終了間際に杉田が決勝弾!前節の悪い流れを断ち切る

ア式蹴球男子
JR東日本カップ2019 第93回関東大学リーグ戦 第17節
早大 0-0
2-1
立正大
【得点】
(早大)52’鈴木郁也、89’杉田将宏
(立正大)58’人見拓哉

 立正大と開幕戦(●1-3)以来の顔合わせとなった関東大学リーグ戦(リーグ戦)第17節。早大は前半から再三チャンスをつくり、52分にはFW鈴木郁也(社3=FC東京U18)の得点で先手を取ったものの、58分にすぐさま同点に追い付かれてしまう。それでも幾度となく迎えたピンチを脱すると、89分にFW杉田将宏(スポ2=名古屋グランパスU18)の勝ち越しゴールが決まり、3試合ぶりの白星をつかんだ。

攻守共に運動量でチームを支える牧野

 前節まで採用していた3-5-2から今節は4-5-1にフォーメーションを変更。先発で起用された1トップの鈴木郁は最前線で収めどころになり、左サイドハーフのMF西堂久俊(スポ1=千葉・市船橋)は持ち前の推進力を発揮して好機を演出していく。また、MF栗島健太(社4=千葉・流通経大柏)やDF大桃海斗主将(スポ4=新潟・帝京長岡)から左ワイドに張った西堂へロングフィードを供給。DF牧野潤(スポ4=JFAアカデミー福島)は機を見たインナーラップで、守備時に5バックとなり、ボランチ脇のスペースが手薄になる相手の守備陣形を崩しにかかる。前半は早大ペースで進み、14分に西堂が2人をかわしてゴールに迫ると、27分には鈴木郁がバックパスをカットしてシュートを放つ。35分には栗島が独力で中央突破してミドルシュートを狙う。得点が生まれるのも時間の問題かと思われたが、ハーフタイムを目前に立正大が反撃に転じた。45分には右サイドからの高精度なクロスにヘディングで合わせられる。しかし、ここはGK上川琢(スポ2=湘南ベルマーレユース)が片手で弾き出して先制点は与えず、前半は0-0で終了した。

決勝弾を決めた杉田

 後半開始早々に西堂と鈴木郁がシュートまで持ち込むと、この二人がスコアを動かした。52分、最終ラインの大桃から左サイドの西堂にロングボールが通り、西堂が縦に突破して相手ディフェンスをはがす。GKが飛び出してきたところで、ゴール前の鈴木郁にお膳立て。待望の先制点が生まれた。その後二度西堂に決定機が訪れたが、追加点を挙げることができない。すると58分、鈴木郁が下がって受けたボールを奪われ、速攻から同点ゴールを献上した。勢いづく立正大の猛攻に対して、早大は運動量の低下もありクリアボールをことごとく拾われ、防戦一方な展開に。だが、「ああいったところで体を張れるのは大きい」と外池大亮監督(平9社卒=東京・早実)が評価したように、DF工藤泰平(スポ3=神奈川・日大藤沢)が懸命に足を伸ばしてブロックするなど耐えしのぐ。そして、83分にFW藤沢和也(商4=東京・早実)が最後の交代カードでピッチに立つと、潮目が変化する。1トップの位置にサイズのある藤沢が入ったことで、66分から同時に投入されていたFW梁賢柱(スポ3=東京朝鮮)や杉田の敏しょう性がより引き出されるようになる。迎えた89分、センターサークル付近で粘った梁からパスを受けた杉田が、相手センターバック裏のスペースにボールを蹴り出して自ら走り込み、GKと1対1に。右足で振り抜かれたシュートはゴール左下に突き刺さって値千金の決勝弾となり、早大は残留に向けて大きな勝ち点3を手にした。

 「試合で生まれた学びを毎回のテーマに掲げて、みんなが目の色を変えて取り組んでくれている」(外池監督)。前節の桐蔭横浜大戦(●1-2)では、思い描いた攻撃のかたちを遂行しながらも決定力不足を露呈し、勝ち点を積み重ねることができなかった前期の戦いを想起させる敗戦を喫したものの、部員一人一人がその敗戦に向き合った成果がこの日の試合では見受けられた。先発に抜てきされた部員や途中出場した部員が起用に応える活躍を見せれば、試合に出続けてきた部員は劣勢の時間帯でも高い集中力を保った。観客席ではいつも以上に声を張り上げる部員の姿もあった。一週間後、現在10位の早大は、降格圏の11位に沈む流通経大との直接対決に臨む。この『6ポイントゲーム』を制することができれば、『歴史的残留』がいよいよ現実味を帯びてくるはずだ。

スターティングイレブン

 

(記事 石井尚紀、写真 初見香菜子、大山遼佳)


