導き出された気付き。 優勝へ向け大きな勝ち点3奪取!

ア式蹴球男子
JR東日本カップ2020 第94回関東大学リーグ戦 第21節
早大 2-0
1-1
筑波大
【得点】
(早大)29’奥田 陽琉、38’ 西堂 久俊、48’ 西堂 久俊
(筑波大)55’田嶋 翔

  重要な一戦で勝てない。今季早大はこの呪縛から逃れられないでいた。アミノバイタルカップ決勝では一度つかみかけた優勝が零れ落ち、試合数に差はあるものの暫定2位の明大との直接対決も敗戦。さらに伝統の早慶定期戦(早慶戦)では、9連覇を達成できずに試合終了のホイッスルを聞くこととなった。自分たちの力を最大限発揮するためには、どうすればいいのだろうか。自問自答した先に、勝つことを意識しすぎず自然体で試合に臨むことの大切さが見えてきた。

 迎えた関東大学リーグ戦(リーグ戦)第21節、リーグ8位と下降気味の筑波大との一戦が行われた。前半に、両肩の手術を経て前節から復帰したFW奥田陽琉(スポ1=柏レイソルU18)が流れを引き寄せる先制点を奪い、早慶戦で同点ゴールを決めたMF西堂久俊(スポ2=千葉・市立船橋)が2点目を追加した。後半開始早々にも西堂のゴールでが生まれ、相手を突き放した早大。押し込まれる場面もあったが、3-1で勝ち点3をものにした。

リーグ戦初ゴールを奪い笑顔を見せる奥田

 開始直後から主導権を握りながらも、相手ゴールをこじ開けられない時間帯が続く。状況の打開を図る外池大亮監督(平9社卒=東京・早実)からツーボランチが指示され、中盤の距離を埋めるかたちに変更。アンカー脇の空間を使うようになっていた相手のツーシャドーへの対策がなされ、早大は安定感を持って試合を進める。試合が動いたのは29分。それまで何度も攻撃の起点となっていたDF阿部隼人(社4=横浜F・マリノスユース)が抜け出して供給したボールに、早慶戦に続いてスタメンに名を連ねた奥田が反応した。「自分がゴールを取ってチームを勝たせたい(奥田)」という気持ちを体現し、先制点を奪うことに成功。「明るさであったり、愚直さみたいな部分が今のチームには必要」と外池監督に評価される奥田の、リーグ戦初得点でもあった。さらに38分には、MF丹羽匠(スポ2=ガンバ大阪ユース)のパスから西堂がゴールネットを揺らす。そのまま落ち着いた試合運びを見せた早大は、2-0で試合を折り返した。

落ち着いて浮き玉のシュートを選択し、試合を決める3点目を奪った西堂

 後半からはMF杉田将宏(スポ3=名古屋グランパスU18)と奥田のツートップを採用し、中大戦で実践済みの4ー4ー2の布陣で臨んだ早大。再開直後の48分、杉田のスルーパスから、再び西堂が魅せる。「競った直後に動き出して僕が引き出せたのがゴールにつながった」(西堂)と、追い打ちをかける3点目。しかし56分、一瞬の隙に攻め上がられてしまう。そしてGK山田晃士(スポ4=浦和レッズユース)の横をすり抜けたボールは、無情にも早大ゴールマウスに吸い込まれていった。その後は交代選手も上下動を繰り返し、献身的なプレーを見せたが、いくつかの決定機を逃し、終盤にも押し込まれてしまう。それでも筑波の追撃を何とかしのいだ早大は、3-1で白星を手にした。

 「難しいゲームではありましたが、良い意味で力が抜けていた」と指揮官が語るように、教訓を生かして安定した試合運びを見せた早稲田イレブン。目標とするリーグ優勝を自力で成し遂げることはできない。しかし「人事を尽くした者のみが天命を待てる」(西堂)という言葉のとおり、諦めるにはまだ早すぎる。ただひたすらに泥臭く、ボールを、そして勝利を追いかけるのみだ。

(記事 手代木慶 写真 永田悠人、橋口遼太郎)

