ゴール欠乏症。今季最多18本のシュートを放つが完封負け

ア式蹴球男子
第93回関東大学リーグ戦
早大 0-1
0-1
専大
【得点】
(専大)20’鈴木 厚太、86’中杉 雄貴

 前節の中大戦(△1-1)で関東大学リーグ戦(リーグ戦)初の勝ち点を挙げた早大は、同じく勝ち点1で並ぶ専大と激突した。サイドで起点をつくり、専大ゴールを脅かし続けるがなかなかゴールを奪うことができないでいると、20分にビルドアップのミスから先制点を献上する。後半に入っても幾度となく迎えた決定機を決め切れず、86分にダメ押しゴールを許し0-2で敗戦。前年度王者が開幕から低空飛行を続けている。

サイドをドリブルで駆け上がり、多くのチャンスシーンをつくった西堂

 中大戦から大きなメンバー変更はせずに、4-2-1-3の布陣で臨んだ早大。今節もスタメンで起用されたルーキー・FW西堂久俊(スポ1=千葉・市船橋)が序盤から縦への推進力を見せて、外池大亮監督(平9社卒=東京・早実)の起用に応える。まずは立ち上がりの2分、左サイドのスペースにボールを蹴り出して相手DFを振り切ると、FKを獲得。これは得点につながらなかったが、11分にまたしてもチャンスメイク。DF坂本寛之(スポ3=横浜F・マリノスユース)からの縦パスを受けた西堂がDFを1枚剝がしてマイナス気味のグラウンダーパス。しかし、FW蓮川雄大(スポ4=FC東京U18)のシュートはブロックされ、MF栗島健太(社4=千葉・流通経大柏)、FW武田太一(スポ4=ガンバ大阪ユース)がこぼれ球に詰めたシュートもゴールラインを割ることができない。さらに18分、左サイドで相手のパスミスをカットした蓮川の突破も阻止されてしまう。すると20分にGK山田晃士(社3=浦和レッズユース)のパスミスから、FW鈴木厚太(4年)にゴール左隅にボールを流し込まれ先制点を与える。思わぬかたちでの失点となったが、30分を過ぎたあたりからは武田、蓮川、西堂のポジションを入れ替え、左サイドで武田、蓮川のターゲットマン二人を起点として攻勢に出る。だが、40分の武田のセンタリング、42分の蓮川からのグラウンダーパスをフリーで受けて放った栗島のシュートは共に同点ゴールには至らず。前半だけで14本のシュートを専大に浴びせたが、無得点で前半を終えた。

遠めの位置からも積極的にゴールを狙う栗島

 前半に優位性を保っていたサイドから、早大は後半も畳み掛ける。57分からは3バックにし、後方からのシンプルなビルドアップで攻撃の活性化を図った。62分に左サイドでDF阿部隼人(社3=横浜F・マリノスユース)、武田とつなぎ、ペナルティーエリア内の蓮川へ。ここで蓮川がPKを誘発し、キッカーは武田。しかし、ゆったりとしたモーショーンから左下を狙ったボールはGK桐林海生(4年)にセーブされ、絶好機を逃す。69分にFW梁賢柱(スポ3=東京朝鮮)、75分には水野雄太(スポ1=熊本・大津)の攻撃的な交代カードを切るが、ブロックを敷いて守る専大に対して決定的なシーンをつくり出せない。逆に中盤でボールを失い、3バック横のスペースに縦に速い攻撃を仕掛けられる。そして86分、自陣でボールを奪われ3対2の状況下、坂本が1人につられ、DF大桃海斗主将(スポ4=新潟・帝京長岡)の反応が少し遅れたところをFW中杉雄貴(4年)にゴール左に突き刺された。後がなくなった早大は大桃を前線に残しゴールを目指すが、最後まで専大の牙城を崩せずに、0-2でゲームセットとなった。

 この日早大は今季最多となる18本のシュートを放ちながら無得点に終わった。第4節時点で生まれた2得点は、いずれもセットプレーからの得点であり、崩しの局面からゴールを決めることができていない。フィニッシュ精度の改善は喫緊の課題と言えるだろう。ただ、外池監督が「ゴール前に人数をかけるとか、点を取るために必要な、ゴールのギリギリ近くまで(いくことは)できている」と手応えを口にしているように、武田、蓮川、西堂、栗島といった選手たちの連動で、得点の匂いは確実に漂わせている。次戦相対するのは、現在リーグ最少失点を誇る明大。11日には明大と東京都トーナメント決勝を控える中で、この一戦にどれだけ『勇気』を持って臨めるか。セカンドシーズンを迎える『外池早稲田』の真価が問われている。

