厳しい日差しが照りつける中、関東大学リーグ戦(リーグ戦)の第10節が行われ、神奈川大と対戦した。前節、首位に返り咲いた早大は、30分に失点を喫したが、直後にFW武颯(スポ4=横浜F・マリノスユース)が2戦連続となるゴールを決めて追いすがる。その後、DF大桃海斗(スポ2=新潟・帝京長岡)が負傷交代する事態に見舞われたが、試合はタイスコアのまま終盤に突入。決め手を欠いていると、88分に勝ち越しを許すが、アディショナルタイムにFW飯泉涼矢(スポ4=三菱養和SCユース)が得点し、辛くも勝ち点1を積み上げた。
ロングボールが飛び交う中、ともに立ち上がりは主導権を握れず。中盤を省略し、前線で起点を作ろうとする神奈川大は、DF鈴木準弥主将(スポ4=清水エスパルスユース)ら早大守備陣の対応に苦戦する。一方、ハイラインを敷く相手守備の背後を突きたい早大は、相手のラインコントロールからオフサイドを頻発。さらに、神奈川大のハイプレスにも苦しみ、思うようにボールを回せない時間が続くと、30分に試合を動かしたのは神奈川大だった。中盤でのFKから、ゴール前にボールを供給。中央からニアサイドへの選手の動きに早大DFがつられると、ゴール前のスペースがぽっかりと空き、走り込んだMF定本佳樹(3年)が決めた。すると、直後のプレーで早大も反撃。MF柳沢拓弥(社4=清水エスパルスユース)が右サイド深くに抜け出すと、折り返しをニアサイドに走り込んだ武が押し込み、すぐさま同点とした。しかし、36分に相手選手との接触で、堅実な守備を見せていた大桃が負傷。MF高岡大翼(社3=広島皆実)がスクランブルでCBのポジションに送り出された。さらに、41分、44分には決定機を逸した早大は、後味悪く前半を終えた。
急遽の出場も、落ち着いたプレーを見せた高岡
後半に入ると、神奈川大がやや優勢に試合を進めた。流れが変わったのは74分。武に代えて飯泉を投入すると、直後のFKで決定機が訪れる。その飯泉をおとりとし、ファーサイドで待っていたDF井上純平(商3=東京・早実)が右足を伸ばしたが、これは相手GKに阻まれた。さらに、76分にはDF木下諒(社4=JFAアカデミー福島)のクロスから、84分にはサイドチェンジを起点とした右サイドの突破から、それぞれ飯泉に決定的なシーンが訪れるが決め切れず。両チームが勝ち点3を目指す中、ややオープンな展開になると、88分だった。神奈川大に右サイドから攻め込まれ、クロスを上げられると、ニアサイドに走り込む定本と、そのマークに入った高岡の競り合いで軌道が変化。ゴールに向かうボールをGK小島亨介(スポ3=名古屋グランパスU-18)が処理できず、痛恨の失点を喫してしまう。しかし、「誰一人として諦めている人はいなかった」(飯泉)。後半のアディショナルタイムが4分と掲示された直後、MF秋山陽介(スポ4=千葉・流通経大柏)のスルーパスにMF相馬勇紀(スポ3=三菱養和SCユース)が抜け出すと、GKとの1対1はストップされるが、こぼれ球を自ら左サイドで拾い直してクロス。ゴール前で飯泉が頭で合わせて追い付いた。早大はその後も攻め立てたが、勝ち越しはかなわず。勝ち点1を分け合う結果となった。
飯泉の同点ゴールがチームを救った
「得点のかたちはあまり良くなかった」(木下)かもしれない。それでも、粘り強さで勝ち点を獲得した。来週には国士舘大との直接対決、その翌週からはアミノバイタルカップが控えており、負けが許されない試合が続く。そんな中、この試合で披露したような、劣勢に立たされても気落ちすることなく、積極的に仕掛けようとする姿勢は、必ず生きてくるはずだ。次節で相まみえる国士舘大には、3月の天皇杯予選では『らしさ』を発揮できないまま敗れた苦い記憶(●1-3)がある。そして何より、ひとつの『1st』への道を絶たれた相手でもある。リベンジを果たすために。そして、折り返し地点で首位に立っているために。「ことしの中でも本当に重要」(鈴木準)と目する試合は、前期リーグ戦の集大成にふさわしい、真価が問われる一戦となる。
スターティングイレブン
(記事=守屋郁宏 写真=篠原希沙/石黒歌奈恵)
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関東大学リーグ戦 | ||||
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早大 | 2 | 1-1 1-1 |
2 | 神奈川大 |
【早大得点者】31武,90+1飯泉 |
早大メンバー | ||||
