【連載】第67回早慶サッカー定期戦直前特集 『エンジの意地』 第5回中山雄希×武颯

ア式蹴球男子

 今季の攻撃陣を引っ張るのは復活を遂げたFW中山雄希(スポ4=大宮アルディージャユース)と徐々に頭角を現しはじめたFW武颯(スポ3=横浜F・マリノスユース)の二人だ。関東大学リーグ戦(リーグ戦)前期を終え、今何を思うのか。ここまでの戦いを振り返っていただくと共に、早慶サッカーへの意気込みを伺った。

※この取材は6月23日に行われたものです。

「チームを助けられる存在が必要なFWだと思う」(中山)

今季を振り返る中山

――まずは前期リーグ戦の振り返りからいきたいと思います。最初は3勝1分で好調でしたがその時のチームの状況などはいかがでしたか

中山 正直勝つべくして、圧倒して勝ったという試合はあまりなかったのですね。そこで危機感はあったはずですが、いざ負けや引き分けとなるとそれを跳ね返すだけの力やメンタリティがまだまだこのチームにはなかったですし、自分自身含めてまだまだ弱い部分があったのかなと感じています。

 オフシーズンでワセダは合宿で厳しいトレーニングをしてきたので、関東リーグが始まった時の入りというのは他のチームと差が出るのかなと思っていました。他のチームが2試合、3試合、4試合とやっていって関東リーグに慣れてきた時にそこの差がだんだん埋まってしまって自分たちの良さが出なかったり、勝てない原因につながったのかなと思います。

――中山選手は開幕戦で活躍されていましたが、そのときのご自身の調子など振り返っていかがですか

中山 1点目は秋山(MF秋山陽介、スポ3=千葉・流通経大柏)の良いクロスを頭で合わせるだけでしたし、2点目に関しても新井(DF新井純平主将、スポ4=浦和レッズユース)からのパスを決めるだけだったので、はっきり言って自分自身が決めたというより味方のおかげです。点を決めたことに関してはその二人に感謝しています。自分自身、試合で点を決めるチャンスが多くあった中で決め切れなかったというのも事実ですし、その決定力のなさが今のチームの順位にも響いていると感じています。

――その後7試合勝ちなしでしたが、不調の原因は何だとお考えですか

中山 先ほども言いましたが、負けた時、勝てなくなった時の跳ね返す力やメンタリティ、前線で言えば決め切る力、守備面においては守り切る力、最後の粘り強さという部分がやはり欠如していたからこそこういった結果になってしまったのかなと思っています。

 自分も雄希くん(中山)と同じことを思っていて、攻撃面では得点力不足というのが出てきてしまって、後ろに関してはイージーなミスがあったり、相手の強みに対して自分たちの強みで上回ることができなくて失点してしまってということだと思います。

――そういう状況の中で武選手はスタメン起用となりましたが、どういうことを意識してプレーしましたか

 自分が出るまでは負けや引き分けでチームが良い状況ではなかったので、自分が流れを変えようだとか、出た試合で点を決めてチームを勝利に導きたかったのですが自分の持ち味である得点力が発揮できませんでした。自分自身関東リーグ、ことしが初の出場でそういった面でまだまだ自分の強みをだせていないなと思います。

――実際出場していかがでしたか

 通用する部分としない部分があるのがはっきりわかって、そこはよかったなと思います。

――中山選手と武選手が2トップを組むこともありましたが、お互いのプレーの印象を教えてください

中山 颯(はやて)はチームで一番と言っていいほど点を決める選手です。去年や2年生の時からの試合でも一緒に組んできた仲ですね。ただ自分自身が颯をサポートするくらいの力を出さなければいけなかったと思いますし、自分が颯を生かすプレーがまったくできなかったと感じています。

 雄希くんは自分の中で憧れの存在です。雄希くんも言ってくれましたが、2トップ組んだ時は両方とも点を決めてチームを勝利に導く試合がたくさんあったのでとてもやりやすかったです。ただ、まだ自分の良いところを出せなかったり雄希くんのドリブルという長所を生かすような自分の動きだったり働きがまだまだ甘いなというのがあったりします。

――中山選手も武選手もアンケートにベストゲームなしと書かれていましたが、その真意を教えてください

中山 満足した試合が単になかったというか、やはり開幕戦で点は決めましたが、それ以外の試合はほとんどチームを助けたり点を決めることがなかなかできなかったのでベストゲームはなかったかなと思います。

 まず自分はFWなので点を決めなければいけないのですが、そこで点を決められていないというのは良い試合ではなかったことにつながると思います。

――理想のFW像を教えてください

中山 ワセダとしてだったら自分のことよりチームのことを考え、チームのために働けて得点を奪えてチームを助けられる存在が必要なFWだと思います。

 守備のできないFWは出してもらえないので守備でしっかりチームに貢献できて、それに加えゴールを決めてチームを勝利に導けるという選手がワセダとして素晴らしいFWだと思っています。自分自身の好きなプレーヤーとしてはルーニー(マンチェスターU)、そういう選手は守備のことをしっかりやれていて、他の人へのアシストとかそういったプレーが多くみられるので、尊敬しています。

