王者・明大との大一番 確かな手ごたえも手痛い敗戦を喫する

ア式蹴球男子
JR東日本カップ2020 第94回関東大学リーグ戦 第17節
早大 0-1
0-0
明大
【得点】
(明大)45+4’佐藤凌我

『大一番』――。今季の関東大学サッカーリーグにおいてこの言葉がふさわしいカードが今節、AGFフィールドにて行われた。現在首位に立つ早大と、同勝ち点で並びながら得失点差で2位につける明大。試合は前半アディショナルタイム、FW佐藤凌我(4年)に先制点を奪われる。後半は何度もゴールに迫るが、得点には至らず。首位攻防戦で痛い敗戦を喫した。

相手守備陣と競り合う西堂

試合は前半、思うようにボールを握ることができず苦しい展開に。相手の早い寄せとセカンドボールの回収に手を焼き、自陣でしのぐ時間帯が続いた。12分、クロスのこぼれ球からペナルティエリア内でシュートを許すが、GK山田晃士(スポ4=浦和レッズユース)が好セーブを見せ難を逃れる。好機が訪れたのは23分、敵陣でMF鍬先祐弥(スポ4=東福岡)が相手のパスをカットすると、すぐさまワントップのFW加藤拓己(スポ3=山梨学院)に預ける。反転しMF杉田将宏(スポ3=名古屋グランパスU18)へスルーパスを送るが、相手DFのブロックに遭いシュートは打てず。続く31分には、杉田が技ありのワンタッチで左サイドを突破し、ふわりと浮かせたクロスを供給。MF田部井悠(スポ3=群馬・前橋育英)のアクシデントで途中出場していたMF西堂久俊(スポ2=千葉・市立船橋)がファーでボールに触れるが得点には至らない。前半を通じ、好機と呼べるのはこの2プレー程度に終わり、徐々にボールを握る時間は増やすものの攻撃のかたちをつくるまでには至らない。そうして迎えた前半アディショナルタイム、「時間が進むにつれて自分たちの時間が増えていたので、前半は何とかしのげれば」と試合後に外池大亮監督(平9社卒=東京・早実)が語ったように、無失点で前半を折り返したいところだったが、まさかの失点。東京V内定の相手FW佐藤にGKとの一対一を冷静に決められ、先制を許した。

シュートを放つ加藤

そうして迎えた後半は一転、ボールを握りサイドのスペースを突くいいかたちを何度もつくり、得点の匂いを感じさせる。64分、DF柴田徹(スポ2=湘南ベルマーレU18)のフィードを収めた西堂がペナルティエリア右まで持ち込みクロスを入れる。相手DFにカバーされシュートには至らずも、前半からの修正が見えた攻撃であった。続く75分には、この日途中出場の倉持快(人3=神奈川・桐光学園)が自慢のスピードで右サイドの裏を取ると、マイナスの位置でMF丹羽匠(スポ2=ガンバ大阪U18)が受ける。ワンタッチでMF田中雄大(スポ3=神奈川・桐光学園)につけ、完璧な崩しで明大DF陣を翻弄(ほんろう)するが、田中のグラウンダーのクロスは味方に合わず。84分にはエリア内で受けた倉持が右足でゴールを狙うが、枠に飛ばすことはできず、頭を抱えた。猛攻を仕掛ける中迎えた後半アディショナルタイム、この日最大のチャンスを迎える。途中出場ながら正確なパスでアクセントをつけていたDF阿部隼人(社4=横浜F・マリノスユース)が、前線にロングボールを送るとこれを加藤が頭で擦らす。CKの流れから前線に残っていた杉山耕二主将(スポ4=三菱養和SCユース)がこれを右足で叩くが、ボールは無情にも左ポストへ。直後に試合終了の笛が鳴り、『大一番』の明大戦は奇しくも前期と同じスコア、0-1で敗戦となった。

