【連載】第67回早慶サッカー定期戦直前特集 『エンジの意地』 第3回小林大地×鈴木裕也

ア式蹴球男子

 昨季公式戦全試合でスタメン出場を果たし、チームに欠かせない大黒柱に成長したMF小林大地(スポ4=千葉・流通経大柏)。そしてその小林が昨季まで付けていた14番を今季から身にまとうMF鈴木裕也(スポ3=埼玉・武南)。同じボランチでプレーするライバルとして、熾烈(しれつ)なポジション争いも繰り広げる二人が、チームの現状、お互いの印象、そして伝統の早慶サッカーへの熱き思いを語る。

※この取材は6月19日に行われたものです。

「自分の出来が9位という順位に直結してしまっている」(小林)

苦しい戦いが続いた前期を振り返る小林

――まずは関東大学リーグ戦(リーグ戦)前期に関してお聞きしたいと思います。第11節・筑波大戦(△1-1)は、なんとか勝点1をもぎ取ったという試合でしたが、振り返っていかがですか

小林 僕は途中出場だったのですが、前半からベンチで見ていて、結構激しい試合でしたし、選手たちの体力も奪われているなというのを感じていたので、1点ビハインドでピッチに立ったときは「一番フレッシュな俺が点を決めて、この状況を変えてやる」という気持ちでした。

鈴木裕 特に前半はほとんどの時間を守備に割くことになってしまって、自分たちの良さを全然出すことができませんでした。ただ、その中でも何度か得点を奪うチャンスはありましたし、そこを確実に決め切るだけの力がチームとしてまだまだ足りないということを実感しました。

――小林選手は「もっと得点に直接絡みたい」とよくおっしゃっていますが、この試合ではまさに有言実行といったかたちになりましたね

小林 1点ビハインドでしたし、とにかく何が何でもまずは追い付きたいという思いがあって、それで結果的に自分自身で同点ゴールを奪えたことは良かったです。

――前期リーグ戦を通してのチームの戦いぶり、自分自身の出来、それぞれ振り返っていかがでしょうか

小林 昨年と比べてやはり失点が多いなという印象ですね。例えば駒大戦(第8節●2−3)では、リードしていたのにそこから連続で失点して逆転負けということもありましたし、それ以外にも複数失点している試合が多くなってしまっているなと。ゴール前での粘り強さとか、1対1のディフェンスでの強さとか、そういった個人個人のプレーの質をもっと上げていく必要があると感じます。自分自身の出来としては満足できていなくて、やはり自分の出来が9位という順位に直結してしまっていると思っています。

鈴木裕 監督(古賀聡、平4教卒=東京・早実)からは「9位という順位が今の自分たちの実力だ」ということを言われていて、本当にその通りだなと自分自身も感じています。大地くんもさっき言っていたように、ことしは失点が増えてしまって、にもかかわらず得点数は増えてこないというのが、現状勝てていない原因だと思います。攻撃力、守備力共に上げていかないと勝つことは難しいですし、全員が限られた時間の中で、日々のトレーニングに対しても120%の力を出し切らなければいけないと感じています。自分のプレーに関しては、リーグ前半はケガでベンチにも入れなくて、復帰したのが第7節の桐蔭横浜大戦(△2-2)だったのですが、その試合と第9節の早慶戦(●1−2)の2試合でゴールとアシストという結果を残せたことは良かったと思っています。

――チームが今最も改善すべき課題は何だと思われますか

小林 自分が思うのは二つあって、一つはさっきも言ったように守備面ですね。それともう一つは、カウンター、クロス、リスタートっていう『三大得点源』の質を上げることで、やはりそれが得点力アップに大きくつながるはずなので、そこが大事になってくると思います。

――失点が増えてしまっている原因として、何か昨年と違う部分があるということもいえるのでしょうか

鈴木裕 去年は拓真くん(金澤拓真前主将、平28スポ卒=横浜F・マリノスユース)とマサくん(奥山政幸前副将、平28スポ卒=現レノファ山口FC)の両センターバックが、最後の際のところで足を出して防いでくれたりとか、気持ちを見せて何度も救ってくれて、ことしは全体として、あの二人が生み出してくれていたような気迫をまだ見せることができていないと思います。

——では逆に昨年よりもうまくいっている部分などはありますか

小林 去年よりも高い位置でボールを奪う回数は増えていて、そこから攻撃までいける回数も増えたのは前期の中での収穫かなと。ただ攻撃の質がまだ伴っていなので、そこはもっと上げていく必要があると思います。

——お二人が夏の間に集中的に強化していきたいのはどういった部分になりますか

小林 僕はシュートですね。やっぱり直接スコアを動かせるのはシュートしかないですし、FWやサイドの選手だけじゃなくて、ボランチの選手も点を取れなければ勝てないというぐらいの気持ちで取り組まないと、チームとしても勝つことは難しくなってくると思っているので。ここ最近のワセダのシュート数を見てみると、本数自体が少なすぎると思いますし、自分も狙えるところでもっとどんどん狙っていけるようにしたいと思います。