――中山選手は理想の選手はいますか

中山 自分自身そんなに大きな選手ではないので、海外の選手でいえばアレクシス・サンチェス(アーセナル)、アグエロ(マンチェスターC)といった小柄な選手のプレーはよく見ます。

――中山選手は相手の裏をとるプレーや左足のシュートを得意としていると思いますが、それは今季見せられましたか

中山 自分の強みを発揮できた試合ははっきり言って数えられるほどで、ほぼなかったのではないかなと思います。やはり自分の強みを出してはじめて結果を残せますし、自分の強みをまだまだ出せないのだなということを前期強く実感しました。

――武選手は相手を背負いながらのプレーを得意としていると思いますが、それは今季見せられましたか

 相手を背負って落としたり、ターンしたりとかそういったプレーはできていたかなと思います。しかし。自分の特徴であるそういったプレーはもっともっと成功率を高めていかなければいけないと思います。

――課題も挙げられていましたが、それを克服するために行っている練習などはありますか

中山 決定力という部分で、決め切る力がまだ足りなかったという面では練習後に颯らと一緒に皆でシュートのトレーニング等はするようにしています。

 FWは本当に点を決めないといけないので、いろんなシュートパターン練習で点を取れるよう練習をしています。

――前期リーグ戦を振り返って自分に点数をつけるとしたら何点ですか

中山 20点くらいかな。自分が決めなかったから今の順位にいますし、この順位にいるのは自分の責任だと強く感じているので、良い点数は絶対つけられないという感じですね。

 自分の考え方的には、大袈裟かもしれませんが、点を取れたら100点に近くて点を取れなかったらほぼ0点というイメージでいるので、2試合出て点を取れていないので0点に近いかなという感じですね。

「一人一人がバカになること」(武)

持ち前の明るさを見せる武

――プレー以外のお互いの印象を具体的に教えてください

中山 颯は本当にお金持ちです(笑)。すごい買い物をしているという話をよく聞きます(笑)。

 雄希くんは明るいって感じです。元気で優しいです。

――チームのムードメーカーは誰ですか

中山 誰だろう(笑)。3年生が盛り上げてくれます。4年が静かすぎるのもあるのですが(笑)。

――3年生から見た4年生はどうですか

 優しいというイメージが強いですね。自分たちの代は本当にうるさいけど4年生は本当に優しいです。2年生、1年生は静かな感じがして自分たち3年生はうるさくて、それをまとめてくれるのが4年生ですね。

――今のチームの雰囲気はいかがですか

中山 自分たちが今こういった立ち位置の中で、全く強くないチームなのだなというのを実感しますし、雰囲気としては割り切ってというかやるしかないなと、開き直ってトレーニングに臨めているのかなと思います。

 正直関東リーグの前期が終わって9位だったり、そういった下のチームなのだなというのを実感しました。自分たちは弱いですし勝ちたいところで勝てない、そういった自覚はあるのですが、そういった気持ちをずっと持っていても前には進めないので、空元気でもいいので元気を出して次の試合に向けて頑張ろうという雰囲気でやっています。

――明るい雰囲気にするためにやっていることはありますか

 一人一人がバカになることです(笑)。

中山 それに関しては3年生に助けられています。

――新井主将のことをどう思いますか

中山 4年として純平にはすごく辛い思いをさせてしまっているなというのがあって、純平のサポートをしなければと思います。苦しい状況ですが純平をサポートできる働き掛けをしたいです。チームがどうやったらよくなるか真剣に考えてくれる主将なのでそういった面でとても心強い主将です。

 自分自身も純平くんに申し訳ないという気持ちがあって、前期終わって9位という順位で、ワセダ9位だねって言われて一番思い浮かんでくるのはキャプテンの純平くんだと思うし、例えばこのまま関東リーグが終わって9位という順位が残ったとして、その代のキャプテンは誰だとなったときにもやはり純平くんというのが残ると思うので、そういったかたちにはしたくないです。だから後期、1位の主将だった新井純平にしたいです。