スターティングイレブン

(記事 石井尚紀、写真 堤春嘉、永池隼人、大山遼佳)


早大メンバー
ポジション 背番号 名前 学部学年 前所属
GK 16 山田 晃士 社3 浦和レッズユース
DF 杉山 耕二 スポ3 三菱養和SCユース
DF ◎3 大桃 海斗 スポ4 新潟・帝京長岡
DF 15 坂本 寛之 スポ3 横浜F・マリノスユース
DF 阿部 隼人 社3 横浜F・マリノスユース
MF 金田 拓海 社4 ヴィッセル神戸U18
MF 鍬先 祐弥 スポ3 東福岡
MF 栗島 健太 社4 千葉・流通経大柏
FW 武田 太一 スポ4 ガンバ大阪ユース
→69分 10 梁 柱賢 スポ3 東京朝鮮高
FW 33 西堂 久俊 スポ1 千葉・市船橋
→84分 17 工藤 泰平 スポ3 神奈川・日大藤沢
FW 11 蓮川 雄大 スポ4 FC東京U18
→75分 37 水野 雄太 スポ1 熊本・大津
◎=ゲームキャプテン
監督:外池大亮(平9社卒=東京・早実)
コメント

外池大亮監督(平9社卒=東京・早実)

――きょうの試合は攻撃的なサッカーを展開し、全体通しては悪くないようにみえたのですが、監督としてはいかがでしたか

試合全体としては非常に良いかたちもありましたし、狙いとしていたものも出せて個々に良さを発揮した選手もいたので、満身創痍のチームの中でそういう状況をつくれたのは良かったかなと私も思います。

――前節からスタメンで起用している西堂選手が、きょうはより良さを発揮していました

空彼は右も左もできるし、チームの中で勇気というか、推進力を生み出して欲しいということで(起用しています)。あそこに自由度を持たせてという意図もあるし、そこにいかに良い状態でボールを運んでいくかというところの共通理解もチームにありました。非常に良い駆け引きをしてくれて、決定的なシーンもつくってくれましたし、早稲田としてのスタイルを体現してくれたと思います。

――最終ラインの縦パスや西堂選手の突破など、今おっしゃった「勇気」というのは随所に見られました

こういう苦しい時こそ、苦しい時というかチームは非常に上向いているし、相手がどこであれ勝たなければいけない状況の中でも、ノーリスクなプレーを選ぶのではなくて、チャレンジしていくという(ことが必要)。1つ乗り越えるためには勇気が必要なエッセンスだと思うので、それをみんなが非常によく理解してプレーに結びつけてくれたなと思います。

――シュートも非常に多く打ちました、ただ点が入らないですね

そうですね…。まあここは当然(点を)取る技術とか、取るために必要なことが足りていないのは事実としてあると思いますけど、ゴール前に人数をかけるとか、点を取るために必要な、例えばゴールのギリギリ近くまで(いくことは)できていると思うので、何かを変えるというよりはこれを続けていった先にしか(ゴールはない)。例えばきょう18本シュートを打ちましたけど、じゃあ3本に1本決めればいいという話でもないので、同じ18本の中でどう得点に結びつけていくかというところに、ブレずに取り組んでいくことかなと思いますね。

――栗島選手が、今までの試合と比べてシュートへの意識が高いように感じたのですが、何か監督から言葉をかけたりしたのですか

武田も金田も栗島もそうなのですが、中盤含めてプロ志望している選手たちに最近言っていることは、勝利という結果については当然ですが、やっぱりゴールを取れる選手、あるいはゴールに直結するプレーができる選手(になる)というのが、シンプルにプロに行くために1つ必要なステップになってくるので。要は結果ですね。「すごくチームの中で機能しているね」とか「うまいね」といったステージから、プロという環境になっても必要とされるようなステージに到達するには、攻撃の部分であればゴールに関われているかとか、ゴールできるかということが、チームの中でもそうですけどサポーターなどに求められる姿だし、解答はシンプルにそこにあると思うので、みんなプロを目指すのであればゴールにこだわるというか、そこへの意識が見えてこないと、実際何となく評価されたとしてもオファーには結びつかないんじゃないかという具体的な話はしましたね。

――終盤は3バックにして追い上げを図りました、その時思い描いていたのは

3バックにしたのはビルドアップのところでシンプルに前進していこうという意図がありました。武田を替えたのと蓮川がケガで離れた状況があったので、カウンターや前に起点を置くというよりも、前進して相手を押し込んだ中でどのようにフィニッシュに持っていくかという状況をつくらなければならなかったので。そこはプラン通りでもあり、蓮川のケガというイレギュラーなこともあったので、あそこで工藤を入れて杉山を前に出そうと。スペースがなくなると西堂が生きなくなってしまうから、杉山を前に入れてセットプレーから狙うのもそうですし、工藤は病み上がりではありましたけど、追いつくという空気をつくる上で大きく貢献できるので彼を出しました。

