長い暗闇の先についに光が差した。第3節以来勝ち星から遠のいているワセダはこの日、東海大を相手に気迫溢れるプレーを見せる。粘り強い守備でピンチを跳ねのけるとFW石神佑基(スポ1=埼玉・市浦和)が先制点を奪取。後半の早い時間帯に追い付かれるとその後は一進一退の展開に。最後まで追加点を奪うことはできず悔しい引き分けとなるも、連敗を止める大きな勝ち点1をつかみ取った。
試合前、選手全員が声を掛け合い、心を一つにする。前日に王者・専大を撃破した(関東大学リーグ戦、○2-1)Aチームに続けと言わんばかりに、エンジイレブンは開始直後から気持ちを前面に押し出した。セカンドボールを拾われ、押し込まれる時間帯が続くも、DF西山航平(スポ4=浦和レッズユース)を中心に粘り強い守備でゴールラインを割らせない。課題であった守備で奮闘し相手の勢いを削ぐと、ワセダはセットプレーから徐々に流れをつかみ始める。前半27分、左からのCKをファーサイドのDF山本新太郎(スポ2=ジュビロ磐田U-18)が折り返しゴール前にいた石神が詰める。ボールはラインを完全に超えていたが判定はまさかのノーゴール。しかし、歓喜の瞬間はすぐに訪れた。その8分後、MF川井健吾(創理4=東京都市大付)が精度の高いFKを送り込むと石神がヘディングで流し込み、待望の先制点を奪う。ピッチに広がる歓喜の輪。是が非でも欲しかった1点を決め、さらに躍動するワセダ。この日は何かが違う――。上々の前半をリードで折り返し、勝ち点獲得に大きく前進する。
先制点を決める活躍を見せた石神
迎えた後半、東海大も黙ってはいない。49分、ワセダは人数を掛け攻め込む相手を跳ね返し切れず、PA付近の混戦を招く。そして最後はニアサイドを射抜かれ同点に。その後も逆転を目指し勢いを増す東海大の攻め。DF陣が体を張って守り抜くと、試合は息を飲む一進一退の攻防に。降りしきる雨の中、勝利を渇望するエンジイレブンのプレーに熱い思いがこもる。89分、絶好の位置でFKを獲得。しかしMF小長谷勇太(人4=静岡・清水東)の狙い澄まされたシュートは惜しくも相手GKに弾き出される。刻々と迫る試合終了の時。直後のCKも得点に結び付けることは叶わず、ついに長いホイッスルがピッチに鳴り響いた。
西山のプレーが試合を通してチームを鼓舞した
試合後、選手の表情には勝ち切れなかった悔しさがにじみ出ていた。しかしこの『勝ち点1』は数字以上の大きな意味を持つだろう。「一歩進むことができた」(GK中村大志、法4=東京・早大学院)。6連敗という長く険しい暗闇の先に見えた一筋の光。この試合で得たものを無駄にしないためにも、次の一戦が非常に重要となる。目指すは勝利のみ。エンジイレブンはいままさにどん底から這い上がろうとしている。
(記事 桝田大暉 写真 梶井夏葉、松本理沙)
スターティングメンバ―
Iリーグ第10節 | ||||
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早大U-22 | 1 | 1-0 0-1 |
1 | 東海大U-22A |
【得点者】(早)35石神 |
早大メンバー | ||||
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ポジション | 背番号 | 名前 | 学部学年 | 前所属 |
GK | 1 | 中村大志 | 法4 | 東京・早大学院 |
DF | 2 | 多田八起 | 商3 | 神奈川・桐光学園 |
DF | 3 | 山本新太郎 | スポ2 | ジュビロ磐田U-18 |
DF | 4 | 西山航平 | スポ4 | 浦和レッズユース |
DF | 5 | 山本有一 | 人4 | 神奈川・桐蔭学園 |
MF | 6 | 山本隼平 | スポ1 | 新潟・北越 |
MF | 7 | 川井健吾 | 創理4 | 東京都市大付 |
MF | →70分 | 石川大貴 | スポ2 | 名古屋グランパスU-18 |
MF | 8 | 臼倉宏 | 文構2 | 東京・暁星 |
MF | →77分 | 牟田翼 | 基理4 | 佐賀・鹿島 |
MF | 9 | 小長谷勇太 | 人4 | 静岡・清水東 |
FW | 10 | 広田佑 | 商1 | 神奈川・桐蔭学園 |
FW | →87分 | 直江健太郎 | 商1 | 東京・早実 |
FW | 11 | 石神佑基 | スポ1 | 埼玉・市浦和 |
監督は竹谷昂祐(平26スポ卒=ガンバ大阪ユース) |
コメント
GK中村大志(法4=東京・早大学院)
――試合を終えて率直な感想をお願いします
いま厳しい状況であると同時に、昨日Aチームが専大に勝った(関東大学リーグ戦、◯2-1)ことでモチベーション高くこの試合に臨め、前半を1-0で折り返すことができていままでのIリーグとは違う状況をつくり出すことができました。しかし、後半失点して追加点を取ることができなかったのが正直一番もったいないなという感じです。
