【連載】第67回早慶サッカー定期戦直前特集 『エンジの意地』 第4回平澤俊輔×木下諒

ア式蹴球男子

 昨シーズンから主力としてチームを支えているMF平澤俊輔(スポ4=JFAアカデミー福島)と今シーズンからスタメンに定着したDF木下諒(社3=JFAアカデミー福島)。共にJFAアカデミー福島出身であるお二人に、ユース時代のエピソードや早慶サッカーに懸ける思いを語っていただいた。

※この取材は6月19日に行われたものです。

「正直、納得はできていない」(木下)

挑戦の年となった前期を振り返る木下

――まず今回の組み合わせがJFAアカデミー福島出身ということですが、いかがでしょうか

平澤 やっときたかという感じです(笑)。

木下 ついにね、ついに来たかって感じですよ。

一同 (笑)。

――それでは今季の振り返りから対談に入らせていただきます。今季のリーグ戦で特に印象に残っている試合はありますか

平澤 自分は駒大戦(第8節●2-3)ですかね。前半に先制されながらも追い付いて、自分たちの流れがあったにもかかわらず後半によくない流れで敗戦してしまって。あれが本当に今季の自分たちを象徴している試合だと思います。波があるところを露呈してしまったという感じですね。あの試合は自分にとっては相当酷というか、きつかった敗戦でしたし、厳しい現実を突き付けられた試合でした。

木下 絞れないんですけど、2試合あって、開幕戦の流通経大戦(○2-1)と慶大戦(第9節●1-2)です。流通経大戦は自分がスタメンとして初めて出る試合で本当に緊張していましたし、自分をすごく追い込んで試合に入った中で自分のパフォーマンスを発揮できたという点で思い出に残っています。もう一つの慶大戦に関しては、本当に悔しくて、人生で1番負けて悔しかった試合です。なんで悔しかったかっていうと、今までだったら試合に出るってことだけを考えていたんですけど、試合に出るようになって早慶戦の重みや、来てくださる人の期待を背負った上で負けてしまったということにすごく責任を感じました。そういうのを感じることができたという面で、人生で一番悔しかった負けなので思い出に残っています。

――今年から木下選手はスタメンに定着となりましたが、振り返ってみていかがでしたか

木下 正直納得できていないです。自分の特徴であるボールを運ぶってことや、状況を打開するというところでは手応えを感じているんですけど、それが結果に出ていなくて。たとえば得点もアシストも前期が終わってゼロで、そこは本当に納得してないですし、突き詰めていかないと自分が勝利に導くという部分までつながっていかないと思っているので、これからもっと自分にプレッシャーをかけてやっていきたいと思います。

――リーグ戦で感じたチームの課題は

平澤 一つ思うのは失点が多いということですね。例年だったらリーグで1番失点の少ないチームだったと思うんですけど、前半の早い時間に失点してしまったり、セットプレーなども含めて締めるべきところで締められていないからこそ失点が増えているというのは感じています。そういった面に関しては自分もどちらかというと守備的なポジションなので貢献できていないと考えていますし、そういう失点が多いからこそ勝ち切れていないと思っているので。まずは一人一人が失点に向き合う力をつけることと、ゼロに抑えるという個々の守る力をこの夏につけないとリーグ優勝はないというのを実感しました。

木下 失点が多いというのにつながるんですが、粘り強さが足りないなと思っています。去年のチームを振り返ったときにゴール前に少し押し込まれたときでも拓真くん(金澤拓真前主将、平28スポ卒=横浜F・マリノスユース)とかマサくん(奥山政幸前副将、平28スポ卒=現レノファ山口)が体に当ててブロックするシーンが印象に残っていて、そういうシーンがあまりないので、それは相手のドリブルに対する粘り強さであったり、決めさせないということに対する気持ちの部分であったりそれが今のチームには全然足りていないなと思います。

――ことしのDF新井純平主将(スポ4=浦和レッズユース)の印象は

平澤 真面目な感じで答えていいですかね(笑)。真面目な感じでいうと、チームで1番熱量を持っている人だと思いますし、明らかにチームには必要な選手だと思います。チームを引っ張ってくれる力のある人なので、チームに対してすごく貢献していると思います。キャプテンとしての振る舞いをピッチ内外でやっていると思います。

木下 純平君はすごくがんばっているな、と(笑)。去年までの印象だと主将は大丈夫かなという印象だったんですけど、自分自身ですごいチームを背負っていて、チームのことを考えていて。気合を入れるために坊主にもしていますし(笑)。チームのために熱くっていう姿勢が伝わって来る本当にいい主将だと思います。持ち上げておきます(笑)。

――新井主将の髪型については

平澤 あれはね、びっくりしたよね(笑)。

木下 びっくりしたね(笑)。でも似合っているからいいんじゃない?