早大メンバー
ポジション 背番号 名前 学部学年 前所属
GK 31 上川 琢 スポ2 湘南ベルマーレユース
DF 杉山 耕二 スポ3 三菱養和SCユース
DF ◎3 大桃 海斗 スポ4 新潟・帝京長岡
DF 17 工藤 泰平 スポ3 神奈川・日大藤沢
MF 牧野 潤 スポ4 JFAアカデミー福島
MF 鍬先 祐弥 スポ3 東福岡
MF 栗島 健太 スポ4 千葉・流通経大柏
MF 阿部 隼人 社3 横浜F・マリノスユース
→66分 杉田 将宏 スポ2 名古屋グランパスU18
MF 10 金田 拓海 社4 ヴィッセル神戸U18
→83分 14 藤沢和也 社4 東京・早実
MF 18 西堂 久俊 スポ1 千葉・市立船橋
FW 24 鈴木郁也 社3 FC東京U18
→66分 35 梁賢柱 スポ3 東京朝鮮
◎=キャプテン
監督:外池大亮(平9社卒=東京・早実)
関東大学リーグ戦1部 順位表
順位 大学名 勝点 試合数 得点 失点 得失差
明大 46 17 15 38 +30
桐蔭横浜大 34 17 10 28 15 +13
法大 29 17 26 15 +11
立正大 27 17 31 20 +11
筑波大 27 17 28 20 +8
順天堂大 25 17 19 19
中大 21 17 17 29 -12
駒大 21 17 17 29 -12
専大 20 17 28 43 -15
10 早大 18 17 19 29 -10
11 流通経大 11 17 12 16 32 -16
12 東洋大 17 12 12 27 -15
※第17節終了時点
コメント

外池大亮監督(平9社卒=東京・早実)

――この一週間どのように取り組んできましたか

前回は非常に嫌な負け方というか、前期を彷彿させるような試合でした。我々から隙をつくって失点してしまうという一番やってはいけない内容だったので、大きな修正が必要であるとは思っていました。そこにある現象だけでなく、チームに今ある空気感も含めて見直そうということでベンチでの声がけや、ピッチの中での連携、役割を整理したところからスタートしました。加藤が途中でコンディション不良もあってメンバーに入れない状況になってチームとして問われる状況ではありました。ただ一人一人がそのテーマとしっかり向き合って、応援も含めて非常に良い空気感が出せました。失点したシーンなど苦しい時間もありましたけど乗り越えて途中交代で入った杉田や梁、きょう久々に出た西堂とかがしっかり自分の価値や思いを表現できたのは大きな意味があったと思います。

――後期はアクシデントによる交代が多いですが、きょうのゲームプランは思い通りのものでしたか

鈴木郁は想定通り、点を取るともういいですっていうテンションになってしまうんですよ。それは課題ではあるのですが、郁哉のフィジカルの強さとマイボールにする力で前半は試合を優位に進めることができていたのは確かです。彼の貢献度は非常に大きかったです。

――得点シーンを振り返って

今回西堂を使うのは賭けでしたね。全然Aチームでプレーしていなかった中でBチームでだいぶコンディションが戻ってきていたので一つシステムを3から4に変えてワイドのところにかたちをつくりたいとなると彼の突破力はぴったりだと思っていました。前半も多くのチャンスをつくっていたので、実際後半15分までの間に3回クロスを上げることを遂行できていたので彼自身が試合に出れなかった期間に向き合っていたんだなと感じました。

――モネイルダンスに代わるパフォーマンスは考えたりされていますか

新しいのは考えていないですね、もうあれしかないです。ちなみに、あれをやると勝つんですよ(笑)。筑波戦から始めて、駒沢さんにも勝って。実は点を取ってもやらない日は負けているんです。順天の2点ともやっていないし、前節の加藤のヘディングでもやっていないし、引き分けのゲームでは点を取ってもやっていないんですよ。だからもうやらないといけなくて(笑)。一応やっておこうってパフォーマンスよりもジンクス寄りの包容になってきてますね。モネイルでパフォーマンスをやれば勝てるというジンクスがきょうで確実に立証されたので(笑)。皆も言わないでも分かっているんですよ、僕がやろうって言うと嫌がるのに。本当はやりたがってると思うんですけどね。まだまだ5試合あって去年は優勝争いでしたけど今年は下位争いというのは、レベルの高い関東では当然とも言えますね。こういう場があるのは素晴らしいことですし、チームの中もライバルチームとも切磋琢磨して大学サッカーや大学スポーツの素晴らしさを発信できるようにやっていきたいです。

