうやって自分の色も出しつつ監督(外池大亮、平9社卒=東京・早実)やチームが求めているセンターバックになるべきかというのを、今悩んでいます。そこを今シーズン終わるまでに見つけて、来シーズンでもう一つレベルが高いところでやれたらなと思います。

――終盤では主に新人戦に出場されて引っ張る存在でしたが、トップと新人戦とを経験して何か変わったところはありますか

中谷 最近はBチームで序列も落ちているんですが、周りのレベルにいい意味でも悪い意味でも合わせちゃうから、トップにいてもトップでやれるし、下にいても下でやってしまう、飛びぬけた選手じゃなくなってしまうというのがあります。新人戦でも自分は圧倒的な存在感を示せなかったです。関東はかなりの試合に出ている中で何も示せなかったのは悔しいし、今の下の立ち位置からトップの先発を取るには、周りに合わせるのではなく、圧倒的な存在感を示さないと序列は上がらないと思います。今はそこのメンタル、心の持ち方を成長させなければと思っています。

「(加藤は)チーム全員が頼れる存在だった」(中谷)

後期駒大戦で攻撃を組み立てる中谷

――2年生はどのような学年ですか

中谷 バランスはいいと思います。真面目過ぎず、ふざけすぎず、4年生になったときにバランスの取れたいいチームになるんじゃないかなと思っています。

植村 自分もバランスはいいなと思っています。オンオフの切り替えもしっかりできるし。でも自分たちの代が4年生になったとき、誰がキャプテンになるのか、抜けた存在になるのかは今はっきりとは出ていなくて。みんなあまり人に対して強く言えず、思っていることを言えない学年でもあるので、そこはまだまだかなと思います。

――3年生や4年生に対してはどういった印象を持っていますか

中谷 4年は僕たちに比べたら真面目な人が多いのかなと思います。いい悪いではないのですが、もうちょっと抜くところは抜いてもいいのかなと思います。3年は真面目派とゆるい派があるので、来年は当たるか外れるかのどちらかかなと。勝ちだしたら強いけど、負けだすと崩れるのかなという感じはしています。

植村 3年生は個人が強いなと思っています。サッカーもですが、それが強いからチームとして見たらどうなのかなと。個人個人は強いですが、チームとして戦うとなったときに、勝てるチームになるのか崩れていくのかというのはあります。でもまとまったら本当にいいチームになると思います。4年生は真面目な人が多いなと。今シーズンうまくいかないことも多かったですが、それを4年生は重く捉えて、考えているなと。もっと楽にやればいいのにとは思って、そこで真面目な学年かなと思いました。

――インカレ(全日本大学選手権)出場権も最終戦(対法大、11月13日、〇1-0)での勝利で何とかつかんだという状況でした。リーグ前半と後半の結果に違いが生まれた理由、後半戦で苦しんだ理由はどう考えていますか

中谷 やっぱり夏の期間で、やるサッカーが変わった気がします。前期を振り返ったときに、堅くて忠実なサッカーをしていて。ゴリくん(FW加藤拓己、スポ4=山梨学院)がいたのもあると思いますが、前にしっかりポイントがあってそこにつなげるサッカーをしていて、1-0の勝ちとか、相手も強かったけど勝ってるという試合が多かったと思っています。後期に入ってからは、自分たちがボールを持つサッカー、組み立てるサッカーをしだして点の入る数は多くなりましたけど、ショートカウンターを食らったり、1本パスがずれたところからの崩れが出て、失点の多さが目立ちました。最後はまた少しア式っぽいサッカーというか、しっかり守ってしっかり一本つなぐというサッカーになってからは、勝てるようになったと思います。自分が出ている期間は、ボールを持つサッカーをしていたので、チームに迷惑をかけてしまったのかなと今は思っています。

植村 一つはゴリくんの存在がすごく大きいなと。あの人が前にいるだけで安心感もあったし、点が入るだろうという意識もありました。いなくなって勝てなくなって、前期に勝ちが多くて「自分たちは強いんじゃないか」という慢心もあったと思います。でも自分たちは守備のチームで、1点取って守って勝つという試合が前期は多かったですが、後期はボールを持ってそういう部分が出てきて、うまくいかなくなって勝てなくなったのかなと。最後は原点に返って守備からというのを意識して、拓大戦(10月27日、〇2-0)が一番出ていたと思いますが、あれだけボールを持たれた中で0で抑えたし、本当に守備のチームだなと思うので、そこはインカレも大切にしていかないとと思います。