――やはり昨日の専大戦の勝利は大きな刺激になったのでしょうか
そうですね。いままでAチームも専大に勝っていなくて(Iリーグのメンバーと)同じような気持ちだったと思うんですけど、最後まで体を張って泥臭く点を取っていた姿勢をこの試合前のミーティングで全員が口に出していました。そういった体を張って泥臭くても点を取るということがBチームには足りないのかなと思います。
――試合前からメンバー全員で声を掛け合っていて、いつもと違う印象を受けました
TRAUM CUP(TRAUM CUP 2015 in SUMMER)でチーム全員で戦ったり雰囲気を良くしていこうとして優勝できたのですが、先日の流通経大戦(⚫︎1-3)ではそれができませんでした。それを皆がわかっていたので、そのTRAUM CUPからの流れをきょうはできたのかなと思います。
――粘り強い守備で先制点を与えなかったのは大きな点だったのではないでしょうか
前半は確かに良かったです。しかし、後半の入りの時間で失点してしまったのがあるので、前半良くても90分を通してそれができないのは課題かなと思います。前半良くても後半がだめだったり、前半がだめで後半が良かったりと、試合を通して(良い守備を)やり続けるというのがまだまだできていないと思います。
――勝ちを逃すかたちにはなりましたが、非常に意味のある勝ち点1になったのではないでしょうか
そうですね!6連敗をしていた状況を考えればこの勝ち点1は大きいです。しかし勝たないと意味ないなとも思います。ポジティブに捉えるなら一歩進むことができたという感じです。
――次こそ勝利が欲しい大事な試合になります。次戦に向けて抱負をお願いします
ゴールを守る・ゴールを決めるということを意識してこの一週間トレーニングをして絶対に勝てるようにやっていきたいです。
DF西山航平(スポ4=浦和レッズユース)
――お疲れ様です。引き分けという結果でしたが振り返っていかがですか
6連敗していた中で自分たちが求めていたのは勝ち点3、つまり勝利だけだったので、チームとしても個人としても勝利に導けなかったこと、勝利をつかめなかったことは本当に悔しく思います。
――しかし勝ち点1をつかんだということは大きかったと思いますが
6連敗から脱したという見方をすればポジティブなのかもしれませんが、自分たちは優勝だけを掲げているので現状はワセダのあるべき姿ではないと思います。きょう勝てなかったことが全てなので勝ち点1を取れたからといってそこに逃げてはいけないですし、自分たちはFIRSTを目指し続けなければいけないので、勝ち点3を取れなかったのは悔しいです。
――きのうAチームが公式戦で久々に専大に勝利(関東大学リーグ戦、○2-1)しましたが、それはチームへの刺激となったのでしょうか
そうですね。きのうは自分が大学に入ってから一度も勝てていなかった専大との対戦でした。きのうの一戦のためにAチームだけではなくてBチームも含めて全員が勝利のために1人1人の立場や役割でできることをやってくれたことで勝利をつかめたのかなと思います。きのうの試合を通して、勝つためにどういうサッカーをすればよいのかというものをAチームの選手たちが自分たちに良い刺激として与えてくれたと思うのですが、Bチームは勝つためにという最終目的をまだまだ理解し切れていないのかなと感じています。Bチームの結果で部にマイナスな雰囲気を流しているのは確かなので、トップチームは勝てていますが、こういう雰囲気をつくっているのはBチームの一員としてふがいないなと感じています。
――きょうは試合前から多くの声掛けをしていましたがそこは意識していたのですか
シンプルにBチームは元気がないので4年生としてチームを勝利に導くために何ができるか自分なりに考えてその一つの手段として声掛けをしました。それでみんなのテンションが上がるならプラスになると思ったので、そういった試合前から雰囲気をつくることを意識していました。
――雰囲気づくりも起因してか今回は相手に先制点を許しませんでしたね
守備の選手として、守り切れば前線の選手が点を決めてくれるなと感じていたので常に集中を切らさずに周りと声を掛けあいながら1点を防ぐということだけ執着してやっていました。試合の最初の方は良い流れではなかったですが、そういったときも焦れずにプレーし続けたことで前半守り切ることができて、結果1点を取れたのでそれは良かったのかなと思います。反面、後半のあの時間帯に点を取られたことがきょうの勝ち点3を取れなかった要因だと思います。
――きょうはリードした状態で後半へと折り返しましたが、後半は何を意識して挑みましたか
このまま終われば勝ちをつかめるということで失点を許さないように自分の声やプレーなどで刺激を与えようと思っていました。ですが、苦しい時間が続くことで、誰かが守ってくれるだろう、誰かがこの厳しい雰囲気を変えてくれるだろう、と1人1人が周りに依存してしまいました。そういうときこそ上級生とか下級生とか関係なく個人として自分自身がチームの雰囲気を変えたりゴールを決めたり守ったりするべきだったと感じています。それがきょうできなかったからこそ苦しい時間帯に失点してしまったのだと思います。
