プロ内定の冨田、相馬がJリーグの舞台で奮闘

ア式蹴球男子

 来季のプロ入りが内定しているDF冨田康平(スポ4=埼玉・市浦和)、MF相馬勇紀(スポ4=三菱養和SCユース)の二選手が、特別指定選手として選手登録され、一足早く内定先のクラブの一員として戦っている。冨田は京都サンガFC、相馬は名古屋グランパスの一員として、ともに8月11日に明治安田生命Jリーグ(Jリーグ)でデビュー。京都はJ2リーグで、名古屋はJ1リーグで下位につけ、苦しいシーズンを送っているチームだが、二人は即戦力としてチームの復調に一役買っている。

★前節デビューも不完全燃焼の冨田。次節出場へ意気込む

(明治安田生命J2リーグ第29節 レノファ山口FC-京都サンガF.C. 8月18日 山口・維新みらいふスタジアム)

試合後、チームの勝利に笑顔を見せる冨田(写真中央)

 8日に特別指定選手として承認され、直後の11日のFC岐阜戦でベンチ入りした冨田。2点ビハインドの53分に途中投入され、Jリーグ初出場を果たすと、チームはその後逆転して3-2で勝利した。
 岐阜戦は堅実な守備対応を見せ、チームの逆転劇を守備から支えたが、そのパフォーマンスについては「最低限やらなきゃいけないことををやっていただけだった。まだまだな部分があった」。試合展開の影響もあったが、約40分間の出場時間のうち、ほとんどで自陣でのプレーに終始。Jリーグの舞台で、冨田が持ち味としている攻撃参加はまだ披露できていない。「前の選手を追い越して、攻撃に厚みを持たせるというのは、今のチームにあまりない部分。そこで他の選手との差を生み出したい」とさらなるアピールに意欲を燃やしている。
 18日はベンチ入りするも、出場機会は訪れなかった。レギュラーを務めるDF本多勇喜とは異なるタイプの、攻撃的な左サイドバックとして期待されているという冨田。次節は登録後初のホームゲームとなる。今季初の3連勝を飾った好調のチームのスタメンに割って入るのは容易ではないが、「ホームでやりたいという思いもあるし、スタメンで出たいという思いももちろんある」。左サイドの職人が思い描くのは、京都で勝利に貢献し、その経験を大学で還元する姿。後期の早大では、プロの世界で揉まれ、たくましくなった姿を見せる。

★デビューから2戦連続アシストの相馬。今節も存在感

(明治安田生命J1リーグ第23節 名古屋グランパス-サガン鳥栖 8月19日 愛知・パロマ瑞穂スタジアム)

84分、ポストを叩くシュートを放った相馬

 初めてベンチ入りした11日の鹿島アントラーズ戦で途中出場し、デビューを果たした相馬は、3-2で迎えた後半アディショナルタイムにサイド突破からアシストを記録。続く15日の横浜F・マリノス戦でも69分から出場し、右クロスから元ブラジル代表FWジョーの決勝点をお膳立てした。
 19日、残留を争うサガン鳥栖との直接対決では、2-0でリードの75分から途中出場。これまでの2試合ではチャンスを演出する場面が目立ったが、この日の相馬には2度の決定機が訪れた。84分、カウンターからボックス手前にボールがこぼれ、利き足ではない左足を振ったが、右ポストを叩いてしまう。87分には右サイドでのパスワークから絶好機が生まれ、ボックス内でフリーになっていたところにラストパスが届く。しかし、右足で放ったシュートは、抑えが利かずにバーを越えていった。「悔しかった。得点を決められないのが自分の課題」。相馬個人としては、3試合連続で『数字』を残すことはかなわなかったが、長らく最下位に低迷していた名古屋は5連勝を達成し、ついに降格圏を脱出。「自分が活躍して勝ち点3を取るくらいの気持ちで」と意気込んだ通り、日本最高峰のリーグで好調のチームにおいて、存在感を示している。
 スピードをはじめとする自らの武器が、J1リーグの舞台でも通用することを証明している相馬。それでも「動き出しだったり止める蹴るの技術的な部分を、変化させて成長しようとしている」とその上昇志向は尽きない。確かな自信をつかみ、成長を遂げて戻ってくるであろう『韋駄天』が、総理大臣杯でも早大の攻撃をけん引してくれるはずだ。


(記事、写真 守屋郁宏)

結果

▽8月18日
明治安田生命J2リーグ第29節
レノファ山口FC1-2京都サンガF.C.