――やはり加藤選手は精神的な支柱なのでしょうか。グラウンド内外ではどんな存在ですか

中谷 メリハリがある人なので、アップではチームを盛り上げてくれるし、練習もあの人がいるだけで雰囲気が変わるので、精神面でもすごくいい方向にしてくれていました。試合になったら目つきが変わって、ボールは苦しくなったら全部俺に預けろというくらいどっしり構えてくれて。それは後ろの選手からしても大きいし、チーム全員が頼れる存在だったのかなと、抜けてから改めて感じました。ピッチ外でも後輩ともよくコミュニケーションを取っていて、ふざけているようで想像以上に周りを見ていて異変に気づけるので、そこはすごいなと。プロになるのはこういう人なんだなと思いますし、自分も見習っていきたいです。

植村 今シーズンは特にプロに内定して、スイッチが入ったなとは思っていました。前にいるだけで安心しますし、精神的にも存在感があって声を出してまとめていました。先頭に立つ人があれだけの姿を見せていたら自分たちの活力にもなるので、本当にすごいなと思いました。

「(中谷は)お風呂でイヤホンつけてました」(植村)

明大戦で前線を見据える植村と中谷

――2人の普段の様子をお聞きします。中谷選手は理系とア式の両立は大変ですよね

中谷 大変です。1年の頃の方が大変でしたが、今も夜遅くまで勉強しないと間に合わないです。高校くらいから、勉強して2~3時に寝て朝7、8時に起きることはあったので、コンディションの部分ではもう当たり前になって大丈夫ではあるんですが、勉強に対する疲労感はありますね。勉強したくないな、面白くないなと思うことも増えました。

――どんな勉強をされていますか

中谷 数学科に進んだので、定理を証明したり、問題を解くというよりは性質を求めます。数字が出てこないので、文字式を変形して。自分も何やってるのかよく分からないので、みんなに教えてもらっています(笑)。

――数学は好きだったんですか

中谷 高校は数学と理科、物理や化学が好きでした。でも高校と大学で数学が少し違うので、正直あまり魅力は感じていないです。

――植村選手は選手としてグラウンド外で意識していることはありますか

植村 あまり意識してやっていることはないですが、サッカーだけやるのではダメな組織ですし、ピッチ外で何ができるか常に考えながら、行動にはなかなか移せてないですがやろうとはしています。

――勉強は

植村 問題ないですね。スポ科なので特に気にすることはないです。

――入部してから変わったなと思うことはありますか

中谷 1年の時よりは明るくなったかなと思います。俺にもまれて面白くなったかなと(笑)。

植村 何言ってんだ(笑)。

中谷 1年の時はムスッとしてるイメージがあったけど、最近はグラウンドでも笑っていることが多いし、もちろん組織に慣れてきたのもありますけど、そういう意味では自分をピッチ内外で出せるようになってきたのかなと思います。

植村 颯辰は、サッカー面は足元がある選手だったので、それに守備力がついたなとは思います。ピッチ外は特に変わってないですね(笑)。常に頭おかしいです。

――ムードメーカーなど、中谷選手を言葉で表すならいかがですか

植村 変人とかじゃないですか(笑)。頭おかしいやつばっかなんで。一つ寮にいて思うのは、勉強しながら大声で歌って、それが廊下まで響いてうるさいです。あとは前にお風呂でイヤホンつけてました。壊れるからやめろって言うのに。

――植村選手のチーム内での立ち位置は

中谷 自分からはあまりいかないので、俺とかいじれるやつがいじっていかないと(笑)。

植村 目立つのあまり好きじゃないんですよね。少人数の方が話せるというか、楽しいです。

――他に仲がいいのは

植村 颯辰と、英吉(藤間マネジャー、スポ2=神奈川・鎌倉)、右京(MF平野、人2=兵庫・滝川)とかもよくいますね。それくらいですかね。

中谷 俺は結構いろんな人としゃべるので。寮生は結構しゃべります。藤本(隼斗、スポ2=柏レイソルU18)とか。寮外だと平野右京くらいしかいないですかね。あんまりいないか(笑)。

「監督が求めている像と自分の求める像の違いをどう埋めるか」(中谷)

