今季、早大のサイドバックを務めるDF冨田康平(スポ4=埼玉・市浦和)、DF牧野潤(スポ3=JFAアカデミー福島)。攻守のカギを握るポジションでプレーするお二人に、お話を伺った。
※この取材は6月22日に行われたものです。
今季の序盤にサイドバックのレギュラーポジションを獲得したお二人
――前期の総括をお願いします
牧野 1回駒沢に負けたあとに連敗しなかったというのが一番大きかったと思っています。東京国際の時に引き分けて落ちなかったということが、前期の好調の要因じゃないかなと思います。
冨田 昨年の12月の天皇杯予選で立正に0-2で負けた時に、内容も結果も完敗だったということもあって、古賀さんから外池さんに変わるという中で、4年生でミーティングを重ねていくうちに、今までだったら永続的に頂点に立つというつもりで、もちろんタイトルをとるというつもりなんですけど、あまりにも現実味を持てないような目標だったら、それにみんなが向かっていけないんじゃないかと話し合いをしているくらい危機的状況だと認識をしていました。開幕戦もまずはこれを取らなければ、自分たちは本当に落ち続けるんじゃないかというような危機感を持って取り組んでいました。その中での勝利は自分たちにとって本当に大きかったですし、そこで勝っていなかったら今の好調もないだろうし、一番最初のターニングポイントが開幕戦で、そこでしっかり勝てたことがチームにとって有益でした。さっき牧野も言ったように、駒沢に負けたあとに、逆境の中でも負けなかったということは本当にチームの力がついたなと思いましたし、そこを機にまた連勝しているので、本当に重要な試合だったなと思います。
――サイドバックとして攻守に関わる機会の多いポジションだと思います。好調の要因は何か感じますか
牧野 戦術的に引き込んでカウンターというのが今ははまっていると思います。サイドバック的には、守備の面でやられないことというのを考えて、隙があったら上がるというのを考えています。前の選手が点をとってくれているので、それがはまっていると思います。
冨田 自分も後半の方は全然出ていないですけど、外から見ていても今年のチームが掲げているものの中に『分析』があるだけあって、チームとしてどうするかというのを徹底していますし、相手のストロングをしっかり見極めて、その中で相手の強みを消しつつ自分たちのいい部分をどれだけ出せるかというところに重きをおいているので、それがうまく出ていて、粘って、焦れずに90分間やり続けた時に相手の隙を突いてカウンターをするという良い部分が出ているのかなって思います。サイドバックとしては、相手のストロングがサイドハーフにあったりすることが多いので、自分の持ち味は前に行くことですけれど、それよりも相手をまず封じてから自分がどうやって出ていくかということを意識しているので、まずは守備からという意識が今年は強いかなという感じです。
――牧野選手はチームの特徴として『ショートカウンター』を挙げられていましたが、武器になっている実感があるのですね
牧野 そうですね。カウンターからの得点というのが今シーズンの前期を振り返ると今年一番点を取れている形なので、ストロングポイントになっていると思っています。
――冨田選手は『のびのび』、『いきいき』というワードを出していただきました
冨田 「伸び伸び3年生」と外池さんが言っているだけあります(笑)。自分たちの代は1年生の頃から真面目だと言われていて、それしかないと言われるような学年で、特徴がないとか言われていました。新しい体制になった時に自分たちの良さがいい意味で最上級生というところもあって出てるのかなとも感じています。真面目にやるってのが自分たちの学年の色で、伸び伸びやっているという証拠だと思うし、1個下とかは楽しくサッカーをやって、その中で自分たちの良さを出すというのが色だと思います。学年としての色がすごく出ていて、良い雰囲気を出しながら、違う個性を出しながら、1つの方向に迎えているという感覚があるので、良いことだと思っています。
牧野 僕らの2個上も結構強烈な代で、その学年を見ていると僕らはそこまでは行ってないんじゃないかなと思いますけど…(笑)
冨田 違う意味の伸び伸び感だよね。
牧野 1個上は静かというか、真面目な感じで……
冨田 面白くない?(笑)
牧野 まあ悪く言えば面白くない…(笑)。いい意味で言えばチームのことを考えてくれているという感じなので、逆に僕らの代が好きなようにやっても、4年生の代が支えてくださっているので(笑)。自分たちは好きなことをやれていると思います。
――個人の話も聞いていきたいと思います。冨田選手にとってはこれまでと違った立場でシーズンに入ったのではないかと思います
冨田 昨年、年間の目標として後期からスタメンとして出るという目標を掲げていた中でああいうふうにしっかり出れて、後期の11試合全てでフル出場できたということは本当に大きかったなと思います。今年ももちろん全試合出るつもりで入ってきていて、ケガとか今年はうまくいかないようなことがあって、結局6試合しか出れてないんですけど、欲を言えばもっと「お前が必要なんだ」と言われるような存在になりたいですし、4年生ということもあってならないといけないと思います。自分や、自分以外にもケガ人が出ている中でもしっかり勝っていることはいいことですけど、自分の中では『自分が出て試合に勝つ』というのが理想だと思うので、今は試合に出れていない状況なので、ここからコンディションを上げて、自分が自分がというつもりも持ちつつ、チームが勝っていければという思いですね。
