第67回早慶サッカー定期戦(○1-0)の激闘から16日。きょうのワセダはいつもと違った。前半はあの日の雪辱を果たすため、いつも以上に勢いがあるケイオーに先制されるが、後半にFW今来俊介(商3=神奈川・桐光学園)の同点ゴール、そしてDF熊本雄太(スポ3=東福岡)の2ゴールで今季初の逆転勝利。見事、学生系の部 Bブロック決勝進出を果たした。
ケイオーを恰好の獲物として仕留めた熊本
前半は完全に慶大ペース。試合開始早々決定機を演出されるが、DF木下諒(社3=JFAアカデミー福島)がゴール前でかろうじてクリアする。いきなり暗雲が立ち込める中迎えた13分、スルーパスに抜け出したFW山本哲平にゴール右隅へ流し込まれ早々と失点。その後も何度もPAに進入されるなど慶大に翻弄(ほんろう)されてしまう守備陣。攻撃陣も激しいプレスに苦しみ、堅い守備を崩すことができない。前半に放ったシュート数はわずかに1。攻守に打開策を見出せないまま前半を終えた。
しかし後半、流れは一気にワセダに傾いた。開始15秒、MF秋山陽介(スポ3=千葉・流通経大柏)からFW中山雄希(スポ4=大宮アルディージャユース)とつなぎ、ゴール前の浮き球を今来が倒れ込みながら技ありのループシュートを決めすぐさま同点に。今来自身「あの得点は大きかった」と話す通り、この得点がチームに勢いをもたらす。キレのある動きを見せる今来、秋山を中心に攻撃が活性化。慶大守備陣を崩し徐々に攻撃のリズムをつくり始める。そして72分、ゴール前でボールを回し、MF鈴木裕也(スポ3=埼玉・武南)の右サイドからのセンタリングを熊本が頭で合わせて逆転に成功する。さらに79分、MF相馬勇紀(スポ2=三菱養和SCユース)のFKをまたも熊本が豪快なバックヘッドでゴールに叩き込む。熊本は今季の慶大戦で4得点とまさにケイオーキラーだ。しかし、勝利が見え始めた87分、慶大に一瞬の隙をつかれ1点差に迫られる。その後も相手の猛攻を前に圧倒されそうな雰囲気が漂う。このまま押し切られてしまうのか。緊張感が周囲を包む中、エンジイレブンは慌てていなかった。確実にパスをつなぎ、素早くピンチの芽を摘み取る。最後まで高い集中力を発揮しライバルをまたしても退けてみせた。
貴重な同点ゴールを決めた今来
「勝つことはできましたが、奇跡的に近いかなと思います」(DF新井純平主将、スポ4=浦和レッズユース)とキャプテンが話すようにチームはまだ満足していない。試合開始早々先制され、意識していた試合の入り方に課題が残った。これまでのワセダならここで負けるか引き分けに終わっていた。しかしきょうは違った。「きょうの勝利は1つの成長と捉えていい」(秋山)、「自分たちの積み上げてきたものが出せた」(今来)と話すように、1試合ずつチームは確実に成長している。次の法大戦でもエンジイレブンの確かな成長があるはず。それがチームを勝利へ導くはずだ。
(記事 高橋弘樹 写真 大久保美佳、田中佑茉)
スターティングイレブン
第21回東京都サッカートーナメント(第96回天皇杯東京都予選) 学生系の部 Bブロック準決勝 | ||||
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早大 | 3 | 0-1 3-1 |
2 | 慶大 |
【得点者】(早)46今来 72,79熊本 (慶)13山本 87松木 |
早大メンバー | ||||
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ポジション | 背番号 | 名前 | 学部学年 | 前所属 |
GK | 1 | 後藤雅明 | スポ4 | 東京・国学院久我山 |
DF | 2 | ◎新井純平 | スポ4 | 浦和レッズユース |
DF | 3 | 熊本雄太 | スポ3 | 東福岡 |
DF | 5 | 鈴木準弥 | スポ3 | 清水エスパルスユース |
DF | 12 | 木下諒 | 社3 | JFAアカデミー福島 |
MF | 6 | 平澤俊輔 | スポ4 | JFAアカデミー福島 |
MF | 14 | 鈴木裕也 | スポ3 | 埼玉・武南 |
MF | 7 | 相馬勇紀 | スポ2 | 三菱養和SCユース |
MF | 8 | 秋山陽介 | スポ3 | 千葉・流通経大柏 |
FW | 9 | 中山雄希 | スポ4 | 大宮アルディージャユース |
FW | →74分 | 飯泉涼矢 | スポ3 | 三菱養和SCユース |
FW | 13 | 今来俊介 | 商3 | 神奈川・桐光学園 |
FW | →82分 | 柳沢拓弥 | 社3 | 清水エスパルスユース |
◎はゲームキャプテン 監督 古賀聡(平4教卒=東京・早実) |
コメント
DF新井純平主将(スポ4=浦和レッズユース)
――今季初の逆転勝利となりました。試合を振り返っていかがでしょうか
最初の入りのところでああいった失点をしてしまったのは自分たちの課題です。まだまだ入りの部分を意識できていないのが現状なので、立ち上がりの失点に関しては自分たちに突き付けないといけないです。勝てはしましたが、奇跡的に近いのではないかなという感じです。
――1失点目はディフェンスラインの間にパスを通されてという失点でした
