劣勢の中で見せた執念 筑波大との死闘は引き分けに終わる

ア式蹴球男子

 最後の最後まで、勝利を信じて走り抜いた。しかし、無情にも空虚なホイッスルの音だけが鳴り響く。ピッチ上には、うなだれ、倒れ込む選手たち。7試合連続、またしても勝ち点3を手にすることはできなかった。強敵・筑波大に終始攻め込まれ、劣勢の展開が続いた前期最終節。MF小林大地(スポ4=千葉・流通経大柏)のゴールで同点に追い付くが、勝利には至らず。早大は前期を9位で折り返すこととなった。

執念の同点弾に歓喜するメンバー

 前半から攻撃力を武器とする筑波大に再三ゴールを脅かされる。そんな中、前節に続いて先発出場のGK小島亨介(スポ2=名古屋グランパスU18)の好セーブが光った。まずは7分、ロングパスから抜け出されたところで、ファール寸前の思い切った飛び出しを見せ、最初のピンチをしのぐ。そして、40分には相手FWにPA内で粘られ、至近距離からシュートを打たれるも、しっかりと弾きゴールは割らせない。一方の攻撃は、終盤にセットプレーを起点に相手ゴールに迫っていく。44分、MF相馬勇紀(スポ2=三菱養和SCユース)のCKからこぼれたボールをMF平澤俊輔(スポ4=JFAアカデミー福島)が押し込むも、これはオフサイドの判定。攻撃のかたちが徐々にできあがる中、両チーム無得点で前半を折り返した。

 後半こそは何としても先制点を奪い、主導権を握りたい早大。しかし、70分に左サイドからPA内へ侵入されクロスを許すと、中央で豪快にボレーシュートを決められ、欲しかった先制点を奪われてしまう。さらに76分、またしても早大に試練が訪れる。バックパスのミスから、一対一の状況をつくられる絶体絶命のピンチ。小島は決死の覚悟で飛び出すも相手を倒してしまい、レッドカードが宣告されてしまう。ここまで好セーブを連発していた矢先の、まさかの退場。1点ビハインド、そして残り時間が少ない中で数的不利に立たされた。「リスクを負ってでも点を取らないといけない」(小林)。腹をくくったエンジイレブンは、前線に選手を集め、得点への執念をのぞかせる。そして84分、小林がクロスからのこぼれ球を押し込み、ついに同点に追い付いた。その後もお互いが次の1点を奪おうと一進一退の攻防が続くが、ゴールネットは揺れることなく90分が経過。1-1の引き分けに終わった。

先発落ちの悔しさをばねに、チームを救った小林

 昨年の『覇者』として臨むことしの関東大学リーグ戦(リーグ戦)。開幕4試合でスタートダッシュに成功したが、その後は一度も白星を挙げられず前期を終えて9位に甘んじた。「この立ち位置にそれぞれが向き合わなきゃいけない」(DF新井純平主将、スポ4=浦和レッズユース)。選手たちはここまでの11試合で自分たちの弱さ、リーグ戦の厳しさを痛感したはずだ。しかし、いつまでも悲観してはいられない。次戦のアミノバイタイル杯まで残された時間は2週間。ここ2年間遠ざかっている総理大臣杯への出場はなんとしても果たしたい。「成長するための時間を多くするためにも、決勝まで勝ち進んで優勝したい」とDF飯泉涼矢(スポ3=三菱養和SCユース)。『勝つ』ことでチームは強くなるはず。エンジイレブンの視線はすでに前を向いている。

(記事 郡司幸耀 写真 中村ちひろ、大森葵)

