ゴールネットこそ揺らせずも…手堅く勝ち点をもぎ取り首位浮上!

ア式蹴球男子
JR東日本カップ2020 第94回関東大学リーグ戦 第16節
早大 0-0
0-0
桐蔭横浜大
【得点】
なし

 首位・明大を勝ち点1差で追いかける早大は、関東大学サッカーリーグ(リーグ戦)第16節、桐蔭横浜大と対戦した。早大は、3日のアミノバイタルカップ(アミノ杯)決勝において流通経大との120分の激闘の末、惜しくも栄冠をつかむことはできなかった。しかし今季の早大は、敗れても短期間で課題を修正し、次戦では必ず勝利を収めてきた。今日もその『不屈の精神』を見せつけるべく臨んだが、前半は両者共に決め手を欠き、0-0のまま後半へ。早大は後半に中盤の選手を3枚入れ替え、攻撃に厚みを持たせる。徐々にゴールに迫るシーンが増え、試合終盤には怒涛(どとう)の攻撃を見せたが得点を奪えず、スコアレスドローで勝ち点1を手にした。

多くのチャンスを演出した西堂

 最初に好機を演出したのは早大。10分、西堂久俊(スポ2=千葉・市立船橋)が躍動する。植村洋斗(スポ1=神奈川・日大藤沢)との左サイドでのコンビネーションから、最後は西堂が裏へのスルーパスに反応しクロスを上げるが、あえなくクリア。これにより獲得したコーナーキックの流れから、加藤拓己(スポ3=山梨学院)のニアへのクロスにフリーの西堂が頭で合わせるが、枠には飛ばず。その後も早大は西堂を中心に攻撃を組み立てていくが、桐蔭横浜大の堅い守りを前になかなかゴールを奪うことができない。一方の守備も、36分、相手にフリーキックを与えるとクリアミスからセカンドボールをつながれ、ゴール正面からシュートを放たれるが、体を張った守りではじき返す。両チームとも集中した守りを見せ、無得点のまま試合は後半へ。

好機を逸し頭を抱える加藤

 後半、早大は田中雄大(スポ3=神奈川・桐光学園)を投入するなど中盤で3人を交代し、攻撃陣に新陳代謝を促す。先制点が欲しい早大だったが、開始早々ピンチを招く。センターライン付近からゴール前へのロングボールが相手の足元に収まり前を向かれるが、大西翔也(スポ3=浦和レッズユース)がしっかりと体を寄せ防ぐ。6分後には、コーナーキックのこぼれ球をペナルティーエリア外からダイレクトで狙われるが、GK山田晃士が右手一本で防ぐビッグセーブを見せ、ゴールラインを割らせない。山田の奮闘に応えるかのように、早大がペースをつかみ始める。68分、柴田徹(スポ2=湘南ベルマーレU18)が杉田将宏(スポ3=名古屋グランパスU18)とのワンツーで右サイドを崩し、精度の高いクロスを供給。加藤が胸でトラップするもシュートは打てず。90+1分には、大西が縦パスをダイレクトではたき、杉田がうまく体を反転させてシュート。90+2分には、杉田がドリブルで相手ディフェンスを引き付け、右サイドでフリーとなっていた柴田にパス。グラウンダーのクロスに、ニアに走りこんできた田中がダイレクトで合わせるが、ミートせずボールは枠外へ。田中は思わず天を仰いだ。試合終盤に波状攻撃を見せた早大だったが、最後までゴールネットを揺らすことはできなかった。最終スコア0-0で、桐蔭横浜大と勝ち点1を分け合う形となった。

 アミノ杯決勝での敗戦から迎えた今節、桐蔭横浜大に勝ち切ることはできなかったが、「勝ち点3こそ取れませんでしたが、勝ち点1をしっかり積み上げたという意味で僕は誇らしい」(外池大亮監督、平9社卒=東京・早実)と、タフな戦いを乗り越えた選手たちを評価した。また、明大が敗れたことにより勝ち点で並び、得失点差で早大がついに首位に立った。そして、次節は明大との直接対決が待っている。「あの時(第5節、●0-1)にあった差は確実に埋まってきている」と外池監督は自信をのぞかせた。首位攻防戦を制すれば、優勝は大きく近づく。今日の引き分けも糧にし、必ず勝利をつかむ。

(記事 長村光 写真 朝岡里奈、手代木慶)