鈴木裕 今までのワセダのボランチは、守備にほとんどの体力を奪われてしまっているというのがあると思っていて、でも自分は毎試合ゴールとかアシストとかを狙っていきたいと思っていますし、それを目標にミドルシュートとかスルーパスとか、一つ一つのプレーの質を上げれるようにしていきたいです。

「萎縮していたら自分のプレーはできない」(鈴木裕)

素顔を覗かせる鈴木裕

——ここからは少し話題を変えて、事前にお答えいただいたアンケートについてお聞きしたいと思います。小林選手の座右の銘は「失敗して当たり前、成功したら男前」ということですが、なぜこの言葉を座右の銘とされているのですか

小林 誰の名言だったかは忘れちゃったんですけど・・・(笑)。中学生の時に何かで聞いて、これいいなと思って、それ以来座右の銘です。成功するためにガチガチになるんじゃなくて、もう少し楽観的にというか、挑戦するという気持ちを持っていろいろ取り組めるようになりますね。あと語呂もいいので気に入っています(笑)。

一方の鈴木裕選手は「狭き門より入れ」という言葉を挙げています

鈴木裕  実は僕、昨年同じようにアンケートに答えた時に、それまで座右の銘っていうのがなくて、それでインターネットで調べて、これが当てはまるなと思って見つけたやつなんです(笑)。でも、これまでの自分の進路を考えた時に、自分自身も狭き門をなんとかくぐり抜けてきたというのがあるので、これが一番かなと思います。

小林 でも、これ去年からの座右の銘でしょ?(笑)

鈴木裕 いや、まあ、そうなんですけど・・・(笑)。でもこれからも座右の銘ですからね!(笑)

——アンケートには「好きな芸能人」という質問もあったと思うのですが、ここはほとんどの方々が女優さんの名前を書かれていた中で、小林選手だけはマツコデラックスという、少し違った方を挙げていますね

鈴木裕 これは狙いましたね(笑)。

小林 こんなこと書いたっけ(笑)。いや、でも、夜の番組いっぱい出てるじゃないですか。なので・・・。好きっすね(笑)。

鈴木裕 (笑)。

——小林選手はア式のイチオシ選手にMF須藤駿介選手(スポ3=静岡学園)を挙げていますが、この理由は

小林 サッカーもうまいし、やっぱりモテますからね(笑)。

鈴木裕 自分も「うらやましい同期」のところに書きましたね(笑)。

小林 よく自慢してきます(笑)。

——鈴木裕選手のイチオシはDF曽我巧選手(社3=東京・早実)ということですが

鈴木裕 なんかもう言葉では説明できないくらい、規格外なんですよね(笑)。例えば、試合中に意味わかんないこと言ってたりとか・・・(笑)。

小林 パス出した後とかね(笑)。

鈴木裕 なんか遠くにパス出した後とかに「もう一回、もう一回」ってよくわかんないけど言ってるんです(笑)。

小林 スローイン投げた後もね(笑)。

鈴木裕 「もう一回」って言ってますね(笑)。めっちゃでかい声だから、周りの選手も反応しちゃうんですよね(笑)。

——小林選手にとってうらやましい同期はFW中山雄希選手(スポ4=大宮アルディージャユース)だそうですね

小林 同じ左利きなんですけど、自分よりパワーがあって点も取れますし、フィジカルも本当にすごいですからね。それと筋肉がすごいですよね。毎晩よくわからないサプリメントとかプロテインとかをいっぱい飲んでますからね(笑)。

鈴木裕 早死にしそう(笑)。

小林 まあでも、自分と違ってパワフルなプレーができるのは本当にうらやましいなと思いますね。

――お二人には早慶サッカーのキーマンとなるであろう選手も挙げていただきました。小林選手はMF相馬勇紀選手(スポ2=三菱養和SCユース)ということですが、その理由を教えてください

小林 やっぱり彼の縦への突破は、ほとんどの選手が止めることができないものだと思いますし、彼のクロスから得点というパターンも多いので、ほんとに彼の突破力こそが勝利のカギを握っていると思います。あとは、寮で自分とルームメイトなので、そういった意味でも活躍してほしい選手の一人ですね(笑)。

――鈴木裕選手はDF新井純平主将(スポ4=浦和レッズユース)を挙げられていますが、新キャプテンに対してどういった印象をお持ちですか

鈴木裕 チームを全力で引っ張っていくという姿勢を前面に押し出してプレーしてくれますし、主将になってから雰囲気も発言もよりたくましくなったので、本当に頼りになりますね。

――その新井主将ですが、最近丸刈りにされましたね

小林 もうびっくりしましたね(笑)。僕が部屋にいるときに純平がドアを開けて入ってきて、僕は『あれ、誰か練習生が来たのかな』って思ったんですけど、よく見たら純平で(笑)。めちゃくちゃびっくりですね(笑)。

鈴木裕 自分も最初練習場で遠目で見た時に、練習生かなって思ったんですけど、ちゃんと見たら純平さんでした(笑)。

――では、鈴木裕選手は小林選手のプレイヤーとしての特徴はどういったところにあると思いますか

鈴木裕 やっぱり創造性がすごいなと思いますね。そこは自分にはないところだと思いますし、攻撃面でのプレーもそうですけど、終盤までばてずに守備をしているところもすごいなと思います。