自分たちが準備できずにふわっとしたまま失点してしまいました。ファーストディフェンスの意識を強めてきた中であの失点をしてしまった、一瞬の隙を突かれたのは自分たちの甘さなのかなと思います。
――特に前半はボランチとセンターバックの間でMF渡辺夏彦選手に基点をつくられる場面が多かった印象です
そうですね。相手に嫌なポジショニングをされてもファーストディフェンスを押し出すということが求められている中それができなかったので、そこの部分は見直していきたいです。
――迎えた後半、ファーストプレーで追い付くことができたのがターニングポイントでしたね
そうですね。後半の入りで追い付くことができたので、その後を優位に進められることができたと思います。
――3点目を取れたことが非常に大きかったですね
そこは自分も感じているところです。セットプレーから点を取って相手を突き放せたので優位に立つことができました。
――試合後、どこか納得のいかない表情でしたが、やはり2失点目は抑えたかったところでしょうか
相手を圧倒することができなかったというか、隙を突かれてしまったのが心残りですし、自分のところから基点をつくられる場面が多かったので、まだまだ自分自身にベクトルを向けてやっていかないといけないと思います。
――次戦は今季勝ち切れていない法大が相手となります。意気込みをお願いします
どんな相手でも一戦一戦勝つために戦い続けるしかないと思っています。厳しい戦いが予想される中で、あと1日の準備期間でどれだけきょうの課題を意識できるかが重要だと思います。そこを克服しないと足元をすくわれて、勝ちにはもっていけないと思うので、何が何でも勝てるようにやっていきたいです。
MF秋山陽介(スポ3=千葉・流通経大柏)
――今季4度目となるケイオーとの対戦でした
相手がケイオーというよりも、自分たちは目の前の1戦1戦に勝っていかないと、この先後期(関東大学リーグ戦)で優勝とか三冠を目指せないので、相手がケイオーだからという意識は特にはなかったです。
――今季初となる逆転勝利についてはいかがですか
今までは先制点を奪われたら勝てないという感じだったんですけど、きょう先制点を取られても勝てたっていうことは一つ自分たちの成長と捉えていいのかなと思います。得点自体はそんなに自分たちの思い通りではなく、ラッキーなかたちの得点もあったので、そういう部分ではもっと質を上げていかないといけないなと思います。
――前半は守備の時間帯が多かったように思います
前半の入りのところで前線からプレスにいけてなかったというところで、自分たちの強みを出せてなかったです。入りのところは意識してたんですけど、意識してあれだったので、もっともっと意識しないといけないなと思います。
――特に後半は左サイドから果敢に攻めている印象を受けましたが、いかがですか
前半から左サイドでいけるなとは個人的に感じてたので、後半はボールを蹴れる回数が増えたので、ガンガン積極的に攻めていこうかなと思いました。
――対談の際に仲が良いとおっしゃっていた今来選手と熊本選手のゴールでしたね
そうですね。素直にうれしかったですし、自分も点決めたいなと思いました。
――今までに3得点というのはワセダとしてはあまりありませんでしたが
得点を取ることが少ないチームですけど、きょうこういうふうに3点取れたというところで、攻撃陣はもっと頑張らないといけないんですけど、一つのかたちになれていたのはよかったと思います。
――試合終了間際に失点したことについてはいかがですか
自分たちの気持ちの緩みっていうのが出て、そこがまだまだ甘いところなので、その甘さっていうのをなくしていきたいと思います。
――次戦に向けて意気込みをお願いします
1戦1戦勝つしかないので、次の試合も勝って、次に進みたいと思います。
FW今来俊介(商3=神奈川・桐光学園)
――今季4回目の早慶戦でしたが、無事勝利を挙げることができました
勝てたことは良かったですけど、前半の内容から見たら、あれだけ集中して入ろうって言っていたのに悪かったですし、ケイオーに対して入りの時点で球際や競り合いの部分で負けていたので、そういうところは次の試合に向けて改善していかないとなと思います。
――ビハインドで迎えたハーフタイム、審判に急かされるほど話し合っていましたね
さっきも言ったんですけど、一人一人が球際や競り合いなどの一つの勝負で相手に負けていて、そこの差で押し込まれていたり失点につながったりしていたので、後半はまずは目の前の相手に負けないことを意識して入ろうということはハーフタイムで話していました。
――後半は、開始早々でゴールを決めましたね
自分でもあんまりゴールは見ていなかったので、あのシュートはたまたまって言ったらたまたまなんですけど、後半をビハインドで迎えた中でああいうかたちで試合を振り出しに戻したっていうのはチームにとって大きい点だったのではないかと思います。決められて良かったと思います。
――まさしくあのゴールで流れをつかんだと思います
前半はなかなか前でボールを抑えることができなくて、アクションも起こせず、点を決められる気配がほとんどなかった中で、後半は積極的に仕掛けて得点に絡む活躍をしないといけないなと思って入ったので、あの時間帯で得点を決められたことによって、後半は自信を持ってプレーできましたし、周りも余裕を持ってプレーをできたという部分であの点は大きかったと思います。