---|---|---|---|---|
ポジション | 背番号 | 名前 | 学部学年 | 前所属 |
GK | 1 | 小島亨介 | スポ3 | 名古屋グランパスU−18 |
RB | 24 | 井上純平 | 商3 | 東京・早実 |
CB | 4 | ◎鈴木準弥 | スポ4 | 清水エスパルスユース |
CB | 18 | 大桃海斗 | スポ2 | 新潟・帝京長岡 |
MF | →39分 | 高岡大翼 | 社3 | 広島皆実 |
LB | 12 | 木下諒 | 社4 | JFAアカデミー福島 |
CMF | 8 | 今来俊介 | 商4 | 神奈川・桐光学園 |
CMF | 10 | 秋山陽介 | スポ4 | 千葉・流通経大柏 |
RMF | 11 | 柳沢拓弥 | 社4 | 清水エスパルスユース |
LMF | 7 | 相馬勇紀 | スポ3 | 三菱養和SCユース |
CF | 14 | 石川大貴 | スポ4 | 名古屋グランパスU-18 |
CF | 19 | 武颯 | スポ4 | 横浜F・マリノスユース |
FW | →74分 | 飯泉涼矢 | スポ4 | 三菱養和SCユース |
◎=キャプテン 監督:古賀聡(平4教卒=東京・早実) |
関東大学リーグ戦2部リーグ順位表 | |||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
順位 | 校名 | 勝点 | 試合数 | 勝 | 分 | 負 | 得点 | 失点 | 得失差 |
1 | 早大 | 23 | 10 | 7 | 2 | 1 | 29 | 12 | +17 |
2 | 国士舘大 | 20 | 9 | 6 | 2 | 1 | 17 | 11 | +6 |
3 | 拓大 | 17 | 10 | 5 | 2 | 3 | 17 | 9 | +8 |
4 | 中大 | 15 | 9 | 4 | 3 | 2 | 19 | 16 | +3 |
5 | 東農大 | 14 | 10 | 4 | 2 | 4 | 17 | 13 | +4 |
6 | 東京学芸大 | 13 | 10 | 3 | 4 | 3 | 16 | 17 | −1 |
7 | 神奈川大 | 12 | 10 | 2 | 6 | 2 | 18 | 16 | +2 |
8 | 東海大 | 12 | 10 | 3 | 3 | 4 | 13 | 14 | -1 |
9 | 青学大 | 11 | 9 | 3 | 2 | 4 | 11 | 17 | -6 |
9 | 日大 | 9 | 10 | 2 | 3 | 4 | 9 | 15 | -6 |
11 | 立正大 | 8 | 10 | 2 | 2 | 6 | 12 | 24 | -12 |
12 | 朝鮮大 | 4 | 9 | 1 | 1 | 7 | 6 | 20 | -14 |
※第10節終了時点 ※上位2チームが自動昇格 ※順位は暫定 |
コメント
DF鈴木準弥主将(スポ4=清水エスパルスユース)
――きょうの試合はいかがでしたか
相手は前からきて、自分たちの背後にシンプルにボールを落としてくる中で、自分たちもなかなかボールを収めることができなくて、もう少し全員が判断をしなければいけなかったと思いますし、相手がやりたいことを出されてしまった試合でした。
――相手は早大の良さを消しにくるサッカーをしていたと思います
相手は自分たちをしっかりスカウティングしていたと思いますし、自分に対しても24番の選手がぴったりマークについてきて、今までの試合で一番ボールを触れなかったですね。何もできなくて、個人としては一番ストレスがたまった試合ですし、相手は常にDFラインに3枚くらいプレッシャーをかけてきたので。そのプレスを一個でも外せれば、スルーパスとかも通せてチャンスになりましたけど、それがあまり出せなくて、自分や中盤の秋山(MF陽介、スポ4=千葉・流通経大柏)に厳しくきていたので、そこでつぶされてしまいましたね。
――ハーフタイムに話し合ったことはありますか
前半の中で自分たちがやられていたところ、セットプレーだとか、セカンドボールを拾えないだとか、球際のところもそうですけど、そういった自分たちが大事にしてきたことは出せていたのかということは、自分からみんなに言いました。それがあったうえで、戦術的な話ができると思うので。さっきも言ったように一つ外せればチャンスはつくれるし、相手の背後も狙っていこうという話も出ました。
――途中からコンビを組むCBが高岡大翼(社3=広島皆実)になりました。連携面などはいかがでしたか
