果敢に攻め立てるもゴールネット揺らせず 今季初の無得点で引き分け

ア式蹴球男子
JR東日本カップ2021 第95回関東大学リーグ戦 第7節
早大 0-0
0-0
国士舘大
【得点】
なし

 前節、駒大に今季初黒星(●0−2)を喫した早大は、2週間ぶりのリーグ戦で国士舘大と対戦した。期待のルーキー・ヒル袈依廉(スポ1=鹿児島城西)を筆頭とした初出場選手も躍動感を見せ、序盤から国士舘大ゴールに迫る。しかし、多くのチャンスを作りながらも、最後まで国士舘大の守備を打ち崩すことはできず。スコアレスドローの引き分けとなった。

関東リーグデビューを果たした平野

 試合開始からペースを握ったのは早大であった。3分、右サイドに流れたMF光田脩人(スポ1=名古屋グランパスU18)が推進力を見せると、MF丹羽匠(スポ3=ガンバ大阪ユース)を経由し右サイドで高い位置を取っていたDF大西翔也(スポ4=浦和レッズユース)へと展開。幸先よくコーナーキックを奪う。10分には、DF鈴木俊也(商3=東京・早実)のくさびのパスを光田が引き出し、ワンタッチでMF山下雄大(スポ3=柏レイソルU18)へと落とすと、山下はワンタッチでFW加藤拓己(スポ4=山梨学院)へと鋭いパスを供給。加藤はフリックで、左サイドの高い位置を取っていた今日初出場のDF平野右京(人2=兵庫・滝川)へと流し好機を演出するなど、早大は絶え間なく攻撃を繰り出していく。

 鈴木を中心とした最終ラインからの丁寧な組み立てに加え、山下は長短のパスを使い分け攻撃のリズムを作り、左サイドでは光田が積極的な仕掛けを見せれば、右サイドは大外に陣取ったMF安斎颯馬(社1=青森山田)と、内寄りにポジションを取る大西にボランチ陣を交えた華麗なフットボールで敵陣深くまで押し込む。ボール保持の時間が増えた分、カウンターアタックを受ける場面も増えたが、こちらも今日初先発となったヒルの好守に加え、DF西田翔央(商3=東福岡)の落ち着いた対応、さらには山下やMF植村洋斗(スポ2=神奈川・日大藤沢)の高い位置からの守備でピンチの芽を摘み取る。得点こそ生まれなかったものの、攻守に好プレーをみせ前半を折り返す。

加藤の豪快なバイシクルは一時ゴールかと思われた

 後半も早大は果敢に攻めの姿勢を見せる。48分、左サイドの高い位置まで押し込むと、丹羽が敵を十分に引き付けてからの光田とのワンツーでディフェンスラインを突破。ペナルティエリアまで持ち込みシュートを放つも、これはゴール右へと外れた。その後も59分にDF森璃太(スポ2=川崎フロンターレU18)、66分にはMF杉田将宏(スポ4=名古屋グランパスU18)を投入しゴールを狙う早大の、この日最大のチャンスは68分。セットプレーのこぼれ球を大西が頭でゴール前へと送ると、最後は加藤がバイシクルでゴールネットへ突き刺し、先制かと思われたがこれはオフサイドの判定。その後、山下がこの日2枚目のイエローカードで退場となり数的不利になった早大は、4年生にしてリーグ戦初出場となるDF須藤友介副将(スポ4=FC町田ゼルビアユース)を投入。攻守にアグレッシブなプレーを見せたが、得点には至らず。0−0の引き分けに終わった。

 「点が欲しい」と指揮官。今季ここまで7戦を終え、勝ち点14を積み上げた。一方でここまで得点は7。攻め込みながらも得点が生まれない試合も多く、リーグ戦優勝を目指す上で得点力の向上は急務である。しかし「プロセスに関しては十分納得」(外池)と、ゴールへのアプローチには手応えを見せる。今節、3選手がリーグ戦初出場を果たすなど、チーム内の競争の高まりがある一方で、「中心の選手がこだわっていかないと。底上げだけではチームは強くならない」と鈴木。チームの底上げに加え、中心選手の更なる奮闘、その両輪が必要だ。ア式蹴球部はさらに『1を積み上げ』、高みを目指す。

(記事 橋口遼太郎 写真 早稲田大学ア式蹴球部提供)