――シーズン頭からレギュラーとして出場はしていました。パフォーマンス的にはどうでしたか
冨田 相手の強みがこっち(側のサイド)にあることも多かったりして、前に前にというよりはまずは守備から入って、その中で自分の持ち味をどうやって出すのかということを求められていたと思います。開幕戦とかはうまくできていたと思いますし、筑波(筑波大戦)では自分のせいで失点したりもあったんですけど、全体を通しては悪くなかった。めちゃくちゃいいという内容ではなかったかもしれないですけど、自分の中で安定したプレーができていたかなとは思っています。そこにプラスで、もっと目立っていたと思わせるようなプレーができたら良いと思います。
――牧野選手はちょっと立場的には違って、今季からコンスタントに試合出場しているという状況ですが
牧野 そうですね。(去年は)一応Aに関わっていることは多くて、ベンチとかには関わらせてもらった中で1試合も出れなくて、悔しい思いもありました。今年は自分の通用する部分と通用しない部分がはっきりわかってきているので、自分の課題をなくして、アミノや後期につなげられたら良いと思っています。
――特に冨田さんにお聞きしますが、2部のチームと1部のチームの違いは感じますか
冨田 2部は今の自分達のようなサッカーをしてくるチームが多かったと思います。相手のストロングをどれだけ潰して、自分たちが一発を狙うかと、どんな内容でもいいから勝ちに行くという戦い方をしてくるというのが特徴だと思います。それはそれで戦いづらかったし、ボールを支配していてもゴールに進めないということが多かったです。1部は個人の能力がすごく高くて、個人のところで相手に打ち勝たないと試合には勝てないし、マッチアップしている相手にどれだけ勝るかというところがすごく試されていると思います。
――先ほど「相手のストロング的な選手と対面することが多い」とおっしゃっていましたが、印象に残る選手はいますか
冨田 自分たちがやった時にそういう人がいなかったんですよね。
牧野 そうですね。相手の主力選手がケガとかが多くて。筑波の三笘選手、順天の名古選手、法政の上田選手……国士も教育実習でごっそりいなかったりして。本当に運が良かったなという感じですね。
冨田 一番警戒しないといけない選手がいざ試合となるといなかったりして。運も味方して今回の結果が出ていると思いますね。
――印象に残っている試合はありますか
冨田 やってて、このチームはやれるかもしれないと感じたのは筑波戦ですね。自分のミスで先制点を取られて、(去年は)そういう状況になかなかなることがなかったんですけど、前半のうちに追いついて、後半に2点とって放すという試合をした時は、力があるなと。苦しい状況になったときにも自力で点が取れるというのを後ろから見ていて、頼もしいなと。全力で自分たちが守ったら前の奴らがきっと取ってくれるという信頼が生まれた試合だったと思います。
牧野 法政、順天と水曜土曜に2連勝したのが一番印象に残っています。法政は去年インカレも優勝していて、力のあるところに5点を取って勝ったということも大きかったですし、順天との試合も1-1に追いつかれた中で最後決めて勝ったというところで、印象に残っています。
――前期のMVPを挙げていただけますか
牧野 僕は本当に相馬くんだと思いますね。とりあえず相馬くんに出しておけばなんとかなるというのが僕もあるんですけど、みんなも思ってるんじゃないかなと思います。なにかしてくれるだろうというワクワク感とか、そういうのもあるので。
冨田 困ったら出しとけばいいというのはあります(笑)
牧野 あー自分やばいなと思っても、とりあえずアバウトなボールでも出しておけばなんとかなるというのがあるので(笑)。頼りにしています。
――冨田選手はどうですか
冨田 僕は結構小島が存在感があると思います。前の選手は何回もチャレンジして、相馬とか武田とか岡田とかもそうですけど、しっかり点をとってくれるのは本当にすごいし、活躍してるし、頼りにしています。でも、それ以上に点を取られちゃいけないという中での小島のパフォーマンスというのは見てて安心感があるし、試合に出ていても、外から見ていても、そうそう点が入りそうにないような雰囲気があります。そういうのって雰囲気がすごく大事だなと思っているので、苦しい試合の中でも何度もスーパーセーブしてくれていますし、後ろからしっかり支えてくれているという感じはあります。
牧野 コジくんの存在は大きいと思いますね。「これやられたな」と思ったやつも止めてくれたりしているので。代表だな、世界で戦っているなと(笑)。
「1対1だけはこだわりある」(牧野)
両サイドバックをこなすなど、欠かせない存在になった牧野
――お互いのプレーの印象を教えてください
牧野 とりあえず速いです。相馬くんとトミくんの左サイドで、僕が出ているときとかは、「速いなあ。行っちゃったなあ」という感じです(笑)
冨田 牧野はしたたかですよね。抜け目なくて、弱点のない選手だと思います。落ち着いているし、自分とは全く別のサイドバックで、プレーの仕方とかも、相手をしっかり見て逆を突いてパスを出すとか、いいタイミングで上がっていくとか、自分が持っていないものを持っていて、参考にする選手です。そういうのが通用しているからこそだと思います。