スターティングイレブン

関東大学リーグ戦第11節
早大 0-0
1-1
筑波大
【得点者】(早)84小林(筑)70中野
早大メンバー
ポジション 背番号 名前 学部学年 前所属
GK 21 小島亨介 スポ2 名古屋グランパスU18
DF ◎新井純平 スポ4 浦和レッズユース
FW →83分 飯泉涼矢 スポ3 三菱養和SCユース
DF 熊本雄太 スポ3 東福岡
DF 鈴木準弥 スポ3 清水エスパルスユース
DF 12 木下諒 社3 JFAアカデミー福島
MF 平澤俊輔 スポ4 JFAアカデミー福島
MF →73分 小林大地 スポ4 千葉・流通経大柏
MF 14 鈴木裕也 スポ3 埼玉・武南
MF 相馬勇紀 スポ2 三菱養和SCユース
MF 秋山陽介 スポ3 千葉・流通経大柏
FW 中山雄希 スポ4 大宮アルディージャユース
FW 15 武颯 スポ3 横浜F・マリノスユース
GK →77分 後藤雅明 スポ4 東京・国学院久我山
◎はゲームキャプテン
監督 古賀聡(平4教卒=東京・早実)
関東大学リーグ戦1部リーグ順位表
順位 校名 勝点 試合数 得点 失点 得失差
明大 24 11 24 11 +13
筑波大 19 11 19 10 +9
法大 18 11 13 +4
順大 17 11 22 18 +4
慶大 17 11 19 20 -1
桐蔭横浜大 15 11 14 15 -1
流通経大 14 11 13 17 -4
日体大 14 11 11 17 -6
早大 13 11 12 13 -1
10 駒大 12 11 15 16 -1
11 専大 12 11 17 19 -2
12 国士舘大 11 12 26 -14
※第11節終了時点※下位2チームは2部自動降格
コメント

DF新井純平主将(スポ4=浦和レッズユース)

――いまのお気持ちをお聞かせください

最終節、今後につなげるために何が何でも勝たないといけない試合の中で引き分けてしまったことやこの順位で(前期を)終えてしまったことが自分自身悔しいというか、主将としての責任を感じています。

――苦しい状況から追い付いての引き分けということで、この結果をどのように受け止めていますか

後半の最後、あれだけ走って選手全員が勝つためにやった中で追い付けましたが、勝ち越すことができなかったのは関東の厳しさだと思います。あれ以上のものを出さない限り勝てないのが関東リーグです。(終盤のエネルギーを)最初から出す覚悟がない限り勝てないと思います。

――新井選手のパスミスから小島選手の退場につながってしまいました

あれは自分自身のミスで、退場させてしまった小島に申し訳ないと思っています。

――この勝ち点1は今後に向けどのような意味がありますか

この立ち位置にそれぞれが向き合わなきゃいけないと思います。今季勝つ試合が少なかった中で、トレーニングからやっていかないとこの勝ち点1やこれまでの戦いが無駄になってしまいます。優勝に向けてすべて勝つしかないので、一人一人が取り組んでいくだけだと思います。

――アミノバイタル杯に向け、チーム全体でどのように取り組んでいきますか

ここ2年間総理大臣杯に出れていない中で、関東リーグと重みは変わらないですし、チームとして勝っていくしかこの現状を変えられないので、日々のトレーニングからやっていきたいです。

MF小林大地(スポ4=千葉・流通経大柏)

――途中出場となりましたが、ベンチから戦況をどのように見つめていましたか

結構相手はうまいですし、劣勢ではありましたけど予想していました。試合に出た時には周りの選手が疲労している状態で走れない状況だったので、自分が全部やってやろうという気持ちでずっと試合を見てました。

――何か指示はありましたか

とにかく走ってこいと。明大戦もでしたけど、足が止まってくると守備の面でファーストディフェンダーが決まらなくなってくるという話をされたんで、後半の残り少ない時間帯でしっかりお互いに声を掛け合って、ファーストディフェンダーを明確にしろと言われました。

――同点ゴールを決めたあのシーンを振り返っていかがでしょうか

1点ビハインドで、しかも1人少ないという状況で、リスクを負ってでも点を取らないといけない状況だったので、あのときは裕也(鈴木)を少し後ろめにして、俺が少し前気味にして関わっていこうと話していて。そしたらちょうどうまくそこのスペースにボールが転がってきたんで、うまく決められて良かったです。

――劣勢の中でなんとか追い付いて引き分けに持ち込みました。この勝ち点1についてはどう受け止めますか

きょうは絶対に勝たなきゃいけない試合だったので、引き分けも許されないですし、全く満足してないです。

――きょうで前期が終了しました。ここまでの11試合を振り返っていかがでしょうか

やっぱり自分たちがうまくいったときには勝ってますけど、なかなかチームとしても個人的なプレーでうまくいかないときになかなか逆境というか、チームにとってネガティブな状況下に耐えられるような選手が少ないからこそ、負けが続いている中で勝ちに結び付けることができなかったので、そういった逆境を跳ね返すだけの精神力を付けられるようにやっていきたいと思います。

――次戦のアミノバイタル杯に向けて一言お願いします

ここ2年総理大臣杯に出れてないんで、何としてでも出なきゃいけないですし、リーグ戦のこういった結果になってしまったけど、気持ちを切り替えてしっかり初タイトルを狙いにいきたいと思います。

