アミノバイタルカップ2020 第9回関東大学トーナメント大会 兼全国大会予選 | ||||
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早大 | 1 | 0-0 1-0 |
0 | 東洋大 |
【得点】 (早大)77’ 杉山 耕二 |
アミノバイタルカップ(アミノ杯)準々決勝から中1日。大変な過密スケジュールの中、準決勝で東洋大と対戦した。序盤から多くのチャンスを作りゴールに迫るも、なかなか得点を奪えないもどかしい展開となった。均衡を破ったのは77分、セットプレーからDF杉山耕二主将(スポ4=三菱養和S Cユース)が頭で合わせ、これが決勝点。3戦連続の完封で、2016年以来4年ぶりにアミノ杯決勝へと駒を進めた。
果敢なプレーで勝利に貢献した倉持
中1日で臨んだ今節。「タイトルへの愚直さ、貪欲さ、ひたむきさといった姿勢」(外池大亮監督、平9社卒=東京・早実)を、疲労感がある中でもプレーで示すことを狙った。1−4−4−2の陣形で、コンパクトな守備を形成した東洋大に対し、両サイドを広く使うとともに、「相手のラインが高かった」(MF倉持快、人3=神奈川・桐光学園)と積極的に背後のスペースを活用。試合開始からアグレッシブなプレーを披露し、相手陣内へと攻め込んだ。17分、スローインをFW清水駿(政経4=京都橘)が頭で落とすと、倉持が果敢なドリブルでペナルティーエリア内に侵入。東洋大DFの足がかかり、PKを獲得した。続く20分にもゴールやや右からのFKを獲得。42分にも、カウンターからゴールまであと一歩のシーンを作り出すなど、得点にこそ結びつかなかったものの、多くの決定機を創出し前半を折り返す。
後半も依然として早大ペースで試合は進んだ。MF田中雄大(スポ3=神奈川・桐光学園)、水野雄太(スポ2=熊本・大津)、FW加藤拓己(スポ3=山梨学院)と次々に攻撃的な選手を投入しゴールを狙う。73分には、MF鍬先祐弥(スポ4=東福岡)がゴールライン際をドリブルで突破すると、中で待つMF田中雄大(スポ3=神奈川・桐光学園)へ鋭いボールを送りチャンスを演出。そして迎えた77分、ゴールから少し離れた位置からのFK。DF阿部隼人(社4=横浜F・マリノスユース)が正確な左足から繰り出したクロスボールを、「みんなで繋がってとった1点」と杉山主将がヘディングでゴールに叩き込み、ついにゴールをこじ開けることに成功した。その後も危なげなく時計の針を進め、3戦連続の完封で、8年ぶりのアミノ杯制覇へ王手をかけた。
ゴールを決めた杉山を祝福する小倉
「Bチームで戦っている選手の希望や活力に自分がなれたら」。中1日、途中交代含め計180分走り抜いた倉持から出た言葉は、チームメイトへの思いであった。「疲労云々よりもサッカーができる環境に責任や自覚を持って、感謝する気持ちを持っている」。杉山主将の口からは、感謝の言葉がこぼれた。7月、リーグ戦再開をした直後に、加藤がインタビューで語った言葉がふと頭をよぎった。
「今年のチームには恩を回すというミッションがあります。チームとして誰かの活力になり続ける。そして、自分たちがサッカーをできているのは皆さまのおかげ。だから、しっかりと感謝の意をプレーで示していくシーズンにしたい」。今、確かに、倉持の愚直なプレーは、見る者に希望と活力を与えている。そして、杉山主将のけん引するア式蹴球部は、アミノ杯優勝という最高の功績で、感謝の意を示すことだろう。決勝は11月3日、今季初のタイトルへ。熱い戦いは見逃せない。
(記事 橋口遼太郎 写真 小山亜美、橋口遼太郎)
早大メンバー | ||||
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ポジション | 背番号 | 名前 | 学部学年 | 前所属 |
GK | 1 | 山田 晃士 | 社4 | 浦和レッズユース |
DF | 3 | 柴田 徹 | スポ2 | 湘南ベルマーレU18 |
DF | ◎5 | 杉山 耕二 | スポ4 | 三菱養和S Cユース |
DF | 22 | 監物 拓歩 | スポ2 | 清水エスパルスユース |
DF | 2 | 阿部 隼人 | 社4 | 横浜F・マリノスユース |
MF | 32 | 小野寺 拓海 | 政経4 | 岩手・専大北上 |
→HT | 8 | 田中 雄大 | スポ3 | 神奈川・桐光学園 |
MF | 4 | 鍬先 祐弥 | スポ4 | 東福岡 |
MF | 19 | 倉持 快 | 人3 | 神奈川・桐光学園 |
→94+4分 | 28 | 丹羽 匠 | スポ2 | ガンバ大阪U18 |
MF | 25 | 小倉 陽太 | スポ1 | 横浜FCユース |
MF | 9 | 梁 賢柱 | スポ4 | 東京朝鮮高 |