早大メンバー
ポジション 背番号 名前 学部学年 前所属
GK 山田 晃士 社4 浦和レッズユース
DF 柴田 徹 スポ2 湘南ベルマーレU18
DF ◎5 杉山 耕二 スポ4 三菱養和SCユース
DF 22 監物 拓歩 スポ2 清水エスパルスユース
DF 阿部 隼人 社4 横浜F・マリノスユース
MF 鍬先 祐弥 スポ4 東福岡
MF 28 丹羽 匠 スポ2 ガンバ大阪ユース
MF 13 杉田 将宏 スポ3 名古屋グランパスU18
→58分 14 植村 洋斗 スポ1 神奈川・日大藤沢
MF 38 西堂 久俊 スポ2 千葉・市立船橋
→89分 大西 翔也 スポ3 浦和レッズユース
FW 50 奥田 陽琉 スポ1 柏レイソルU18
→64分 10 加藤 拓己 スポ3 山梨学院
FW 田中 雄大 スポ3 神奈川・桐光学園
→64分 19 倉持 快 人3 神奈川・桐光学園
◎=キャプテン
監督:外池大亮(平9社卒=東京・早実)
関東大学リーグ戦1部 順位表
順位 大学名 勝点 試合数 得点 失点 得失差
早大 44 21 14 48 19 29
明大 41 19 13 34 16 18
順大 35 20 11 34 31
桐蔭横浜大 33 19 10 31 24
駒大 29 16 36 28
国士舘大 26 19 29 31 −2
慶大 23 20 21 28 -7
筑波大 22 20 10 25 38 -13
法大 21 15 25 22
10 立正大 21 18 27 30 −3
11 専大 14 18 12 26 52 −26
12 中大 19 14 26 43 −17
※2020年12月9日現在
コメント

外池大亮監督(平9社卒=東京・早実)

――今日の試合に向けてどんな準備をしてきましたか

早慶戦、早稲田として大きな試合の、死闘の末の引き分けの後であったので、かなりそういった意味での疲れもありなかなか難しい状況ではありました。ただ我々はここで立正大と試合をして勝って、順天大に0ー5で敗戦して、という難しく大きな試合を乗り越えた後のゲームということに対して教訓がありました。みんなが積み上げをしっかりと生かしたのでは無いかと思います。

――奥田選手にゴールが生まれました。評価を教えてください

長い怪我から戻ってきて、早慶戦でもスタメンで起用しました。前から献身的にプレーできる選手です。非常にからの明るさであったり、愚直さみたいな部分が今のチームには必要だなと思いましたし、ゲームの入りのところはそう言った部分が非常に重要だと考えていましたのでそこを期待しました。ゴールという形に結びつけてくれたというのは彼自身の思いや、一つの成果があったのではと思います。

――加藤選手は連戦の中で今節スタメンからは外れていますが、エースとしての存在感があります。しかし、奥田選手によりチームに新しい風が吹くのではないでしょうか

加藤自身に実績や能力はありますが、チーム全体として常に変化をし、気付きを生んで成長していく。それが我々のドライブという姿勢だと思います。加藤もまだまだ伸びていかなければならないですし、完成されているわけでは無いので、そういった周りの選手たちの刺激を受けて、またひとまわりもふたまわりも大きくなってもらえるような形になればなと考えています。

――前半の中盤には外池監督からツーボランチにしようという声も飛んでいました。その変更にはどのようなイメージがありましたか

イメージとしては、アンカー脇のところを筑波大のツーシャドーが途中から使うようになっていたので、少しシャドーの対策といった部分。そしてトップとの距離感を縮めるという意味でもどちらかといえばスリーボランチ気味になっていたところをツーボランチにして、トップ下のようなかたちにし、中盤の距離を埋めるというイメージがありました。

――後半からは杉田選手をトップ下のような位置に配置しました

後半に入ってからは、もう一度圧力をかけようという事で、中大戦にやった4ー4ー2の形にしました。前半以上に圧力をかけようという意図があり、開始10分は杉田と奥田のツートップのような形にしました。

――今節勝利を収めました。また、明大は今日の試合引き分けという結果になりました。最終節まで優勝をどちらが掴むかわからない状況です。久々に1週間以上の試合間が空きますが、次の最終節も優勝に向けては絶対に勝利が必要です。チームにどのようにアプローチをして行きますか

我々はこのシーズン、絶対に勝たなくてはならない試合で勝てていません。これも実は大きな経験だと思っています。早慶戦に終わった後、杉山と千田と山田が、そこに対して自分たちはいつものゲームで勝ててはいるが特別なゲームで勝てていない、それは何故だろうと自問自答していました。やはりそのときに大事なのは、勝たなくてはとか絶対みたいに思うことが、本当に自分たちの力を発揮するという環境を生み出しているのかという事です。そういった新たな気付きを共有しました。今日も当然難しいゲームではありましたが、良い意味で力が抜けていたと思います。自分たちが力を発揮する、そのために必要なことはなんであろうと。ただただ思いを強くするとか確固たる覚悟を自分たちの中で作り上げるということだけではなく、もっとのびのびとであったり、もっとしなやかにとであったり。いい意味でのバランス感覚というか。そういったことも必要であったという教訓を、この厳しい今シーズンの中で、重要な試合で結果が出ていないからこそ、導き出した答えでした。それが次のゲームのための我々にとっての視座というようになってきます。これからリーグの最終節、そして全国大会に向けて、我々がもう一個、もう二個積み上げていける一つの伸びしろだと思っています。そういった姿勢であることか、他力ではあるかもしれませんが、そういった状況を導き出すということに繋がるかもしれません。我々はそういう中でも日々トレーニングを積み上げて、そういったことをやっていかなければなりません。そういう自分たちのありようといったところにもこだわっていきたいと思います。

