全国の強豪校が日本一を懸けてしのぎを削る全日本大学選手権(インカレ)がついに開幕した。関東第1代表として出場権を得た早大は2回戦からの登場。北海道第1代表・北海道教大岩見沢(岩教大)と一戦を交えた。序盤から主導権を握るも決め手に欠き、前半をスコアレスで折り返す。早大は後半開始と同時にFW岡田優希主将(スポ4=川崎フロンターレU18)とMF相馬勇紀(スポ4=三菱養和SCユース)を投入。すると51分、その2人の連携から相馬がPKを獲得。これを岡田がきっちり決め、先制点を挙げた。その後は受け手に回り、何度かゴールを脅かされたが、粘り強い守備でボールを弾き続け、無失点のまま試合は終了。接戦をものにし、17日に行われる順大との準々決勝へ駒を進めた。
関東大学リーグ戦(リーグ戦)で圧倒的な存在感を放った岡田と相馬をベンチに置いてキックオフを迎えた早大。序盤、最終ラインから岩教大のサイドバックの裏にロングボールを蹴り込み、MF藤沢和也(商3=東京・早実)を筆頭に敵陣深くに侵入することでゴールに迫っていく。最初のチャンスは10分。DF大桃海斗(スポ3=新潟・帝京長岡)のミドルシュートで得たCKから、キッカーのMF田部井悠(スポ1=群馬・前橋育英)がグラウンダーのボールを供給。DF杉山耕二(スポ2=三菱養和SCユース)がフリックし、大桃がフィニッシュするサインプレーで得点を狙うも、相手DFにブロックされる。25分には、右サイドの大外でボールを受けた藤沢から、内側のFW杉田将宏(スポ1=名古屋グランパスU18)へ。そのまま持ち込み右足を振り抜くも枠の左へと外れた。すると岩教大は徐々に最終ラインを低く設定し、背後のスペースをケア。「背後が少なくなったりして(ボールを)引っ掛けちゃうシーンがあった」(相馬)。中盤でゲームを組み立て、チャンスメイクを試みるも、クサビのパスミスが多発し、ゴールに迫れない。決定機を作り出せないまま前半を終えた。
立ち上がりから藤沢を軸に押し込んだが、得点には至らなかった
相馬と岡田を投入し迎えた後半、いきなりこの二人が違いを見せる。50分、左サイドから岡田がスルーパスを通すと、抜け出した相馬がPA内へ切り込む。持ち味の緩急を生かしたドリブルでファウルを誘発し、PKを獲得。岡田がこれをゴールど真ん中に蹴り込み、待望の先制点を挙げた。しかしその後はピッチコンディションと向かい風に苦しみ、攻撃は手詰まりに。「距離感は試合全体としてあまりうまくいかなかった」(外池大亮監督、平9社卒=東京・早実)。徐々に守勢に回り、岩教大が早大ゴールを脅かし始めた。84分にはFW下田友也(2年)にバー直撃のシュートを浴び、あわや失点のピンチを迎える。相手の決定力不足に助けられながらも、終盤のパワープレーを粘り強く跳ね返し続け、タイムアップ。難敵を退け、準々決勝へ進出することとなった。
後半から出場した4年生二人が勝利を引き寄せた
試合後には「ひとつ乗り越えた」という、安堵に似た言葉が多く聞かれた。夏の総理大臣杯全日本大学トーナメントでは初戦で姿を消し、悔しさを募らせたエンジイレブン。インカレで先に進む権利を得たという意味ではもちろん、夏に植えつけられた『トラウマ』を払拭したという意味でも、非常に意義深い1勝となったことは間違いない。次戦の相手は同じ関東勢の順大。今季のリーグ戦の対戦では2勝を挙げているものの、順大エースのFW旗手怜央(3年)は、2回戦の関大戦で2得点を挙げるなど、目下好調を維持している。これからの早大に求められるのは、初戦で出た多くの課題を、短い時間でいかに修正していくか。日本屈指の強豪がひしめくトーナメントで、現状に甘んじては先へ進めない。これまでやってきたように、変化を恐れず、目の前の1試合1試合に謙虚に、真摯に向き合っていく。
スターティングイレブン
(記事 森迫雄介、写真 稲葉侑也、守屋郁宏、永池隼人、河合智史)
第67回全日本大学選手権 2回戦 | ||||
---|---|---|---|---|
早大 | 1 | 0-0 1-0 |
0 | 北海道教大岩見沢 |
【得点】 (早大)51’岡田 優希(PK) (岩教大)なし |
早大メンバー | ||||