平澤 そうそう、すんなりね。あれ、ずっと坊主だったんじゃって感じ(笑)。

一同 (笑)。

木下 本当に似合ってると思う。

――急な坊主だったのですか

平澤 本当に前触れもなくて。あれはびっくりしました。

木下 びっくりした、びっくりした(笑)。かわいいですよ(笑)。似合ってるからいいです(笑)。

――新井主将になったことでチームのカラーは変わりましたか

平澤 去年は拓真くんが強烈なリーダーシップを発揮してくれるキャプテンだったと思うんですけど、ことしは純平になって、よりみんなを巻き込んでいくというか、みんなで盛り上げていくっていうようになったという変化はあると思います。そういったノリというか、チームの雰囲気を大事にする選手だと思うのでみんなで盛り上げていこうっていう空気はありますね。

木下 同じです(笑)。

恵まれたユース時代

JFAアカデミー福島時代を振り返る両者

――JFAアカデミー福島時代から交流はありましたか

平澤 はい。中学からずっと一緒です。

木下 寮も一緒でした。

――お二人の仲は良かったですか

平澤 仲良いかな(笑)?

木下  俊さんが3年の時に俺は2年で、その時一緒に試合に出ていて。俊さんが左のセンターバックで、俺が左サイドバックをやっていて、左同士だったので信頼はしていました。だから好きっちゃ好きなのかな(笑)。

――ユース時代の練習環境はどのようなものだったのですか

平澤 素晴らしいスタッフがいて、練習環境がすごく整ったところでやらせていただいていましたし、自分たちは震災も経験していますが、震災後に静岡県に移っても静岡県の方々にすごく良い環境を提供してもらっていました。そういった意味ではすごく恵まれたユース時代を過ごすことができましたし、本当に感謝したいですね。

木下 冷静に振り返ったら、めちゃくちゃ恵まれていたなと思います。ユースで40人くらいしかいないんですけど、人工芝のグラウンドを2面使えるんですよ。トップとチャレンジで両隣で練習もできて、人工芝の自主練場のようなものもありました。本当に恵まれていましたね。

――上下関係とかは厳しかったですか

平澤 そんなにはなかったですね。でもワセダの方がないかな。こいつがワセダに来て結構のびのびとやっているので、それを見る限りはワセダの方がないかな(笑)。

――当時のお互いの印象は覚えていますか

木下 俊さんはスタッフ陣からすごく信頼されていて、せこいんですよ。

平澤 何がせこいの(笑)?

木下 俊さんは信頼されているので、部屋とかすごく汚いのにスタッフにあまり干渉されないんですよ。俺たちは結構見に来られたりするのに、俊さんは信頼されているからガミガミ言われないんですよね。せこいです。

平澤  一応、部屋は綺麗にはしてました(笑)。木下は良くも悪くも調子乗るやつなので、調子が良い時はガンガンくるし、それは今も変わらないですけどね。まあ、いいやつです(笑)。

木下 あざっす(笑)。

――ユース時代の印象的なエピソードなどはありますか

木下 春先に俊さんが全然だめで監督にすごく怒られてキャプテンをやらせないみたいになったんですよ。でも、そこから俊さんは自分と向き合い続けたんです。俊さんが卒業して、俺らが3年になってから平澤俊輔を見習えって監督に言われるんですよね。伝説の人みたいな感じです。

――平澤選手はそれを聞いていかがですか

平澤 あの頃も一生懸命やっていたので、それがいいかたちとなって後輩に言われるのはうれしいことですね。

――今のお互いのサッカー面や性格面での印象はいかがですか

平澤 木下はサッカー面からいうと、左足の技術も高いですし、ボールを前に運ぶ力というのはチームに対して貢献してくれているので、そういった部分は去年までにはなかった新たなチームのカラーとして出ているなと思います。思う存分チームに貢献していって欲しいなと思います。プライベートのところは、日曜日の夜になるとどこかに行っちゃうので、先輩の俺が処理し切れないというか、先輩として管理できていなくて不甲斐ないのですが(笑)。こういう性格なので友達も相当多いと思いますし、悪いやつじゃないですね(笑)。良い人間性を持っていると思います。

