豪雨の激闘制し、決勝進出!天皇杯本戦まであと一つ

ア式蹴球男子

 失意の総理大臣杯全日本大学トーナメント敗退から約一週間。悔しさを胸に再スタートを切った早大の次なる戦い、第21回東京都サッカートーナメント(第96回天皇杯東京都予選)が始まった。予備予選から勝ち上がり、天皇杯本戦出場まであと二つのところに迫った早大の相手はJFLに所属する東京武蔵野シティFC。豪雨の中PK戦にまでもつれ込んだ激戦は全員が確実にゴールに蹴り込んだ早大が勝利をつかみ取る。この結果、明学大が待ち受ける決勝へと駒を進め、念願の本戦出場まであと一つのところまで上り詰めた。

劇的なPK戦勝利となった

 早大は立ち上がりから格上の相手に互角以上の戦いを見せる。17分、MF鈴木裕也(スポ3=埼玉・武南)が右サイドに展開したボールをMF相馬勇紀(スポ2=三菱養和SCユース)がダイレクトで折り返し、最後はFW中山雄希(スポ4=大宮アルディージャユース)が飛び込む。27分にはDF鈴木準弥(スポ3=清水エスパルスユース)のフィードに抜け出したFW飯泉涼矢(スポ3=三菱養和SCユース)が相手GKの位置を見て意表を突くループシュート。ここは懸命に手を伸ばした相手GKが何とか掻き出すが、早大は優勢なままポジティブな内容で前半を折り返すことに成功した。

 後半は流れを取り戻したい東京武蔵野シティFCが徐々に早大陣地に侵入する場面を増やしていく。53分、鈴木準との競り合いでうまく反転した相手FWが決定機を迎えシュート。ここはミスに救われ、事なきを得ると、60分を越えたところで突如ピッチに土砂降りの雨が降り注ぎ、試合は膠着(こうちゃく)状態に突入してしまう。スコアが動かぬまま90分を終えると、延長戦でも両者はチャンスをつくりだすことができない。早大は再三のCKを得るがシュートにつながらず、このまま試合はタイムアップ。主審がPK戦を告げる長い笛を吹いた時、時計の針は22時に差し掛かろうとしていた。

攻撃を引っ張った中山

 けたたましい音と共にピッチを叩きつける大粒の雨。前を向くことさえ困難な状況の中、試合の行方は運命のPK戦へと委ねられる。この時、選手の頭によぎったのはあの苦い敗戦の記憶だった――。アミノバイタルカップ2016決勝、早大は桐蔭横浜大を相手に勝利まであと一歩に迫りながらPK戦で涙を飲み、無念の準優勝。つかみかけた勝利は手のひらからすり抜け、選手たちはピッチに崩れ落ちていった。そして迎えたこの日、運命のいたずらか、あの時と同じピッチで再びのPK戦を戦うこととなる。先攻の早大、1人目のキッカーはDF新井純平主将(スポ4=浦和レッズユース)。右足を振り抜くとボールはネットを突き刺し、大事な1本目を確実に成功してみせる。その裏、守護神・GK後藤雅明(スポ4=東京・国学院久我山)が相手のキックを完全に読み、見事にシャットアウト。このセーブで流れをたぐり寄せた早大は続くキッカー陣も確実に決め、相手にプレッシャーをかけていく。相手の第2キッカーが外し、3-1で迎えた4人目。最後は鈴木裕が豪快に蹴り込みこれで勝負あり。熱戦を制し、早大が見事にその手で決勝進出をつかみ取った。

守護神・後藤がチームを勝利に導いた

 降りしきる豪雨の中でも熱い闘志が消えることはなかった。勝利に飢える早大は最後まで集中を切らさず、PK戦でも相手を圧倒。あの日の屈辱を繰り返すことなく、ついに決勝の舞台までたどり着いてみせた。「全員が強い思いを持って挑んだからこその勝利」(中山)。殊勲のPKストップを見せた後藤だけに限らず、一人一人ができることを遂行した結果ともいえるだろう。決勝の舞台で待ち受けるのは明学大だ。アミノバイタルカップ20161回戦では勝利を収めた(〇2-0)ものの、早大同様にここまで勝ち上がってきた力を見くびるわけにはいかない。「受け身にならずに常にチャレンジャー精神を持つこと」と新井主将が語るように、一人一人が勝利にひたむきに戦うことが求められる。奢りを見せることなく「ワセダらしさ」を体現できれば、本戦出場は夢ではないだろう。さあ、今こそエンジの魂を見せつける時だ。

(記事 桝田大暉 写真 守屋郁宏)

