関東大学リーグ戦(リーグ戦)の第13節が行われ、後期開幕となった前節に明大に大敗(●1-6)を喫した早大は、9位に桐蔭横浜大と対戦した。メンバーの入れ替えを行って臨むと、先制を許したものの前半のうちに3得点し、リードして試合を折り返す。しかし後半、決定機を生かせずにいると2失点を喫してドロー決着。勝ち点2を失う結果に終わったが、連敗を避けることには成功した。
明大戦の大敗を受け、前節から先発メンバーを5人を変更。立ち上がりは攻撃の組み立てがうまくいかず、「『気持ちは持っているけど半信半疑』みたいな部分を突かれた」(外池大亮監督、平9社卒=東京・早実)とピンチが続く展開となる。いきなり押し込まれると、9分に相手のクロスに対してファーサイドで待つエースFW滝沢昂司をフリーにしてしまい、先制を許した。それでも「相手はマンツーマンで守っていたので裏が空いていた」(FW岡田優希主将、スポ4=川崎フロンターレU18)と、後方からのロングボールを多用すると、これが功を奏する。15分に相手守備陣の裏を取ってボックス内に侵入した岡田がシュートを放つと、こぼれ球に詰めたFW武田太一(スポ3=ガンバ大阪ユース)に相手DFの足がかかり、PKを獲得。武田が相手GKの手を弾く鋭いシュートをしずめ、早い段階で同点に追いついた。さらに、20分過ぎにサイドハーフのポジションチェンジを行うと、主導権は早大へ動く。左サイドハーフにポジションを移した公式戦初出場のMF秋葉遼太(文4=東京・駒場)を軸として何度か相手ゴールに迫ると、迎えた33分。DF坂本寛之(スポ2=横浜F・マリノスユース)の縦パスを起点に、秋葉が左サイドを突破する。折り返しに走り込んだ岡田は仕留められなかったが、クリアボールを拾った武田が強烈な右足シュートでネットを揺らしてみせた。勢いに乗る早大は、41分にも岡田と武田のパス交換で相手の守備を崩し、最後は岡田が決めて追加点。3-1で前半を終えた。
岡田主将は10得点、武田は9得点でそれぞれ得点ランキング1、2位に
ハーフタイムを挟んでも、早大の攻勢は変わらなかった。「前半以上にギアを上げていこうという気持ちで」(岡田)相手を押し込み、5分間で岡田にシュートチャンスが2度訪れると、50分のCKではサインプレーを行い、MF金田拓海(社3=ヴィッセル神戸U18)に決定機。しかしいずれも決め切れなかった。53分にもMF相馬勇紀(スポ4=三菱養和SCユース)が右サイドを突破し、ボックス内で待つMF田中雄大(スポ1=神奈川・桐光学園)にお膳立てしたが、シュートは相手GKの正面へ向かい、試合を決定づける1点を奪えない。すると徐々に桐蔭横浜大が息を吹き返し始め、63分にPKを献上。確実に決められ、1点差に迫られてしまう。この1点で守備の重心は後方に下がり、早大の守勢を決定的にすると、77分のCKで190センチの長身FW菅原圭介にヘディングシュートを許して失点。2点のリードはあっさりと水泡に帰してしまった。その後は互いに攻め合う展開となり、早大はタイムアップ直前までゴールに迫るシーンをつくったが、勝ち越しの1点は生まれず。守備では菅原に幾度となくゴールを脅かされたが、GK小島亨介(スポ4=名古屋グランパスU18)のセービングや守備陣のカバーリングでしのぎ、3-3で痛み分けとなった。
決定機を決め切れず頭を抱えた田中
前期の快進撃によって失いかけていた『勝利をつかみ取りにいく姿勢』を取り戻すべく戦った今節。2点差を追いつかれてドローというまたしても「ショックの大きいような試合結果」(岡田)にはなったが、最後まで攻め立てて勝負への執念をみせるなど、テーマはクリア。収穫も少なくない。坂本、田中、秋葉といった選手たちは揃って存在感を示してメンバー入りに名乗りをあげ、『前期のメンバー』に危機感を与えた。また、内容面でも、特にPK獲得からPK献上までの約40分間は迫力ある攻撃を繰り返しており、「前期より成長した個の強みを出せた」(外池監督)と、夏の経験の融合に可能性をみせた。試合運びには大きな課題を残しており、下位につけるチームとの対戦での『取りこぼし』という点では痛いが、目下の目標のトンネルの脱出へ、その出口は見えてきた。
スターティングイレブン
(記事、写真 守屋郁宏)
JR東日本カップ2018 第92回関東大学リーグ戦 第13節 | ||||