→54分 | 11 | 水野 雄太 | スポ2 | 熊本・大津 |
FW | 23 | 清水 駿 | 政経4 | 京都橘 |
→65分 | 10 | 加藤 拓己 | スポ3 | 山梨学院 |
◎=キャプテン 監督:外池大亮(平9社卒=東京・早実) |
コメント
外池大亮監督(平9社卒=東京・早実)
――中1日でした。東洋大戦にむけてどんな準備をしてきましたか
1週間で4試合を戦ってきました。一昨日も試合をしていて難しい部分もありましたが相手の分析としては、東洋大という今季は2部でプレーしているチームですが昨年は1部で共に戦ったチームでした。早大としてはあまり相性がいいわけではない相手であったので、対等な戦いになるだろうと想定をしていました。ただ、お互いにベスト4に入ったということで少し緩む部分もあるだろうという中で、どこまでタイトルにこだわれるかというところがポイントになると考えていたので、試合の入りに特に重点を置いてアプローチをしていました。
――今日対戦をして東洋大はどんな相手でしたか
やはり個人個人の能力は高いですし、ベースを4ー4ー2でやってくる、しっかりとオーガナイズされているチームという印象がありました。ただメンバーを多く変えてきていたので、あまりゲームの入りに勢いを作れなかったのではないかと感じていました。
――ゴールこそ奪い切れませんでしたが、前半からかなり攻め立てる試合となりました
疲労感も強くある中で、ゲームの入りの部分や、少し緩む状況が生まれそうな時でも、我々としてのタイトルへの愚直さ、貪欲さ、ひたむきさといった姿勢をプレーで表せるかというのが重要でした。その面で我々のビジョンを体現している、小野寺や清水といった選手を起用しました。自分たちから崩れないというゲームの入りをしようというメッセージはありました。
――具体的に小野寺、清水のスタメン起用にはそういった意図があったのですね
彼らも試合に絡んでいるものの、慶大戦で決定期を逃してしまった場面や、最後までプレーできなかった場面など、悔しさともどかしさを抱えてこの大会に入ってきたのではないかと思います。チームとしてこの大会では杉田(将宏、スポ3=名古屋グランパスU18)や倉持も含めてですが、上手くいかなかったときにどのように乗り越えるのかを一つのテーマにしていました。それは個人としてもチームでも同じことです。そういった気持ちを体現したり、勢いといったものをゲームの中で出せればいいのかなと考えて起用しました。
――今日もPKを止められてしまう場面がありました。このように上手くいかなかった場面も乗り越えていきたいというチームとしての意図がありますか
ゲームをやらせてもらえることで、評価すべき、評価できる成果もあればそういった課題も当然あります。今日試合を通して悪くはないプレーを見せていたもののPKを外してしまい、少しリズムを掴み切れなかった部分があったのではないかと思います。ただそれをチームの全員でカバーするというのがよく体現されていたと感じます。
――杉山選手にゴールが生まれました。
杉山も体がきつい中で、スタメンをどうしようかなと思う部分はありました。しかし、やはり彼はチームの柱です。攻守にわたる部分であったり、山田(晃士、社4=浦和レッズユース)を含めた軸のところはこの過密日程を乗り切る上では必要だなと考え、厳しいコンディションの中でも起用しました。そしてそれに応えるだけの力を発揮してくれたなと感じています。
――これで3戦連続の完封になりました。山田選手、杉山選手、監物(拓歩、スポ2=清水エスパルスユース)選手のセンターラインの選手が効いているなという思いですか
もちろん後ろの選手もそうですが、チーム全体としてやられる空気を感じない試合が続けられています。本当にたくましくなったと思います。それは後ろの選手たちの実際の評価でもありますが、前の方の選手たちが厳しい状況の中で適切な判断というか、チームにどう貢献していくかという部分が非常に上手く回っているなと感じています。そういったところもこの大会で積み上げてこられたということは後期リーグに向けてすごく自信になるのではと思います。
――次週からリーグ戦が再開します。中1日、中2日の厳しい日程を乗り越えて、いいものを掴んでリーグ戦に戻れるのではないでしょうか
今日の試合が終わったときに、ホッとした表情というか、少し疲れて気持ちが抜けたような姿が印象的でした。やらせていただけるこの環境に感謝をしながらも、どのようにチームをマネジメントしていくかというところは難しいですし、慎重にとらえなければならないと考えています。当然ここにいるメンバーだけではなく、今日は社会人リーグでプレーしていたメンバーもいます。時間が経つにつれて状況も変わりますし、そういった中でこういった結果とも向き合わなければなりません。常に僕自身としては全体を把握しながら、何よりも学生たち個々が、心が良い状態にあるようなアプローチをしていきたいです。