――この後はリーグ戦、天皇杯予選決勝で好調の明大と連続して対戦します。これまで迎えた中でも最大級の試練が待ち受けていると思いますが

そうですね、実際この2連戦は注目もされるだろうし、その中で好調明治、不調の早稲田という構図で戦うわけですから、当然簡単ではないと思います。ですがきょうまでの、そこにたどり着くまでのプロセスの部分も、開幕戦非常に良くなかったところから着実に改善してきているという現状があります。今までやってきたことをしっかり相手にぶつけるのもそうですし、きょうとかもいくつかゲームをこっちが好転させられるきっかけがあったと思うので、コンディショニングやマインドセットのところを疎かにせずにやるというのが今できることだと思います。そうすればきょうは上手く運ばなかった部分が、次はしっかり運べるような状況をつくってくれると思いますし、そうするだけの力はまだまだ選手に残っていると思うので、そこはまたチーム一丸になって向かっていきたいと思います。

DF大桃海斗主将(スポ4=新潟・帝京長岡)

――試合を振り返っていかがでしたか

前節の中大戦も決して悲観してはいませんでしたし、マイナスな要因は特にありませんでした。ポジティブな気持ちで、自分たちのやるべきことを整理して試合に入りました。中大戦では前半が良かったものの、後半はボールを持たれてしまったのですが、今節は全体を通して主導権を握れていた時間が長かったと思います。しかしその中で結果としては点を決め切れていないですし、後ろも2失点してしまったところでは課題がまだ克服できていないとも感じました。でもいいシーンも増えてきているのは事実なので、悲観することなく継続することが大事ですね。

――失点シーンを振り返っていかがでしたか

1失点目はビルドアップのミスからでした。試合前に監督からきょうのテーマは「勇気を持って戦う」と言われていた中で、山田自身も勇気を持ってチャレンジした結果、失敗してしまいました。でも大事なのはその後のプレーだと僕自身は思っていて、山田は失敗した後もチャレンジしてビッグセーブもありました。もちろんミスではありますが、まだ3年生ですし悪くないと思います。2失点目は前半に決め切れない時間帯があった中、集中力が切れてしまいました。シュートもよかったのですが、あの時間帯に2失点目をしてしまうのは厳しいので前も後ろもやはり課題はありますね。

――カウンターで一気に運ばれるシーンが多く見られましたが

後半は特にオープンになってしまっていて、中央の位置で奪われて運ばれてしまうシーンが多かったです。自分たちのCKでもそのまま運ばれてしまうこともありました。細かいところを突き詰めていくしかないので、切り替えて次に臨みたいです。

――最後は前線で張っていました

時間もありませんでしたし、昨日の段階でもし負けていたら前にいく、という話をしていました。後ろに坂本や泰平もいたので前に出ましたが、点は取れませんでした。

――次節に向けて意気込みをお願いします

明治さんは守備が堅く失点が少ないですし、昨年の後期リーグ戦では1-6で負けた相手です。自分たちのサッカーと似てハードワークで球際だったり切り替えだったりと、当たり前のことに重きを置いているチームでもあるので、反省しつつ気持ちを切り替えて次こそ勝てるように全員で準備していきたいと思います。

FW西堂久俊(スポ1=千葉・市船橋)

――きょうの試合を振り返っていかがですか

個人としては体も軽くて調子良かった方だったのですが、最後のところでクロス一本だったりフィニッシュの質だったりというのが本当に低かったと思うので、そこは今後こだわっていきたいです。

――1年生ながら2試合連続スタメン起用でしたが、どのような気持ちで試合に臨まれましたか

今は上級生が怪我人多くて、正直代わりで起用されているところはあると思うのですが、そんな気持ちでやらないようにして、自分が絶対にやってやるんだという心構えで臨んでいます。

――上級生からはどのような声掛けをされましたか

自分がやりやすいように上級生が気を遣ってくれていて、自分はその気遣いを感じているので、それにプレーで応えないといけないと思います。

――きょうの試合を通してご自身のプレーはいかがでしたか

終始集中を切らさないでやれていたとは思うのですが、本当に最後のところの質だったり、自分は攻撃の選手なので点を取れなかったら勝てないし、そこにこだわってやるべきかなと思いました。

――点を取るという部分に関して、次節はどういった意識でやっていこうと思いますか

次の試合は明治で、本当に手強い相手ですし、自分は1年生ですけど遠慮せずに点を取ってやるんだという気持ちで強い意志を持って望みたいと思います。