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早大 | 3 | 3-1 0-2 |
3 | 桐蔭横浜大 |
【得点】 (早大)16’(PK),33’武田 太一、42’岡田 優希 (桐蔭横浜大)09’滝沢 昂司、64’山下 優人(PK)、77’菅原 圭介 |
早大メンバー | ||||
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ポジション | 背番号 | 名前 | 学部学年 | 前所属 |
GK | 1 | 小島 亨介 | スポ4 | 名古屋グランパスU18 |
DF | 4 | 鍬先 祐弥 | スポ2 | 東福岡 |
DF | 3 | 大桃 海斗 | スポ3 | 新潟・帝京長岡 |
DF | 23 | 坂本 寛之 | スポ2 | 横浜F・マリノスユース |
DF | 12 | 小笠原 学 | 社4 | 青森山田 |
→90+2分 | 33 | 清水 駿 | 政経2 | 京都橘 |
MF | 34 | 田中 雄大 | スポ1 | 神奈川・桐光学園 |
→65分 | 8 | 栗島 健太 | 社3 | 千葉・流通経大柏 |
MF | 7 | 金田 拓海 | 社3 | ヴィッセル神戸U18 |
MF | 35 | 秋葉 遼太 | 文4 | 東京・駒場 |
→70分 | 14 | 藤沢 和也 | 商3 | 東京・早実 |
MF | ◎10 | 岡田 優希 | スポ4 | 川崎フロンターレU18 |
MF | 11 | 相馬 勇紀 | スポ4 | 三菱養和SCユース |
FW | 9 | 武田 太一 | スポ3 | ガンバ大阪ユース |
◎=ゲームキャプテン 監督:外池大亮(平9社卒=東京・早実) |
関東大学リーグ戦1部 順位表 | |||||||||
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順位 | 大学名 | 勝点 | 試合数 | 勝 | 分 | 負 | 得点 | 失点 | 得失差 |
1 | 早大 | 29 | 13 | 9 | 2 | 2 | 30 | 22 | +8 |
2 | 明大 | 24 | 13 | 7 | 3 | 3 | 29 | 13 | +16 |
3 | 順大 | 22 | 13 | 7 | 1 | 5 | 25 | 15 | +10 |
4 | 筑波大 | 21 | 13 | 6 | 3 | 4 | 23 | 18 | +5 |
5 | 法大 | 21 | 13 | 6 | 3 | 4 | 19 | 17 | +2 |
6 | 流通経大 | 20 | 13 | 6 | 2 | 5 | 23 | 24 | -1 |
7 | 専大 | 20 | 13 | 6 | 2 | 5 | 14 | 20 | -6 |
8 | 駒大 | 17 | 13 | 5 | 2 | 6 | 26 | 26 | 0 |
9 | 桐蔭横浜大 | 15 | 13 | 4 | 3 | 6 | 19 | 21 | -2 |
10 | 東洋大 | 13 | 13 | 3 | 4 | 6 | 14 | 21 | -7 |
11 | 東京国際大 | 13 | 13 | 3 | 4 | 6 | 16 | 24 | -8 |
12 | 国士舘大 | 4 | 13 | 1 | 1 | 11 | 12 | 29 | -17 |
※第13節終了時点 |
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コメント
外池大亮監督(平9社卒=東京・早実)
――前節終了時に「チームを壊す」というお話をされていましたが、どのようにこの試合に向けて取り組んできましたか
首位にいる立場を守るという立場ではないということも含めて、もう一回チームを前に進めるための『自分たちから(勝利を)つかみ取りにいけるような意欲』みたいなものを今までとは違う選手の選考基準としてやるということを伝えました。ワセダのユニフォームを着てサッカーするということはどういうことなのかということからスタートして、『進取の精神』をもう1回体現して実感できるようなプレーヤーにならないとワセダの選手として出ている意味はないし、たとえば相馬とか小島とかもそれがあってこそJや代表があると思うので、一回立ち返ろうよということです。全員でフラットな紅白戦をやって、そこで気持ちだったり、前に出て奪いに行くというような姿勢を示した選手だったり、競争で残った選手をメンバーに入れたという形でした。
