こぼれ落ちる勝ち点 決定力不足に泣く

ア式蹴球男子
JR東日本カップ2019 第93回関東大学リーグ戦 第16節
早大 0-2
1-0
桐蔭横浜大
【得点】
(早大)84’加藤拓己
(桐蔭横浜大)40’岩下航、44’イサカゼイン

 台風19号の影響で、延期して行われた関東大学リーグ戦(リーグ戦)第16節。相手はリーグ戦2位と波に乗る桐蔭横浜大。何としても勝ち点が欲しい早大だったが、40分と44分にそれぞれ得点を許してしまう。何度も戦術通りのかたちをつくって反撃を試みるも、84分のFW加藤拓己(スポ2=山梨学院)の1点のみに終始。決定力不足に泣いて、手痛い敗戦を喫した。

開始早々ロングシュートを放った栗島

 本降りの雨の中、気温16度というコンディションでキックオフを迎えた早大。開始直後にMF栗島健太(社4=千葉・流通経大柏)がロングシュートを放って強気の姿勢を見せ、幸先の良いスタートを切る。11分にはカウンターからチャンスを演出したものの、ボールはわずかに枠を外れる。ゴールをこじ開けることはできなかったが、早大はその後も落ち着いてラインを整え、左右にパスを振ることで主導権を握る試合展開が続いた。さらに36分にも、加藤が相手DFをかわしてゴールに迫る。ここはGKのファインセーブに阻まれたが、戦略的なプレスがはまって早大が流れをつくる状況が続くかと思われた。潮目が変わったのは40分。ここまで数少ないピンチも確実に防いできた早大がDF岩下航(3年)に先制点を許してしまう。勢いづく桐蔭横浜大に対して、失点後も積極性を失わずにプレーしたい早大。しかし44分、足を滑らすミスから抜け出されてMFイサカゼイン(4年)に追加点を与えてしまう。外池大亮監督(平9社卒=東京・早実)が「自分たちのペースで試合を進められていた中でもったいない失点を相手に与えてしまった」と振り返るように、決定機をものにできないまま0-2で前半を折り返した。

何度も好機をつくり出した加藤

 前半の隆盛を再び取り戻したい『外池早稲田』は、課題であった後半20分過ぎに備えた2枚替えを、ハーフタイムに前倒して敢行。4-2-3-1の布陣で「両ワイドにパワーを持った選手を入れて、そこで相手を押し返そう」(外池監督)と試みる。意図した通り巧みなパス回しでゴール付近に迫るシーンもあったが、攻撃のアイデアや意思疎通の不足でボールを奪われてしまう場面が散見される。61分再び決定機を迎え、加藤が飛び込むも得点ならず。そのまま両者拮抗(きっこう)して互いに譲らない時間が続くも、早大は諦めない。ついに84分、DF阿部隼人(社3=横浜F・マリノスユース)のCKに加藤が頭で合わせ、反撃ののろしを上げる。焦る桐蔭横浜大は攻勢を強めるが、その加藤が自陣まで走って戻り、相手のロングカウンターから生まれたピンチを阻む。しかし、最後まで果敢に勝ち点1を目指した早大は、無情にも1−2で試合終了の笛を聞くこととなった。

 台風被害の深刻さが浮き彫りになる中、試合ができたことに感謝して臨んだ一戦。試合内容は悪くなかったために、決め切れなかったことが悔やまれる。試合を通して、決定機を意識するあまり力んでシュートしたり、仲間のプレーの意図をくみ取れずボールを失うといった課題は見受けられる。一方でラインコントロールや、「4バックにして相手が引いてくるだろう」(DF工藤泰平、スポ3=神奈川・日大藤沢)という戦術は機能していた。数々の好機が生まれていることからも、方向性に間違いはない。苦境に立たされた今だからこそ、自分たちを信じて前を向くしかない。「現実から目を背けずにファイティングポーズを崩さず」(外池監督)戦う早大は、まだまだ上を目指せる。

スターティングイレブン

 

(記事 手代木慶、写真 森迫雄介)


早大メンバー
ポジション 背番号 名前 学部学年 前所属
GK 31 上川 琢 スポ2 湘南ベルマーレユース
DF 杉山 耕二 スポ3 三菱養和SCユース
DF ◎3 大桃 海斗 スポ4 新潟・帝京長岡
DF 17 工藤 泰平 スポ3 神奈川・日大藤沢
MF 牧野 潤 スポ4 JFAアカデミー福島
MF 鍬先 祐弥 スポ3 東福岡
MF 10 金田 拓海 社4 ヴィッセル神戸U18
MF 12 大里 優斗 スポ4 鹿島アントラーズユース
→HT 阿部 隼人 社3 横浜F・マリノスユース
MF 栗島 健太 スポ4 千葉・流通経大柏
→74分 24 鈴木 郁也 社3 FC東京U18
FW 加藤 拓己 スポ2 山梨学院
FW 14 藤沢 和也 社4 東京・早実
→HT 35 梁 賢柱 スポ3 東京朝鮮
◎=キャプテン
監督:外池大亮(平9社卒=東京・早実)
関東大学リーグ戦1部 順位表
順位 大学名 勝点 試合数 得点 失点 得失差
明大 43 16 14 35 +28
桐蔭横浜大 31 16 26 15 +11
立正大 27 16 30 18 +12
筑波大 27 16 27 18 +9
法大 26 16 24 15 +9
順天堂大 25 16 19 17 +2
駒大 21 16 17 27 -10
専大 20 16 27 40 -13
中大 18 16 16 22 -6
10 早大 15 16 17 28 -11
11 東洋大 16 11 11 25 -14
12 流通経大 16 12 14 31 -17
※第16節終了時点
コメント

