勝てば逆転優勝、負ければ昇格消滅の可能性も…。最終節展望

ア式蹴球男子

 「失ったものを、自分たちの手で取り戻す」(古賀聡監督、平4教卒=東京・早実)。1年での1部リーグ復帰を目標に戦い続けてきた関東大学リーグ戦(リーグ戦)も、いよいよあすが最終節。早大は1部昇格、そして逆転優勝が懸かる天王山・国士舘大戦に挑む。

 ついにここまでたどり着いた。早大は最終節、勝つか引き分けで自力での1部昇格が決定。さらに勝利した場合は、最大8あった勝ち点差をひっくり返しての逆転優勝となる。目標達成まであと一歩。しかし、ここでまたしても、因縁のライバルが立ちはだかる。リーグ戦で激しい優勝争いを繰り広げてきた国士舘大は、今季すでに2度対戦し、いずれも苦杯を喫した相手だ。初対戦は、今からおよそ8カ月前、3月26日に行われた天皇杯予選でのことだった。試合は早大が先制したものの、その後3点を奪われ逆転負け。この結果、早大は天皇杯本戦への道を絶たれている。それから約3カ月後の6月24日。首位で迎えたリーグ戦前季最終節は、2位・国士舘大との首位攻防戦となった。「二度も同じ相手に負けるわけにはいかない」(MF鈴木裕也副将、スポ4=埼玉・武南)。意気込み十分に臨んだエンジイレブンだったが、結果は1-2で再び敗戦。後半こそ攻め込む時間が続いたものの、「正直、まだ力の差はあると感じた」(DF安田壱成、スポ4=ベガルタ仙台ユース)。大粒の涙を流し、悔しさをあらわにする選手の姿もあった。あれから約5カ月が経ち、3度目の対戦となるあすの試合は、雪辱を晴らす最後のチャンスだ。それと同時に、4年生にとってはア式蹴球部の一員として挑む最後の試合でもある。「正直、出来過ぎな展開だと思います」。大一番を前に、キャプテンのDF鈴木準弥(スポ4=清水エスパルスユース)は表情を緩める。そして口元を引き締め直し、こう続けた。「この試合で負けたら、これまでの勝利の意味がなくなってしまう。何より、後輩たちをもう一年、2部という舞台で戦わせるわけにはいかない」。

主将としてチームをけん引してきた鈴木準。有終の美を飾れるか

 過去に対峙(たいじ)した時と、国士舘大のスタイルは大きく変わってはいない。猛烈なハイプレスで相手からボールを奪うと、両サイドバックも一気に攻め上がり、畳み掛ける。MF荒木翔(ヴァンフォーレ甲府入団内定)やFW山口和樹(湘南ベルマーレ入団内定)ら個人技に優れた選手を多数そろえる国士舘大。その波状攻撃を防ぎ切るのは、決して容易なことではない。この難敵を相手に、早大が勝利を収めるためのポイントは、大きく分けて二つある。一つ目は、セカンドボールを拾えるかどうかということ。攻め込んで弾き返されたボールを、いかに相手に渡すことなく回収できるか。国士舘大の高速カウンターの餌食にならないためにも、球際で競り負ける回数を最小限にとどめる必要がある。二つ目はFWがしっかりとタメをつくり、攻めの起点になれるかどうかということ。先にも述べたように、国士舘大は両サイドバックが躊躇(ちゅうちょ)なく攻撃に参加し、サイドで数的有利をつくり出そうとする。この動きにサイドハーフのMF相馬勇紀(スポ3=三菱養和SCユース)と鈴木裕が押し込まれ、いいかたちで攻撃に関われないようでは、早大の勝利は遠のいてしまう一方である。そこで重要になるのが、ボールを奪い守備から攻撃へと切り替える際の、FWの働きだ。石川大貴(スポ4=名古屋グランパスU-18)を筆頭に、飯泉涼矢(スポ4=三菱養和SCユース)、武颯(スポ4=横浜F・マリノスユース)、岡田優希(スポ3=川崎フロンターレU-18)、武田太一(スポ2=ガンバ大阪ユース)と個性のあるFWが顔をそろえるが、誰がピッチに立ったとしても、課せられる最大の任務は決まっている。対人プレーにめっぽう強いCB住吉ジェラニレーション(2年)ら、国士舘大の守備陣から強烈なプレッシャーを受けながらも、味方からのパスをしっかりと懐に収め、攻め上がるための時間を稼ぐことである。FWがポストワーカーとしての役目を全うできれば、あとは相馬と鈴木裕の突破力を生かしたカウンターアタック、もしくは連動したパスワークでゴールを陥れ、国士舘大の息の根を止めるだけだ。

キープ力があり、ボールさばきにも長ける石川。攻守に献身的なプレーを見せる

 繰り返しになるが、早大は勝てば逆転優勝の栄冠を掲げることができる。だが、もし早大が破れ、中大が勝利した場合、早大は中大と入れ替わって3位に転落するため、優勝はおろか昇格すらも逃し、来季も2部リーグで戦うことが決定する。言うまでもなく、早大にとってはこれが最悪の結末だ。再び主将の言葉を借りれば「とにかく勝つしかない。本当に勝てればそれでいいんです」。『内容』が勝負事において、軽視できないことであることは間違いない。だが、この試合においてそれは二の次三の次であり、勝利することでしか、国士舘大へのリベンジを果たすことはできない。引き分けでどこか消化不良なまま昇格することなど、誰も望んでいないはずだ。選手とスタッフは、勝利だけを見据え、全てを出し尽くしてくれることだろう。試合開始まで24時間を切った。キックオフの時間が刻一刻と迫ってくる。ライバルとの決着も、来季の戦いの舞台も。全ての行方は、あすの90分間で、決まる。

 

(記事=栗村智弘 写真=守屋郁宏/大山遼佳)

関東大学リーグ戦2部リーグ・上位3チーム順位表
順位 校名 勝点 試合数 得点 失点 得失差
国士舘大 47 21 14 41 20 +21
早大 44 21 13 59 25 +34
中大 42 21 13 44 32 +12
※上位2チームが自動昇格
※すでに国士舘大の昇格が決定
※中大は最終節10位の東海大と対戦
※最終節、早大の順位変動パターンは以下の通り
早大○→優勝&1部昇格
早大△→2位=1部昇格
早大● 中大○→3位=1部昇格なし
早大● 中大△または●→2位=1部昇格