早大メンバー
ポジション 背番号 名前 学部学年 前所属
GK ◎1 山田 晃士 社4 浦和レッズユース
DF 柴田 徹 スポ2 湘南ベルマーレU18
DF 17 工藤 泰平 スポ4 神奈川・日大藤沢
→67分 杉山 耕二 スポ4 三菱養和S Cユース
DF 22 監物 拓歩 スポ2 清水エスパルスユース
DF 大西 翔也 スポ3 浦和レッズユース
MF 14 植村 洋斗 スポ1 神奈川・日大藤沢
MF 鍬先 祐弥 スポ4 東福岡
→64分 13 杉田 将宏 スポ3 名古屋グランパスU18
MF 45 田部井 悠 スポ3 群馬・前橋育英
→HT 田中 雄大 スポ3 神奈川・桐光学園
MF 38 西堂 久俊 スポ2 千葉・市立船橋
→71分 11 水野 雄太 スポ2 熊本・大津
MF 25 小倉 陽太 スポ1 横浜FCユース
FW 10 加藤 拓己 スポ3 山梨学院
◎=キャプテン
監督:外池大亮(平9社卒=東京・早実)
関東大学リーグ戦1部 順位表
順位 大学名 勝点 試合数 得点 失点 得失差
早大 34 15 11 39 30
明大 34 15 11 31 14 17
駒大 29 16 36 28
国士舘大 26 16 25 23
桐蔭横浜大 24 16 22 21
順大 23 15 24 28 −4
立正大 20 13 23 20
法大 17 13 21 19
慶大 16 16 17 25 −8
10 筑波大 14 13 17 27 −10
11 中大 15 10 21 33 −12
12 専大 15 12 19 48 −29
※第16節終了時点
コメント

外池大亮監督(平9社卒=東京・早実)

――試合を振り返ってください

先日のアミノバイタルカップの試合も非常にタフな試合でした。ただ今日も非常にタフなゲームであったなと思います。我々として厳しい敗戦からなんとか乗り越える、またどうやって這い上がっていくかというところは、新しいメンバーの熱いプレーもありましたし、途中交代も含めてチーム全体で、勝ち点3こそ取れませんでしたが、1をしっかり積み上げたという意味では僕は誇らしいですし、大きな進歩が作れたのではないかなと思います。

――明大が国士舘大に負けたという結果を受けて、得失点差で首位に立ちました

リーグ戦ははやり積み重ねというか、積み上げていくものだと思います。我々としてそういう状況にあるということはこれまでやってきた事が意味がある事であったということですし、そういう状況で次明大と当たれるということは、今年すごく難しい状況の中でも大学サッカーを担ってきた中で、多くの人に注目してもらえるような、良い試合ができればなと思います。

――駒大戦の敗戦後、得点を奪うことに特化したチームを目指して積み上げてきたところが結果として出ているように思います。

今日も得点こそできませんでしたが、もう一度ゴールを目指そうという姿勢というのは前半から後半にかけて、特に後半の30分をすぎてから随所に見られました。やはりサッカーの厳しさや難しさという点を考えると、非常に戦える選手たちが増えてきたなと感じます。得点を奪えなかったことに関してはかなりのメンバーが悔しさを滲ませていました。そういったところはこれからの可能性になるのではないかと思います。

――今日は田部井選手が復帰戦となりました

怪我人が少しずつ戻ってきたり、また怪我人が出たりということもありますが、今年はコンディションの部分でも簡単ではない難しい状況の中で、一人一人のパワーであったり一人一人のエネルギーがチームを活性化していきます。そしてその活性していく中で成長していきます。そういった循環は生まれているなと感じます。

――前期の明大戦の後、基準を知らされたというお話がありました。また、加えて後期リーグでひっくり返せる指針も得たというお言葉もありました。明大戦に向けた気持ちを教えてください

例えば今日は野球の早慶戦がありました。大学スポーツの中でも歴史と伝統のある試合で、今日野球部は慶大に勝ちました。明日勝てば久しぶりの優勝です。そういった結果の中で、自分たちだけではなくて、周りの人たちや仲間たちと空気を生み出していくことで、さらなるパワーを生み出せる環境にあると思います。そういったものを含めて、今季やってきた積み上げは非常に大きなものがあると思います。小さくまとまることはなく、深く広い、強い感受性を持って、強い感受性を持ちながら1日1日や1試合1試合を積み重ねていければ、優勝や一つの成果は近くのではないかと思いますし、それを信じて取り組んでいます。