CBとボランチをしっかりこなせる選手なので、全然そこに対しての心配はなかったですね。あいつも気が使える選手なので、しっかり自分の動きに合わせてくれたと思います。
――得点をしたタイミングが2点とも失点直後でした。リードされてスイッチが入ったということでしょうか
それもあると思いますけど、ここで沈んだらゲームが終わってしまうというのを一人ひとりが感じていたとも思うので、よりアグレシッブにいけたのかなと思います。点を取られてからのアグレシッブさは良かったと思いますし、それを試合開始から自分たちが能動的に出していければ良かったなとも思います。
――勝ち点1を拾えたという気持ちか、それとも勝ち点3を奪えたという気持ちか、どちらの方が大きいでしょうか
チャンスは試合を通じて多くありましたし、そこをしっかり決めていれば勝てたという気持ちもあります。失点もセットプレーからで、そこも突き詰めていく必要があります。これからアミノバイタルも含めて相手が強くなっていく中で、自分たちの苦しい時間帯が増えると思いますけど、きょうも体張って防ぐとか、最後を決め切るというのをやらなければいけなかったと思います。ただ、昨年のことを考えれば、勝ち点1でさえなかなか取ることができなかったですし、この勝ち点1も後々響いてくるかもしれないので。とにかく国士を次の直接対決でしっかりと叩いて首位で折り返したいです。
――その国士舘との首位攻防戦に向けてどういった準備をしていきたいですか
やることは変わらないですし、とにかく自分たちの強みを出すということですね。3月の天皇杯予選は、相手にやりたいことをやられて自分たちの強みを全然出せなくて、次はことしの中でも本当に重要な試合になると思うので、アグレシッブに失敗を恐れずに、一人ひとりが挑戦していける試合にしたいです。
DF木下諒(社4=JFAアカデミー福島)
――試合を振り返って
相手に先行されるかたちで追い付いての2-2だったんですけど、追い付いたところは良かったと思います。自分たちの最後まで諦めない意志っていうのは出せたと思うんですけど、得点のかたちはあまり良くなくて、セットプレーの失点は防がないといけないです。自分たちが得点できるシーンも多々あったのでそういうところは決め切らないと、前節の試合もそうだったんですけど、厳しい試合になるのがきょうの試合の印象です。
――得点にはどうつなげれば
個々の部分と言ってしまえばそこでおしまいかもしれないんですけど、最後のフィニッシュするときにその選手にどれだけ余裕を持って時間をつくらせるかっていうのは周りの選手の動きでもあると思います。その選手のシュートの意識だけじゃなくて周りの選手がどうおとりになってシュートを決めさせるか、いいボールを配給して楽に勝負させるかっていうのはもう少し考えて、ただ単にシュートを外してるのが個々の責任というように押し付けるんじゃなくて、チーム全体として得点力の部分に向き合っていく必要があると思います。
――余裕を持つことはいい守備にもつながると思いますが
2失点目のクロスの失点も防げたと思いますし、一人ひとりが個人で対峙する相手に負けないっていうところや、事前の準備で、ボールに対する予測で危ないところを消していくことで失点も防げると思います。これから国士舘やアミノが始まってもっと厳しい試合をしていく中でそういうところを疎かにしていればもっと簡単に失点してしまうと思うので、まだまだ甘さがありますし、日々の練習の中で甘さをなくしていくだけだと思います。
――次節の国士舘大戦に向けて
天王山だと思いますし、自分たちは天皇杯で国士舘にボロボロに負けているのでリベンジもあります。国士舘のグランドでできるということで、気合い入れて戦いたいと思います。
FW武颯(スポ4=横浜F・マリノスユース)
――きょうの試合を振り返って
先制されたときは慌てずに、とりあえず自分が点を取りにいこうと思っていたので、早い段階で同点に追い付いたのは良かったと思うんですけど、ループシュートのシーンであったりとか、前半にまだまだチャンスはあったので、そこで決めていれば、いいかたちで前半折り返すことができていたと思います。そこで自分が決め切れなかったりとか、きょうはくさびのパスをしっかり味方につなげるというところもあまりできていなかったので、自分としては結構ダメな試合だったのかなとは思います。
――攻撃のプランとしてはどうだったんでしょうか
