いざ、40年ぶりの関東大学リーグ戦(リーグ戦)連覇へ――。昨年、18年越しの悲願を達成したワセダは、流通経大とのオープニングマッチに挑んだ。相手が強豪であるということに加え、エース・FW山内寛史副将(商4=東京・国学院久我山)の不在もあり、苦戦が予想されたが、立ち上がりから走力で圧倒。短長を織り交ぜたパスワークで敵陣を攻め立て、前半終了間際にFW中山雄希(スポ4=大宮アルディージャユース)のヘディングシュートで先制する。迎えた後半、序盤こそ相手ペースだったものの、60分に再び中山がネットを揺らした。守備陣も前線の活躍に応え、最後までゴールラインは割らせず。結果、2-0で完勝し、関東制覇に向けて幸先の良いスタートを切った。
序盤から強気のプレスで主導権を握り、ディフェンスラインにボールを集めるワセダ。6分、DF飯泉涼矢(スポ3=三菱養和SCユース)が後方から前線にロングボールを入れると、中山が相手DFの裏に抜け出し、シュート。惜しくも枠を捉えることができなかったが、早々に相手の意表を突いた。試合中盤に入ると、互いに打ち合うオープンな展開に。33分には流通経大にセンターサークル付近でのFKからポスト直撃のシュートを浴びるなど、肝を冷やす場面も見られた。しかし、ワン・ツーや楔(くさび)のパスで次々とチャンスを演出すると、44分、中山がMF秋山陽介(スポ3=千葉・流通経大柏)のクロスに頭から飛び込み、ゴールを挙げる。1-0でリードし、良い流れで前半を終えた。
チームメイトと共に喜ぶ中山(9)
後半に入ると、流通経大にボールを支配され、自陣に押し込まれる展開が続く。50分、縦パスを通されゴール正面でのシュートを許すも、守護神・GK後藤雅明(スポ4=東京・国学院久我山)がビックセーブ。徐々にテンポを取り戻すと、60分には再び中山。「純平(DF新井純平主将、スポ4=浦和レッズユース)のクロスが来るんじゃないかと準備していたら、本当に来た」と新井主将のシュート性のクロスをPA内で受けると、相手DFをかわし、冷静にゴールへ流し込む。2-0とし、流通経大を突き放した。その後も中山を中心に好機を演出し、敵陣を攻め立てる。終盤、ギアを上げてきた相手に立て続けにクロスを上げられるも、飯泉やDF熊本雄太(スポ3=東福岡)を中心に相手を封じ込め、ゴールを死守。最後まで得点を許さず、2-0で強豪・流通経大を下した。
新センターバックコンビの飯泉(4)と熊本(3)
「全員の守備意識は高かった」(DF木下諒、社3=JFAアカデミー福島)。難敵を無失点に封じ、昨年に引き続き守備の堅さをアピールしたワセダ。前線の選手による強度の高いプレスや球際の激しさは今後も強豪校との戦いが続く中で大きな武器になるだろう。加えて、後方からのロングボール、サイド攻撃、中央を経由しての細かいパス回しなど、崩しの引き出しの多さも際立った。しかし、「きょうのパフォーマンスに満足しない」(中山)、「まだ気は抜けないです。ここからどれだけ挑戦し続けて成長できるかが大事」(新井主将)と選手たちは強敵相手に完勝という結果にもおごらず、すでに先を見据えている。エンジイレブンは常に挑戦者として戦いに挑み、勝ちにいく。次節もハードワークに期待したい。
(記事 佐藤諒、写真 大森葵、進藤翔太)
スターティングメンバー
★ついに開幕!熱戦再び
試合に先立ちリーグ戦1部、2部の全大学が集い今大会の開会式が執り行われた。優勝トロフィー、優勝旗返還の後、荘厳な雰囲気の下、前年度覇者である早大から新井主将が選手宣誓に登壇。緊張の面持ちの中、新井主将はことし創設から90年の節目を迎えたリーグ戦の歴史に言及。プレーできる喜びに感謝の意を述べ、「正々堂々、全力を出し切って戦うことを誓います」と高らかに宣言した。
優勝トロフィーを返還する新井主将。再び掲げることはできるか
関東大学リーグ戦第1節 | ||||
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早大 | 2 | 1-0 1-0 |
0 | 流通経大 |
【得点者】(早)44,60中山 |
早大メンバー | ||||
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ポジション | 背番号 | 名前 | 学部学年 | 前所属 |
GK | 1 | 後藤雅明 | スポ4 | 東京・国学院久我山 |
DF | 2 | ◎新井純平 | スポ4 | 浦和レッズユース |
DF | 3 | 熊本雄太 | スポ3 | 東福岡 |
DF | 4 | 飯泉涼矢 | スポ3 | 三菱養和SCユース |
DF | 12 | 木下諒 | 社3 | JFAアカデミー福島 |