――お二人ともボランチというポジションでも常にゴールに絡むプレーがしたいとおっしゃっていますが、そういう意味では似ている選手だといえるのでしょうか

小林 絡むといってもその絡み方が違うというか、プレースタイルは異なると思いますね。でも、やっぱりお互い点は取りたいよね。

鈴木裕 そうですね、取りたいですね。

――お二人のプレースタイルの違いを大まかに説明していただけますか

小林 ざっくり言うと、裕也はフィジカルが最大の売りですよね。相手に当たられても吹っ飛ばして前に進んでいける選手です。接点で必ずといっていいほど相手を弾き飛ばせますし、すごいなといつも思ってます(笑)。

鈴木裕 大地くんは逆に相手にぶつかるんじゃなくて、それをかわして周りの味方を使いながらゴールに迫っていくという感じだと思います。

――鈴木裕選手はやはり特別に体幹を鍛えたりなどしているのですか

鈴木裕 いや、そんなことはないですね(笑)。

小林 お腹アタックだよね(笑)。

鈴木裕 お腹アタックですね(笑)。自分、体脂肪が多いんで・・・(笑)。

小林 体脂肪率は高いけど、走れるもんね(笑)。

鈴木裕 なかなか減らないんですよね(笑)。

小林 最近練習前と後に体重を測っていて、僕なんかは練習後に2キロ減ってたりとかするんですけど、裕也は逆に増えてたりするんですよ(笑)。

鈴木裕 服が汗で濡れているっていうのもあると思うんですけど、にしても減らないですね(笑)。

――では鈴木裕選手にとって先輩としての小林選手はどう映っていますか

鈴木裕 めちゃくちゃ面白いです(笑)。ポルノグラフィティのモノマネとかやってくれて、なんていうか、そういう引き出しが多いです(笑)。

小林 でも、最近してないですね。なんかもう、最近精神的に疲れちゃって・・・(笑)。

鈴木裕 うーん、普段そうは見えないですけどね…(笑)。

――小林選手は後輩としての鈴木選手についてどう思いますか

小林 いやあ、結構なめてますよね(笑)。

鈴木裕 (笑)。

小林 でもそういう物怖じしない感じがプレーにも表れていると思いますし、それ自体はいいことだと思います。

鈴木裕 萎縮していたら自分のプレーはできないと思うので、そういうところは練習から意識してますね。

小林 ただまあ、練習以外となると・・・(笑)。

鈴木裕 それはもう、仕方ないです(笑)。昔からそういう性格なので(笑)。

緊張感

大舞台での躍動を誓う二人

――最後に早慶サッカーに向けての意気込みをお聞きしていきたいと思います。ことしはリーグ戦で敗れてしまったということもあって、例年とは違う気持ちで臨む一戦になるのではないですか

小林 そうですね。リーグ戦で負けてしまったことで、いつも以上に緊張感を持って臨む一戦になると思います。本当にことしは身を引き締めていかないといけないですし、絶対に勝たなければいけないと思っています。

鈴木裕 リーグ戦で負けはしたのですが、そういうことを抜きにしても、ケイオーは常に勝たなければいけない相手ですし、その中でことしは負けたこともバネにして力を出し切れればと思います。

――ことしは5連覇がかかる一戦となりますが、やはり普段の試合以上にプレッシャーを感じますか

小林 そうですね。早慶サッカーは本当に歴史があって、たくさんのOBの方々が見に来て下さる中で、恥ずかしい試合をするわけにはいかないですからね。やはり絶対に勝たなければいけないというプレッシャーはあります。

鈴木裕 確かにプレッシャーは大きいですね。でも、自分はそういう大きなプレッシャーがかかる試合の方が力を発揮できると思っていますし、いい緊張感を保って試合に臨みたいです。

――では改めて早慶サッカーへの意気込みをお願いします

小林 ことしが自分にとって最後の早慶サッカーということで、本当に悔いが残らないように、自分の持ってる力を全て出し切って、勝って終われるようにしたいと思います。

鈴木裕 自分はこれまでの早慶サッカーで活躍することができなかったので、ことしはチームを勝利に導けるような、いいプレーができるように頑張りたいです。

――ありがとうございました!

(取材・編集 栗村智弘)

早慶サッカーへの意気込みを書いていただきました!

◆小林大地(こばやし・だいち)(※写真左)

1995(平7)年3月19日生まれ。172センチ、66キロ。千葉・流通経大柏高出身。スポーツ科学部4年。取材後に行われたアミノバイタルカップ2016からFWで出場することも多くなった小林選手。最前線でも持ち前の攻撃センスを生かし、輝きを放ってくれることでしょう!

◆鈴木裕也(すずき・ゆうや)(※写真右)

1995(平7)年7月14日生まれ。174センチ、72キロ。埼玉・武南高出身。スポーツ科学部3年。インタビュー中はもの静かな印象を受けた鈴木選手ですが、試合中は大声でチームを鼓舞する、まさに熱血漢。早慶サッカーでも気迫のこもった力強いプレーに期待しましょう!