前節の敗戦(日体大戦、●3-4)により、来季のインディペンデンスリーグ(Iリーグ)2部降格が決まってしまったワセダ。今節は降格のショックを引きずることなく、攻守において好連携を見せる。同点で迎えた後半終盤、途中出場のFW直江健太郎(商1=東京・早実)とMF榎本大輝(社1=東京・早実)が立て続けにネットを揺らし、中大を突き放す。早実出身ルーキーコンビの活躍が光ったワセダがグループステージ最終節を勝利で締めくくった。
悪夢の敗戦から2週間、エンジイレブンは名門ワセダの誇りを胸に、グループステージ最終節のピッチに立った。しかし、試合は思わぬかたちで幕を開けることとなる。前半14分、DF陣の背後にロングボールを蹴り込まれると、飛び出してきたGK斉藤康平(法3=静岡・清水東)と相手選手が交錯。ひやりとする危険なプレーに対し、主審は注意を与えるのみに終わりノーカードの判定。このジャッジに中大ベンチが猛抗議をすると監督に退席処分が下されてしまう。騒然とする中、再開されたFKを堅実な守備で切り抜けると、冷静さを失わなかったワセダが徐々に試合の主導権をにぎっていく。選手同士の距離感が良く、高いサポート意識で相手を制圧。攻守両面において中大に付け入る隙を与えない。24分、DF小笠原学(社1=青森山田)が巧みな攻撃参加により相手守備網を打開すると、最後はFW西本八博(スポ3=岐阜・多治見北)が右足を振り抜く。「ようやくつかんだチャンス」と並々ならぬ思いで試合に臨んでいた西本が大きな先制点をチームにもたらした。リードのまま前半を終えたかったワセダだが、40分に同点弾を許してしまう。ここまで崩されていなかっただけにもったいない失点ではあったが、期待の持てる内容で前半を折り返した。
先制点を決め、前線で躍動した西本
勝ち越しを目指し臨んだ後半は、お互いに決定機に欠け膠着(こうちゃく)した展開に。ワセダは交替策で流れを変えようとすると、この采配が見事に的中する。84分、PA内への浮き球に西本が競り勝つと、その落としを途中出場の直江が振り向きざまに反転ボレー。DFを背負いながら放たれた力強いシュートはゴール右隅に突き刺さり、ついに試合が動く。流れを手繰り寄せたワセダはその2分後、こんどは第1節以来の久しぶりの出場となった榎本がダメ押しの3点目。「2人でゴールを決められて本当に良かった」(榎本)と振り返るように、苦楽を共にしてきた早実出身の1年生コンビが大きな2点をスコアボードに刻む。そして試合終了のホイッスル。終盤に強固なチーム力を発揮したエンジイレブンが勝利をつかみとり、グループステージ最終節はここに幕を閉じた。
榎本がダメ押し弾を決めたのは投入からわずか3分弱であった
上位進出はおろか、まさかの降格という結果に終わった今季のIリーグ。満足のいかない戦いであったことは間違いない。しかし、この試合で見せたように、選手一人一人の意識が変わりチーム全体が大きく成長したことは確かである。全ての経験を糧に、また一つ歩みを進めていくエンジイレブン。今季のIリーグも残すは順位決定戦のみとなった。最後の90分に何を証明するのか――。次節、それは激闘の終わりであると共に、未来への新たなる旅路のはじまりだ。
(記事 桝田大暉 写真 米澤英輝)
スターティングメンバー
Iリーグ第15節 | ||||
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早大U-22 | 3 | 1-1 2-0 |
1 | 中大U-22A |
【得点者】(早)24西本 84直江 86榎本 |
早大メンバー | ||||
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ポジション | 背番号 | 名前 | 学部学年 | 前所属 |
GK | 1 | 斉藤康平 | 法3 | 静岡・清水東 |
DF | 2 | 小笠原学 | 社1 | 青森山田 |
DF | 3 | 山本新太郎 | スポ2 | ジュビロ磐田U-18 |
DF | 4 | 高岡大翼 | 社1 | 広島皆実 |
DF | 6 | 恩田雄基 | スポ4 | 埼玉・西武台 |
MF | 10 | 須藤駿介 | スポ2 | 静岡学園 |
MF | 14 | 石川大貴 | スポ2 | 名古屋グランパスU-18 |
MF | →82分 | 榎本大輝 | 社1 | 東京・早実 |
MF | 8 | 渋谷勇太郎 | 社3 | 神奈川・桐蔭学園 |
MF | →64分 | 下島健 | 先理3 | 広島国泰寺 |
MF | 9 | 小長谷勇太 | 人4 | 静岡・清水東 |
