【ワセダ×いわきFC】平成29年卒業生特別インタビュー②|平澤俊輔

ア式蹴球男子

 ピッチを縦横無尽に駆け回り、ピンチの芽を着実に摘み取る。堅守をベースとするア式にとって、MF平澤俊輔(スポ4=JFAアカデミー福島)が必要不可欠な存在であったことは言うまでもない。チーム一のハードワーカーが次なる挑戦の地として選んだのは、福島県社会人サッカー1部リーグに所属するいわきFC。今回は本拠地のあるいわき市まで伺い、新たな挑戦に向けての意気込みを聞いた。

※この取材は3月1日に行われたものです

 

 

――ア式蹴球部を引退してから4ヶ月ほどが経過しました。新たにいわきFCの選手となり、現在はどういった気持ちで日々を過ごしていますか

平澤 サッカーに専念できる環境が整っていますし、今は本当に新たなスタートという気持ちで、新しい生活を楽しんでいます。

――いわきFCに入団することになった経緯を教えてください

平澤 最終学年になって、この先もサッカーを続けたいという気持ちはすごくあったのですが、なかなか声がかからなくて。その中でも、いわきFCは熱心に誘ってくださいました。大学でのシーズンが終わったあとに、ここの施設やグラウンドを見せていただいたり、クラブのビジョンを話していただいたりして、このクラブでプレーすることに対してすごく興味が湧いてきました。これからより上のクラスへのし上がっていくことを目標としているいわきFCで、自分も一緒に成長していきたいと思い、入団を決めました。

――JFAアカデミー福島でプレーされていた時に続いて、再び福島県のチームに所属することになりましたが、それに関してはいかがですか

平澤 4年間福島県でプレーしていた経験があるのですが、こうしてまたこの地でプレーできることにすごく縁を感じています。過去にお世話になった方々もたくさんいて、またそういった方々の前でプレーできることがうれしいです。

――ホームタウンとなるいわき市に関してはどういった印象をお持ちですか

平澤 僕の祖父がいわき市出身ということもあって、たくさん親戚がいますし、子供のころから通っていた場所でもあります。そういったこともあって、僕自身はいわきを『第二の故郷』だと思っています。親戚の人もいわきFCに入団したことを喜んでくれて、試合も見に来てくれるそうなので、いいプレーを見せれるように頑張りたいです。

新天地での目標を語る平澤

――いわきFCが理想に掲げるサッカーのスタイルを教えてください

平澤 いわきFCは「日本のフィジカルスタンダードを変える」というコンセプトを掲げています。一人ひとりがフィジカルを強化して、より迫力のあるサッカーを展開する。それこそが、いわきFCが目指すスタイルです。見ている人がワクワクするようなサッカーを披露しようという意識を全員が持って、日々のトレーニングに励んでいます。

――フィジカルトレーニングを専門とするコーチの方も所属しているのですか

平澤 そうですね。ドームアスリートハウス※からフィジカルトレーニング専門のコーチが毎週来て、細かい指導をしてくださっています。実際に自分自身の体にも変化があって、ここ2ヶ月で体重が3キロ増えました。体脂肪率は増やさずに、筋肉だけをしっかりと増やすことができているので、かなりの手ごたえを感じています。トレーニングが終わったあとの食事も徹底的に管理されていますし、プロテインなどの栄養補給の面もサポートされているので、本当に恵まれた環境の中でトレーニングできていると感じます。

※株式会社ドームが運営するスポーツジム。アスリートのパフォーマンス向上に特化したプログラムを提供している。

――いわきFCに所属する選手は、そのほとんどが20代前半です。かなり若いチームという印象がありますが、それに関してはいかがですか。

平澤 本当にエネルギーがすごいと感じていて、いわゆるベテランと呼ばれる選手がいない中で、一人ひとりがチームをまとめようとか、自分が盛り上げていこうといった意識を持って練習に臨んでいると感じます。自分自身の課題としては、もっと積極的にコミュニケーションをとって、チームの目指すサッカーが実現できるように、連携の質を高めていかなければいけないと思っています。

――練習がある日のスケジュールを教えてください

平澤 6時半に起きて、7時半に朝食を食べます。9時から12時まで練習をして、昼食と休憩を挟んで、14時から19時まで仕事をします。それから夕食を食べて、帰って寝るという感じです。

――サッカーに取り組みながら別の仕事もするというのは大変ではないですか

平澤 大変という感覚よりは、新しい刺激に対する楽しさの方が上回っています。職場には、いわきFCの選手ではない社員の方々もいて、そういった方々との交流を通じてひとりの人間として成長できる部分もたくさんあると感じています。

――ア式での4年間で特に印象に残っている試合はありますか

平澤 4ヶ月前のリーグ最終節(対駒大:◯6−1)は、一生忘れられない試合です。前の節で降格が決まって、最終節はスタメンから外されてしまって。率直に言うと、ア式での最後の試合でピッチに立てなかったことが本当に悔しかったですし、出場した4年生は全員活躍していて、自分も後輩に対してあの試合を通じて何かを残してあげたかったなと、今でも強く思っています。だからこそ、あのときの悔しさを今後の糧にしていきたいと思っています。