――リーグ戦が再開します。またひと月先にはなりますが決勝戦に進出しました。お気持ちを聞かせてください
決勝戦で流経大とやれるのは非常に楽しみです。我々の先輩である曹さん(曹貴裁、平2商卒=現流経大サッカー部コーチ)もいらっしゃいます。今年流経大にはこういった環境の中心でやってもらっていますし、そういった中でチーム力も上がってきているのではと思います。1部に所属するチームとして意地を見せたいです。決勝という舞台に臨めるのはやはり特別なことだと思うので、そういうところまで登ってきたという責任をしっかりと果たせるようにしたいと考えています。ただ10月も過密日程になるので、改めて総力戦といいますか、チーム全体でチームとしての空気を作り続けられるように来週からやっていきたいと考えています。
――連戦にはなりますが、阿部選手を右で使う形など、オプションもかなり試すことのできた大会になったのではと感じます
例えば1試合目には島崎(元、スポ2=川崎フロンターレU18)、2試合目にも鈴木俊也(商2=東京・早実)、小野寺や清水も、当然意図的に新しい選手を起用していた面もあります。そういう状況の中でチャンスを得た選手もいるので、彼らが得たひとつの経験をチーム全体に落とし込めれば、ここに来られたメンバーは限られていますが、我々はチーム100人で一緒に動いていると思っているので、総力をかけてこの先向かっていきたいなと考えています。
――先々週には大桃選手(令2スポ卒)が所属する長野パルセイロで初出場を飾りました
当然プロに行くというのは厳しいことです。その中でもチャンスを掴むのは限られた僅かな光しかないかもしれません。しかし、そこに向かっていくのが選手の使命です。やはりア式を経験した人間こそがそこで何を見つけ出せるのかというのが僕としても楽しみにしたいと思っています。今年もこれから先4年生かどのように進路を選んでいくのかという部分もありますが、確実にサッカーを通じて、みんながサッカーを広く深く捉えて臨んでいると思います。そういう意味で早大で育ち、早大を経由することのひとつの特異性みたいなものは出てきていると思います。それは例えば今日のア式FCの相手であったセルベッサはここの第一線で頑張っていたOBたちが会社員になり、チームを組んでいます。大学サッカーのいいところは、そういったコミュニティがただの横のつながりだけでなく、OBも含めた下から大人まで、すごく広い帰属意識のようなものの中でプレーできます。それが早大の1番の強みだと考えています。そういう意味ではそういったことをしっかりと感じられる選手になっていって欲しいと思います。また僕自身も今は監督をやらせてもらっていますが、選手や会社員といった経験を通じてサッカーを広く深くとらえられるようなキャリアを積ませてもらってきています。自分自身も学生たちと向き合うことで成長をしていきたいですし、それをまた次に繋げられるようにしていきたいと感じています。
杉山耕二主将(スポ4=三菱養和SCユース)
――中一日の試合となりましたが、どのような準備されましたか
まずはリカバリーというところを全員が意識して、コンディションを元に戻すということを意識しました。そしてしっかり東洋大の戦い方だったりを理解することに努めていました。
――東洋大は長いボールを蹴ってくることが多いように感じましたが
僕たちも長いボールを蹴ってくる相手に対して、なるべく前からプレッシャーをかけて自分たちが蹴らせて回収というのを目指していました。ただ、前半ではスリーラインの距離感が悪くて思い通りの展開にはならなかったのですが、中盤の3枚のハードワークであったりというところが効いて、0-0で折り返すことができました。相手が蹴ってくることに関しても、出しどころにプレッシャーをかけて全員で回収に行ってマイボールにする時間が長かったので、そこは上手く対応できたと思います。
――前半からチャンスを作りましたが、どのような声掛けをしましたか
ここまでのアミノバイタルカップを通してあまり得点ができていなかったという現状がある中で、前半で1点を取って帰ってこようという話をしていました。そこの部分で(前半で)点を取れなかったのはまだまだ課題があると思いますし、当事者だけではなくて点を決める雰囲気をチームでもっと作っていかなきゃいけないのかなと思います。
――背後のスペースを狙うボールが多かったように感じました。具体的な戦術は何か考えていましたか
相手が4-4-2のオーソドックスに前からくるとわかっていたので、まずは背後というところを意識して、自分たちがビルドアップしていこうと話していました。ただ、割とビルドアップが、僕たちのディフェンスラインがはがせなかったので、結果として背後のボールが多くなってしまったのもあると思います。でもそれがマイナスに働いたわけでは無かったので、実際背後が空いてましたし、そこを有効に活用できたのかなと思っています。