いや、プラン的にはそんなに。石川(FW大貴、スポ4=名古屋グランパスU-18)とコンビネーションでゴールに迫るというのは考えていたので。相手の神大も結構ラインが高いので、裏を狙っていけば結構簡単にキーパーと1対1になれるというのはあったんですけど…。プラン的には悪くはなかったかなとは思います。
――得点シーンについては
チームとしてまず最速のニアというところで狙いを持ってやっているので、そこに柳沢がいいボールをくれたので、良かったと思います。
――そのフィニッシュの場面ですが、難しいボールを決め切ったように見えました
相手がクリアしようとしてきた足に当たって、自分の胸に当たって、それを押し込んだという感じですね。
――チームとしての状態はいかがでしょうか
別にチーム状況的にはそんなに悪い状況じゃないので、きょうだったらゴール前のセットプレーであったりとか、あとは前後半ともにゴールを決められる場面はあったと思うので、そのゴール前の攻防というか、質というか、そういうものをもっともっと上げていかないと、国士舘大という相手を倒すことはできないかなとは思います。
――今後に向けて
FWとして、自分の中でゴールを決めるのは当たり前だと思っているので、いかに当たり前を当たり前にできるかっていうのを求めつつ、その自分のゴールでチームも勝てれば、それが一番いいと思います。個人の目標は得点王ですけど、チームの目標として日本一であったり、1年での1部昇格、2部優勝っていうのを掲げているので、チームが勝つために今後もやっていきたいと思います。
FW飯泉涼矢(スポ4=三菱養和SCユース)
――いまの率直な感想をお願いします
自分のところで何度もチャンスをつくることができたのは良かったかなと思うんですけど、チャンスを何度も決め切ることができなかったので、引き分けという結果になってしまったかなと思います。少ないチャンスを全部決め切れるくらいのFWにならないといけないなと思います。
――前半のチームの動きは、ベンチから見ていてどうでしたか
きょうは空中戦が多いなと感じてました。そこの部分での強さをもっとつけていかないといけないなと思います。
――後半途中から出場する際にどのような指示を受けましたか
自分の強みを出していけと言われました。
――強みというのはやはり高さの部分でしょうか
クロスの部分に体を投げ出して入っていったり、ルーズボールを自分たちのものにするというところが強みだと思っています。
――失点の場面ではチームはどのような雰囲気だったでしょうか
失点してしまったとき、誰一人として諦めている人はいなかったですし、自分自身ではあそこで自分が決められなかったから失点してしまったと思っていたので、もう一回チャンスをつくって、自分が絶対に決めようと思いました。
――得点シーンを振り返っていただきたいのですが
相手は自分のヘディングだったりクロスへの能力をわかっていたと思うんですけど、その中でクロスがニアに抜けていくシーンを何度か起こしていて。得点のシーンではニアに抜けたところに相手が入ってきていたのでまたファーにいって、そこにうまくボールがきたのでもう決めるだけという感じでした。
――次節に向けて意気込みをお願いします
直接対決で勝てるか勝てないかでチームの順位は変わってくると思うので、きょう引き分けてしまったということをエネルギーにして、絶対に勝ちたいと思います。
MF高岡大翼(社3=広島皆実)
――大桃海斗選手(スポ2=新潟・帝京長岡のけがによりCBでの途中出場となりましたがプレーしていかがでしたか
途中で入ったのもあるのですが、やっぱり最後のところで踏ん張り切れなかったのが全てなのかなと思います。
きょうの試合全体を振り返っていかがですか
ちょっと流れが悪い時間帯が続いた中で、自分たちの強みっていうところを出し切れなくて。流れが悪いところでも、チームで優勝していくためには勝たなきゃいけない。やっぱり流れが悪い中で踏ん張り切れなかったところと決め切れなかったところがきょうの試合の全てだったように思います。
――引き分けに終わった結果については
率直に言ってすごく悔しいです。自分は途中出場でしたがチームが勝つためにやっていますし、そこを目標としてやっていたので自分が出場して勝たせられなかったというのが一番悔しいです。
――神奈川大の印象はどうですか
自分が在籍してから神奈川大にあまり勝てていないイメージがありました。
――次週は前期最終戦で、国士舘大と直接対決になります。そこに向けて意気込みをお願いします
本当に一部昇格とか二部優勝というのを掲げた中で、絶対に勝たなければいけない相手なので。本当にそういった気持ちを持って全員で絶対に勝ちたいと思います。