国士舘大との打ち合い制す!弾みをつけてリーグ戦開幕へ

ア式蹴球男子
第24回東京都トーナメント学生系の部予選
早大 3-1
1-2
国士舘大
【得点】
(早大)7’武田 太一
(国士舘大)21’澁谷 雅也
(早大)32’杉山 耕二
(早大)37’阿部 隼人
(国士舘大)70’谷村 海那
(早大)80’阿部 隼人
(国士舘大)90’髙橋 利樹

 先週、PK戦の末に青学大(◯1−1、PK5−3)を下し、東京都トーナメント学生系の部予選(天皇杯予選)決勝に駒を進めた早大。この日は国士舘大と対戦した。立ち上がりにFW武田太一(スポ4=ガンバ大阪ユース)が先制点を決めて主導権を握り、3−1で前半を終える。後半は前がかりになった相手に攻め込まれ追撃の一発を許したが、その後の交代策がはまり、80分にMF阿部隼人(社3=横浜F・マリノスユース)の得点で再び国士舘大を突き放した。終盤にPKを献上し1点差まで追い上げられるも、そのまま試合終了。この勝利によって、第24回東京都トーナメント本戦への出場が決定。同時に来週開幕する関東大学リーグ戦(リーグ戦)へ勢いをつける結果となった。

 試合は序盤に動いた。7分、前線からのプレスでボールを奪った武田が、中央のMF栗島健太(社4=千葉・流通経大柏)へボールを預けると、すぐさまリターン。これを受けた武田が豪快にネットを揺らし、早い時間帯で先制に成功する。その後は国士舘大のロングボール主体の攻撃に、DF大桃海斗主将(スポ4=新潟・帝京長岡)、DF工藤泰平(スポ3=神奈川・日大藤沢)が対応し、危険なかたちをつくらせない。こぼれ球にもMF鍬先祐弥(スポ3=東福岡)をはじめとした中盤の選手が素早く反応し、ピンチの芽を摘んで素早くサイドへ展開することで主導権を握った。15分に得たFKでは、大桃による意表をついたリスタートからMF神山皓亮(商4=栃木・真岡)が抜け出してクロス。武田が決定機を迎えるも、ボールはバーの上を越えていった。

先制点で試合に大きく貢献した武田

 21分に一瞬の隙を突かれ同点とされたが、早大優位は変わらない。「神山のところで優位性を一つ確保する」(外池大亮監督、平9社卒=東京・早実)という狙い通り、左サイドを制圧することで相手を押し込みにかかる。32分、その神山が自陣から左サイドを独力で突破し敵陣へ。中央へ供給したボールは一度クリアされたものの、こぼれ球を拾ったDF杉山耕二(スポ3=三菱養和SCユース)が武田、鍬先との連携でボックス内に侵入し、左足を振り抜いてゴールを挙げ勝ち越す。その5分後には栗島のボールキープから、内側でフリーになっていた阿部へ。そのまま持ち込んでGKの肩口を打ち抜き、点差を2点に広げた。

 後半は2点差を追う国士舘大がより攻勢を強めるも、早大のDF陣がことごとく体を張り、決定機をつくらせない。一方の早大もカウンターが決まらなくなり、得点の匂いが遠ざかり始める。時間が経過するにつれ、球際の競り合いが激化し試合が止まる場面が増加。59分には栗島に対しMF明本考浩(4年)がラフプレーを働く。乱暴な行為と判断され、明本にはレッドカードが提示された。これによって数的優位を得たが、それでもなお畳み掛けることができない。すると70分、MF谷村海那(4年)が個人技からミドルシュートを沈め、1点を返される。この失点の直後、外池監督が動いた。73分、疲れが見え始めた神山に代わってFW蓮川雄大(スポ4=FC東京U18)を、76分には鍬先に代えてMF田中雄大(スポ2=神奈川・桐光学園)を投入。1点リードながら次々と攻撃的なカードを切り、「受け身になるな」というメッセージを発信する。すると80分、この采配が的中する。中盤で田中からパスを受けた栗島が左サイドへ展開し、これを受けた蓮川がドリブルを仕掛ける。敵陣深くまで侵入してGKを引きつけ、マイナスに折り返した先に待ち受けていたのは阿部。この日2点目となるゴールを挙げ、4−2として勝利を決定づける。90分にPKで1点を失うも、そのまま4−3でタイムアップを迎えた。

追加点を決め、仲間の元へと喜びながら駆け寄る阿部

 サイドでは常に優位な状況を作り出し、相手のロングボールは屈強なDF陣が跳ね返し続けた。スカウティングによって相手の良さを消した上で、自分たちのストロングポイントを存分に生かすという『外池早稲田』の真骨頂といえる試合運びでつかみ取った勝利を、外池監督は「ようやく自分たちの通常のサイクルが出せた」と、ある程度満足気に振り返った。難敵に連勝したことで、新チームにとっても自信を深める結果となったはずだ。