早大メンバー
ポジション 背番号 名前 学部学年 前所属
GK 46 ヒル 袈依廉 スポ1 鹿児島城西
DF ◎6 大西 翔也 スポ4 浦和レッズユース
DF 24 西田 翔央 商3 東福岡
DF 鈴木 俊也 商3 東京・早実
DF 37 平野 右京 人2 兵庫・滝川
→59分 25 森 璃太 スポ2 川崎フロンターレU18
MF 山下 雄大 スポ3 柏レイソルU18
MF 33 安斎 颯馬 社1 青森山田
→76分 19 水野 雄太 スポ3 熊本・大津
MF 28 丹羽 匠 スポ3 ガンバ大阪ユース
→HT 小倉 陽太 スポ2 横浜FCユース
MF 20 植村 洋斗 スポ2 神奈川・日大藤沢
→66分 ◎13 杉田 将宏 スポ4 名古屋グランパスU18
MF 34 光田 脩人 スポ1 名古屋グランパスU18
→89分 36 須藤 友介 スポ4 FC町田ゼルビアユース
FW ◎10 加藤 拓己 スポ4 山梨学院
◎=キャプテン
監督:外池大亮(平9社卒=東京・早実)
関東大学リーグ戦1部 順位表
順位 大学名 勝点 試合数 得点 失点 得失差
明大 16 12
駒大 15 17 12
早大 14
法大 13 10
流通経大 10 16 13
筑波大 10
国士舘大
順大 12 13 -1
立正大 10 -4
10 桐蔭横浜大 10 15 -5
11 慶大 10 -5
12 拓大 11 -4
※5月30日終了時点
コメント

外池大亮監督(平9社卒=東京・早実)

――この試合に向けて、どのような準備があったのですか

 iリーグやトレーニングマッチもあった中で、日頃のトレーニングはもちろんですが、特にゴールへのイメージを、FWが、とか、こういう形、とかではなく、GKからそういうイメージを持てる、そういうものを共有できるようなトレーニングをしてきました。あまりポジションごとに分断はせずに、できる限りそのエネルギーを共有できるように。これはゴールをするためのこういう部分をみんなで共有しているトレーニングだ、というのを意識してやっていました。

――結果としてはなかなかゴールが生まれませんでした。その辺りいかがでしたか

 かなりチャンスは作れていたので、そういう意味ではそれぞれの良さとかはあったと思います。ただやはり、まだもう一歩、もしかしたらもう二歩くらい足りないところがあるのかもしれないです。しかし、10人になっても1点を取りに行くという姿勢を貫き続けて、試合としては圧倒できたかなと思います。そういうチームとしての90分間やり抜く、その姿勢を貫く、それがあっての結果だと思います。プロセスに関しては十分納得というか、満足をしています。

――今日は須藤選手が出場を果たしました

 須藤は初関東でした。今日は初関東が3人いてというところでしたが、ある意味で我々は本当に90人、100人で活動をしているんだ、ということを今日のスタンドにいる全員が、まず感じる、そういう組織でありたいなと思います。そこにまた新たなエネルギーが出てくると思っていますし、多少実績みたいなものも評価にあるのだとしたら、そこを割いてでも新たなエネルギーの循環を作り出す。今はシーズンの序盤ですし、そういったところを活性化していきたいなと思っています。

――Bチームにもこういった選手は良い影響を与えていくのではないでしょうか

 シンプルにそうだと思います。当然まだまだなところは個人個人としてありますが、キャプテンもそろそろ戻ってきますし、そういった意味では、例えば西堂(久俊、スポ3=千葉・市船橋)や監物(拓歩、スポ3=清水エスパルスユース)、柴田(徹、スポ3=湘南ベルマーレU18)などがいないと捉えてしまうのではなく、そういう中でいろいろなものをポジティブに。チームが動いているという、ひとつの姿があるのではないかと思うので、そこは今できる最大値と捉えてやって、チームとしてずっと成長し続けたいなと思います。

――最後にこの試合での学び、そして次節に向けての思いを聞かせてください

 学び…。点が欲しいですね。加藤の場面もありましたし、ポストに当たる場面もありました。もちろん相手あってのことなので、国士舘大はすごく良いチームですし、能力の高い選手が多い中で、そこの部分は十分上回っていたのではないかと。そこはひとつの収穫です。また、学びは、常に課題を見つけ出せるかという部分では、改めてもうひとつ高いところでの決定力です。試合が終わった後に鈴木俊也が言っていましたが、山下のカードに関しては、チャレンジをしてイエローだったかもしれないけど、あそこで質の高いアプローチが出来ていれば二次攻撃にも繋げられたかもしれないと。そこの部分を中心の選手がこだわっていかないと、底上げだけではチームは強くならないと。そこをもっとやっていこう、俺はやるよ、という話をしてくれていました。俊也なんてそういうタイプの選手ではなかったところから、大宮に決まったということも含めてこの短期間で成長が伺えます。そこをチームにとってのプラスアルファにしていきたいです。そこを見逃さないようにしていきたいと思います。

須藤友介副将(スポ4=FC町田ゼルビアユース)

――メンバー入りが決まった時の心境から聞かせてください

 まずは、3年間やってきた中で1試合もベンチに入ることができていなかったので、まざはその1日1日積み上げてきたことが少し報われたという思いが、個人としてありました。そこは素直に嬉しかったです。また、田中(雄大主将、スポ4=神奈川・桐光学園)田部井(悠副将、スポ4=群馬・前橋育英)、そして自分が主将副将としてやってきましたが、彼らは普段なら絶対にメンバーに入っている中で入れていないということがあります。他の部員の思いもそうですが、特にその2人の思いを背負ってやろうという気持ちがありました。