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ポジション | 背番号 | 名前 | 学部学年 | 前所属(加入内定) |
GK | ◎1 | 小島 亨介 | スポ4 | 名古屋グランパスU18 (大分トリニータ内定) |
DF | 17 | 工藤 泰平 | スポ2 | 神奈川・日大藤沢 |
DF | 3 | 大桃 海斗 | スポ3 | 新潟・帝京長岡 |
DF | 18 | 杉山 耕二 | スポ2 | 三菱養和SCユース |
DF | 2 | 牧野 潤 | スポ3 | JFAアカデミー福島 |
MF | 11 | 藤沢 和也 | 商3 | 東京・早実 |
→78分 | 20 | 梁 賢柱 | スポ2 | 東京朝鮮高 |
MF | 8 | 栗島 健太 | 社3 | 千葉・流通経大柏 |
MF | 5 | 金田 拓海 | 社3 | ヴィッセル神戸U18 |
MF | 25 | 田部井 悠 | スポ1 | 群馬・前橋育英 |
→HT | 10 | 岡田 優希 | スポ4 | 川崎フロンターレU18 (FC町田ゼルビア内定) |
FW | 19 | 杉田 将宏 | スポ1 | 名古屋グランパスU18 |
→HT | 7 | 相馬 勇紀 | スポ4 | 三菱養和SCユース (名古屋グランパス内定) |
FW | 9 | 武田 太一 | スポ3 | ガンバ大阪ユース |
→73分 | 15 | 直江 健太郎 | 商4 | 東京・早実 |
リザーブ:GK21千田奎斗(スポ2)、DF23坂本寛之(スポ2)、MF14田中雄大(スポ1)、 MF24阿部隼人(社2)、MF27千葉健太(スポ3) |
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◎=ゲームキャプテン 監督:外池大亮(平9社卒=東京・早実) |
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コメント
外池大亮監督(平9社卒=東京・早実)
――今日の選手起用について
リーグ優勝が決まってから、3年以下だけでやったり4年だけでやったり、3バックをやったり、いろんなチャレンジをしてきました。その中で見えてきた良いところを継続したいなというのがあって、前半で言えば、GKの小島以外はみんな3年以下でやりましたけど、3年以下というよりは3バックでやった時のサイドの使い方であったり、前の3人の関わりがトレーニングをやっていく中で非常に安定していたので、チャレンジしていいのかなと思いました。当然負けたら終わりではあるんですけど、そういうチャレンジをすることがうちらしさなので。
――岡田選手、相馬選手をハーフタイムで投入した
岡田、相馬はコンディションが悪いとかではなくて、チャレンジから見えてきた部分で彼らがどう融合していくかということをやろうと思っていました。前半はボールを持っているものの迫力が出せなかったという意味で行くと、やっぱり彼らの力が必要かなと思って、シンプルに後半から入れたという形ですね。
――二人は期待に応えるように決勝点を呼び込んだ
そうですね。やっぱり結果を直接導き出せるというのは、それなりの技術や自信、能力がないとできないので、そこは代わった田部井とか杉田には学んでほしいし、ただ一生懸命やるとか頑張ってやるというだけではなくて、そこに直結するプレーというのが相手にとって怖さになるし、トーナメントでは乗り越えないといけないものが当然出てくる中で、それを乗り越えるという力がどういうものなのかというのをみんなが共通認識できたという意味でも、今日は大きかったなと思いますね。
――追加点は奪えなかった反面、1点のリードを守り切っての勝利でした。どのように評価していますか