――中一日の疲労を感じる場面はありましたか
非常に疲労の部分を感じる瞬間があったと思います。ただ、『日本をリードする存在』を掲げてきて、疲労云々よりもサッカーができる環境に責任や自覚を持って、感謝する気持ちを持っていると思うので、その時の最高潮をその時に発揮するというのを意識していました。そこの部分では全員たくましくできていたと思います。
――ご自身のゴールシーンを振り返っていかがですか
あのような拮抗した展開の中で、セットプレーは大事になると監督やチームメイトからも言われていましたし、僕自身も言っていた中で1点取れたのは非常に嬉しかったです。ただ、あのゴールも全員がつながってとれたものだと思うので。フリーキックを獲得したのもそうですし、僕自身というよりはみんなで繋がってとった1点だったと思います。
――決勝進出となりましたがいかがですか
今年は日本一とリーグ戦優勝を目指している中で、負けて良い試合は1個もなくて、取れるタイトルは全部取るということを言ってきました。その中でまずは1つ目のタイトルを取れるように頑張っていきたいと思います。
――決勝までの1か月で調整したい部分はありますか
今大会課題となっている得点のところはこだわらないといけないと感じています。
――次戦リーグ戦ですが、意気込みをお願いします
前期リーグも一戦必勝ということで戦ってきたのですが、そこは後期リーグも変わらなくて、目の前の相手に対して100%になって、一瞬一瞬を積み重ねると言うことを意識して優勝できればいいと思います。
倉持快(人3=神奈川・桐光学園)
――中一日の試合となりましたが、どのような準備されましたか
できることが限られる中で、自分たちができる最大限のことをしました。リカバリーだったり、チーム全体が一人一人積み上げて今日の試合に臨みました。
――東洋大は長いボールを蹴ってくることが多いように感じましたが
中盤やってる分頭越されることも多くなるので、スプリントだったり、走る量を増やして守備でもチームに貢献できるようにと思っていました。相手をいかに苦しめられるかってところを意識していました。
――前半からチャンスを作りましたが、どのような声掛けをしましたか
相手のラインが高いということでスペースもあって、自分としてはやりやすかったと思います。自分の特徴を生かせる相手だなというのを(試合に)入って感じました。広いスペースの中でチャンスを作れるように意識して臨みましたね。
――試合前から考えていた戦術でしたか
そうですね。相手の特徴はビデオとかで見ていたのもあったのですが、相手も中一日ということで選手を変えてきていて、そこは試合の中で対応していきました。
――背後のスペースを狙うボールが多かったように感じました。具体的な戦術は何か考えていましたか
やっぱりサイドバックの柴田(徹、スポ2=神奈川・平塚学園)は裏にこういうボールが欲しいと言うのは言っていました。それが一昨日の試合からいい形で何度か出ていたので、さらにスペースが広くなったということで、ボールのロングキックもストロングなものがあって、上手くかけあわせながらやって行けたと思います。
――2試合連続でほぼフル出場でしたが、振り返っていかがですか
きつかったですね。でも、前期全然試合に出られなくて、やっともらったチャンスということで、自分の結果だけでなく、チームのために走ることだったり攻撃をストロングにしたりを意識しました。試合に出られないメンバーの気持ちもわかってはいるつもりなので、Bチームで戦っている選手の希望や活力に自分がなれたらいいなと思っています。試合では、上手くはないのですが走るというところをやめないように意識していました。
――決勝進出となりましたがいかがですか
リーグ戦が挟まって決勝まで期間が空くのですが、流経大は今年二部ということで、一部と二部の違いはありますが、決勝の舞台で戦えるのは楽しみですし、自分たちの力を出してやれば絶対勝てると思うので、ぶらさずに決勝で勝てればいいなと思います。
――決勝までの1か月で調整したい部分はありますか
まだまだ課題がいろいろとありすぎて挙げられないのですが、走ることにプラスアルファで攻撃の回数を増やしていけるかというところ、チャンスを作る回数を試合通して増やして行ければと思います。それに向けた味方との調整だったりをやっていきたいです。
――次戦リーグ戦ですが、意気込みをお願いします
リーグ戦も連戦が続くと思うので、これからさらにチーム全体で総力戦で戦っていくと思うので、自分だけではなくて、チーム一丸となって積み重ねて優勝できればいいなと思います。