▽8月19日
明治安田生命J1リーグ第23節
名古屋グランパス3-0サガン鳥栖

※早大在学中の特別指定選手受け入れ先のチームのみ掲載

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コメント

DF冨田康平(スポ4=埼玉・市浦和)

――京都サンガの一員として過ごす日々は率直にいかがですか

今までだったり、大学で求められているサッカーのやり方とは全く違うので、新しい環境で挑戦できるというのは自分の中で経験になりますし、大学4年の夏というこの時期に良い経験ができていると感じています。

――特別指定選手として京都サンガに帯同するにあたって、目標など持っていましたか

1カ月間こっちに長期滞在するという意味は、試合に出て貢献するとか、自分が試合に出ることで得た体験を大学に還元しないといけないという風に思いますし、それができないなら1カ月もこっちに来る意味はないと思っています。チャンスがあるなら試合に出るつもりで、まだ途中出場しかできていないですけど、もちろんスタメンで出るつもりで準備をしています。

――11日に途中出場でデビューしました。比較的長い時間の出場でしたが、いかがでしたか

最初はあまり緊張していなかったんですけど、いざ出てみると今までとは違うなと思いました。0-2のビハインドという状態で出て、まずは点を取られちゃいけないという思いもありましたし、トップチームの皆さんとはずっと紅白戦の相手としてやっていたりしたので、あの瞬間が味方としてプレーするのは初めてでした。うまく合わない部分とかもあって、焦ってしまったりした部分はあったかなと思います。

――得意の攻撃参加も含め、パフォーマンスはあまり納得がいかないものだったとのことですが

そうですね。自分の持ち味もなかなか生かせず、最低限やらなきゃいけないことをやっていただけだったので、まだまだな部分がありました。そこ(攻撃面)を評価されてここに来ていると思っているので、他の選手との違いだったり、自分の強みをもう少し出さないと、ここに来ている意味が本当にないと思うので、それを最大限発揮できるように準備やプレーをしていきたいと思っています。

――ジュロヴスキー監督からはどんなことを求められていますか

自分の持ち味の縦への推進力、前への攻撃参加というものは求められていますし、ディフェンスにおいての対人能力も求められていることだと思います。前の選手を追い越して、攻撃に厚みを持たせるというのは、今のチームにあまりない部分だと思っているので、そこで違いを出して、他の選手との差を生み出したいと思っています。

――来週は選手登録後、初のホームゲームですね

ホームでやりたいという思いもありますし、スタメンで出たいという思いももちろんあります。そういった思いも踏まえて、この一週間で監督に「こいつをスタメンで使ってみたいな」と思わせるようないい準備をして、生き生きとした大学生らしいプレーができたら良いなと思います。

――京都サンガへの帯同期間も残っていますし、早大の選手としては総理大臣杯が待っています。今後に向けて一言お願いします

この1カ月の経験というのはなかなか味わえないことだと思っています。これをどれだけ自分の中に落とし込んで、それをさらに周りに還元して、チームの総和にできるかどうかが自分の今後に求められていることだと思います。周りに発信できるくらい吸収して、意味があったなと思えるようにプレーをしていきたいなと思います。

MF相馬勇紀(スポ4=三菱養和SCユース)

――名古屋グランパスに帯同するにあたって、どんな意気込みを持っていましたか

名古屋がJリーグで18位(※帯同開始時。8月19日終了時点では14位)で、自分が加入内定を決めているということで、自分が活躍して勝ち点3を取るくらいの気持ちで入りました。

――11日のデビューの時の感情としてはいかがでしたか

単純にこれだけのお客様にお金を払って見に来ていただいているので、その対価となるようなプレーをしなきゃいけないと思いました。でもあまり緊張はしなかったですね。楽しむし、自分の得意なこととか自分がいつもやっているプレーをやろうと思っていました。

――風間監督からは期待や要求するプレーについて、どのように伝えられていますか

自分は名古屋にはあまりいないタイプの選手というか、ドリブル突破だったり背後の動きだったり、特徴や武器をどんどん出してプレーしてほしいということを言われているので、それをやっています。

――デビューから2戦連続でアシストを決めました。結果についてはどう捉えていますか

アシストは自分が出ている意味というか、チームを勝たせようと思っていたので、そこは良かったと思います。

――今日の試合のご自身のパフォーマンスとしてはどうでしたか

シュート2本、1本はポストで、もう1本は決めなきゃいけないシーンがありました。得点を決められないのが自分の課題だと思っているので、そこはもう練習をしたいと思います。

――ボールを持った際に歓声があがる場面もあったように思います。期待も大きくなってきていると思いますが

そこは期待してもらってもいいと思っています。でも、大学では出てこないタイミングで足が出てきたりして、そこはつかめていないところがあるので、プレーしながらつかんでいきたいと思います。

――特別指定選手として登録が決まった際に『変化と成長』という言葉がありました。今はどういう部分に求めていますか

ここに来てからは受ける前に動き出しで外すということだったり、止めて蹴るの技術的な部分も意識しています。そういうところを変化させて成長しようとしています。逆に足の速さだったりステップワークだったり、自分の絶対的な武器は継続してさらに良くしていけたらいいと思っています。

――残りの帯同期間に向けて、改めて意気込みを聞かせてください

自分は特別指定選手ということで、半分は大学生ですけど、もう半分はプロ選手として戦わなければいけないので、『まだチャレンジャー』という感じではなくて、もうチームの一員としてチームの結果に貢献するんだという気持ちを持ってやっていきたいと思います。

――早大の選手としては総理大臣杯が来月の頭に控えています

大学の選手としては最後の年ですし、大臣杯は今まで1回しか出たことがないですし、もちろん頂点を取りに行きたいと思っています。3冠(総理大臣杯、関東大学リーグ戦、全日本大学選手権)をとれるように、一つ一つの試合で活躍していきたいと思いますし、『あの選手違うな』と思われるようなプレーをしていきたいです。