試合後、「非常に感動的な試合をしてくれたと思っている」と語った外池監督。ハーフタイムには、分析を担当するGK千田奎斗(スポ4=横浜F・マリノスユース)から奮起を促す強い言葉もあったという。得点こそ奪うことはできなかったが、確かな修正力は示した。これで明大に首位の座を明け渡し、勝ち点3の差で追う展開となるが、「下を向いている暇はない」(杉山)。「ゴールして勝ちます」と力強く意気込んだ指揮官、そしてスローガン『DRIVE』を日々体現しようと先頭に立つ4年生を中心に、早大は優勝に向け走り続ける。

(記事 山崎航平 写真 初見香菜子)

早大メンバー
ポジション 背番号 名前 学部学年 前所属
GK 山田 晃士 社4 浦和レッズユース
DF 柴田 徹 スポ2 湘南ベルマーレU18
DF ◎5 杉山 耕二 スポ4 三菱養和S Cユース
DF 大西 翔也 スポ3 浦和レッズユース
→78分 阿部 隼人 社4 横浜F・マリノスユース
DF 22 監物 拓歩 スポ2 清水エスパルスユース
MF 鍬先 祐弥 スポ4 東福岡
MF 田中 雄大 スポ3 神奈川・桐光学園
MF 13 杉田 将宏 スポ3 名古屋グランパスU18
→62分 28 丹羽 匠 スポ2 ガンバ大阪ユース
MF 25 小倉 陽太 スポ1 横浜F Cユース
→69分 19 倉持 快 人3 神奈川・桐光学園
MF 45 田部井 悠 スポ3 群馬・前橋育英
→12分 38 西堂 久俊 スポ2 千葉・市船橋
FW 10 加藤 拓己 スポ3 山梨学院
◎=キャプテン
監督:外池大亮(平9社卒=東京・早実)
関東大学リーグ戦1部 順位表
順位 大学名 勝点 試合数 得点 失点 得失差
明大 37 16 12 32 14 18
早大 34 16 11 39 10 29
駒大 29 16 36 28
順大 29 17 27 29 -2
国士舘大 26 16 25 23
桐蔭横浜大 24 16 22 21
立正大 20 14 24 22
法大 17 13 21 19
慶大 16 17 17 26 -9
10 筑波大 14 13 17 27 -10
11 中大 15 10 21 33 −12
12 専大 15 12 19 48 −29
※11月14日時点
コメント

外池大亮監督(平9社卒=東京・早実)

――悔しい敗戦となりました。率直な感想を教えてください

前期に敗戦してから我々として(も試合をやってきて)、明大に勝ち点が追いついた状態でこの試合ができました。追いついてきた過程、しっかり自分たちが積み上げてきたことがあってそのような状況を作り出せたので、自信と誇りを持って臨めました。今日勝ってそれをさらに乗り越えることを目指していたので、そういう意味では非常に残念です。

――同じ勝ち点で並んでいた明大との対戦に向けてどのような準備をして臨みましたか

お互いリーグを戦う中で、上手くいくときも上手くいかないときも当然ありますし、色々な状況は想定できていて。ただ、明大の戦い方は大きくは変わっていませんでした。我々としては、明大の3バックに対しての対応や、ビルドアップのところ(を意識していました)。また、何よりゴールを目指すということはかなり意識して取り組んできたのですが、それが実際結果として出せなかったという意味では、まだ準備不足だったのかなと思います。

――前半は明大にボールを握られる苦しい展開となりました。前半ラストプレーの失点についてどのように思われますか

かなり圧力を持って来るというのは想定していたので、本当はもう少し前半の序盤のところで我々としてはペースを掴みたかったのですが、なかなかそれができませんでした。ただ、時間を追うに連れて少しずつ自分たちの時間が増えていっていたので、なんとか前半はしのげればと思っていたのですが。明大は後半に失点することが多いチームなので。そういうところで、やり切れなかったというのは非常にもったいなかったなという印象です。