――今季初の逆転勝利ですね
今まで先制された試合は全く勝てていなくて、前期の関東リーグで9位と低迷したのも、逆境に立たされたときにそれを跳ね返せるエネルギーをチームの中で出せないっていうのが課題でした。こういうオフシーズンを通して、自分たちの課題を克服しようという中でのきょうの逆転勝利だったので、徐々にではありますけど、自分たちの積み上げてきたものが出たっていうことは良かったと思います。
――FWでの起用が続いていますが、慣れましたか
元々いろんなポジションこなすことが多いですし、どのポジションに入っても自分のやることはチームのために走り続けることで、やることは変わらないので、自分のできることを徹底して入ろうと思います。
――次戦は法大ですね
前期のリーグは引き分けていて勝てていない(第5節△0-0)ので、相手がケイオーだろうと法政だろうと自分たちのやることは変わらないし、1試合に懸ける重みも変わらないので、きょう出た課題はあした克服して、明後日良い状態で臨めるように頑張りたいと思います。
DF熊本雄太(スポ3=東福岡)
――きょうの試合を振り返っていかがですか
立ち上がりの流れが悪く前半は何もなかったのです。試合前に自分たちの良さを出していこうと話していたのですができませんでした。
――前半は中盤とディフェンスラインの間に入られ崩されるシーンが多くありました
自分たちがライン押し上げられなかったというのもあります。間の空いたスペースに入られるということは試合前から気をつけていたのですが、難しかったというか、相手の思うツボだったのかなと思います。よりプレッシャーをかけていくべきでした。
――後半の自身の1点目のゴールについてはいかがですか
あの場面はスペースが空くと思っていたので、裕也(鈴木)が走り込んだ瞬間に飛び込めたのでゴールにつながったと思います。
――決勝ゴールは豪快なバックヘッドでの得点でした
キッカーとうまく連携して、いいボールがきたので合わせるだけでした。
――今回で慶大戦4得点と慶大キラーのような働きです
(笑)。そんなふうには思っていませんが、トーナメントなのでセットプレーがカギを握ると思っているので、そういう結果につながっていると思います。
――今季初の逆転勝利です
自分たちは先制されると負けるか引き分けるかになるのできょうこそは勝ってやろうと思いましたし、今回逆転勝利で次に駒を進めるということで大きいと思います。
――終盤の猛攻にあったディフェンスラインについていかがですか
いつもあの時間に攻め込まれることが多くなるのでそこは改善していかなければならないです。
――最後に次戦の意気込みをお願いします
一戦一戦自分たちは泥くさく戦って、決勝でもそういったプレーで法政に勝ちたいと思います。
MF鈴木裕也(スポ3=埼玉・武南)
――きょうの試合を振り返っていかがでしたか
前半の早い段階で失点してしまったということで、気の緩みが出たかなと思います。そういった面で、明後日ですけど直していかないと絶対勝てないと思っているので、まず失点しないというところを課題にしていかなければならないと思います。
――今季初の逆転勝利でしたが、いかがでしたか
自分たちの戦い方として攻撃力のチームだと思っているので、逆転勝利うんぬんの問題ではなくて失点しているということを課題として重きを置いていきたいです。
――前半、慶大にボランチとセンターバックの間のスペースでボールを受けられて崩されることが多かったですが、守備の連携に関してはいかがでしたか
そこに関してはきょうの試合に限らず常に課題に挙げられていて、特にきょうは相手の7番の選手がスペースに入ってきていたのですが、準弥(DF鈴木準弥、スポ3=清水エスパルスユース)だったりクマ(熊本)ともっと声を掛け合いながらやらないと、いつかはやられてしまうので、そういった部分を進めていきたいです。
――2点目のゴールは鈴木裕選手のクロスが点につながりましたが、いかがだったでしょうか
1試合でゴールかアシストでゴールに絡むというのを自分自身の目標としているので、その点に関してはきょうは達成できたと思うんですけど、それを継続していかないと意味がないと思うので、次の試合以降もゴールとアシストにこだわってやっていきたいと思います。
――1試合で3点取れたという点に関してはどのようにお考えですか
そうですね、少しずつではあるのですが、攻撃の面でも自分たちのかたちが出ている結果が出たからこそのものだと思うのですが、その前に失点してしまっているということが本当に頭に残ってます。
――この試合で見えた課題は、具体的にはどのようなものでしょうか
まずは前半の入り方という面で相手に完全にペースを握られてしまったというところで、自分たちのペースに持っていけなかったところです。もうひとつは2失点しているということです。そこをもっとチーム全体で重く考えなければいけないのかなと思います。
――次の試合の意気込みをお願いします
自分たちの目標として天皇杯出場というものがあるので、そのために次の試合は勝たなければ何も始まらないと思うので、全力で戦って勝ちに行きたいと思います。