MF | →74分 | 多田八起 | 商3 | 神奈川・桐光学園 |
FW | 11 | 西本八博 | スポ3 | 岐阜・多治見北 |
FW | 7 | 柳沢拓弥 | 社2 | 清水エスパルスユース |
FW | →69分 | 直江健太郎 | 商1 | 東京・早実 |
監督は竹谷昂祐(平26スポ卒=ガンバ大阪ユース) |
コメント
FW西本八博(スポ3=岐阜・多治見北)
――グループステージ最終節となったこの試合、チームではどのようなことを話して臨まれましたか
Iリーグの(1部)残留はなくなってしまいましたが、このIリーグで結果を残さないと上のチームへ上がっていくことはできないと言っていて、結果を出して全員で上を目指していくという気持ちで臨みました。
――久しぶりの先発出場になりましたが、どのような意気込みで試合に入りましたか
ずっとAチームを目指して練習してきてようやくつかんだチャンスだったので、これを絶対に逃しちゃいけないと思って、とにかく点を取ってチームの勝ちに結び付けられるようにしようと臨みました。
――有言実行のかたちで先制ゴールを決められましたね
前半の最初から点を取ろうという気持ちを出せていて、シュートの数も多かったので、それがゴールにつながってよかったと思います。
――選手同士の距離感が良く、攻守に良い連携を見せていましたがいかがでしたか
チームで守備でも攻撃でも関わり続けることをずっとやってきました。前半は自分たちからボールを奪いにいくことがあまりできませんでしたが、ボールを入れられてからはうまく関われたのかなと思います。
――終盤に試合を決めたFW直江健太郎(商1=東京・早実)選手とMF榎本大輝(社1=東京・早実)選手の活躍はいかがでしたか
本当は自分が決められるのが一番良かったと思いますが、Iリーグに先発で出ていないサブの選手たちも試合を決める力があるということでBチームの競争も激しくなるので、自分も二人に負けないで点を取って試合を決めるようにならないとなと思いました。
――最終節を勝利で締めくくることができました
ワセダとして、ア式蹴球部の一員として、1試合に懸ける思いや1試合の重みを変えちゃいけないと思います。勝利というかたちでしっかり結果を残したのは意味あることだと思います。
――納得のできない結果となってしまいましたが、ここまでのIリーグ全体を振り返っていかがですか
Iリーグ全体を通して、自分も納得いかない期間があって、そういう期間に自分がチームに貢献できてなかったからこそこういう結果になってしまったのかなと思います。来年は2部になってしまいますが、自分を含めた全員でIリーグを1部に戻すことを掲げてやっていきたいです。
――順位決定戦に向け抱負をお願いします
きょうと試合の重みを変えてはいけないので、次もチャンスだと思って結果にこだわり、自分が試合を決める思いで臨んでいきたいです。
MF榎本大輝(社1=東京・早実)
――無事白星を飾ることができた今節の振り返りをお願いします
自分は初戦に出場した以外はメンバーに入ることができず悔しい思いをしてきたので、その悔しさを全てぶつけようと思って試合に臨みました。
――久々のIリーグ出場となりましたがどんな心境でピッチに立ちましたか
いままで出場できなかった悔しい気持ちをぶつけてやろうというのと、CチームにずっといたのでCチームの思いも背負っていこうと思いました。
――途中出場に当たってベンチから何か指示はありましたか?
指示は特にありませんでしたが、10番のMF須藤駿介(スポ2=静岡学園)がとても疲れていたのでなんとかして助けようと思っていました。
――途中出場からわずか3分で決めたご自身の今シーズン初得点について振り返ってください
相手のSBなどが全員右サイドに偏っていたので、いけるなと思っていました。パスを受けてからはいつもよりキーパーがよく見えていたので冷静に逆を突くことができて良かったです。
――きょう2点目を決めたFW直江健太郎(商1=東京・早実)選手とは早実時代からの同級生ですね
健太郎とは3年間ずっと一緒にプレーしてきて、ずっと前で体を張ってがんばっていたので公式戦で2人でゴールを決められて本当に良かったです。
――きょうがグループステージ最終節となりましたが、今シーズンを振り返っていかがですか
チームとしては降格してしまい、厳しい1年でしたが最後にこうして勝つことができてよかったです。
――今後、榎本選手自身は、どのような選手になりたいですか
自分の持ち味である運動量を生かして、いつでも走れて、欲しい時に点を取り、守備もがんばれる選手になって、チームを下から支えたいです。