――後半は左サイドバックの裏を狙うなどチャンスを作れました。その点についてどのように振り返りますか

失点してしまったこともあって、何よりも自分たちがこれまでで積み上げてきたサッカーを表現しようと。ハーフタイムに、分析担当である4年生の千田(GK千田奎斗、スポ4=横浜F・マリノスユース)が叱咤をみんなに伝えて。そこにしっかりみんなが応えるかたちで、後半のような僕自身も感動的だと思える試合をしてくれたと思っているので。そういったところでは、手応えというか、評価しています。

――後半途中から阿部(DF阿部隼人、社4=横浜F・マリノスユース)選手を投入し、流れも変わったように見えました

けがからようやく復帰してきて、当然4年生という立場もあるので。まだ出場時間に制限がある中で、ああいうポイントの起用でした。かなり難しい状況でありながらも、非常にいいものを出してくれて、それが(きっかけとなり)明大を後半かなり押し込む状況を作れたと思うので。シーズン、リーグともにまだ終わっていないですし、この悔しさをまた自分たちの成長にしていきたいと思います。

――2試合連続無得点になってしまいました。後期駒大戦の敗戦から得点力をクローズアップされていましたがその部分について今日はいかがでしたか

本当にそこは不満というか。後半のようなゲームができて、最後杉山(DF杉山耕二主将、スポ4=三菱養和SCユース)の(ゴール)ポストに当たったシーンとか、みんなの気持ちの部分はあると思います。ただ、当然相手も研究してきますし、一番前にいる加藤(FW加藤拓己、スポ3=山梨学院)も含めて、リーグが進むにつれての難しさを乗り越えないといけない時期にきたなと思います。我々として、延長を除いてこの2試合、アミノの決勝でP Kでの1点しか取れていません。今シーズン戦うにあたっては、何よりもゴールを目指す、相手よりもゴールを奪うということを主眼においてやってきたので。そこに関しては明大の1つの圧力にょって実現できなかったので。中3日ですが、ゴールできるチームにしていきたいと思います。

――前期には「明大が大学サッカーの基準になる」とおっしゃっていましたが、前期後期ともに明大との対戦は同じスコア(0-1)となりました。どのような感想をお持ちですか

トータル90分で考えたとき、正直前期の試合のときよりも、ゲームの戦い方、自分たちのやってきたものは表現できたと思うのです。当然明大も前節国士舘大学に負けたり(していて)。常に同じ状況を作り上げられるほどこの関東リーグは簡単ではないので。そういう意味では、我々も今2位という状況ですが、改めて常にたくましく高みを目指せるチームでありたいなと。シーズンもだいぶ佳境になってきて感じました。

――先ほど、明大の栗田監督が「今年の優勝は早稲田だ」とおっしゃっていましたが、いかがですか

我々は本当に(リーグ戦)優勝、インカレや全国大会も含めて日本一を目指してやっていますし、こういう経験を通じても常に這い上がってきたので。そこは僕自身も、早大のア式蹴球部という組織に対しての期待もしているし。それは部員の学生だけではなくて自分自身もこういう経験を通じてまた多くの学びや感動を得られています。自分たちの成長とサッカーをやらせてもらっている環境、感謝や責任に結びつけて、シーズンこれから向かって行く中で諦めることなくもう1つ、強く大きな存在になれるようにやっていきたいなと思います。

――次戦の意気込みをお願いします

ゴールして勝ちます。

DF阿部隼人(社4=横浜F・マリノスユース)

――悔しい敗戦となりました

明大とは勝ち点差で並んでおり、今日勝てば3ポイント離せる試合でした。しかし、逆に負けてしまい、3ポイント離されてしまった試合になり非常に悔しい気持ちでいっぱいですが、今は切り替えて、水曜日の試合に向かって行こうと思っています。

――前半は押し込まれる時間も続きました。ベンチからはどのように見えていましたか

かなり明大のプレッシャーが厳しくて、苦しそうだなという感じで見ていました。自分が入ったらリズムを作って、ボールを運べるようにしたいなというイメージを常に持っていました。