外池大亮監督(平9社卒=東京・早実)

――きょうの試合振り返っていかがでしたか

まずは台風の影響で被害にあっている方もいる中で、延期はしましたけれどこうやってサッカーができることに感謝して、責任あるプレーをしようという話をしました。そして昨日のラグビー(W杯)みたいに、我々としてもできることはあるし、スポーツに関わる選手として、その可能性にチャレンジして欲しい、そういう姿勢を示そうということでこの試合に臨みました。当然相手も上位に位置して自分たちの型を持っているチームですが、相手の良さを消しながらうまくゲームは進めていたと思います。特に前半途中から金田と栗島のポジションを入れ替えて、ゴール前に進出できて自分たちのペースで試合を進められていた中で、もったいない失点を相手に与えてしまいました。あの時間帯に2失点を与えてしまったことは非常に残念でした。

――早大の時間帯が長い試合でしたが、セットプレーからの1得点にとどまりました

後半にシステムとメンバーを変えて押し込んだ時間帯はあったし、実際に好機もありましたが、やっぱりあそこでもっとギラギラするというか、ゴールに向かえる空気を出し切れなかったことは、まだまだゲームをつくるところで終わってしまって、「決める!」とか「(試合を)動かす!」というところまで行くには、もう2歩くらいパワーが足りなかったかなと思います。

――ハーフタイムに2枚替えを敢行しましたが、どのような狙いだったのでしょうか

もともと後半20分過ぎの戦い方が課題だったので、自分たちが押し込まれる時間帯をどうやって切り抜けるかという意味で、(後半20分頃に)4−2−3−1のかたちにして両ワイドにパワーを持った選手を入れて、そこで相手を押し返そうというプランでした。本来であれば同点で前半を終わらせて後半に勝負に出るとか、先手を取った上で相手をもう一度押し返すというプランだったのですが、自分たちの状況を打開せざるを得ないゲームになってしまったので、あのような交代策をとりました。

――試合終了後にはピッチ中央付近で選手に向かって何か話されていましたが、その内容はいかがいかがでしたか

なんとなく「自分たちはできている」と思っている中で、自分たちのミスとか、自分たちの普段やれていることをやらずに献上してしまった得点によって勝ち点0という結果になってしまったのは重いですし、これからより現実と向き合っていかなければならない中で、きょうのような試合をしていたら乗り越えられるものはないと思っています。後期が始まる前から言っているように、現実と向き合うという意味でいくと、『良いサッカー』を目指してやっているわけではないし、勝ち点3はもちろん勝ち点1でも取りに行くことを掲げている以上は、現実から目を背けずにファイティングポーズを崩さず、(次戦に向けて)週明けに集まろうと伝えました。

――ノルマとしている勝ち点15獲得に向けてどのように戦っていきますか

後期やると決めたことをやり続け、現実と向き合ってプレーをすることでしかないですね。そこ(現実)から逃げたり、違うテーマに行くべきではないと思うので、我々が掲げた設定の基準を下げずに遂行していくことをもう一度再認識することだと思います。とはいえ、自分たちの基準(での話)ではないですけれど、後期開幕時から現時点までで、(降格圏の)下位2チームとの勝ち点差が縮まっていないことは我々の一つの成果でもあるし、結構大きなことだと思います。それも一つの現実だと思うので、そこは時計が進んでいる中でもう一度状況を再認識して、現実の部分をもう一回突き詰めていくことも大事だと思います。ただきょうの試合、特に後半は両サイドのところでチャンスがつくれていることや、セットプレーで得点できていることはすごくいい状況だと思いますし、どうしても得点は必要になるので、そこをもう一度研ぎ澄ませていきたいです。

DF工藤泰平(スポ3=神奈川・日大藤沢)

――きょうの試合を振り返っていかがでしたか

チームとしても個人としてもやりきれなかったです。前半いいシーンが何シーンかありましたけど、自分の対応の悪さで失点をしてしまって、自分の良さっていうものを90分間出し続けることができなかったので、チームの敗戦というものも本当に痛いですけど、それ以上に自分としてやりきれなかったなというショックのほうが大きいかなと思います。

――ハーフタイムでの指示はどうでしたか

失点はしたけれどいいかたちというものは出せるようになってきたので、その中で4バックにして相手が引いてくるだろうという想定の中でどのようにボールを動かしていくかということと、とりあえず1点取りに行くしかないということを皆で声を掛けました。メンバーも変わったので、そこの配置の確認をしていました。

――杉山選手へのボールの供給で攻撃の初手になっていたところもありましたが

相手が引いていたというのがあったので、空いているから出せただけだと僕は思っていて、自分で何か状況を打開することができなかったので、守備の甘さや対応の悪さというのが間だったと思うので、そこを改善していきたいと思います。

――最後に監督からなんと声をかけられましたか

この現実から逃げられないということを強く監督は言っていたし、それは本当のことでこのタイミングでこういう負け方をしたということは本当に重く受け止めなければいけないという話をされていました。

――今後の試合に向けて意気込みをお願いします

残り6試合で勝たなければならないので、監督は言うように自分もこの現実から逃げては絶対いけないと思うし、胸糞悪かったり、うまくいかなくて投げ出したくなったりする感情も絶対あると思いますが、そういうときこそ自分らしさを出せるようにまた来週奮起したいと思います。