『大阪、夏の陣』がいよいよ始まった。激闘の関東予選を2位で勝ち抜き、3年ぶりに総理大臣杯全日本大学トーナメント(総理大臣杯)に出場した早大。1回戦の相手は東北第1代表の仙台大となった。試合は序盤から仙台大ペースで進み、早大は苦しい戦いとなる。決定機をつくることができぬまま迎えた終了間際、FW飯泉涼矢(スポ3=三菱養和SCユース)が値千金の決勝ヘッドを沈め、これで勝負あり。1-0で辛くも2回戦進出を決めた。
飯泉に駆け寄るチームメイト
立ち上がりから試合の主導権を握ったのは仙台大だった。スカウティングを重ね、持ち味である堅守速攻を封じ込めにきた相手を前に、早大は苦しい戦いを余儀なくされる。「(相手は)自分たちのサッカーを研究してきて、やることを徹底していた」(DF新井純平主将、スポ4=浦和レッズユース)。前線からのプレッシングを細かなパス回しで交わされ、持ち味の守備でリズムをつくることができない。セカンドボールを拾われ続け、自陣でのプレー時間が長くなっていく。43分にはバイタルエリアから放たれた相手の強烈なシュートがポストを強襲し、肝を冷やす。反撃に転じることができず、良いところのないまま前半は終了した。
後半も仙台大がボールを保持する展開に。早大は攻撃に転じようとする場面でミスを重ね、自らリズムを悪くしてしまう。この流れを変えるべく、59分には飯泉をピッチへ投入。そこから徐々に敵陣へ侵入する機会を増やすものの、決定打を撃つまでには至らない。70分にはPA内に侵入され、仙台大に絶好機を許してしまう。ここはまたしてもクロスバーに救われるが、一向にチャンスらしいチャンスをつくれぬまま時間が経過。しかしこのまま延長戦に入るかと思われた90分、ついに試合が動いた。自陣でFKを得るとDF鈴木準弥(スポ3=清水エスパルスユース)がすかさず左サイドを駆け上がるDF木下諒(社3=JFAアカデミー福島)にフィードを送る。ノーマークで受けた木下が絶好のアーリークロスを送り込むと、抜群のタイミングでニアに飛び込んだのは途中出場の飯泉。「途中から出る自分が得点を取れないと意味がない」(飯泉)。このところジョーカーとしての活躍が目立つ背番号4が渾身(こんしん)のヘディングシュートをねじ込み、早大がついにリードを奪う。そして虎の子1点をしっかりと守り切り、ここで終了のホイッスル。苦しみながらも2回戦へと駒を進めた。
左サイドで躍動し、アシストを記録した木下
内容だけを見れば仙台大が勝ってもおかしくはなかった。攻守のつながりを欠き、後手に回り続けたこの試合。多くの課題が浮き彫りとなった。それでも、ワンチャンスで試合をものにする勝負強さを見せたことは大きな収穫である。2回戦の相手は東海第1代表の中京大。修正を施し、次は『らしさ』を見せて勝ちをつかみ取りたい。
(記事 桝田大暉 写真 菖蒲貴司)
スターティングイレブン
第40回総理大臣杯全日本大学トーナメント 1回戦 | ||||
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早大 | 1 | 0-0 1-0 |
0 | 仙台大 |
【得点者】(早)90飯泉 |
早大メンバー | ||||
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ポジション | 背番号 | 名前 | 学部学年 | 前所属 |
GK | 1 | 後藤雅明 | スポ4 | 東京・国学院久我山 |
DF | 2 | ◎新井純平 | スポ4 | 浦和レッズユース |
DF | 3 | 熊本雄太 | スポ3 | 東福岡 |
DF | 5 | 鈴木準弥 | スポ3 | 清水エスパルスユース |
DF | 12 | 木下諒 | 社3 | JFAアカデミー福島 |
MF | 19 | 須藤駿介 | スポ3 | 静岡学園 |
MF | 14 | 鈴木裕也 | スポ3 | 埼玉・武南 |
MF | 7 | 相馬勇紀 | スポ2 | 三菱養和SCユース |
MF | 8 | 秋山陽介 | スポ3 | 千葉・流通経大柏 |
FW | 9 | 中山雄希 | スポ4 | 大宮アルディージャユース |