MF | 6 | 平澤俊輔 | スポ4 | JFAアカデミー福島 |
MF | 11 | 小林大地 | スポ4 | 千葉・流通経大柏 |
MF | 13 | 今来俊介 | 商3 | 神奈川・桐光学園 |
→61min. | 7 | 相馬勇紀 | スポ2 | 三菱養和SCユース |
MF | 8 | 秋山陽介 | スポ3 | 千葉・流通経大柏 |
→89min. | 19 | 須藤駿介 | スポ3 | 静岡学園 |
FW | 9 | 中山雄希 | スポ4 | 大宮アルディージャユース |
→85min. | 34 | 直江健太郎 | 商2 | 東京・早実 |
FW | 17 | 岡田優希 | スポ2 | 川崎フロンターレU-18 |
◎はゲームキャプテン 監督 古賀聡(平4教卒=東京・早実) |
コメント
DF新井純平主将(スポ4=浦和レッズユース)
――開幕戦勝利おめでとうございます。いまのお気持ちをお聞かせください
開幕戦に勝利できたことはうれしいですけど、本当にここからだなという気持ちでいっぱいです。
――2-0という結果をどのように捉えていますか
なかなか点が取れないと言われていた中で2点取れたのは大きいことだと思います。その中でもいくつかチャンスを決められなかったシーンもありましたし、きょうは2点決められましたけど今後はそんなチャンスはないでしょうし、一つ一つのチャンスを大事に決めていくことができないと勝てないと思っているので、そういった部分では今後の積み上げが必要になってくると捉えています。
――今季から主将として臨むことになりますが、試合前主将としてどのような声掛けをしましたか
こんな素晴らしいピッチで試合できることはあんまないので、今回が初めてのリーグ戦出場になる選手も多くいる中で全員で強みを出すために「自分らしさを出せ」と言いました。きのうの決起ミーティングで「メンバーだけじゃなくてチーム全体で本気で戦う」ということを話した中、スタンドの選手も本気で戦ってくれたと思います。「一人一人に(応援してくれる人へ)感動を与えることができる幸せな権利がある」と言ったので、そういった部分を噛み締めようとしました。
――初めてリーグ戦に出る選手も多い中、開幕戦ということでチーム内で緊張もあったのではないでしょうか
そうですね。「緊張している」というのは何人かから聞きましたけど、緊張が大きければ大きいほど成長できるというか、それを乗り越えたら大きく成長できると思うので、そういった意味で緊張は良い方向に捉えました。試合を含めて、一人一人がプレッシャーや緊張に負けずにプレーできていたんじゃないかと思います。
――攻めている時間にしっかり先制点が取れた点に関してはいかがでしょうか
その前の相手のシュートがポストに当たったのは運が良かったというか、いつ先制されてもおかしくない中でそこを守り切って自分たちが先制できたのは本当に大きいことだと思います。いままでの結果を振り返っても先制できた試合は良い結果につながるので、自分たちが先制できたのは大きかったと思います。
――2点目では早くも新井選手に今季初アシストがつきました
あれはラッキー、たまたまというか(笑)。雄希(中山)が決めてくれたのもあります。その他にも自分がアシストできた場面はたくさんあったので、そこは自分自身で重く捉えないといけないですし、自分がもっと勝負を決められる選手になんないといけないと思います。
――エースである山内副将が抜けたFW陣で中山選手がしっかり結果を残してくれました
雄希が試合に出られなかった期間であいつが苦しんできたのも知ってますし、ケガの期間が多くあった中で、きょうチャンスをつかめたのは大きいことだったと思います。同期である中山が決めたことで他のメンバーも「自分がもっとやらなきゃ」と思ったでしょうし、自分自身も含めてお互いを高め合う状況が生まれてきたので、中山もこれで終わりじゃないですし、これからどれだけチームを勝利に導くかが試されると思います。お互いにがんばっていけたらなと思ってます。
――完璧ではないものの、無失点に抑えた守備陣に関してはいかがでしょうか
ディフェンスラインの4人は「無失点にこだわってやっていこう」と話した中で、危ないシーンは何度もありましたけど、最後に体を投げ出す部分であったり、全員が集中力を切らさずにできたのは本当に良かったことだと思います。これは今後につなげていかないといけないことなので、どれだけそこにこだわって最後を守り切れるかを意識してやっていきたいです。
――流通経大という難しい相手に開幕戦勝利を挙げられた点いかがでしょうか
本当に開幕戦で勝利を挙げられたのは大きいと思います。ただ、まだ22試合分の1であることには変わりはないですし、きょねんはここから最下位に落ちてるのでまだ気は抜けないです。ここからどれだけ挑戦し続けて成長できるかが大事になってくると思います。