ちょっと風とか、ピッチコンディション的な部分もあって、もう少しボールを動かしたかったんですけど、武田もちょっと病み上がりのような状態でやっていたので、距離感は試合全体としてあまりうまくいかなかったかなと思います。ボールの動かし方的に言えば、前半の方がいろいろと人が絡んでというのがあって、どうしても岡田と相馬が入ると個に頼ってしまうというか、そこに預けるというのがベースに入ってしまうので。勝つことでしか次のステージに進めないという意味で行くと、ゲームをいかに作っていくかというところと結果に対してどう結びつけるかというバランスのところはいろいろと課題が見えたので、次はやりやすくなったなと思います。
――この辛勝はチームを引き締めることにもつながるのでは
総理杯のトラウマもあるので…(苦笑)。こういう大会に対しての苦手意識はみんな思っていると思いますけど、とはいえそこをひとつ乗り越えたというのはすごく大きいと思います。次があるということに対して、また新たな向き合いをつくれるというのは非常に意味があると思いますけどね。
――中1日で試合が続いていきますが、どのように向かっていきますか
ここからはより力のあるチームとしか試合がないと思うので、格下相手みたいな空気感はないと思うので、そこはうちにとってはすごくポジティブなところでもあるし、ようやくそういうステージに来たなと思います。あと3試合、6日間をなんとか過ごしたいというのはあるので、今日はっきり見えた部分をベースに戦っていくということかなと思いますね。手応えはあります。前半と後半で違う戦術、違うフォーメーションでやり切れて、この先の道筋が僕の中ではクリアになって、スケジュール感も含めてこの後はこうすべきかなというのは見えたので。次はもうがっぷり4つで、真っ向勝負でやれる感じになってくると思うので、ここからが本番なのかなと思います。
FW岡田優希主将(スポ4=川崎フロンターレU18)
――本日はベンチスタートでしたが、前半のチームを見ていてなにを感じていましたか
インカレへの入り方ではなかったかなと思いましたね。もちろんチームとしてのコンセプトや狙いはありますけど、それもあくまで相手がいる上で(の話なので)、勝つためにやっているということを考えると少し物足りなかった前半だったと思うし、ゴールに向かっていく迫力だったり、最後守り切るところが物足りなかったです。
――いつもよりロングボールを多用していましたが、それは試合前から決めていた戦い方ですか
そうですね、相手は裏が弱かったので。PKにつながったシーンもそうでしたけど、あそこ(サイドバック)の裏に置いていけば、僕たちのサイド、藤沢とか相馬の個人の能力で絶対にいけると思ったので、それを生かしていこうと思っていました。
――ハーフタイムを経て岡田選手と相馬選手が投入されました、明確な意図が見られた交代だったと思いますが、どのようなプレーを心がけていましたか
特に監督から何か言われたわけではないんですけど、僕が出る以上、結果にこだわってチームを勝利に導くプレーですね。攻撃だけじゃなくて守備においても、振る舞いにおいてもやろうと思っていました。
――結果的にその2人で得点を挙げました、あの一連のシーンを振り返って
前半から見ていて相手の裏が弱いのは分かっていたので、そこをシンプルに突いて、相馬の良さも僕の良さも出たし、それを今年一年間やってきた結果の優勝だったので、そこにもう一回立ち返らなければいけないかなと思いますね。自分たちがというより、相手をしっかり分析して、その上で自分たちの良さを出していくというところ、相手がいるということは忘れてはいけないと思うので、次はもっと厳しい戦いになるでしょうし、最初の入りから徹底していかなければいけないと思います。
――後半の途中から守勢に回る時間が長くなりましたが
まあ、うちは後半はだいたいそういう戦い方ですよね。(点を)取って、カウンター狙って。まあ、もう一本刺せればもっといい試合展開だったと思うし、あそこで最後ピンチはありましたけど守れたと思うし、全体含めてあそこで押し返して(前へ)行くとなるとまた色々やらなきゃいけなくなるので。今の段階で最後まで試合の主導権を握ってっていうのはまた別の問題だと思うので、それはそれでしっかり受け入れてやっていくしかないかなと思います。
――守備への課題を口にされていましたが、結果的にクリーンシートを達成しましたが、それについて