――あくまで大事な試合ではあるが、意識をしすぎないということが、ひとつ経験から導き出されたということですか

そうですね。本当にその通りだと思います。そうすることによってより目の前のことに集中できます。本来ならば目の前の一点に意識が集中してしまっていた場面でも少し周りが見えてきたり。少し道が開けたりとか。物をなくしたときに、探すのをやめたときに探し物が見つかるような。そういうようなことだと思うんです。少し一呼吸するとか、少し伸びをしてみるとか。そういうことがひとつ緊張感の中にも必要なのでは無いかという、そういう学びを共有しました。その辺りはある意味これまでのプロセスから導き出したひとつの我々の成果なのでは無いかと思います。

FW奥田陽琉(スポ1=柏レイソルU18)

――初ゴールとなりましたが率直な感想を教えてください

素直にうれしいです。

――この試合に向けてどんな準備をしてきましたか

前節が早慶戦ということで個人として開幕戦以来の復帰戦となったのですが、自分は結果を残すことができずチームとしても引き分けで終わってしまったので、この試合に向けて自分がゴールを取ってチームを勝たせたいという気持ちでやっていました。

――きょうのご自身のプレーを振り返っていかがですか

筑波さんはうまいので、守備のスイッチを入れるところとかでうまく入れたかなと思います。それと結果も出たので個人的には良かったかなと思います。

――ゴールのシーンを解説していただけますか

左サイドバックのキングくん(MF阿部隼人、社4=横浜F・マリノスユース)が抜け出して、この形は自分が平行でもらってゴールに押し込むだけだと思ったので、横を作りつつ、でも前でディフェンスに触られてしまって難しい状況ではあったのですが、気持ちで押し込みました。

――早慶戦の時は思うようなプレーができなかったと思いますが、きょうは得点に絡めましたがその点はどうですか

早慶戦は本当に悔しくて、あの学生主体で作り上げた舞台で何もできなかったというのは個人的には結構ショックでした。今日出場するならば結果を何としても残したいと思っていたのでそれは良かったです。

――なかなか試合に出られない日々が続きましたが、関東大学リーグ戦(リーグ戦)終盤に出場することができ、今どんな思いを抱いていますか

両肩の手術を経てグラウンドに帰ってきたのですが、本当にたくさんの人の支えがあって、その支えてくれた人のためにも自分は走り続けないといけないと思っていたので、グラウンドに帰って来れてよかったです。

――今プレーしている感触はいかがですか

5ヶ月間プレーから離れていたのですが、意外とやれるなっていう感覚はあります。

――今後の意気込みをお願いします

リーグ戦が1個あって、その後に全日本大学選手権(インカレ)もあるのでチームとしてリーグ優勝と日本一という目標を掲げているので、少しでもその力になれたらと思います。

MF西堂久俊(スポ2=千葉・市立船橋)

――この試合に向けてどんな準備をしてきましたか

前節が早慶戦で、チームとしても個人としても引き分けという結果から立ち直るのがすごく難しい中で、うまく切り替えて練習に臨めたのがこのような結果につながったのかなと思います。

――ご自身のプレーを振り返ってください

前節の早慶戦での引き分けを経て、僕個人の中では4年生のためにという思いがより強くなったので、そういった精神的な部分が僕のプレーの支えになっているかなと感じています。

――1点目のゴールシーンを振り返ってください

自分が丹羽匠(スポ2=ガンバ大阪ユース)にパスを要求しました。思ったようなパスではなかったのですが、相手が被ってくれたので、結果論ですがあれが被ってなかったら僕のところには来てなかったし、被ってくれたのであとは落ち着いてゴールを決めるだけでした。

――2点目のゴールシーンを振り返ってください

僕が競って、ボールがこぼれたのですが、次の動きが明暗を分けたかなと思っていて、競った直後に動き出して僕が引き出せたのがゴールにつながったかなと思います。

――きょうの試合での阿部隼人選手との連携はいかがでしたか

キングくんの能力が高いおかげで自分は比較的自由にやらせてもらえていて、キングくんの支えがあっての僕の今日のパフォーマンスだと思っています。1人じゃいいプレーはできないので、守備面でのコーチングとかも含めキングくんには支えられています。お互いにいい関係性が築けていると思います。

――早慶戦でのコメントで4年生への思いを述べられていましたが、具体的に教えてください

絶対優勝したいというのもありますし、そのためにできることならなんでも全力で死ぬ気でやりたいなという思いです。

――次戦がリーグ戦最後となりますが意気込みをお願いします

明治さんと優勝争いをしているのですが、正直優勝は他力本願なところがあります。ただ4年生がよく言っているように人事を尽くした者のみが天命を待てると思うので、残り一節に向けて準備から全力で人事を尽くして、残りの明治の結果を待ちたいと思います。