MF平澤俊輔(スポ4=JFAアカデミー福島)

――きょうの試合を振り返っていかがですか

筑波大戦ということで厳しい戦いを予想していましたが、そこで勝ち切ることができなかったことは非常に残念だなと感じています。

――筑波大と戦ってみての印象は

非常にテクニックに優れている選手が多い中で、自分たちはファーストプレッシャーを掛け続けることをやっていましたが、失点のシーンも相手の特徴が出てしまっていたので、そこはうまかったなと思います。

――オフサイドにはなりましたがシュートシーンもありました。攻撃面を振り返っていかがでしょうか

自分のシーンも含めてチャンスもあった中で、少ないチャンスを決め切って勝ってきたというのがいままでの自分たちのかたちだったと思うので、前期を通して決め切ることができなかったと思います。そこは課題だと感じています。

――前後半を通して平澤選手のご自身のプレーを振り返って

まだまだ納得はしていませんし、当然自分の特徴である守備の部分を出さなければいけないと思うのですが、その逆の攻撃の部分でまだまだ自分が起点となれているかといったらなれていないですし、自分から攻撃が始まるかといったら始まらないですし、そこに関しては課題だなと思いますし、高めていかなければいけないなと思いました。

――最後に追い付いたという点は今後につながるという見方もできると思いますが、勝ち点1を取ったということをどう捉えていますか

勝ち点3しかないことで臨んでいたので、あの1点は大事な1点ではあったと思いますし、大地(小林)が取ってくれたというのはすごく良かったと思っています。ですが、自分としては失点をゼロにしたいという思いがあって、堅守がありきのワセダだと思うので、アミノバイタルカップも近いですし、しっかりとそこに向けて高められるようにしていきたいと思います。

――チームとして前期リーグ全体を振り返ってみて

自分たちの力が結果に表れたなと思いますし、まだまだ足りないということが突き付けられたなと感じています。ですが、上を目指していかなければいけないですし、まだ伸びしろがあると思って成長につなげていかなかればいけないと感じています。後期リーグは全勝するつもりでいかないといけないと自分では思っています。

――アミノバイタルカップに向けての意気込みをお願いします

勝利を待ってくれている人に対して、このままでは終われないですし、いまの4年生がやらないといけないと思っています。4年生中心にがんばっていかなければいけないなと思っています。

DF飯泉涼矢(スポ3=三菱養和SCユース)

――きょうの結果をどう受け止めていますか

前期の最終節で、残り勝つしかないという状況だったんですけど、そこで勝ち切れないというのがいまのチームの弱さかなと感じています。

――きょうの勝ち点1をどう捉えていますか

ただただ悔しいです。

――後半からの出場で、前線でプレーされていましたが、古賀聡監督(平4教卒=東京・早実)からはどのような指示を受けていましたか

前日から、もし負けていたらFWで出すという話はされていて、自分自身そういう準備はできていました。そこで結果を残すということを意識していましたし、監督からは全部競ってくれということと、球を追ってくれということを言われていたので、そこも意識してプレーしました。

――先発を外れていたことも踏まえて、きょうはどのような意気込みで試合に臨みましたか

先発で出る時はセンターバックになるんですけど、先発で出れていないというのは自分自身の責任ですし、調子も悪かったのでスタメンを外れるというのは妥当かなと思います。ただ、それ以外でもFWで出る機会があるというのは嬉しいことですし、出たら点を取るか得点に結びつくような働きをしないといけないということは分かっていたので、強い思いで臨みました。

――ご自身のプレーが得点につながった時のお気持ちは

残り時間が少なかったというのもあって、自分の力をすべて出し切って、もうひとつチャンスを作りたかったという気持ちです。残り少ない時間で出させてもらって、チャンスをどれだけ作れるかというところがあったので、得点には絡めたんですけど、もう1点取れたらもっと良かったです。

――前期リーグ戦を総括していかがですか

自分が出ている試合でも出ていない試合でも全然勝てていなかったので、前期から後期の間で自分たちがどれだけ成長できるかが重要だと思います。夏の総理大臣杯、アミノバイタル杯を含め、全て勝って成長していくしかないですし、後期自分たちが優勝するためにはそのぐらいの勢いが必要なので、オフシーズンでがんばって取り組みたいです。