――流れが二転三転したような試合になりました。どう振り返られますか
新しいメンバーも入っていたので、チームとして『気持ちは持っているけど半信半疑』みたいな部分があって、そこを向こうが非常にうまく突いてきて、「これはちょっと難しい状況になるな」と覚悟はしました。でも、ある種ラッキーなPKをいただいて、そこで落ち着くことができて盛り返せたのが大きかったです。そこからは前期よりも良い形というか、(夏に)成長した個の強みを出すシーンをつくり出して3点を取って、その流れを後半にも持ってこれたので、そこはチームとしてすごく手応えを感じる時間になりました。ただ、後半のテーマは時間をしっかり進めることと、もう1点を取りに行くことと、ファウルをしないということがテーマだったんですけど、ちょっとうまくいき過ぎていて、隙をつくってしまったなと思います。ただ追いつかれてから、勇気を持って(前に)出ていく選手もいたし、実際にチャンスもあって、僕は同点になった時の姿勢を重要視しているんですけど、その中でも『もう一回行くぞ』という感じを出せたのは次につながるかなと思いましたね。
――ポジティブに受け止めておられるのですね
当然3-1になったら勝ちたいとは思いますし、後半の流れでもう1点取れていればというのはあります。でも、主務の秋葉が初めてスタメンで出たことであったり、ワセダとしての姿勢を示せた部分は絶対にあったと思います。あとは90分の中でどうゲームをコントロールしていくかとか、隙をつくらないようにするという部分で、一つの軸は見えてきたのかなと思います。全体としての完成度を上げていくという意味で、前期とは違うチームとしての雰囲気は感じたので、一定の手応えはあります。今日が後期のスタートとも言える形だったかなと思いますね。
――少し勝利から遠ざかっているとはいえ、まだまだ2位との勝ち点差はある程度開いています
『大学サッカーを面白くする』というのが大きなテーマなので、そういう意味では大きく貢献しつつ(笑)。他の大学から標的になるのがワセダとしてあるべき姿だと思うので、その中でどう向かっていくかという点でいえば、明治さんの強さを感じて一回立ち返って、『3』ではなかったですけど、今日のゲームで『1』を取れたというのは僕は意味があると思うし、あと9試合を戦っていく中でもこの『1』は大きいんじゃないかなという気はしています。全大学を相手にするということをどう乗り越えていくかにチャレンジすべく、ようやくその立ち位置を認識してそこに向き合うという覚悟ができたと思うので、その部分を残り9試合で完成させていくシーズンにしたいと思います。
FW岡田優希主将(スポ4=川崎フロンターレU18)
――3-3という試合結果をどう受け止めていますか
ショックの大きいような試合結果にはなりましたけど、今週積み上げてきたものが出せた部分はしっかり評価すべき部分だと思います。ただ3失点したり、リードを守り切れないという部分は前期からの課題でもあるので、そこは向き合い続けていかないといけないと思います。
――前回、『相手どうこうよりも自分たちがどうするか』という話をされていました。試合を通して心構えという点ではどうでしたか
前回ああいう負け方をしたというのは、チームとしてもそうですし選手としてもあれで心が動かない選手だったらこの先はないと思うので、そこは自分自身が一番強く感じていました。3-1で折り返した時も前節を思い出して、あれ(前半)以上にギアを上げていこうという気持ちで立ち上がりに入ったので、そういうマインドについては全員が持っていたと思います。
――前半の展開を振り返っていかがですか