――スタメン落ちが決まった瞬間の心境は、やはり鮮明に覚えていますか

平澤 ただただ悔しかったですね。でも、僕の代わりに出場した秋山(陽介、スポ3=千葉・流通経大柏)の頑張りや成長というのは、普段の練習からすごく伝わってきていましたし、僕自身も秋山の闘う姿から教えてもらったことがあったので、そのときは自分の力不足を素直に受け入れて、もっと頑張ろうと思うことができました。

――19年ぶりのリーグ優勝を達成した2015シーズンに関しては、振り返っていかがですか

平澤 自分自身にとって大きなタイトルを手にするのが人生で初めてのことだったので、本当にうれしかったです。自分がサッカーを続けていく限りは、常に頂点を目指してやっていかなければいけないですし、そういう意味でもすごく大きな経験になったと感じています。

――ア式での4年間で学んだことの中で、この先も大事にしていきたいと思っていることは何ですか

平澤 古賀監督(古賀聡監督、平4教卒=東京・早実)から4年間を通じて学んだことで、『自分を犠牲にして周りの人のために頑張ることの大切さ』というのがあります。それは古賀監督自身が体現して僕たちに教えてくれたことでもあって、自分の中でこの先も大切にしていきたいことのひとつです。

――4年間ともにプレーした同期のみなさんに改めて伝えたいことはありますか

平澤 自分がけがをしてしまったときに「早く戻ってこいよ」と声をかけてくれたりとか、そういう苦しいときに一番支えてくれたのはやっぱり同期のみんなだったので、すごく感謝しています。

――Jリーグに進んだ方々をはじめ、この先もサッカーを続ける同期の選手も数多くいます

平澤 より上の舞台で戦っている選手たちに早く追いついて、いずれは追い抜けるくらいの力をつけていきたいです。

――後輩のみなさんに伝えたいことはありますか

平澤 一人ひとりが素晴らしいものを持っていますし、古賀監督が教えてくれることを大事にして、本来の力を発揮できれば必ず一年で上がれると思うので、頑張って欲しいです。自分もアドバイスを積極的にしていきたいと思っていますし、少しでも助けになれればと思っています。

――今シーズンの目標を教えてください

平澤 いち早くいわきFCが目指すサッカーを体現できる選手になって、見に来てくださるファンの方々に心から楽しんでもらえるようなプレーがしたいです。まずはチームがことし一年でJFLに上がれるように、精神的にも技術的にも成長していけるように頑張りたいです。

――サッカー選手としての今後の目標を教えてください

平澤 ファンの皆さんに対して、常に何かを与えることができる選手でなければいけないと思いますし、人として愛されるような選手になりたいです。

――最後に改めて今後に向けての意気込みをお願いします

平澤 いわきFCの発展に貢献できるよう、もっと成長していきたいと思っています。お世話になった方々に久しぶりに会ったときに、「成長したね」と言ってもらえるような選手を目指して、日々努力していきます。あと最後にひとつだけ。みんなにぜひいわきまで来て欲しいです。いわきの街を観光して、それから僕の出る試合を見て欲しいです。一人暮らしをするようになってから、正直言って結構寂しくて(笑)。ア式のチームメイトや友達にまた会えたらうれしいですし、楽しみにしています。

――ありがとうございました!

 

 

◆平澤俊輔(ひらさわ・しゅんすけ)

1994(平6)年4月11日生まれ。176センチ、70キロ。茨城県出身。スポーツ科学部4年。鹿島アントラーズFCジュニア→JFAアカデミー福島U−15→JFAアカデミー福島U-18→早大ア式蹴球部→いわきFC

 

★注目の新興クラブ・いわきFCとは?

 福島県・いわき市を拠点とする地域クラブ、いわきFCの野心的な取り組みに対し注目が集まっている。クラブを全面的にサポートするのは、アメリカのスポーツアパレル「アンダーアーマー」の日本総代理店である株式会社ドーム。天然素材の人工芝が使用されているグラウンド(いわきFCフィールド)、アスリート専用のメニューが用意されている食堂(DNSパワーカフェ)、選手たちが働く物流センター(ドームいわきベース)など、あらゆる方面から選手たちをサポートし、将来的なJ1昇格を目指す。さらにスポーツ産業の発展にも積極的だ。ことし6月に開業予定のクラブハウス(いわきFCパーク)は、トレーニングジムやVIPルーム、英会話教室にフードホールなどの様々な施設が入居しており、新たな観光名所としての期待値も高い。古賀聡監督とア式蹴球部で4年間ともにプレーした経験を持ち、いわきFCの代表取締役兼総監督を務める大倉智氏(平4商卒=東京・暁星)は、「いわきFCがいわき市全体を盛り上げ、『選ばれるまち』にする」ことを目標に掲げている。ひとつの地域クラブが描く壮大なビジョン。そこには間違いなく、日本のサッカー界のみならず、スポーツ界全体をも変革する可能性が秘められている。いわきFCが歩む今後の道のりから目が離せない。

※写真はいわきFCフィールド

 

 

(文=栗村智弘 写真=石田耕大)