FW | →59分 | 飯泉涼矢 | スポ3 | 三菱養和SCユース |
FW | 13 | 今来俊介 | 商3 | 神奈川・桐光学園 |
FW | →85分 | 柳沢拓弥 | 社3 | 清水エスパルスユース |
◎はゲームキャプテン 監督 古賀聡(平4教卒=東京・早実) |
コメント
DF新井純平主将(スポ4=浦和レッズユース)
――勝てたとは言え、内容的には敗戦に近いものでした。振り返ってみていかがでしょうか
まずは結果が全てだと思うので、多くのピンチがあった中で勝てたことはよかったです。ただ、内容を振り返ってみたときにまだまだ隙ばかりというか、シュートも多く打たれてしまったので、そこはすぐにでも修正して次の試合に備えようと思います。
――相手の印象はいかがでしたか
自分たちのサッカーを研究してきて、やることを徹底していたと思います。仙台大らしさというよりかは(早大に)勝つために対策をしてきたチームというのはすごく感じました。
――相手にパスを回されてファーストディフェンスにいき切れない部分も多かったと思いますが
そうですね。それは前半からの課題でもあって、自分たちがファーストのところへ行くことを強く意識した中でも、それをきょう出せなかったですね。前半から強いプレッシャーでいけなかったということがきょうの試合内容の全てだと思うのでそこはすぐにでも改善できるように、あしたのトレーニングの中から意識してやっていこうと思います。
――後手に回ったので守備からリズムがつくれなかったということでしょうか
そうですね。全体のつながりということをもっと突き詰めてできなかったですね。攻から守の切り替え、そのつながりにしても、また守から攻についてもそうですが、一人一人が攻撃にうまくつなげられなかったように思います。守備でボールを奪ってからもプレーが単調になってしまってワンパターン化してしまったなとすごく感じています。
――お話にもありましたが、ワンチャンスをものにできた点についてはいかがでしょうか
そうですね。あのクロスからの得点は練習通りだったので、トレーニング=ゲームだなということはすごく感じましたし、それはあしたからもっと積み上げていけることだとも思うので、そのような部分を意識してやっていきたいと思います。
――次戦への意気込みをお願いします
このトーナメントでも常に言っていますが、この一戦に勝ったことには意味はなくて自分たちは1STを獲ることだと思っているので、一戦一戦やっていく中で自分たちの立場を見つめ直して危機感を持ってやっていくしかないと思います。良い準備をして、次の試合も必ず勝って次につなげられるようにしたいと思います。
FW飯泉涼矢(スポ3=三菱養和SCユース)
――今のお気持ちをお聞かせください
いやあ、最高ですね。自分たちの中で1試合目で負けたら(総理大臣杯に)出ている意味がないという話をずっとしていて、その中で優勝しないと意味がないというくらいの位置付けで取り組んでいるので、その最初の試合を自分の得点で勝つことができたのですごくよかったなと思います。
――勝てたとは言え厳しい内容でしたが、振り返ってみていかがでしょうか
自分が試合に出るまで0点で抑えていてくれという話を試合前にもしていて、その中で苦しい場面も危ない場面もたくさんありましたが、ディフェンスラインを中心に皆が体を張って守ってくれていて、そんな中で途中から出る自分が得点を取れないと意味がないなと思っていたので、ディフェンスラインには感謝していますし、得点を決めることができてよかったです。
――チームは3年ぶりの総理大臣杯への出場ということですが
今までアミノバイタルカップ(総理大臣杯関東予選)で負けて涙を流していた先輩たちの姿を見ていましたし、今回自分たちが出場することで先輩たちの果たせなかった思いを自分たちが背負って臨めるというのが良いところだと思います。その中で、1回戦に勝利することができたことは本当に良かったと思います。
――途中から出場されて試合を動かす役割が与えられていると思いますが、個人としてどのようなお気持ちで臨まれていますか