駒大戦でセットプレーの列に加わる中谷

――インカレが決まってから1か月間、調整期間がありました。個人として意識したことはありますか

中谷 僕は、さっきから言っていますが、自分のスタイルをどうチームに落とし込むか、監督が求めている像と自分の求める像の違いをどう埋めるかがすごく難しくて、自分のプレーにも自信を持っているし、その要求と自分のやりたいことが整理できないなというのが出場しなくなってから続いていますね。今もあまり何をすべきか定まってなくて、ずるずる行っちゃって、序列も下がっているのかなと思います。

――そういったことを監督とは話しますか

中谷 話してもいますし、自分の中で明確に求めている像はあるんですが、そうなると自分の色をどう出すかが結構難しくて。なろうと思えばなれるんですが、そうしたときに、自分が小中高とやってきたことが無駄になるので。貫いてやってきたことがあって、曲げられないなと思っているから、難しいですね。

――植村選手はいかがですか

植村 自分は守備の部分で成長したなと思っているので、そこでもっと、手の付けられないような選手になりたいです。でも守備がよくなった反面攻撃の良さは減っているなと思いますし、監督からもそれは要求されているので、守備も攻撃も自分の良さを出せるように、練習から意識していきたいと思っています。

――インカレ出場を決める法大戦の前に、4年早慶戦(11月10日、〇2-1)がありましたが、モチベーションになりましたか

中谷 監督からも4年早慶戦がインカレ出場に向けてキーになると言われ続けていて、自分たちも4年生に期待していた部分があったので、あの試合で逆転して勝ったのはチームとして士気が上がったし、その後の法大戦を画面で見ていても4年早慶戦を通してやるべきことを再確認できていたのかなと感じました。

植村 その週からずっと4年早慶戦は勝つと言っていたので、本当に勝って4年生の気持ちが出ていた試合だったと思います。自分は外から見ていて、絶対にインカレに行きたいという気持ちが強くなって、間違いなくモチベーションが上がりました。自分も法大戦はベンチで出ていないですが、出ている選手もベンチの選手も一体感が出た試合で、その一体感は4年早慶戦があったからだったし、それがなかったら多分インカレに出られてないと思います。

――一気にシード権まで獲得して、組み合わせを見たときどう思いましたか

中谷 明大と同じ山にいるなというのがぱっと見た印象でした。自分は前期も後期も明大戦に出ていて、前期は0-3で負けて(6月26日)、後期(10月17日、●1-2)は点を取ったのに取り返されて負けていて。新人戦も明大の試合に出ていたんですが、もう一度やれるチャンスが来たな、また出たいなという気持ちが、見た瞬間は強くありました。

植村 1回勝てば明大が来るだろうと思ったんですが、今シーズン明大に負けているので、そこに勝たなければ優勝はないですし、でも明大に関係なく自分は一試合一試合やっていくだけだなと。自分の出せるパフォーマンスを毎試合出すしかないなと思っていました。そこよりは法大に勝ってシードまで行けた驚きの方が大きかったです。

「自分たちのサッカーに自信を持ってやるしかない」(植村)

インタビューに答える植村

――お二人とも大きなトーナメントを数多く経験されていますが、トーナメントで頂点を狙う上で重要なことは何でしょうか

中谷 一発勝負なので慎重になりがちですが、前の選手は普段より思い切ってやっていった方がいいなと思います。シュートを打つだけで流れが変わったりするし、トーナメントは相手もまずは失点しないようにと思って、お互いに失点はなしという戦い方になってしまうと思うので。前はどんどん振っていって欲しいし、後ろはその分前(の選手)に安心してやってもらえるくらい、やらせないぞという気迫を持って、中盤はチームのバランス見ながら運動量が大事だと思います。リーグ戦とは全然違うので、チーム全体としてこのポジションはこういうことをやってほしいというのをそろえて、詰める部分を詰めれば、どの相手でも勝てると思います。

植村 一番大事なのは初戦だと思っています。みんな硬くなって普段のプレーができなくなるので。初戦をどう勝つかで勢いが変わってくるし、初戦の入り方や勝ち方がすごく大事になってくると思います。その中で自分たちは守備を、最初に失点しないことや、自分たちがやってきたサッカーを初戦でしっかりぶつけられるよう、いい準備をしていく必要があると思います。