――これから始まる長いシーズンに向けての抱負をお願いします
きょうよりも厳しい試合が続いていく中で、どれだけ選手がワセダらしさを出していけるかだと思います。自分たちは現状維持じゃ絶対にダメなので、1試合1試合勝ちたいという思いを表現してやっていきたいです。
FW中山雄希(スポ4=大宮アルディージャユース)
――初戦は流通経大との戦いとなりましたが、何か意識したことはありましたか
怪我で離脱してしまっていたので、必ず戦いたいという思いがあって、きょねんの10月に手術をしてしまって、山内が俺の分も戦うと言ってくれたので、今度は山内のためにも戦いたいというふうに思っていたので、きょうは結果を出せて本当にうれしかったです。
――関東大学リーグ戦が開幕するにあたって、緊張はありましたか
正直全大学が見に来ている中での、大舞台でのプレーっていうのは高校時代から含めてあまりなかったので、多少は緊張しましたけど、そのプレッシャーが良い緊張感になって楽しめたっていうのもあるので、きょうは忘れられない日になりました。
――きょうは2得点を挙げ、チームを勝利に導きました
先制点を取る前に自分自身決定機を何回も外していたので、このまま外したら自分のせいで負けたと思ったので、必ず次のチャンスで決めてやるぞと思っていました。1点目は秋山(MF秋山陽介、スポ3=千葉・流通経大柏)のクロスがあったから取れたし、2点目だったら新井のパスがあったから取れたし、得点に関してはその二人に感謝したいなと思います。
――1点目を振り返って
相手がクロスへの対応をしっかりしてくるDFだということは知っていたので、駆け引きっていうのを意識して、前に出たり後ろに入ったりっていうのを繰り返して駆け引きした中で、相手のDFをはがして思い通りに点を決められたっていうのは良かったと思います。
――2点目を振り返って
あんまり覚えてないんですけど(笑)、純平のクロスが来るんじゃないかと準備はしてて、本当に来たので、あの予測が点を生み出したので。そこからは相手のDFをしっかり見て点を決めることができたので、良かったです。
――きょう、中山選手のパフォーマンスはかなり良かったように思われるのですが、自身で振り返ってみていかがでしょうか
オフシーズンまったく調子も上がらず、きょねんの手術してからのコンディションをなかなか上げることができなかったんですけど、オフシーズンの対外試合でも点を決められず、チームに迷惑ばかり掛けていたので。きょうのパフォーマンスにはまったく満足していなくて、これから先もっと手強い相手と戦うことが予想されるので、成長していけるように、きょうのパフォーマンスに満足しないでまた明日から高めていきたいと思います。
――先ほどのお話にもありましたが、山内副将が不在の中、好成績を残すことができたことは、同期としてうれしさもひとしおですね
さっきも言ったように、ヒロ(山内)のために自分が結果を出したいっていうのをチームのみんなにも伝えていた中で、この試合に入ったので、有言実行というかたちで点を決められたのは良かったです。他にも、あいつがいないから勝てないとか、あいつがいないから点が入らないっていうふうに絶対に思われたくなかったので、あいつのためにもっていう気持ちもありつつ、そういった気持ちもありました。
――最後に次戦へ向けての意気込みをお願いします
自分たちはまだまだ成長していかないといけないチームなので、明日から集中力を高めてこの1週間いけるように、順大に勝てるように、やっていきたいと思います。
DF木下諒(社3=JFAアカデミー福島)
――開幕戦を勝利で飾りましたがいまのお気持ちはいかがですか
開幕戦の勝利のためだけにまずはオフシーズンやってきたという部分もありました。自分たちの挑戦する姿勢をこの試合でも出し続けて、勝利を目指すということを目標にやってきたので、そういう面できょうのようなタフな試合を勝ち切ることができてよかったと思います。
――リーグ戦では初のスタメンとなりましたね
そうですね。少し緊張はしたのですが、入ってしまったらいつもとやることは変わらないので平常心でやることに努めました。
――きょうの試合を振り返っていかがですか
前半は自分のサイドで先手を取ることができて、うまく攻撃までつなげることができたと思うのですが、後半はほぼほぼ押し込まれてしまいました。苦しい展開が続く中でツーセンターバックやディフェンスライン、GKを含めてセカンドボールを拾うのを意識して、相手も競り合いは強かったですがそこで集中を切らさなかったことがきょうの勝因だと思います。
――中盤での守備も効いていた印象がありましたが