チームからもそういうふうな役割ということで試合に出させてもらっていますし、その中で自分の得点だったりチームに流れを生むようなプレーだったりで状況を変えられているというのをチームの皆が感じることができているなら、自分としてはそういう役割を果たせているということでうれしいです。
――得点の場面ではニアに完璧なタイミングで入り方も良かったと思うのですが
あのような場面は今まであったらあと1テンポ遅くて絶対に上がってこなかったのですが、自分がFWをやる中で、DF出身ということもあって(相手DFが)どのタイミングで相手に入られたら嫌かというのは、自分はこのような早いタイミングでのクロスを上げられるとDFにとっては守りづらいので、このタイミングかなと思っています。練習のときからいつもより1つ早いタイミングで上げてくれということは言っていて、そしてきょうは木下が良いボールを上げてくれたので、あとはもう決めるだけだという感じでした。
――直前には合宿がありましたが、そのようなところで連携についての話し合いをされたのでしょうか
はい。自分たちの中で三大得点源と言っているのがカウンター、セットプレーを含めた早いリスタート、そしてサイドからのクロスで、その中で合宿中でもこの三大得点源の話をして、このような連携は高めていたので、そしてその中でもクロスからの得点については毎日のように練習していたので自信はありました。
――次は2回戦となります。意気込みをお願いします
中京大も今までやったことのない相手でそういう相手に対して自分たちがどれだけできるかということもありますが、自分たちは相手が想定してきた戦い方よりも上回って戦うだけなので、2回戦に向けて100パーセントの力で臨んで勝てたらいいなと思います。
MF鈴木裕也(スポ3=埼玉・武南)
――今のお気持ちを聞かせてください
初戦ということで難しい試合になるということわかっていましたが、自分たちがサッカーができなかったというのが正直なところで、勝つことができただけというのが今の感想です。勝つことができたのはよかったと思います。
――総理大臣杯がはじめてのメンバーがほとんどだと思いますが、そのあたりチームでどのようなことを話してきましたか
いろんな場面を想定して試合に入っていこうということは話し合っていました。実際にきょうの試合の中でもいろんなことが起きましたし、試合前も雷雨で前の試合が中断したり関西圏独特の暑さだったり、そういういつもとは違う環境に適応するということは一人一人が最大限にやっていこうと話していました。
――パスミスやタッチミスが多かったと思いますが
ピッチが雨で滑りやすくなっていたことが大きいのですが、その中でも普段通りのサッカーができないといけないですしきょう来ているメンバーは総理大臣杯が初めてという人がほとんどなので、そう言った面でまだまだ適応し切れていないという部分が出たのかなと思います。
――試合中は守備に追われる時間が多くいつもより攻撃参加が少なくなってしまったと思います
相手どうこうというよりもチームのサッカーができなかったということだと思います。個人的なことを言うと、平澤俊輔(スポ4=JFAアカデミー福島)くんがケガをしてしまって代わりに須藤が出たのですが、そこで自分との連携がなかなかうまくできませんでした。守備の面での連携がなかなかうまくできなかったというところもあったので、中1日ですけどしっかり話し合って解決していかないと次は勝てないと思うので、しっかり話し合っていきたいと思います。
――相手が的確にパスを回していましたが、そのあたりで相手の強さは感じましたか
いえ、正直そこまでは感じませんでした。普段から関東でやっているチームもうまいので、そこに対しては特に感じませんでした。きょうの試合の反省点は自分たちの問題なので、自分たち自身を修正していかないといけないなと思いました。
――次は2回戦です。意気込みをお願いします
自分たちは優勝しか目指していないのですが、まずそのための一歩目を踏めてよかったです。ここからもひとつずつクリアしていくだけなので、あしたから目の前のひとつを勝てるように頑張っていきます。