前期もそうでしたけど、失点ゼロだった試合を振り返っても、ピンチはすごくあるんですよね。結果としてゼロなのか、本当にピンチもなくゼロなのかでは雲泥の差があると思うので。僕が前の選手だから言ってるわけではなくて、チームの課題として向き合わなければいけないし、どんな試合でもピンチを迎えているというのは、今年のチームはまだまだ課題があると思っています。勝っているからまだ良いですけど、来年を考えると、まだ課題があります。
――何はともあれ、初戦を突破できました
そうですね。総理大臣杯ではここでコケていたので、まずはひとつ乗り越えることができたと思っています。ただ4試合の先を見るというより一戦一戦を戦っているだけなので、中1日と時間も短いですし、しっかりケアをして、頭もリフレッシュしてやりたいと思います。
MF相馬勇紀(スポ4=三菱養和SCユース)
――本日の試合を振り返っていかがですか
これがインカレだなということをチーム全体が認識できたと思うので、よかったと思います。
――スカウティングでは相手のどのようなことをマークしていましたか
相手の狙いがショートカウンターだったので、不用意なパスからのカウンターは避けようと。なるべくロングボール主体で行こうということになっていて、前半の最初はけっこう押し込めていたんですけど、途中から相手が引いたというのもあって、背後(のスペース)が少なくなったりして引っ掛けちゃうシーンがあったので、そこは修正しないといけなかったです。
――前半はベンチからどのように見ていましたか
分析しながらというか、客観的に見ていて。自分と岡田(優希主将、スポ4=川崎フロンターレU18)が後半から入ると思っていたので、二人で入ったら結果を出さないといけないなと思っていました。
――岡田選手と共に後半から途中出場ということで、攻撃の狙いはどのようなところでしたか
自分たちが出る意味はそれぞれに特徴があるからなので、その特徴を出すということと、相手のサイドバックの背後が弱かったので、そこは積極的に突いていこうと思っていました。
――PKにつながったエリア内でのプレーを振り返っていかがですか
あれは自分の特徴が出たというか、初速の部分がよかったので今後も続けていきたいと思います。
――シュートを狙っていたのか
そうですね。切り返して打とうと思っていたんですけど、そこで足が引っかかったので。
――普段より少し下がり目のポジショニングを取られていましたが
向かい風というのもあったので、あんまり押し込めなかったですね。あとちょっと間延びしていたので、次の試合で修正しないといけないですけど、自分たちはきょう初戦だったので、それを考えたらよかったかなと思います。
――チーム全体の守備の印象はありますか
5バックから4バックに変えるとやっぱり難しいところはありました。そこは明日修正できるかなと思います。
MF藤沢和也(商3=東京・早実)
――前半はサイドで相手より優位に立っている印象を持ちましたが、ご自身の調子も含めていかがでしたか
自分にボールが入ってくるところまでは結構いい感じだったんでけど、そこからの崩しには全然怖さが無かったかなと思います。クロスの質や中との連携で、まだまだ改善点は多いかなと思います。
――後半は岡田選手と相馬選手が入ってきて、攻撃はどう変えていきましたか
相馬選手や岡田選手は個の特徴があって、相馬選手がサイドを突破するシーンは関東リーグでも結構あったので、それに対して僕と武田がしっかり中に入るというのは意識していました。岡田選手は視野が広いので、自分は献身的にランニングしていこうという感じでした。
――今日の攻撃陣の総評をお願いします
トーナメントなので難しい試合になることは分かっていたんですけど、結果として1点しか獲れていないというのは、攻撃陣として課題があると思います。次の試合はもっと厳しい試合になると思うんですけど、前半の早い段階からしっかり点を狙ってやっていきたいと思います。
――課題とは具体的にどういった部分ですか
点が入る雰囲気が前半は無かったなと思うので、もっと怖さを出せるように、ゴールへの意欲をみんなが持ってやっていくべきかなと思います。