――そう考えると、今週末の相手は初戦に勝ったという勢いを持った相手との対戦になります。どのように向かっていきますか

中谷 やっぱり、守備から組み立てるサッカーをベースに、相手も関東(のチーム)はチャレンジャーで来られる立場なので、それを受けすぎず早稲田のやるべきことをやって相手にのまれないように声を出して、ベンチもスタッフも含めてそういう雰囲気が大事だと思います。試合前から相手の勢いに負けないようにすれば、そんなに怖がることはないかなと思います。

植村 相手は一度勝った勢いに乗ってくるし、自分たちが関東のチームということで気合や勢いもあると思うので、そこに気合負けしないで自分たちのサッカーをどこまで出せるかだと思います。自分もその中で出るならプレーを思い切り、びびることなく、自分たちのサッカーに自信を持ってやるしかないなと思います。

――守備の面ではクリティカルマイスターの福西崇史さんが教えられています。福西さんへの印象は

中谷 経験豊富なので、チームとしてのやり方も分かっている知識が多くて、そこでの守備のやり方を指導してくれるのはありがたいです。個人でもポジション限らず見てくれて、気になったところは指導してくれるので、その意味では何とかインカレ出場権を獲得しましたが、そこに大きな影響を与えてくれたのかなと思います。

植村 すごい人が来てくれたなと思います。的確なアドバイスもくれますし。チームとして試合でそれを出すのは難しい部分もありますが、そのアドバイスのおかげで自分たちの形になってきてインカレも決められたし、存在は大きいものだなと思います。来てくれてよかったです。

――外池監督はどんな指導者ですか

植村 サッカー面というより、サッカー外や試合中の掛け声とか、プレーよりメンタル面のことを言ってくれる監督かなと思います。見ていないようで見てくれていて、話した時も自分の思っていることを突いてくる、人を良く観察しているなと思いますね。

中谷 たしかにサッカーのことはうるさく言われなくて、ピッチ外とか選手としての振る舞いの部分も、あまり良くないところも言ってくれるのはいいところですね。福西さんが戦術をやってくれるので、いいバランスかなと思います。

「このままシーズンが終わるのは悔いが残る」(中谷)

インタビューに答える中谷

――インカレに向けて、意気込みをお願いします

中谷 もちろんチームとして日本一を目指したいですし、自分もこのままシーズンが終わるのは悔いが残るなと思っています。もう一度試合に出て、インカレという大きな舞台で自分がチームの勝利に貢献するのが目標です。もちろん相手はいいチームが多いので、そこで4年生ともできるだけ長くサッカーをして、最後は優勝トロフィーを掲げたいなと思います。

植村 チームとしては日本一を取って終わりたいですし、負けたら終わりの試合で4年生と少しでも長くサッカーして、最後は楽しく終わりたいなと思います。個人としてもこの大会でプロへの道の評価にもつながると思うので、自分の良さをピッチの上でもしっかり体現して、それがチームの勝利にも貢献できるように、あと1週間、しっかり準備していきたいです。

――あと1カ月、4年生に対しての思いを聞かせてください

中谷 厳しいシーズンで、4年生も責任を感じて試行錯誤してきた中で、最後自分たちも4年生についていき、4年生の思いも尊重してやっていきたいと思います。

植村 苦しいシーズンはありましたが、4年生がいたから今のインカレ出場もありますし、ピッチ内でもコミュニケーションを取ってくれて楽しくできています。今試合に絡むのは1~3年生が多いですが、その分自分たちがピッチで何を表現しようか、感謝の気持ちを伝えられたらと思うので、その気持ちを背負ってピッチで戦いたいなと思います。

――ありがとうございました!

 

(取材・編集 前田篤宏、朝岡里奈 写真 内海日和、大幡拓登、長村光)

全国大会への意気込みを書いていただきました!

◆中谷颯辰(なかたに・そうしん)(※写真右)

2001(平13)年9月12日生まれ。179センチ。静岡学園出身。基幹理工学部2年。大学の勉強で忙しい中でも、主にハイライトで見ていたサッカーの試合をフルで見るようになったそうです。イングランド・プレミアリーグを見ていて、最近の印象は「リヴァプールめっちゃ強い」とのことです。

◆植村洋斗(うえむら・ひろと)(※写真左)

2001(平13)年8月26日生まれ。173センチ。神奈川・日大藤沢出身。スポーツ科学部2年。最近買ったSwitchのスマブラ(スマッシュブラザーズ)にハマっている植村選手。寮で中谷選手、藤本選手、小倉陽太(スポ2=横浜FCユース)選手と遊んでいるそうです。