 そして来週にはリーグ戦開幕が控えている。「とにかく残留が最大のミッション」(外池監督)。前年度王者として、他チームの挑戦を受けて立つという構図ではあるが、早大にはリーグ優勝した翌年に降格という屈辱的な過去がある。だからこそ、昨年の実績の上にあぐらをかかずに謙虚に戦い抜くという姿勢は、今年のチームが最も強く意識しているところだ。関東大学リーグ開幕を告げるオープニングゲームの相手は、昇格組の立正大。二年前の2部時代には、毎回苦戦を強いられた実力校だ。『打倒・早稲田』を掲げて向かってくる相手に対して、より強い『チャレンジャー精神』を持って戦うことができるか。今季の行く末を占う重要な一戦となる。

スターティングイレブン

(記事 森迫雄介、写真 大山遼佳)


早大メンバー
ポジション 背番号 名前 学部学年 前所属
GK 16 山田 晃士 社3 浦和レッズユース
DF 杉山 耕二 スポ3 三菱養和SCユース
DF 17 工藤 泰平 スポ3 神奈川・日大藤沢
DF ◎3 大桃 海斗 スポ4 新潟・帝京長岡
DF 牧野 潤 スポ4 JFAアカデミー福島
MF 鍬先 祐弥 スポ3 東福岡
→76分 14 田中 雄大 スポ2 神奈川・桐光学園
MF 金田 拓海 社4 ヴィッセル神戸U18
MF 阿部 隼人 社3 横浜Fマリノスユース
MF 栗島 健太 社4 千葉・流通経大柏
MF 22 神山 皓太 商4 栃木・真岡
→73分 11 蓮川 雄大 スポ4 FC東京U18
FW 武田 太一 スポ4 ガンバ大阪ユース
→84分 10 梁 賢柱 スポ3 東京朝鮮高
◎=ゲームキャプテン
監督:外池大亮(平9社卒=東京・早実)
コメント

外池大亮監督(平9社卒=東京・早実)

――先週の試合を受けて、きょうはどのようなゲームプランで臨みましたか

対国士舘ということで当然スカウティングもした上で、自分たちのストロングポイントである相手の良さを消すというところの、ようやく通常の自分たちのサイクルが(出たので)そういったところをより意識してやりました。

――前線の両翼の選手を入れ替えて臨みましたが、その起用の意図は

国士舘は人に対して(プレッシャーに)来る、個人で守っているチームなので、できるだけ左の神山のところにボールを運んで、彼が仕掛けられる状況さえつくれれば、ひとつ優位性は確保できるかなと。逆に阿部のところで落ち着かせるというか、同じサイドに杉山もいるので、そこを上手く使いながら神山のところに持っていかせました。右は連携で攻めて左は突破で攻められると思っていたので、そこは意識したものが出たと思います。

――神山選手に対しては試合中にも「縦に仕掛けろ」という指示を多く飛ばしていましたね

そうですね、前の試合では梁がその役割をやっていて、プレーヤーの特徴が相手にとってどう(作用する)かというのは当然意識して采配したので、そこら辺は神山も意識してやってくれたなと思いますね。前半でも、他に2つくらい決定的なチャンスもあったので、もう一個あそこで優位性を取れればゲーム運びはもっと楽だったと思いますけど。けど逆に追いつかれてからとか、ゲーム中に課題も生まれたので、それに対してはよく乗り越えてたくましくなってくれたなという印象は受けました。

――後半は1点を返されたあと、立て続けに攻撃的なカードを切りました

そもそも数的優位の状況でしたし、どうしてもトーナメント戦だと勝敗が念頭に出てくるので、その時にどういうスタンスでチームがあるかという意味でいくと、メッセージは攻撃的である方が(良い)。受け身になるのは簡単だし、国士舘も前から前からというアクションがずっとあったし、とにかくボールを前線に入れて来るチームなので、そういう意味でいくと、受ける場面が増えれば増えるほど、こちらの空気は悪くなってしまう。それ(国士舘のアクション)にしっかり対抗できるように、攻撃的な部分を示すことで打開するというか、そういったところを判断しました。

――その起用の結果、蓮川選手のアシストで阿部選手の得点が生まれましたが、あれは一つ狙い通りの形だったのですか

そうですね、あそこも神山がだいぶ消耗しきっていたので、同じタイプでもう一つ推進力を生み出すことと、クロスに対しての入り方は今週ずっと練習していたので、あの辺は本当に練習通りで良かったですね。