木下 俊さんはプレーでも私生活でも気が利く人だなと思います。目立たないけど、チームにいないと困るような感じです。いい人ですね。私生活はどうなんだろう(笑)。

平澤 どうなんだろうね。

木下 そろそろ春が来てもいいんじゃないかなと思うんですけどね(笑)。

――事前に行ったアンケートで、木下選手は最近衝撃的だったことに女子バレーのことを書かれていましたね

木下 大逆転した試合をたまたま見ていて、本当にすごいなって思いました。あの試合は衝撃的でしたね。

――他のスポーツは結構見るのですか

木下 見ますね。サッカーがメインですけど、きのうのラグビーとかも見ました。他のスポーツを見るのは結構好きですね。他の部活にも友達が結構いるので、アイスホッケーを見に行ったりとかします。

――平澤選手は他のスポーツを見に行ったりしますか

平澤 そうですね。他の部活の早慶戦とかだと、ことしはアメフトを見に行きましたし、ワセダのバスケットボールも見に行きました。大学の友達が出ている試合は見に行きます。

――平澤選手は須田智博トレーナー(スポ4=静岡・浜松西)と映画を見に行ったことが衝撃的と書かれていましたね

平澤 そうなんですよ。ちょっとそれは自分でも衝撃を受けていまして、せっかくのオフの日に映画を見たいなと思って誰かを誘おうとなったところで、トレーナーの須田を誘ってしまった自分に衝撃を受けました(笑)。

――何の映画を見に行かれたのですか

平澤 あれ、なんだっけ。

木下 植物図鑑?

一同 (笑)。

平澤 それはやばい(笑)。思い出しました、コナンを見に行きました。植物図鑑を須田と見に行ってたら人生やめるわ(笑)。

――去年の対談では奥山選手と都庁の夜景を見に行ったというエピソードを話していましたね

平澤 そうなんですよ。マサくんとは仲良しで、今もマサくんからもらった洋服を着ているんですけど(笑)。今でもサッカー面もプライベート面も含めて色々と相談に乗ってもらっています。本当に良い先輩なので、好きですね。

――今でも頻繁に連絡を取っているのですか

平澤 そうですね。サッカー頑張れよとか早く彼女つくれよって言われます(笑)。

「うれし涙を流せるようにがんばりたい」(平澤)

最後の早慶サッカーへの思いを語る平澤

――それでは間近に迫った早慶サッカーについてお聞きしていきます。今、どのような気持ちで当日を待っていますか

平澤 単純に自分自身の気持ちとしては勝ちたいな、と。前期で負けたのもありますけど、早慶戦というのは特別な試合ですし、友人や家族などたくさんの人が自分の試合を観に来てくれると思うのでそういう人たちに自分が勝利に貢献するところを見せたいなと思っています。

木下 2年間外から早慶サッカーに関わってきました。最初早慶サッカーってなんでこんなに盛り上がっているんだろうと思っていたんですけど、早慶サッカーのために動いている学生スタッフを見たりしていて、本当に多くの人が関わっていて、それだけ大事な試合なんだなって感じるようになって。そこで自分が活躍できたら、観に来てくれている友達やお客さんに希望とか勇気を与えられるそういう舞台だと思っているので、自分が力を発揮して、チームを勝利に導くような活躍をしたいです。

――改めて、ことしの慶大の印象は

平澤 ことしは相手の主将の宮地元貴選手を含めて、徹底しているなと前期の試合では感じました。自分たちがそういった徹底してくる相手に対して、球際や切り替えの面で上回れなかったからこそ負けた要因がそこにあると思っています。でもそういうもののベースといった面では自分たちの方が積み上げてきたものは多いと思っています。負けてはいけないという自分たちのプライドをかけて戦って、結果がついてくるような内容のプレーをしたいと思います。

木下 結構前に迫ってくるような感じはあって、前への迫力を持っているチームだなとは思いました。でもそのくらいですかね 。あ、あと応援が嫌です(笑)。エンジは大嫌いってやつです。あれ嫌いです(笑)。