――この試合に向けてのチーム状況はいかがでしたか

 チームとしては、今シーズン初めて駒大に負けて、責任という部分を2週間テーマにしてやってきました。その中で今日の試合を振り返っても、確かに一歩届かなかったのですが、チームとして積み上がったものがあったのではないかと思いますし、今年はFC、iリーグと本当にみんながそれぞれの立場で前を向いてやっています。加えてFCのメンバーに入っていない選手も自分のために、そしてチームのためにモチベーションを高くやってくれています。それが今年の結果を産んでいるのではないかと思います。

――特にFCはここのところ勝利をあげており好調です

 そうですね。最初の2試合が上手くいかなくて、そこから自分たちで立て直していきました。例えばFCだとメンバーの入れ替わりなど諸々難しい事がある中で、松浦(一貴、スポ4=エストレラ姫路U18)を中心にみんなで前を向いてやってきてくれた。その結果が今の結果に結びついています。Bチームは確かに技術的に劣る部分もあるかもしれませんが、それ以上の熱量と球際、切り替え、運動量を全員で体現することで結果がついてきているのではないかと思います。

――今日初出場を果たしました。率直にいかがでしたか

 嬉しかったという思いもありますし、例えば去年であれば小野寺くん(拓海、令3政経卒)であったり、ずっとCチームBチームでやってきた選手が関東リーグに立つということ、4年生がそこに立つということの意味が僕自身わかっていました。すごく勇気をもらいましたし、毎日毎日頑張っていればそのピッチに立てるんだということを僕自身が感じていた中で、自分もCチームBチームと上がってきて、怪我にも苦しんで、その中で本当に少しでしたがピッチに立てたということは、個人的にも嬉しいですし、Bチームや後輩たちにも何か影響を与えられたのではないかと思うと、本当にここまでやってきて良かったと思います。

――デラさんの影響はやはりありましたか

 本当にデラくんとは長いこと一緒にプレーをしてきた中で、ああやって体を張っている姿勢であったり、チームをけん引して行く姿を見ていて、自分も来年ああいった姿を見せたいと思っていました。ひとつここで形になったことをすごく嬉しく思っています。

――1人少ない状況でしたがコーナーキックを奪う場面もありました。どんな指示、どんな意識がありましたか

 指示としては状況も状況だからあまり上がるなと言われていました(笑)。ただ、あの瞬間、まさにボールが入ったときに、自分自身が出る意味として、プレーもそうですが勢いをチームにもたらすことだと思っていたので、迷いなく縦に行こうという思いがありました。欲を言えばあの場面でいいボールが上げられたらと思いますが、ひとつゲームの入りとしてはあそこでコーナーキッグ奪えたのは良かったなと思います。

――この出場は須藤さん、そしてチームにどのような影響をもたらしますか

 僕自身にとっては正直悔しい思いがすごくありました。ピッチに入って、FC、iリーグと積み上げてきたものができなかった部分がありました。例えば縦に行かれるシーンであったり、最後はピンチになりましたが、あの場面はもっと上手くできたのではないかと思います。そういったレベルの差はすごく感じましたが、これを糧に、今日は多少勢いでメンバーに入った部分もあったと思うので、勢いと質の両方を出せるように、来週の練習から1を積み上げていくしかないなと思いました。チームにとっては、自分が影響を与えるという上からの目線が自分は嫌いなのでわかりませんが、先ほども言ったように何か後輩たちが自分の姿を見て思ってくれることがあればいいなと思いますし、例えば今、FCのメンバーに入れなかったり、怪我で上手くいっていなかったり。そういった下級生であったり、1年2年3年4年とそれぞれの立場があると思いますが、本当に頑張ればいつかは報われるということを自分は伝えたかったですし、そういったものをチームの勢いに変えられるのであれば良かったなと思います。

――最後に副将としてのチームへの関わりを教えてください

 自分の役割としては、1人1人が前向きに活動できる環境をいかに作れるかというところが自分の仕事だと思っています。副将を2人おいたのも、自分はピッチ外では広報であったり。三軍二軍一軍とを知っているという面で自分は副将になりました。田部井は他の選手に寄り添えるという選手で、自分と田部井でチームのモチベーションを高めていこうという仕事になっています。そういったところを常にやっていますし、一方で浦田(幹トレーナー、スポ4=兵庫・夢野台、新人監督)は本来優しいやつですが役職柄厳しいことを言わなくてはならない。その苦しみもわかっていますし、本来の良さが消えてしまう部分であったり、少し役職に囚われてしまう部分があることをわかっています。その彼自身の思いを少しでも報いたいという思いがあります。また、主将の田中は怪我で、自分がプレーで表現したいという思いを一番持っている選手でありながらプレーできないという苦しみを自分はわかっています。そういったところは自分が怪我をしていなくて元気なので、少しでもピッチ内でチームをまとめるということを担っていきたいと考えています。