――先週はセットプレーを課題に挙げられていましたが、きょうはトリックプレーで相手の意表を突く場面が多く見られました

あれらは練習通りですね。結果がどうだったかというよりは、どういうチャレンジをしたかということ(が大事)ですし、そうして初めて評価できる空気になるので。後半もトリックプレーとかは、もう少し栗島があそこ振り切ってくれたら良かったのですが(笑)。まあでも、練習より上手くいったので(笑)。そういうことを通じてチーム全体が前向きになるというか、試合中に色々起きてくる中で、(全体の)ベクトルが揃うタイミングがあることはすごく大事だと思っていますし、セットプレーはそういった機会になり得るので。マネジメントとして意識しています。

――実力的に拮抗した相手に勝ち切れたことで、来週開幕のリーグ戦に弾みがついたのでは

きょうみたいな相手は(開幕戦相手の)立正大さんに近いと思っていたりもしたので、そういう意味では、この東伏見という場所で良い公式戦の2試合を積み重ねられたと思います。明日新年度になるということ含めて、チームとしてすごく良いステップを踏んで次のステージに上がろうとしているなと感じます。この大会自体は4月の中旬にまた入ってきますけど、まずはしっかりリーグ戦と向き合えるという意味で、ベースの部分はできたと思います。ただ謙虚に、今年はとにかく残留(が目標)なので。40年の黒歴史を払拭することが僕のOBとしての最大のミッションなので(笑)。謙虚にそこに向き合ってしっかりやっていきたいということは一年通じてやっていきたいと思います。

MF阿部隼人(社3=横浜Fマリノスユース)

――試合を振り返っていかがでしたか

自分に何ができるか考えたときに、ボールを落ち着かせて試合をつくっていくことを求められていたので前半は前から全部プレーしようと考えていました。外池さんから2本絶対にチャンスが来ると言われていました。1本目はオフサイドになってしまったのですが、2本目は決められたので自分自身としてはよかったです。後半は相手の守備を混乱させる意図があって、守備が右サイドでやられてしまっている場面があったのでそこに自分が入ってリズムをつくっていきました。押し込まれることもあったのですが、流れは悪くはなかったです。2点目は絶対に流れてくると感じていたので、そこに走り込んで決め切れてよかったです。試合中に焦りはなく、心のゆとりがあったので落ち着いて決めました。

――後半は押される場面もありましたが

相手の意地とか点を取って追いつきたいという気持ちに押し込まれてしまっていました。でもそこを跳ね返してもう1点取りに行ってこれ以上やらせない、というのはできていた思います。

――意識していたことはありますか

年度末で、あしたから新年度が始まるという特別な日で、この試合が次につながる大事な試合だと外池さんから言われていました。相手に絶対にやらせないこと意識していました。

――リーグ戦開幕目前です、意気込みをお願いします

開幕戦からは1年生も出場できて、今年は特に能力の高い選手が多くいます。自分もどのポジションで出られるか分かりませんが、スタメンを勝ち取ってチームを勝利に導きたいと思います。自分たちも常にチャレンジャーだという心を忘れずに戦います。

FW武田太一(スポ4=ガンバ大阪ユース)

――きょうの試合にはどういったプランで臨みましたか

相手が前から来るのは分かっていたので、自分が前線に張って距離を開けて、中盤が間延びしたところを栗島がうまく使ってサイドから攻めるというのを意識していました。

――先制点のシーンを振り返っていかがでしたか

前線からの守備がうまくはまりました。すぐ切り替えて奪えたというのと、クリ(栗島)が自分の近くにいてくれたのでワンツーして、パスはあまり良くなかったですが(笑)、良い感じで力が抜けて狙い通りのところに打てたと思います。

――今おっしゃったように、きょうは前線からのプレスが光っていましたが

きょうは蹴ってくるチームが相手だったので、蹴ってくるなりに前からプレッシャーを掛けた中で蹴らせたかったので、それは意識していました。

――後半は苦しみ、失点も喫してしまいました

入り方があまり良くなかったです。3-1の状態で気の緩みが出たかなというところでしたね。

――2失点目以降、監督は立て続けに攻撃のカードを切っていましたが、それについてはいかがでしたか

そうですね、神山は結構縦に突破できていたのですが、(蓮川)雄大くんに代わった時点で、(重心が)もっと前にかかるのは分かっていました。高さもあるし全体的に拠り所ができて、それで落ち着いたかなというのはありますね。

――来週開幕するリーグ戦への意気込みをお願いします

来週からは新1年生という戦力も加わってくるので、より一層切磋琢磨しながら戦っていきたいと思います。個人的には、去年取れなかった得点王を目指していきたいと思います。