後ろからすると前線があれだけプレッシャーをかけてくれて、中盤が前向きに守備をしてくれたおかげで自分たちは準備をしてしっかりと弾き返すことができたと思うので、そういう点で全員の守備意識は高かったなと思います。
――攻撃面では昨年とはスタイルが違うと思いますが意識していることなどはありますか
自分たちが目指すサッカーとして、相手が整う前に速さを出して勝負を仕掛けるというものがある中で、きょねんは結構ロングボールが多くて、そこから自分たちの展開が悪くなったりする場面もありました。自分は身長も高くないですし、相手をよく見てつないでボールを運んでいくことが特徴でもあって、ことしはそういったところを強みにしている選手が多く出ていると思います。なので、個でボールを運ぶことやロングボールに頼らないという姿勢が、自分が少しでも前にボールを運んでシュートを狙うことでゴール前にもつながっていますし、組み立ての部分でも違いとして出てきていると思います。そういった部分では、見ている人たちに少しわかってもらえていたらうれしいなと思います。
――右サイドの新井主将との連携はいかがですか
純平くんがいったら自分が絞る、自分がいったらスライドして純平くんが絞ってくれるというように、ディフェンスラインでの絞り込みの意識は共通理解としてできていると思うので、信頼できると思います。
――きょうでリーグ戦が開幕となりましたが、ことし一年の目標を教えてください
チームとしてはリーグ戦2連覇という目標があるのでそれに向かってやっていくのですが、内容として自分たちが常に常に挑戦をして、一試合一試合の中で成長をした末に2連覇が見えてくるように、一試合一試合チャレンジャー精神を持って挑戦をしていきたいと思います。
――次節への意気込みをお願いします
まだスカウティングをしていないので相手がどんな感じでやってくるかわからないのですが、きょねんのスタイルからするとしっかりつないでサイドでドリブルをしかけてくるようなイメージがあります。まずはしっかりとスカウティングをして、自分たちの強みを発揮して勝利できるようにしたいです。
DF熊本雄太(スポ3=東福岡)
――試合全体を振り返っていかがでしたか
立ち上がりから、前線からプレスにいけたので、相手にボールを蹴らせることができて、それをこっちが回収するといういつもの流れ通りにいけました。でも前半途中の相手に惜しいシュートを打たれたあたりから押し込まれるシーンも多かったですね。前半終わり際に、雄希くん(中山)が点を決めてくれて自分たちの流れになったんですけど。後半は立ち上がりからずっと相手に押し込まれていて、それをはね返せなかったというか、チャンスがなかったです。そんな状況でも、また雄希くんが(ゴールを)決めてくれて、自分たちの流れに持っていけたと思います。最後の方も押し込まれてしまったんですけど、中盤で体を張ってディフェンスできたことが良かったのかな、と思います。
――リーグ開幕戦でしたが、どんな思いで試合に臨みましたか
1、2年生の時は全然(レギュラー争いに)絡めていなくて、この試合がリーグ戦では初めてのスタメン出場でしたし、今までピッチの外で見てきた悔しい思いだったり、そういった思いをこのピッチにぶつけてやろうと思ってました。
――この試合ではセンターバックからロングフィードを前線に送る場面が多く見られましたが、今季のセンターバックはそういったプレーも要求されてくるのでしょうか
そうですね。ことしのセンターバックは、昨シーズンに比べてロングフィードだったり、周りを見るということができていると思いますね。特にきょうは、相手のセンターバックが裏のスペースへの対応に弱みを抱えてる感じだったので、ロングボール一発でいこう、という話もしていました。
――逆にディフェンスの場面では、相手のロングボールに対して競り合いで優位に立てていましたね
そこは自分も飯泉も強みとしている部分なので。そこは絶対に負けないというふうにいつも言っていますし、練習のときから意識してやっています。そういった自分の強みを出せたので、そこは良かったと思います。
――試合後には飯泉選手と肩を組んで喜んでいましたね
二人ともリーグ戦のスタメンは初めてで、よく話し合ったりもしていたので、最後はお互いに良くやった、という感じでした。
――次は順大が相手ですが、どんな相手だと捉えていますか
一人一人がうまいですね。きょうのようにロングボールが多いチームではないと思うので、ディフェンスの距離感とか、ディフェンスでの共有だったり、対応力を強めていかないといけないと思います。なので、この一週間で、ディフェンスの距離感だったり、コミュニケーションだったりを意識してやっていきたいと思います。