――その失点シーンを振り返っていかがですか
あの時間帯は押し込まれる時間が長くて、自分たちも耐えるという守り方だったのですが、最後のゴール前のところで体を投げ出せず、守り切るという強い思いが欠けていたからこそ、もやもやするような失点の仕方になってしまったのかなと思います。Bチームのテーマとしても挙げているゴール前の守備、ゴール前の決め切るところ両方の甘さがでてしまったのかなと感じています。
――1人1人の選手の思いがまだ弱いという感じでしょうか
そこに差があるのがいまのBチームなのかなと感じています。
――勝ち点3獲得に向けて次節への意気込みをお願いします
Bチームに求められているのは勝利しかないと感じていますし、現状は危機的状況なのだということを理解してこの状況を脱しなければなりません。それを実現するのは難しいことですし、労力を使う苦しいことだと思いますが、そういったことから逃げず1人1人が向き合うことで結果として勝ち点3がつかめると思います。なので、これから1週間チームとしてやることはもちろんですが、個人個人ができることをやることが必要だと感じています。自分はそういったところを促したり、自分自身が示したりして、次は必ずチームにプラスの雰囲気をもたらせるように勝ち点3をつかみたいと思います。
FW石神佑基(スポ1=埼玉・市浦和 )
――試合を振り返っていかがですか
チームとしてはまず先制点が取れたということで、結構勢いに乗れた部分もあるんですけど、それが前半のうちで終わってしまって、後半その流れを持続して持っていくことができなかったんじゃないかなと思います。
――6連敗を抜け出し、大きな勝ち点1を引き寄せた試合だったのでは
そうですね、やっぱり連敗から抜け出すことは大事でしたし、勝ち点が取れたということは大きかったと思うんですけど、欲を言えば勝ち点3というか、勝利を今までずっと求めて練習からやってきたので、勝ち切れなかったという面ではまだまだ課題が残る試合となったなと思います。
――試合に入る際、チーム全体で大きな声を入っている印象が強かったのですが
チームとして連敗が続いているので雰囲気からしっかり作って、声出してというところを基礎として、チーム全体で盛り上げていこうということを共有してやっていたので、全員で声出して入ったのは意識的にやっていたことです。
――きのうのAチームの勝利(関東大学リーグ戦、専大戦○2-1)は影響がありましたか
そうですね、今までAチームがしっかり結果を残してきているので、やっぱりBチームもそれに続いて流れに乗っていかなければという、危機感でもあり、その勢いを続けようということでもあったので、(Aチームの試合は)大きな一勝だったと思います。
――セットプレーで好機をつかんでの先制点でした
個人的にあれは、あそこにボールが来ることを信じて走って行って、うまく合わせられたっていうのがあって、やっぱりセットプレーはすごく大事なチャンスですし、そのチャンスを活かせたっていうのは良かったと思います。
――セットプレーに重点を置く練習などはされていたのですか
いえ、トレーニングでセットプレーの練習というものは、しっかりは取り組んではいなかったですけど、意識として攻守においてセットプレーは大事にしていこうということで取り組んできました。
――長いボールでターゲットとなり競り合う場面も多く見られました
僕自身の特徴でもあるヘディングの競り合いや、ジャンプ力だったりっていうところは自分の持ち味でもあるので、それをチームとしても共有していこうということになっています。個人的に思うこととしては、競り合いで勝ち切れずにボールを跳ね返されてしまう場面が今日は多かったので、もっとチャンスを作るためにも一本一本を大事にしていかなければいけないかなと思います。
――久しぶりに先制点を取る展開でしたが
勝利を目指してやってきたので先制点を取れたことはとても大きかったです。その先制点があったからこそ後半一点取られてもまだ引き分けでやり直しだという意識のもとでできたので良かったと思います。
――後半、チャンスを作りながらも決めきれなかったことについては
それは実際にワセダのBチームの課題でもあって、チャンスを決め切れずに失点して負けてしまうという試合がとても多くて、今日もその課題が浮き彫りになってしまいました。決め切ることができずに、同点の状況からもう一度勝ち越し点を取れなかったっていうのは、まだまだ高めていかなければいけないことだと思います。
――次節に向けて
連敗は脱したんですけど、まだ勝利っていうものがなくて、自分たちの大きな勢いっていうのは作れていないので、本当にチーム一丸となって勝利というものを目指してこれからもトレーニングを続けていきたいなと思います。