――失点の後は危ない場面も多くありました

シュートブロックによく入っていましたし、ああいったところで体を張れるのは大きいですね。前節は工藤が失点した後に自分から崩れていってしまったところがあったのでそういったところは今週工藤も杉田もそれに向き合って練習してきました。自分自身の問題だけではなく、それぞれの良さはチームの武器になってきているので、自分がチームに与える影響っていうのも少しずつ意識していっていますね。それがピッチに立つ責任でもあるので。

――今後につながる勝利でした

次は流経さんと当たるのですが、きょうの試合の重要性というのは言わなくても重さをそれぞれが感じていたと思います。でもこういった重たいというか、早稲田の歴史も含めて、そういったものを感じながらプレーができるというのは選手たちはそれを望んできていると思います。その先プロになるなり代表になったとしても、もっと大きなものを背負って戦うことになるのでそれを楽しんでほしいし、そのことを一つの喜びや誇りだと思ってほしいので本当に皆それに向き合ってこういうかたちで耐えながらも最後しっかり攻めれる姿勢をもっていたので、そういう意味では素晴らしいゲームだったと思います。

――次節に向けてどういった準備をしますか

試合で生まれた学びを毎回のテーマに掲げて、皆が目の色を変えて取り組んでくれているので。きょうスタンドにいるメンバーも全員が平等にチャンスがあるというのは分かっていると思いますし、僕はそういう環境をつくっていくべきであると思うので。選手たちの思いであったりプレーでそれを表現しようと発信していることに関しては見逃さないようにしてチームのエネルギーにしていけるようにするのが僕自身の役割だと思っています。

DF牧野潤(スポ4=JFAアカデミー福島)

――終了間際のゴールで勝利を収めました。きょうの勝利をどのように捉えていますか

先週の負け方が前期に調子が良くないときの負け方だったので、きょう勝てたことは非常に大きいことだと思います。来週が大事だと思うので、そこに向けてしっかりとやっていかなければいけないなときょう勝ったことによってより強く感じました。

――MF西堂久俊選手(スポ1=千葉・市船橋)が左のワイドにポジションを取って、牧野選手がインナーラップするシーンが何度かありました

西堂が開いている方がやりやすいのと、3バックだと相手が5枚で引いたときに、ボランチの横が空くことは分かっていたので、そこを自分が使えたらというのがありました。特に栗(MF栗島健太、社4=千葉・流通経大柏)がボールを持ったときは、左足で西堂に蹴ることができるので、狙いでありました。

――立正大はWBがいることもあり、サイドから厚みのある攻撃を展開してきました

カウンターがうまくて、前の3枚で収めてWBを使ってきたので、あそこは戻るしかなかったです。立正が走ることは分かっていたので、負けないようにというのはありました。1失点はしましたけど、そこで続かなかったのは良かったです。

――前半はクロスに対して、中の枚数が足りないことがありましたが、ハーフタイムに何か話し合われましたか

西堂のところがチャンスをつくれている分、クロスの入れる位置と入り方を共有しました。

FW杉田将宏(スポ2=名古屋グランパスU18)

――後半の投入前、ベンチからどのように見ていましたか

試合が始める前に監督から、おまえのやることは自分でもわかってると思うし、前からどんどんスイッチかけていけ、と言われていて。出たらそれを意識しようと思って試合に出て、結果それが点につながったのかなと思います。

――流れがあまり良くない中での2枚替えになりましたが

苦しい状況だったので、まずはチームにいい影響を与えられるようなプレーを心がけてやっていました。一緒に入った梁(梁賢柱、スポ3=東京朝鮮高)くんと二人でそうしようというふうに声をかけながらやれたのが、点につながったのかなと思います。

――得点シーンを振り返っていかがですか

梁くんがつぶれてくれて、そこを拾って結構フリーな状態でゴール前まで運んで。そこからパスもあったんですけど、やっぱり自分で行こうって決めて、それが最終的に点につながったんじゃないかなと。迷いがなくて、自分で行くって決めたことが一番大きかったのかなと思います。

――試合前に考えていた部分と、その得点シーンでの判断はマッチしていたのですか

そうですね。迷わず、どんどん前から行くっていうところで、得点シーンともつながっていると思います。

――前線でフォーメーションを変える場面も見受けられましたが、それに関しては

最初サイドで出たんですけど、自分は前の選手なのでなかなか前に行って起用ができなくて。けどそんなに背も高くないので競ることもなく、難しい状況が続いたんですけど。身長が高い選手も途中から入ってきて、そこでやっぱり自分の持ち味が生かせるなと思っていたら点が入ったという感じですかね。

――最後に、次戦への抱負を教えてください

今回は加藤(加藤拓己、スポ2=山梨学院)がいなかったんですけど、加藤と一緒にどんどんチームを引っ張っていけたら最高です。