――後半、ビハインドでの投入になりました。攻撃での起点になるプレーが多かったように思います。ご自身のプレーを振り返っていかがですか

今シーズンは自分が前に出て行って、得点のチャンスを作るというシーンが上手くできていたので、その自分の特徴をしっかりと出すことができれば、明大からでも得点を奪うことができるのではないかと思っていました。そのためどんどん前へと出て行きました。

――左サイドから縦パスを入れてチャンスを作るシーンもありました

今シーズンは自分自身、そのような特徴が出せるようになってきていたので、自信を持ってプレーをしているだけです。

――この結果を受けて2位に転落する形にはなりましたが、この先も水曜日、週末と試合が続きます。意気込みを教えてください

自分たちはリーグ優勝と日本一を目指しています。今回明大には2戦2敗という形になりましたが、ここから全勝してリーグ制覇を成し遂げたいと思っています。

DF杉山耕二主将(スポ4=三菱養和SCユース)

――悔しい敗戦となりました。率直な感想を教えてください

本当に優勝がかかった大一番ということを僕自身も話していましたし、みんなが意識した中で臨んで、このような結果になってしまって、本当にただただ悔しいです。

――前半ラストプレーでの失点が結果的に決勝点となりました。その場面を振り返っていかがですか 

あの場面は僕自身の背後のボール対応のミスでした。勝負のかかる一戦で、4年で主将である自分自身があのようなミスをしてしまったことが、直接的に(敗戦という)結果につながったと思います。そういったところで僕にも隙や甘さがあるということを突きつけられた失点でした。

――後半は一転して攻撃の場面を演出できました。チームとしてハーフタイムにはどのようなことを確認しましたか

ハーフタイムにアナライズ班の千田(GK千田奎斗、スポ4=横浜F・マリノスユース)から。前半自分たちが何もできていない、何も出せていないというような厳しい話をされました。そういった中で、全員が前向きに、前期の明大の試合の敗戦からこれまで積み上げてきたこと、ビルドアップや前へのランニングというところを全員が意識することができました。いくつかのチャンスは作れましたが、ゴールには繋がらなかったというところで、まだまだ自分たちが至らなかったなと率直に思います。

――後半のアディショナルタイムには、シュートを放って左ポストに嫌われるというかたちになりました。その場面を振り返っていかがですか

あの場面も、日々チームを引っ張っている立場である僕自身にチャンスが回ってきたので、絶対に決めなければならないとは感じていました。それを仕留めきれないというのは、まだまだ自分自身が至らなかった部分なのかなと思います。あの場面を決めきる力であったり、前半最後の場面を守り切る力が僕自身がチームから必要とされている部分です。それらを今日の試合で出せなかったのは個人としても悔しい結果になりました。

――試合終了後にはベンチ外の選手に対してお話をされていました。どのような思いを伝えたのですか

試合前に外池(外池大亮監督、平9社卒=東京・早実)さんの方から、我々は日本をリードする存在を目指すにあたって、日々積み上げて成長してきたというお話がありました。今日この試合をもって、前期に負けた明大を、これまでの自分たちを越えようと伝えられて。そのために絶対大事になるのが4年生の存在だと言われていた中で、4年生である僕を中心にチームを勝たせられなかったというのは、大きな責任があります。そこは、ピッチに出ている僕らはもちろんですが、それ以外(の選手たち)の部分でもまだまだできること、人事を尽くすという意味ではやるべきことがあったと感じたので。とはいえ、リーグ戦は止まってくれないですし、水曜日に試合もある中で下を向いている暇はない。 まだあと6節ある中で、自力で優勝は難しいかもしれないけれど、目の前の試合1試合1試合に謙虚に、愚直に、真摯に向き合うことでしか僕たちが目指すリーグ制覇は成し遂げられません。もう一回前を向いて歩みを進めていこうという話をしました。

――水曜日、来週とリーグ戦は止まらず続いていきます。意気込みをお願いします

本当に追い込まれたなと感じているので、もう1試合も負けられる試合はないと思います。そこに向かって全員で、最高の、最善の準備をして臨みたいなと思います。