スターティングイレブン

第21回東京都サッカートーナメント(第96回天皇杯東京都予選) 準決勝
早大 0-0
0-0
0-0
0-0
4PK1
東京武蔵野シティFC
早大メンバー
ポジション 背番号 名前 学部学年 前所属
GK 後藤雅明 スポ4 東京・国学院久我山
DF ◎新井純平 スポ4 浦和レッズユース
DF 熊本雄太 スポ3 東福岡
DF 鈴木準弥 スポ3 清水エスパルスユース
DF 12 木下諒 社3 JFAアカデミー福島
MF 13 今来俊介 商3 神奈川・桐光学園
MF 14 鈴木裕也 スポ3 埼玉・武南
MF 相馬勇紀 スポ2 三菱養和SCユース
MF 秋山陽介 スポ3 千葉・流通経大柏
FW 中山雄希 スポ4 大宮アルディージャユース
FW 飯泉涼矢 スポ3 三菱養和SCユース
FW →75分 柳沢拓弥 社3 清水エスパルスユース
◎はゲームキャプテン
監督 古賀聡(平4教卒=東京・早実)
コメント

DF新井純平主将(スポ4=浦和レッズユース)

――PK戦での決着となりました。振り返っていかがでしょうか

最近の試合でなかなか勝てなかった中で、どんなかたちであれ結果として勝てたのは良かったことだと思います。

――最後は気持ちの勝負でしたね

思い返せばアミノバイタル杯の決勝でPK負け(桐蔭横浜大戦、●1(5PK6)1)していて、そこからこだわってやってきたことがこの結果につながったと思います。

――格上の相手に互角以上の戦いができました

そうですね。相手がどんなチームでも自分たちのやることは変えずにやっていこうと試合前に話しました。どのカテゴリー相手でも自分たちの強みを出せば勝てると信じてやり続けるだけだと感じていました。どんな相手でも自分たちらしさを出せて勝利できたことは良かったです。

――明学大との決勝戦です。どのように戦っていきたいですか

自分たちに対してエネルギーを出してくるのは想定できますし、そこで受け身にならずに常にチャレンジャー精神を持つことをチームに促して、昨年も決勝で敗れている(FC町田ゼルビア戦、●1-2)屈辱も晴らせるようにやっていきたいです。

GK後藤雅明(スポ4=東京・国学院久我山)

――今の心境を聞かせてください

まず試合に勝てたということが本当に良かったと思います。

――試合中の雨でピッチの状態が変化したかと思いますが、意識したことはありますか

裏のボールが抜けてくるところとか、キャッチのところだったり、そういったところは集中力を高めて臨みました。

――PK戦では流れを引き寄せるセービングがありました

アミノバイタル杯決勝ではPKで負けてしまったので、その悔しさだったり、総理大臣杯で結果が出なかったことへの悔しさをぶつけて臨みました。

――決勝戦への意気込みをお願いします

天皇杯出場というのは、早稲田大学の誓いの一つでもありますし、いろんな人の思いも込められていると思うので、次の試合で勝って必ず出場を決めたいと思います。

FW中山雄希(スポ4=大宮アルディージャユース)

――決勝進出おめでとうございます。今のお気持ちはいかがでしょうか

率直にうれしいです。最近は勝ち切れない試合が多かった中できょう勝てたのは素直にうれしいです。ただ、全試合で勝たないと意味がないので、すぐに切り替えていい試合をしていけるようにしなければいけないですね。

――前半後半は、チャンスが巡ってきても決めることができませんでした

そうですね。前半、純平(新井主将)から良いボールがきた場面でも決めなければいけなかったですし、後半においてはチームが苦しい時間帯でも決めなければいけなかったと思います。正直そこは悔しいですが、きょうはディフェンスラインが90分間集中を切らさずに守ってくれたからこその勝利だと思うので感謝しています。

――積極的にシュートを打っている姿が印象的でした

練習においてもまだまだシュートを外す場面が多いからこそきょうの試合でもシュートが入ってないですし、やっぱりトレーニングでやったことが全てだと思います。トレーニングからしっかり突き詰めていきます。

――PK戦は気持ちで勝てた部分も大きいのではないでしょうか

そうですね。悔いのないように、自分自身思いっきり振り抜こうと決めていました。自分たちは桐蔭横浜大戦でPKで負けて、そこで思いの部分が足りなかったからこそ負けたと思っていたので、きょうに関しては全員が強い思いを持って挑んだからこその勝利です。

――次戦の明学大戦で勝利すれば本戦出場が決まりますが、意気込みをお願いします

18年間本戦には出場できていないので、早大の方々の悲願でもあると思うので必ず本戦に出場して、後期に向けてもより強くなって成長していかなければいけないと思います。まずは次の明学大戦で勝って、必ず本戦に出場できるように頑張ります。