――明大とは勝ち点がタイ、次節は勝った方が首位になる戦いです。準備の部分を教えてください

まずはしっかりとみんなの心と体の疲労を回復して、今日示せたような最後まで戦い抜ける、我々の大事にしているDRIVEという姿勢を体現できるような、そういう準備をします。まずはコンディショニング、そして相手の分析も含めて、しっかりと向き合っていきたいなと思いますし、優勝争いのような機会を頂いている、状況を作り出せているというのは本当にありがたいですし、そういう部分を糧に、財産にしていきたいです。もう一つ大きな成長をできる試合だと思っているので非常に楽しみにしたいなと思っています。

――ずっと明大の背中を追ってきました。次節も明大の背中を追う形での対戦になる可能性もありましたが、今日の結果を受けひっくり返りました。監督のメンタルは変わらないかと思いますが、選手のメンタルはどのように導きたいですか

ベンチでも試合の後、明大が負けたことは伝わってきました。状況としてはひっくり返しています。前期に明大との対戦で感じた差から、次闘う時にはどのような自分たちになっているのかというところが一つの水準として生まれていました。まず我々は今日の試合も含めてですが、アミノ杯も含めてしっかりとたくましく積み上がってきているという実感はしっかりと持つべきだと思います。自信と誇りを持って我々は明大に直接試合をさせていただく機会をもらえたという状況だと思っているので、まさに前回のリベンジをもって乗り越えたということになると思います。まさにチャレンジャーというか、今日の終盤に示せたような、まず個人個人で負けないという部分であったり、その姿勢をチームとして示す。そこの部分を大事にして今週来週を過ごしていきたいなと思います。

――首位というよりは、一度負けた相手にチャレンジャー精神をもって臨むということですか

まさにその通りですし、あの時にあった差は確実に埋まってきていると思います。その部分を直接試合を通じて自分たちでその部分を体現する、体感する。そしてチームとして共感できるように持っていきたいと思います。

――明治に上回れる自信がある部分はどんなところですか

成長率というか、個人個人が本当にたくましくなってきたなと感じます。それは色々な状況、色々なイレギュラーを乗り越えて、サッカーという部分だけではなくてこういった状況の中で生活から、学生としての部分や選手としても、1日1日を大切にやってきて。明大だけでなく、駒大や慶大といった負けた試合から逃げなかった、ということが我々を強くしています。先日の悔しさを糧にするという点でいえば、今日も心が折れそうになる場面もあったと思います。色々なトラウマというかデジャブみたいなものもあると思います。そういったものを乗り越えていけるチームであるというのが今の我々のアドバンテージというか、我々が強くなってきている一番のポイントなのではないかと思います。

加藤拓己(スポ3=山梨学院)

――火曜日に悔しい敗戦がありましたが、この試合に向けてチームでどのように準備してきましたか

今年大事なところで明大戦、慶大戦、駒大戦という部分で負けてきて、この前も決勝で敗戦をしてしまいました。でもそこからこのチームは本当にはい上がってきていて、負けた後また一回りも二回りも強くなっているのは事実でもありますし、すごくその実感もあったので、今日どんな新しい自分たちが出せるかということが求められたと思いますし、それがまだまだ体現しきれなかったなというのが率直な感想ですね。

――具体的にどのあたりが強くなっていましたか

この前の流経さんとの学びとして球際の厳しさを学ぶことができて、今日切り替えの部分やボールを支配する時間が増えたのは、そういう球際が勝てた部分だと思います。何が具体的に強くなったかは分からないですが、一人一人の1試合に対する気持ちの持ち様というのは本当に変わってますし、今日引き分けで納得している選手は、開幕当初だったらいたかもしれないですが今はもういないですね。そういったチームの大きな変化があると思います。

――今日はどのようなコンセプトを持って攻撃していましたか

まずはかたちはどうあれゴールに対して矢印を向けていくという点で、フレッシュな選手をたくさん起用した中で自分が最前線にいる立場としてもっともっとゴールに対して矢印を向けることが求められたと思います。その中で今日は自分たちのかたちとしているパスから中央を崩していったりとか、クロスからのシュートという部分がいつも以上に求められたかなと思います。

――その中で前半は0-0で折り返しました。ハーフタイムでは監督や選手同士でどのような話し合いが持たれましたか

そうですね、具体的にはポジションの修正だったり守備の調整など多くの話をして、選手同士もそういう話が多かったですね。その中でもやっぱり最後は気持ちだよという話もありましたし、この前の試合で敗戦して、自分たちは改めて弱い、まだまだ足りないということに気づいたので、もっともっとやらなきゃいけないという声が印象的で、そういった思いで全員一丸となっていたと思います。