――冨田選手はご自身でも『スピードを生かした縦突破』を得意なプレーに挙げていただきました
冨田 そうですね。それがないと何もなくなっちゃうので(笑)。
――牧野選手は『1対1』を挙げていただきました
牧野 そこでやられたらサイドバックで出れないというのはありますから(笑)。そこだけはこだわりみたいなものはあります。
冨田 牧野さんは本当に対人が強いです(笑)。
――冨田選手はこだわりみたいなものはありますか
冨田 ハードワークして厚みをかけて、攻撃参加の回数は少ないかもしれないですけど、自分が上がることで前の選手の選択肢は増えますから、自分が行けると思ったら状況的にきつくてもしっかり攻め込むというのは意識しています。
――学年の上下関係が今年はあまりないとお聞きしましたが、実際はどうですか
冨田 まあ怖くないからじゃないですかね(笑)。要はなめてるってことだと思うんです(笑)。
牧野 なめてるって言い方は良くないと思うんですけど……気にしてないというか。
冨田 あんまり否定はしないよね(笑)
牧野 なめてはないですよ。4年生がいてこそのチームだと思っているので。
冨田 (笑)
牧野 でも1年生とか2年生も上に意見とか言えるような感じですよ。
冨田 今年の4年生は上から押し付けるというスタンスはないので。学年としてもチームの風通しを良くしようと意識していますから、いい意味で言い合える関係性を築こうと意識はしてます。
牧野 1年生とか2年生も上に意見とか言えるような感じです。
――アンケートでは座右の銘をお答えいただきました
冨田 ずっと同じことを書いてます。『成功者は必ず努力している』ですね。ストレートな言葉のほうが自分の中に入りやすくて。『はじめの一歩』というボクシング漫画で出てきた時に初めて知って、努力が報われるかどうかは結果が出てみないとわからないけど、成功している人が努力をしていることは間違いないと思います。自分はサッカーの才能があると感じたことはないし、成功するためには努力が必要なんだと捉えて、努力したら成功する権利をもらえると思えれば頑張れると思って大事にしています。
牧野 『志高頭低』ですね。明治戦のミーティングの時に外池さんが「ワセダのためにある言葉だ」って言ってて、納得したというか。
「思い入れのある大事な試合」(冨田)
ケガから復帰し、2年連続の早慶戦出場を狙う冨田
――早慶戦への思いを聞かせてください
冨田 去年はなかなかスタメンを変えずに同じようなメンバーが使われていた中で、前日までは正直スタメンじゃないと思っていました。もちろんスタメンを狙ってやっていましたけど、「結局違うのかな」というモチベーションでいました。前日にメールでスタメンと知って、びっくりしましたし、緊張もしました。あのすごい雰囲気の中で初めてスタメンで出ることができて、自分がワセダで本気の試合でプレーする最初の試合だったと思うので、思い入れのある大事な試合だと思っています。
牧野 去年はバックアップというかたちで、ベンチには入れないけどロッカールームとかにはいさせてもらうという立ち位置でした。率直にすごいな、ここで出れたら幸せだなという思いがあり、その反面、責任とか背負って戦わないといけないなと思いました。重みのある試合だなと思っています。
――注目選手も挙げていただきましたが
牧野 僕はクリですね。あのプレーはすべての観客を魅了できると思います。そこに注目してほしいなと思っています。
――冨田選手は全員、強いて言うなら自分と小さく書いていただきました
冨田 出るんだったらやっぱり見てほしいですね。出るからには。
牧野 それはそうですけどね。他の人でいないんですか。
冨田 でもやっぱり自分じゃないかな。早慶戦くらい自分を見てほしいなと思うので(笑)
――どんなプレーで7連覇に貢献したいですか
冨田 負けられない試合なので堅くなるとは思うんですけど、その中でもどれだけ自分がリスクを犯して前に出ることは大事だと思うので、チームに勢いをもたらせるようなプレーをできたら良いと思います。
牧野 自分は特徴という特徴があまりない中で、チーム全体を見ながらバランス良く自分の持っているものを出して、勝ちたいなと思っています。
――最後に意気込みを一言、お願いします
冨田 走り抜いてチームを勝たせられたら良いと思います!
牧野 もう自分が言うことないじゃないですか(笑)。自分の持っているものをすべて出して、全力を尽くして勝ちたいと思います!
――ありがとうございました!
(取材・編集 守屋郁宏)
◆牧野潤(まきの・じゅん)(※写真左)
1997年(平9)8月25日生まれ。166センチ。63キロ。福島・富岡高出身。前所属・JFAアカデミー福島。スポーツ科学部3年。DF。バックアップメンバーの経験については悔しそうに話していました。今年はピッチの上でその悔しさを晴らします!
◆冨田康平(とみた・こうへい)(※写真右)
1996年(平8)6月9日生まれ。176センチ。68キロ。埼玉・市浦和高出身。スポーツ科学部4年。DF。昨年の早慶戦でスタメン起用を勝ち取り、そのまま定着。先日、夢だったプロ入りをつかみ取りました。「原点的場所」で成長した姿を披露します!