――最後に、アミノバイタル杯への意気込みをお願いします

総理大臣杯に出場するためのアミノバイタル杯でもあるんですけど、自分たちの現状を考えると、どれだけ試合をこなして、きつい状況でも勝てるかというのが後期のリーグ戦につながると思っています。成長するための時間を多くするためにも、決勝まで勝ち進んで優勝したいです。

DF木下諒(社3=JFAアカデミー福島)

――きょうの試合を振り返っていかがですか

勝利だけを目指して1週間取り組んできて、今週の取り組みには手応えがありました、バチバチした雰囲気というか。そんな中迎えて引き分けという結果で。勝ちたかったというのが正直なところですが、1点取られた後エネルギーを出せたのはアミノ杯とか後期に向けて良いことだと思ったので、一から見つめ直していきたいとおもいます。

――筑波大の印象はいかがでしたか

スカウティングの時点で後ろから丁寧につないでくるというのは分かっていたんですが、印象よりも前に速く回してきていたという感じで、前半リスク管理がうまくできていなくてそこをもう少し見直そうということで後半入りました。全体的にうまいチームだなと感じました。それを自分たちのプレッシャーで上回るというのを目標にしていたので、もっと改善していかないとだなと思いました。

――失点の場面ではかなり悔しがっている様子が印象的でした

結論言ってしまえば、自分がファーサイドでしっかり注意してケアしていればよかったので、責任を感じてます。広く守るとか、ディフェンスラインでの連携は高めてきた部分であるので、真に落とし込んで、危険な場面や、人数が少なくてもしっかりできるように後期に向けて力を付けていきたいと思います。

――この試合で得た勝ち点1はどう捉えていますか

もちろん誰も勝ち点1に満足はしてないですし、11試合終わった時点で勝ち点13という現状に危機感しか感じていませんし。ただ、悲観的になってもいいことないので自分たちの現状を見つめた上で、夏の厳しい練習を経てこの結果をネガティヴに捉えるんじゃなくて、自分たちはやるしかないというエネルギーに変えてやっていこうと話し合いました。

――チームに定着して、11試合を終えましたが、前期全体を振り返ってどうでしたか

自分の特徴であるボールを前に運ぶ部分は、どことやっても見劣りしないと思っていますし自信を持ってるところではあるので、もう少し得点に絡むだとか、アシストとかやらないとチームを勝利に導けないと思ってます。だからそういうビルドアップの部分で満足するんじゃなくて、自分がチームを勝利に導くんだという意識をもって、もっと高めていきたいなと思います。

MF相馬勇紀(スポ2=三菱養和SCユース)

――きょうの試合を全体的に振り返っていかがですか

やっぱり勝ち点3が必要な試合だったので悔しい思いはあるのですが、逆にここまで来てしまったのでポジティブに考えればこの勝ち点1は優勝に向けて良い方向にいけたらいいなと思います。

――きょうはドリブルで仕掛ける場面がいつもより少ないように感じました

確かにあまり長所が出せず悔しいです。結構相手がうまい分自分が守備に回る時間が多く、そこで攻撃に出れないことが課題だと思います。

――前期を9位で折り返したことについてはどう考えていますか

リーグ戦連覇を掲げている中でこういう順位になったことは悔しいのですが、これが実力だと思います。9位という順位は本当になるべくしてなってしまった順位だと思っていて、でもいまの成績を変えることはできないので、リーグ戦3ヶ月空きますけど死ぬ気で練習して11連勝で優勝できるようにがんばっていきたいと思います。

――前期11試合を全体的に振り返ってみていかがですか

最初の4戦は3勝1分で良いスタートが切れたと思うのですが、その後は本当の関東リーグの厳しさを痛感したという感じです。

――途中から先発出場となりましたがそのことについてはどう振り返りますか

自分がシーズン前から一つ目標にしていたスタートから出るということを勝ち取れたことは良かったのですが、自分が出てからチームが勝てないということで、もっと本当にチームの勝利に導けるようなプレーをできるようにならなければいけないなとは思いました。

――いまのチーム状況についてはどう捉えていますか

勝てていないですけど、別に負けたからと言ってチーム全員が掲げている優勝という目標がぶれた訳ではないし、チーム一丸となって練習するだけだと思うので、その気持ちはみんな同じだと思います。

――アミノバイタル杯に向けた意気込みをお願いします

去年おととしとアミノ杯で負けて総理大臣杯に出れていなくて、ことしは三冠というものを掲げているので、アミノ杯に勝って総理大臣杯の切符をつかむとともにアミノ杯も優勝していけたらいいなと思います。