――早慶戦のPVでは武選手がハカを一番前で踊っていましたがそのことについてお聞きしたいです

中山このことも聞かれるんだ、早いね(笑)。颯しかいないっす(笑)。

 PVなので面白く作りたくて。皆に颯行け颯行けと言われたのでじゃあやるしかないという感じで頑張りました。

中山 楽しかったです。あれ結構練習したよね。

 30分くらい(笑)。

――オフの過ごし方はいかがですか

中山 自分はそんなに遊んだりしないので(笑)。でもたまに同期と映画見に行ったりはしますし月に一回くらいは皆で遊んだりすることはありますね。

 自分はケガ明けだったり膝のケガ持ちだったりするので今は治療などで潰れてしまっています。

――リラックス方法、これに癒されているなどありますか

中山 基本寝ていたい(笑)。部屋でテレビ見ているだとかそういう時間が多いかも知れないです。

 ア式の人たちと遊びに行ったりだとか実家に帰って親とか妹とかそういった人たちと話してゴロゴロしているときがゆっくりできます。

――学年を超えて遊ぶことはありますか

中山 あまりないよね。一緒にお昼飯行くことはあるけど一緒に遊ぶのはないよね。

――はまっていることはありますか

中山 携帯ゲームのクラッシュロワイヤルです(笑)。めっちゃやっています。山内(FW山内寛史副将、商4=東京・国学院久我山)に勧められてやり始めたらはまりました。

 俺も影響されてはまっています。

中山 部としては、テラスハウスですかね(笑)。テラスハウス見て、練習の前にちょっと話してあれはなくない?と盛り上がっています(笑)。

――試合前のゲン担ぎなどはありますか

中山 ゲン担ぎというより今まで点を決めてきたパターンを頭の中でもう一度イメージしています。

 前日まではいつもと変わらない感じでいて、当日の試合前に海外の選手の得点シーンを動画で見たり自分がきょうどんなプレーをしようかなというのを考えたりします。

――自分自身を一言で表すと何ですか

中山 良い意味でも悪い意味でも優しいですかね。

 クレイジーですかね(笑)。良い意味でも悪い意味でも(笑)。

伝統の継承

FWとしてゴールをこじ開けることはできるのか

――最後に早慶サッカーの話題に移っていきたいと思います。早慶サッカーとはどんなものですか、他の試合とはどう違いますか

中山 初めて早慶サッカーを見たのが、自分の父親がOBというのもあって、中学生の頃だったのですが、その時の応援席の迫力だったり、学生が全部つくっている感じだったりをすごいなと率直に感じて、そういった思いもあって他の試合とはまったく違う雰囲気もあります。そういったものが全て詰まった試合だなと感じます。

――昔から憧れの場所であったということですか

中山 そうですね。中学のとき一回しか見てないのですがここでやってみたいという思いは少なからずありました。

――早慶サッカーはどういった印象がありますか

 高校であったらサポーターが来てくれるだけでうれしくて試合を頑張ることができたりするのですが、早慶サッカーではサポーターの数がすごいというか、Jリーグの選手になったらああいった大人数の中でやるのが当たり前かもしれないですが、学生という立場でああいった大人数の人たちがいて応援してくれてその中で試合できるというのは喜びだなと思います。

――どのような気持ちで早慶サッカーを待っていますか

中山 絶対勝たなければいけないと思っていますし、負けが許されない試合だと思っているので、先輩たちが築き上げてきたものとして4連覇している中で必ず5連覇したいという思いがあります。

 この前の早慶戦(リーグ戦第9節●1-2)で元チームメイトだった同期に2点決められて試合に負けているので次の早慶サッカーで必ず自分が点を取って勝ちたいなと思います。

――早慶サッカーのキーパーソンは誰だと思いますか

中山 キーパーソン・・・。自分です(笑)。颯だったら颯だと思います(笑)。FWはそういう思いがあると思います。自分次第です。

 自分を見てくれとばかりの勢いでやらないと点が取れないのでFWはそういった気持ちかなと思います。

――試合で緊張することはありますか

中山 自分は早慶サッカーのような多くの観客がいる前でのプレーはあまりないので良い意味で少し緊張する面はあります。

 多少緊張しますね。すごくというわけではないですが試合前のイメージが自分の良いシーンしか頭に浮かべないのでそういった意味では自信が出てくるというかそういった感じで少し緊張します。

――大勢の観客にどんなプレーを見せたいですか

中山 やはり点を決めるところですかね。

 ゴールです。

――最後に早慶サッカーへの意気込みをお願いします

中山 4年として必ず後輩たちに5連覇という伝統を継承しなければいけないですしそういった意味で勝たなければいけない、負けられない試合だと思うので自分が結果を残してチームの勝利に貢献できるよう頑張っていきたいと思います。

 多くの方が見に来てくださると思うのでそこにいるすべての人たちに感動を与えられるように自分のゴールだったり自分の守備だったりそういった自分のプレーでできるだけ多くの方を感動させたいなと思います。

――ありがとうございました!

(取材・編集 網代祐希)

早慶サッカーへの意気込みを色紙に書いていただきました!

◆中山雄希(なかやま・ゆうき)(※写真右)

1994年(平6)10月16日生まれ。身長174センチ、体重73キロ。埼玉・武南高出身。前所属・大宮アルディージャユース。スポーツ科学部4年。ア式蹴球部のOBである父親と共に早慶サッカーを見に行ったことがあるという中山選手。早慶サッカーへの思いも人一倍です。大学生活最後となる早慶サッカーでは圧巻のゴールを見せてくれるでしょう!

◆武颯(たけ・はやて)(※写真右)

1995年(平7)7月17日生まれ。身長174センチ、体重75キロ。神奈川・金沢総合高出身。前所属・横浜F・マリノスユース。スポーツ科学部3年。先日公開された早慶サッカーのPVの中では先頭でハカを披露するなど、チームの盛り上げ役である武選手。早慶サッカーではプレーでも観客を盛り上げてほしいですね!