試合の入りは、自分たちのビルドアップで1列前の選手にただつけているだけで、全くゴールに向かうプレーができていなくて、それを変えなきゃいけないというふうには思っていました。PKになったシーンの前に、一度僕が抜け出したシーンがあったんですけど、相手はマンツーマンで守っていたので裏が空いていることを狙って、それに加えて自分たちのボールロストを無くす意味でも1回起点を前に置こうということで、修正をしていきました。その結果、みんなが前を向いてプレーできるようになったので、良かったかなと思います。ただ前に行く姿勢というのは裏に1本でも足元でつなぐのでも変わらないので、パスを1本大きく蹴らないと前への姿勢が出ないのは課題だと思うし、細かくつないでいく中でもそういう姿勢を持つというのは戦術的なバリエーションを増やす意味でも大事だと思うので、修正できてよかった部分と、そもそも悪いふうにしてはいけなかったという部分があったと思います。
――2点のリードを守りきれなかった要因はどこにあると考えますか
全体的に重心が下がって、前に出れなくなったというのが一番の要因だったと思います。攻撃は一番の守備にもなるし、ずっと守備をしていたらいつかアクシデントだとか、誰かの集中が切れて守りきれないという部分も出てくると思うので。ただ、守るというのは攻めるために守るのであって、守るために守っているのではないというマインドの部分と、ブロックを敷く中でもカバーとか出て行くところとか、強度の部分は前期からの課題だと思っています。
――前節反省として挙げられていた「分析や戦術以前の前提」の部分については今日はどうでしたか
マインドの部分はしっかり五分五分に持ってこれていたかなと思います。ただ互角のところからどう違いを出すかというところが足りなかったと思うし、それは後期を戦う上でのベースとして持ってこなければならなかった部分だと思うので、これでクリアというわけではなく、次の試合でも、明治との試合から何を得て今日どう改善したのかという過去から学んだことだけは忘れずにやっていきたいなと思います。
――順位表の上では優位もあります。勝ちから遠ざかってはいますが、次はどういう姿勢で試合に向かっていきますか
数字的な優位があるのはそうなんですけど、全部試合が終わってみてどの相手にも勝ち越せていなかったらひっくり返ってしまっていることなので。ただ、後期に向けたチームづくりとか、後期に向けたコンセプトみたいな部分を夏にできず今になってやっているというのはすごくもったいないと思うし、取り組み自体が甘かったということだと思うんですけど、そこをしっかり受け止めて、前を向いて改善していくしかないと思っています。1-6の試合でもネガティブには捉えていなかったですし、結果に対しては自分たちがどういう姿勢で試合に臨むかということを変えることしかできないので、次の試合も今回良かったことと悪かったことをしっかりチームに落とし込んでやっていきたいなと思います。
MF秋葉遼太(文4=東京・駒場)
――チームが苦しい状況にある中、公式戦初出場となりました
4年間を通じて初めてだし、主務としてという個人的なところはもちろんあったんですけど、まずはチームが1-6で負けた次の試合でどういうふうに立て直していくかというのを1週間やっていたので、そこにフォーカスをして自分のできることを全部やろうと思っていました。前半でつぶれるくらいの気持ちで走りました。
――半年間、チームをベンチから客観視できるような立場にいたと思いますが、今日はチームに何を加えようと思って臨みましたか
総理杯で負けて、関東でも初戦で負けて、やっぱり前期に波に乗れていた分、戦うところだったり疎かになっているところはありました。そういうところは、この夏はプレーはしたりしなかったりだったんですけどずっとトップチームに帯同してきて感じる部分だったので、ハードワークの部分は自分の強みでもあるし、意識してやろうかなと思っていました。
――ご自身のプレーをどう振り返りますか
入りは押し込まれて、なんとかもう一回盛り返そうというところで声は出したりしていました。相馬とサイドを変わって左サイドになった後は、DFの坂本からいいボールが入ってきたりしましたし、1対1は結構いけている感じはあったので、クロスまでいけていたところは良かったなと思います。
――今後に向けてどう取り組んでいきますか
今日初めて試合に出てみて、やっぱり関東で1個勝つこと、1点を取ることはすごく難しいんだなと思いました。自分が次節から出るかどうかはわからないですけど、(選手として)ベンチに入らなかったとしても主務としてはベンチに入るので、試合に出たからこそ気付いたことをピッチに出ても出なくても実践できるようにやっていきたいと思います。