――平澤選手は前回の早慶サッカーに出場されていますが、木下選手へのアドバイスはありますか

平澤 なんだろう(笑)。本当に素晴らしい舞台だから、特に構える必要もなく下級生には思う存分やってほしいなと思います。別に勝敗に関しては4年が責任をとればいいので、思い切ってやってほしいです。

――それを聞いて木下選手はいかがですか

木下 頑張ります(笑)。思う存分(笑)。

――ことしはPVなど撮影されていたとのことですが、楽しかったですか

木下 楽しかったです(笑)。

平澤 すごく本格的だったもんね、あれ。

木下 おもしろかったです。

――多くのご友人やお客さんが見に来ると思いますが、緊張はしますか

木下 緊張はするよね。

平澤 うん。

木下 でも少し緊張するくらいがいいと思っているので大丈夫です(笑)。

平澤 緊張はどの試合もしますし、大舞台だからこそのものもあるとは思いますけど、逆にそれを楽しむくらいでいった方がいいと思っているので大丈夫だと思います。

――木下選手はキーマンに新井主将、得点を取ると思う選手にFW山内寛史副将(商4=東京・国学院久我山)をあげていましたが、やはり4年生への思いは強いですか

木下 そうですね、純平くんがキーマンだと思います。

平澤 ゴマすっとけ(笑)。

一同 (笑)。

木下 頑張っているので活躍してほしいですね。

――普段の練習のときにも4年生の熱い思いなどは伝わってきますか

木下 そうですね。早慶サッカーの前になったらもっと感じるんじゃないかと思います。早慶サッカーってほんとすごい舞台だと思うんで、負けるわけにはいけないので、本当に頑張ってほしいです。いや、僕も頑張りますけど(笑)。

一同 (笑)。

――平澤選手は最後の早慶サッカーになりますが

平澤 そうですね。たぶん勝ったら泣いちゃうと思います(笑)。それくらいの思いでやりますし、その姿を多くの人に見てもらって何かを感じてもらえるような試合にしたいです。

――自分のこんなプレーを見てもらいたいというのはありますか

平澤 自分はフィールド上では目立たないかもしれないですが、とにかく頑張るんで(笑)。勝利のために頑張って走る姿を見てもらいたいですね。

木下 左サイドを・・・。

平澤 制圧する(笑)?

木下 制圧します(笑)。

一同 (笑)。

木下 左サイドを何度も何度も駆け上がる姿を。前期は得点もアシストもゼロだったんですけど、これからもっと高めるので、ゴールに絡む働きを見てほしいです。

――それでは改めて早慶サッカーへの意気込みをお願いします

平澤 多くの人が見に来てくれるなかで自分自身も試合で勝ちたいという思いが本当に強いです。まずはその結果というのを勝ち取れるようにこれから練習あるのみだと思っているのでもっと高めて、歓喜の声や、『紺碧の空』だったり、うれし涙を流せるように頑張りたいと思います。

木下 勝ちたいです。4年生を勝たせたいし、みんなで去年とか紺碧歌ったり、写真を撮ったり、あんな瞬間が勝ったらあるっていうのを知っているので、あの瞬間を自分たちの手にいれられるように100%の力で戦いたいと思います。

――ありがとうございました!

(取材・編集 大森葵、篠原希沙)

お揃いのJFAアカデミー福島時代のウェアでポーズ!

◆平澤俊輔(ひらさわ・しゅんすけ)(※写真左)

1994年(平6)4月11日生まれ。176センチ、体重69キロ。福島・富岡高出身。前所属・JFAアカデミー福島。スポーツ科学部4年。日曜日の夜に、おいしいものをよく食べに行くという平澤選手。最近行ったお店は中目黒のピザ屋さん。おいしいものを食べて、モチベーションを高めているそうです!

◆木下諒(きのした・りょう)(※写真右)

1995(平7)年9月30日生まれ。163センチ、体重62キロ。福島・富岡高出身。前所属・JFAアカデミー福島。社会科学部3年。リーグ戦の振り返りをしている時や、早慶サッカーについての質問に答える時の真剣なまなざしが印象的だった木下選手。それとは一転して、チームの仲間について語る時は柔らかい表情に。木下選手のエンジ愛を改めて感じる対談となりました。