――迎えた後半、だいぶ攻撃がはまり始めて、終盤は特に何度もゴールに迫る場面がありました。ピッチ内はどのような雰囲気でしたか

後半に入って自分自身も矢印という部分は表現できたと思いますし、変わってきた選手もそこをすごく体現してくれたなと中では感じました。ただやっぱり中でもっともっと細かいところを求めないといけなかったし、例えばゴール前でパスが少しずれてしまうとか、ワンバンで触れないというのはまだまだ許しているようでは甘いですし、実際にそういうのを許しているから今日も無得点で、最後あれだけチャンスがあったのに決めきれないというのはそういう弱さがあると思います。ピッチ内でまだそういう雰囲気があるのはもっともっと変えていかなければいけないなと思います。

――引き分けには納得されていないと思いますが、これにより明治の負けもあって首位に浮上したことについてはどうお考えですか

優勝争いをしていく中で今シーズン初めて首位に立てたというのはポジティブなことですが、やっぱり次の明治戦で勝たなければ優勝は絶対にないですし、今は本当にどちらが首位とか2位とか関係なく、まず目先の明大戦で勝ってしっかり自分たちが単独で勝ち点を積み重ねて首位に立つことが大事かなと思っています。

――今回は一言で言うとどんな試合でしたか

スコアレスで、よく捉えれば勝ち点1を取れたとは思いますが、フォワードとしてはドロー、まして0-0というのは許しがたいことですし、やっぱりもっともっとやらなきゃいけないことがたくさんあったと思います。もっとボールを要求することとか、もっと相手と駆け引きするとか、そういう部分が足りなかったからドローだったと思うし、ディフェンスの選手たちが0で抑えてくれたのに攻撃の選手が応えられない現状が実際にあるので、やっぱり早稲田で10番つけさせてもらっている立場だからこそ人よりももっとそういう危機感を感じないといけないと思っていますし、自分がもっと成長していかなければいけないなと思います。

――個人的に一番悔やまれるシーンはどこでしょうか

やっぱりシュートを無駄にさせてしまったのもそうですし、何かが特別ということはないですが、1試合を通して得点できなかったということ自体が評価されることではないと思います。

――逆に言うとその悔しさを明治戦にぶつけることができるのではないかと思いますが

そうですね、やっぱり終わってしまったことなので切り替えないといけないですが、これを忘れるのではなく糧にすることで成長していかないといけないのだと思います。自分たちが目指すべき場所に対して必要なエネルギーと必要な??と、必要な熱量をベンチ外も含めたチーム全員が持つことというのが、今日引き分けで感じた悔しさを生かせる方法かなと思います。今はまだわからないですがしっかりこの1週間自分たちに何が足りなかったのか向き合ってやっていければ、今日の引き分けでも最終的には意味のあるものだったとなるのではないかと思います。

――明大戦に対するモチベーションは首位に立ったことで変わりますか

初めて追われる立場になるわけで、追う立場より追われる立場の方が難しいとは思います。向こうはやっぱりタレント揃いですしがそこはあまり考えすぎず、もしかしたら引き分けたらまだ首位が変わる可能性もありますし、そこでどう勝てるか、どうやったら自分たちが成長できるかというのが学生スポーツの醍醐味でもあると思うので、そこを求め続けて、最終的に順位などもあまり意識しすぎずにやればいいかなと思います。

――外池監督もキャプテンも、首位だけど一度負けた相手にチャレンジャー精神を忘れないといった言動が目立ちました

一度負けた相手に負けているようでは優勝は絶対できないし、それはチーム全員が口をそろえて言うと思うんですが、難しさはあります。明治も今日ああやって悔しい敗戦をして、やっぱり明治は明治で積み重ねていくと思うので、自分たちもそれに負けないくらいの熱量を持ってやりたいです。前回負けてしまいましたが自分たちがチャレンジャー精神を持って挑めるという面では有利でもあるので、そういう部分をポジティブに考えながら、気負いすぎずいつも通りのプレーができればいいかなと思います。

――その中で加藤選手にはゴールが求められると思います

そこは絶対に自分自身も分かっていますし、外池さんもストレートに言ってくれるのですごく意識してますし、意識しているというよりは意識し続けなければいけないと思っています。明大はCBの選手もうまくてキーパーも素晴らしいですし、そこをどうこじ開けられるか、自分が得点してどうチームを勝たせられるかというのを今からイメージしながら1週間頑張っていきたいなと思います。